Neetel Inside ニートノベル
表紙

世界を救うのは俺だ!
第三話

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○第三話「朽木健太郎の憂鬱」

 敵は巨大なので、本土に到達した時点で被害が出る。よって、本土到達を阻止しつつ、撃退する必要がある。

 作戦を要約すると、こうだ。
 まず、ヒーロー予備軍で敵の脚部を集中攻撃し、足止めを図る。その間、ゴスロリは魔法のチャージ、レッドは本体部分への攻撃を行う。
 そしてゴスロリのチャージ完了後、トドメ。ゴスロリとレッド以外は素早く退避し、二人が敵を撃破するまで待機……

 ふざけてるだろ? でも、今は従うしかない。


 東京湾沿線上に到着すると、陸上には戦車やらが並べられ、海上には艦隊が隊列を作っていた。そしてヒーロー予備軍達も配置についており、俺もそこに並ぶ。
 あ~あ……結局俺は、その他大勢の一人か。つまらん。

 そう言えば、巨人女はどうしてるだろうか。敵が来ている事は分かっているだろうし、近くにいるんだろうか。だとしたら今も、姿を消しているって事だな。
 俺も、自衛隊の連中になんて、着いていかなければ良かったのかもしれない。レッドじゃないが、表の顔を隠してピンチの時だけ現れればよかったのだ。その後の事はネットとかで見て、一人自己満足すればいいんだしな。
 まあ……今更だけど。

「総員、攻撃準備ー!!」
 へいへい……

 作戦開始。
 蜘蛛はやはり巨大で、画像では針金のように見えていた足も、実際には大木の如き太さだ。で、そんなのが8本もあるわけで、1本や2本つぶした位じゃ止まらないだろうし、思ったよりしんどそうだ。
 自衛隊の兵器は余り当てにならない。少なくとも前回のドラゴンには殆ど効いていなかったからな。戦車の一発より俺の蹴りの方が強いってわけだ。
 だが、だからと言って何もしないわけには行かないのだろう。作戦の第一段階はまず、彼らの総攻撃から始まった。
 海上自衛隊の艦隊からの一斉砲火。ここからでは少々遠いのではっきりとは分からないが、蜘蛛の動きを見る限りはやはり、効いていないようだ。
 すると、今度は空からの攻撃が始まる。戦闘機から放たれたミサイルは見事、蜘蛛の足に命中……
 しかし、やはり効かない。蜘蛛は、何事もないかのように歩き続けている。
「くっ……仕方ない、迎撃部隊用意ー!!」
 出番か……
 と思ったその時、蜘蛛が急に足を止め、大きく体勢を落とした。
 な、何だ? 何をするつもり……ま、まさか!?

 ――そして次の瞬間、信じられない事に蜘蛛は、その体勢から一気に天高くジャンプした!!

 奴に知能があるのかは分からない。だが、まるで俺達の作戦、というか目的を読んだ上での行動に思えた。地上へ上げさせまいとする俺達を嘲笑うかのように、高く、大きく跳躍し……街へ向かって降り立とうと……

 ――だが!

「させませぇ~~ん!!」

 巨人女だ!
 突如現れたあの巨人女が、飛び込んでくる蜘蛛の胴体部分に向かって飛び蹴りをかました。そのおかげで蜘蛛は思いっきり吹っ飛び、海へと突っ込む。
 何て良いタイミングで出てくるんだアイツは! 天然のヒーロー気質だな!

 まあ、飛び蹴りをする為に地面を踏み込んだ際、思いっきりアスファルトの道路を陥没させてたりとか、着地地点にあった建物を踏み壊しているとか、吹っ飛んだ蜘蛛が自衛隊の船を幾つか巻き込んだりしているのはご愛嬌……ご愛嬌じゃ済まんかもしれんが。
 ともかく、これで蜘蛛が本土に上陸するのは避けられた。だが、まだ倒したわけじゃない。早く足を潰すべきだろう。
「おいお前ら! ぼーっとしている場合じゃない、やるぞ!!」
「お、おおー!!」
 俺は呆然としている他のヒーロー予備軍を叱咤し、自分も光を纏って戦闘態勢に入る。
 まあ、俺が比較的冷静に次の行動に移れたのは、巨人女がいる事を予め分かっていたからだろうがな。知らなかったら、多分俺も呆然としていただろう。

 一方、海上に倒れこんだ蜘蛛は、その長い足を何とか起こして体勢を立て直そうとしている最中だった。
 ジャンプはもうしないかもしれないが、保証はできない。それに、蜘蛛ってのは案外すばしっこい生き物だ。ダッシュされたら止めきれるか分からない。
 攻撃するなら、今のうち、だ。

 飛行し、蜘蛛の足へ近づいていく。
 すると、更に上空にゴスロリとレッドがいるのが見えた。
「遅いじゃない健太郎! 危うく本土上陸を許すところだった!」
「うるせえな! まさかジャンプするとは思わなかったんだよ!」
 しかしよく見ると、レッドは一応空を飛んではいるものの、妙にフラフラしている。真っ直ぐ飛ぶ事も出来ず、上下左右に……
「……何やってんすかレッドの人」
「い、いや~、ほら、僕ってば熱気を放射する能力があるんだけどねえ~、空を飛ぶのって今回が二度目でさ~」
「ああ、なるほどねえ……って、今はそれどころじゃないか。おいゴスロリ、今のうちに攻撃準備始めろ!」
「指図しないでよ! 射程距離に入ったらそうするっての!」
「レッド! 飛ぶの難しいんなら、アイツの胴体に乗っちまえ!」
「あ、そ、そだねぇ、そうしよう~」
「健太郎!」
「何だよ!」
「……頼りにしてるから、絶対足止めなさいよ! 他の人の実力は正直分からないけど、アンタのは本物だから!」
「ふん……分かったよ!」
 期待には応えないとな……ヒーローとして!

 他の飛行可能な迎撃部隊も一部、足に到達し、攻撃を開始している。しかし、どいつもこいつもそれ程の火力は無いらしい。むしろ、飛ぶことに精一杯と言った感じだ。
 どうやらヒーロー予備軍とは言っても、常人より少し強い程度の奴から、ゴスロリみたいにハイスペックの奴までピンキリらしい。
 勿論、俺はスペック高い方だと思うがな!
 まあそれはともかく、俺も攻撃に加わるとしよう。
 俺は空中で一旦停止し、蜘蛛の足の一本に向かって腰を落とすような体勢で構える。
 別に空手とか習ってたわけじゃないが、俺の攻撃を最も効果的に発揮する為のスタイルがコレだ。
 俺の力は光に影響される。そのせいか、直線的な動きをすると力が乗りやすい。つまり、この体勢から真っ直ぐに敵に突っ込み、拳で打ち抜くのだ。
「名付けて! レイディアントナックルぅぅ!!」
 技名と共に繰り出される、閃光の一撃! それはあたかも、居合いの達人が繰り出す抜刀術の如くぅ!!
「ピュエエェェェェ!!」
 蜘蛛の、不気味な悲鳴が辺りに響き渡る。俺の一撃によって、足を一本失ったからだ。
 まるで空間そのものを打ち抜いたかのような、滑らかな断面で両断された蜘蛛の足……
 ――だが、まだだ!
「続きまして! レイディアントキーック!! か~ら~の~! レイディアントチョーップ!! そしてそして~!!」
 立て続けに技を繰り出し、更に二本も足を両断する俺! すげえ、俺今輝いてるよ! 二つの意味で!!
 そして、四本目にはレイディアントエルボーを!

 ――と思ったら……

「グライダーキ~ック!!」
 か、仮面グライダー!? 
 仮面グライダーがいつの間にやら足に近づき、奴の必殺技、グライダーキックとやらを繰り出していた。
 しかも……技の地味さとは裏腹に、奴のキックが当たった部分には大きな亀裂が走り、遂には蜘蛛の足がぽっきりと折れてしまったではないか!
「決まった! 俺のグライダーキックが決まったぞおお! ……あ~れ~!」
 しかし仮面グライダーは、必殺の一撃を決めはしたものの、そのせいでバランスを崩したらしく、海に落ちて行ってしまった。

 ある意味、凄い奴だったな、仮面グライダー……実力だけは本物だったのか……

 とにかく、これで蜘蛛の足は半分になった。
 するとバランスが悪くなったせいか、蜘蛛は起き上がる事すらできなくなり、不気味な悲鳴を上げつつ、残った足をばたつかせていた。
 ……本当なら、このまま俺がトドメを刺したい。
 だが、そうもいかないんだよな。ゴスロリのチャージもあと少しって所みたいだし、レッドも蜘蛛の胴体に到達している。この場は、退くか……

 待機って言っても、こうなるともう他にする事はないので、俺はレッド達がどうするのかを見ている事にした。
 レッドは蜘蛛の胴体に乗り、座り込んでいる。もしや、蜘蛛が暴れているから立てないんじゃなかろうな……
 と思ったが、よく見るとそうではなかった。むしろ、蜘蛛が暴れている原因はレッドにあるようだ。
 レッドは熱気を放出する能力を持っているらしい。で、どうやらレッドは蜘蛛の胴体に手を着き、熱気を直接送り込んでいるようだ。
 レッドの周囲は放出された熱気のせいか景色が歪み、それどころか空気が直接燃えるかのように、炎が発生し始めている。
 アイツも、ふざけた恰好をしていたけど実力は本物だったってわけか。しかも今は、詰襟を着込んでいるせいか、妙に格好よく見える。認めたくは無いが、やはりイケメン俳優って肩書きは伊達じゃないな……

「沖田さん!! 準備できました、下がってください!」
「わ、わかった!」
 どうやら、ゴスロリのチャージも完了したようだ。前回のドラゴンにやったのと同じような、大規模な雷の魔法を使うつもりだろう。
 ゴスロリの指示を受け、レッドは拙い飛行でその場を離脱しようとする。
 しかし……如何せん、遅い! やはり飛行は苦手らしい。
 すると、蜘蛛が怪しい動きをし始めた。残っていた足の一本を、高々と振り上げ始めたのだ。そしてどうやら、蜘蛛の狙いはレッドに向いているようだった。
 恐らくは、さっきまで自分の胴体を痛めつけていた相手だからだろう。蜘蛛は、振り上げた足をレッドに向かって、振り下ろしてきた!
「沖田さん!」
「えっ? わ、わああああ~~!?」
 ――しょうがない奴だ。
「あああ~~~……あ、あれ?」
 俺は、蜘蛛の足がレッドに当たる直前に、レッドを横から掻っ攫う形で回避させた。
 何で俺が男を抱えて飛ばにゃならんのだ……どうせなら可愛い女の子を相手にこうしたかったのに。
 ――ってか……
「あ、あ、熱いっつうんじゃボケぇ!!」
 レッドを抱えて飛び去ったのはいいんだが、奴は熱を放出して空を飛んでいたので、俺はその熱に突っ込む形になってしまったのだ。
 で、俺はそのあまりの熱さに、回避した勢いでそのままレッドを遠くに放り投げてしまった。
「あ~れ~!」
「おいゴスロリ! 今だ!」
「っ……だ、だから指図しないでっての!!」
 そして、ゴスロリの魔法が発動……たっぷりチャージしたせいか、前回よりも多くの雷球が発生しております。
 で……雷撃。見ているこっちが気の毒になるほどの、容赦ない攻撃が蜘蛛の体を貫いていく。あの何とも言えない蜘蛛の悲鳴も、雷撃の轟音にかき消されて……

     


 そうして後に残されたのは、黒こげになった巨大蜘蛛の死体。
 すると次には、蜘蛛の死体は徐々に黒い砂のようなものに変わり始め、そのまま宙に散り始めていく。これは前回のドラゴンとは違う、死んだからこその変化、だと思われる。
 つまり俺達は、今度こそ完全な勝利を上げたのだ。ただ、トドメはやはりゴスロリになってしまったのだが。
「や、やったわ!! 見てた健太郎!? アタシがやったのよ!!」
「へいへい……そりゃあんだけお膳立てすりゃ当然だろ……」
「何~? 何か言った~?」
「べ~つに~!」
 勝利に酔いしれるゴスロリ……まあ、気持ちは分かるんだが、俺は素直に喜べないな。


 ゴスロリ達を置いて本土に帰ってみると、そこには既に巨人女の姿は無かった。
 まあ……今回は自衛隊とかの目の前で思いっきり姿を見せちまったからな……隠れるのも早くする必要があったのだろう。

 ともかく、これで今週の敵は撃退した。
 自衛隊の隊員の話によると、他の国の敵も徐々に片付き始めているらしい。
 そんなわけで、俺達も帰る事になった。

 ふと気がつくと、周囲にはどこから沸いてきたのかマスコミの連中が集まり始めていた。そして帰り支度している俺達を余所に、遅れて戻ってきたゴスロリとレッドに群がって、取材を始めた。
 あ~あ……今回こそ、本当に活躍したのは俺なのに……ま、いいけどさ、もう。


 施設へ戻ると、大道寺を始めとする16師団の幹部達が俺達を出迎えた。
 一応、口では慰労の言葉をかける幹部達。
 だが、俺はそいつらの目が全然笑っていない事に気付いた。その理由も……大体想像は着く。
 で、俺以外にもそれに気付いてる迎撃部隊メンバーがいる。今回の戦いで、活躍できなかった連中だ。

 ヒーロー予備軍にも力の優劣というか、能力差があるというのが今回分かってしまった。だから恐らく、常人よりちょっと強い程度の奴は今後の扱いも変わってくるだろう。
 その内容によっては……色々面倒な事になりそうだ。

 まあ正直、俺にはあまり関係のない話だとは思う。俺はちゃんと活躍したしな。
 そもそも、大した実力もないのにでしゃばったりするからこんな事になるんだ……そうとも、俺には関係ない。


 ともかく、これ以上余計な事に首を突っ込みたくないので、早々に部屋に戻る事にした。それなりに、疲れてるしな。
 途中の自販機コーナーでジュースを買い、今日の夕飯はなんじゃろうなぁなんて思いつつ、廊下を歩いて……
 で、自室のドアを開けると、
「やあ、おかえり健太郎君」
 ドア閉める。

 ……はて? ここは俺の部屋、だよな。
 も、もう一度開けてみるか。
「何をしているのだ、早く部屋に――」
 ドア閉める。

 ……俺の部屋に、今ここに居てはいけない人物がいる。
 しかも、どうにも様子がおかしい。とにかく、もう一度開けて確かめてみよう。
「さっきから、何をしているんだ健太郎君?」
「な……何をしているはこっちのセリフだ! あ、明美……いや、お前誰だ!?」
 そう、俺の部屋に居たのは……妹の、明美……
 いや、正確には明美によく似た人物、だ。ここに明美がいるわけないし、何より俺の事を健太郎君などと呼ぶわけがない。
 その明美によく似た人物は、大きめのシャツ一枚だけを着て、部屋のソファにちょこんと座っていた。妖しげに、微笑みながら。

 本物のワケが無い……本物の明美は今、病院にいるはずなのだから。

 しかし、腰まである長い黒髪や華奢な体つき、そして落ち着きのある声……見れば見るほどそっくりだ。

 強いて違いを上げるとするなら、印象と言うか……気配というか……
 それに、本物の明美は歳相応の、子供らしい笑い方をする。こんな、妖艶さすら感じさせるような表情はしない。
 この少女……何者だ?
「ふむ、色々考えているようだね。でもまあ、明美でいいんじゃないかな」
「な、なんだと?」
「この体は確かに君の妹のものだ。借りたのだよ」
「はあ!? お、お前誰だよ!」
「私は君たちがドラゴンと呼称する存在……先週は失礼したね」
「ど、どら……ドラゴン!?」
 ドラゴンって、あのドラゴンか!? 俺達が戦った、あの!?

 自らをドラゴンだと言う明美の体を借りた何者か。
 明美本人の邪気眼的なものなら良かったのだが、それが有り得ない事もよく分かっている。この地下施設に、しかも一人で、あの病弱な明美が来れるわけがないのだから。

 確かにあの時、ドラゴンは逃げた。さっきの蜘蛛の死に様から考えて、それは間違いなかった。
 で、あの時奴は、あの巨体から小さな光の球体へと姿を変えていた。
 あれがもし、一時的に肉体を捨てたというような行為であるなら……霊が人間にとり憑くのと同じような形で妹の体を乗っ取る、というのも可能なのかもしれない。
「な、なんで妹にとり憑いた!? さっさと妹を返せ!」
「それは無理だな。少なくとも、今すぐ出ていく事はできない」
「ふざけるな! ってか、何で俺の妹なんだよ!?」
「まず、私を追い詰めた三人の中で、心情的にも近しい身内がいるのは君だけだった。あの巨人には身寄りはいないし、魔法使いは両親を憎んでいるようだからね」
 魔法使いって……ゴスロリの事か? 両親を憎んでる……?
 いや、今はそれどころじゃないか。
「で、なぜ君達の身内に入り込もうとしたかだが……まあ要するに、安全に身を休める為だ。君の妹の中に居る以上は、君達は私に手を出せないだろう?」
「身体を、休める? 治ったらどうするつもりだ!」
「……さあ? 考えてないな。まあ、君達が望むなら、もう一度世界を襲ってあげてもいいけどね」
「な、だ、誰が望むかそんなもん!」
「そうかい? 君は、望んでいたんじゃなかったかな? 敵の襲来って奴を」
「ぐ……」
 まるで、俺の心を読み取るかのように見詰めてくるドラゴン。
「ふふふ……まあ、そういうわけだからよろしく頼むよ」
「た、頼むって、何をだ」
「君達が望めば、家族の同居も許されるんじゃなかったかな?」
「な、なんだと? じゃあお前、このまま俺と一緒に住もうってのか!?」
「愛しい妹の為だ、構うまい?」
「お前は妹じゃないだろ!? せめて、妹の意識を返せよ!」
「――お兄ちゃん」
「う、お? え、明美?」
「……ふふふ」
「く、からかうんじゃねえ!!」
 俺は思わず、明美の体に向かって拳を構えてしまう。
 だが……勿論、殴ることなんてできない。
「ぐ……う……くそ……」
「……すまん。悪ノリしすぎたな。君の妹は今眠りについている。少なくとも私が出て行くまで、目を覚ますことは無いだろう」
「なんで、よりによって明美なんだよ……明美、体弱いんだよ……」
「……私も、生き残るのに必死だったのでな。君にとって、より大切な人を選んだ結果、こうなった」
 そう、こいつの目論見は正しい。俺からすれば実に胸糞悪いが。
 こいつが妹の体に入ってしまった以上、俺にはもうどうする事もできない。俺は肉弾戦なら得意だが、そういう、精神がどうのなんて、どうすればいいのか見当もつかないから。
 だから……それならせめて……
「……出て行く気、ないんだな?」
「ああ、すまんが」
「だったら! 絶対その体を傷つけるなよ! いいか、1ミリたりともだ! もしその身体でスッ転んだりしてみろ、その時は……」
「その時は……?」
「え、えーと……く、くすぐってやる」
「……あははははは! な、殴れないから、くすぐるって言うのか、あははははは!」
「わ、笑ってんじゃねえ! くすぐりの刑を舐めんな! もう、泣いて謝っても許さないからな!?」
「くくくく……ああ、いいさ。心して置くよ、兄上殿」
 こんな時だけ、子供の顔で笑うドラゴン。

 ええい、どうしてこうなった! 何か、悪い方向にばかり話が行くじゃねえか! よりにもよって、明美まで巻き込むなんて!

 いや……全部、俺のせいなのか? 俺も、実力の無いヒーロー予備軍同様に、でしゃばらなければこんな事には……

       

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Neetsha