Neetel Inside ニートノベル
表紙

西沼ガチバトル
あれ、ワシの生徒手帳どこやったかのぅ??

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 耳元で大声を出しても聞こえない老人が。
「おっぱいパフパフ」
 自らの悪口だけは遠くからでも良く聞こえる。
「……はぁ?」
 そんな地獄耳の話は良く聞くが。
「それが条件だ」
 “地獄”の耳を持っているというのは。
「おっぱいパフパフだぁあ?」
 こういう事を言うのだろう。
「か……かぁちゃん!?」
 煙上銀が振り返ると、そこには老婆がいた。
 らくらく家庭用くるくるパーマを着けたままの頭に、トラ柄のエプロン。
 煙上銀の妻、弥生さん87歳。
 物凄い形相なう。
「アタシのパイ乙じゃ不満だってのかぃ!?」
「いや違う、誤解ってか……」
「ほぉ……説明してみな」
「説明と言うほどの事じゃ……それよりどうしてお前、ここに居るんだよ!?」
「便所に入ってたらエロジジィが下らねぇ事ほざいてるのが聞こえたんだよ」
「おぉそりゃ不味い、便所はちゃんと済ませて……」
 弥生さんは便所サンダルをガァンと鳴らし、犬歯を剥き出してに唸る様に怒鳴った。
「てめぇの所為で、出るもん引っ込んじまったよッッ!!」
 多目的室が静まり返る。
 銀さんは滴る汗を拭い、懐から一口大の球体を取り出した。
「……これが何だか判るか?」
「なんだいそりゃ?」
「……団子さ!」
 辺りが騒然となった。
「まさか! 祭りが始まるまで団子は配られないハズ!!」
「久米会長がボケて渡しちゃったのか?」
「どうせ盗んできたんだろ?」
「いや……違う。良く見てみろ、あの団子の色を」
 それは緑色をしていた。綿毛の様な表面をしている。
「カビてる……」
「まさか!!」
 銀さんが団子を頭上に掲げ、高らかに言った。
「そうだ! 三年前の団子だ!」
 銀さんは前回の西沼☆バトル(フェスティバル状態)の時の団子を、いざと言う時の為に隠し持っていたのだ!
「そんな腐った団子使って、アタシに勝てると思ってんのかい?」
「もう尻に敷かれるのは御免だ!!」
 カビた団子を丸呑みすると、咥えていた煙草から濃い白煙が溢れ出した。
 それは足のない太っちょなオッサンの姿に固まっていく。
「なんだいそりゃ?」
「副流煙さんだ! こいつは強いぞ~、ギッタンギッタンにしてやる!」

 副流煙さんが、欠伸をした。

「副流煙さんが欠伸をしたーーーーーッ!!!!!!」
 辺りが騒然となる。

 副流煙さんが、頭を掻いた。

「副流煙さんが頭を掻いたーーーーーッ!!!!!!」
 辺りに戦慄が走る。
 ギャラリーは恐怖で動く事さえ出来ない!

 副流煙さんが、ぼーっとしている。

「副流煙さんがぼーっとしてるーーーーーッ!!!!!!」
 恐怖の余り、失禁する者さえいた。
 だが、不幸中の幸い、介護用パンツを履いていたので、事なきを得た。
 煙上銀がニヤリッと笑う。
「どーだい?」
 煙上弥生がツカツカと歩み寄り、銀の頭をポカリと殴った。
 口元から煙草がポロリと零れ落ちた。
 副流煙さんは消えた。
「……あ」
「ギッタンギッタンにされたいらしいね?」
 するめを焼いた様にミルミル小さくなってしまった銀が、引きつった笑顔で懇願する。
「あの、お手柔らかにお願いしますね?」
「安心しな、殺しゃしないからッ!」
 弥生さんの強烈なアッパーは銀さんの鳩尾をクリーンヒット。
 彼は第二宇宙速度で多目的室の天上を突き破り、青空へ消えていった。

「痴漢、滅ぶべし!!」

 弥生さんの偉業は新聞に載り、社会現象を巻き起こした。

 銀さんのその後行方不明となったが、行方不明の届け出をする者はいなかった。

       

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