Neetel Inside 文芸新都
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MTGについて少し話そうと思う
voL.Ex「ムラサのMTGプレイヤーズリポート その2」

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 1回戦は《公開処刑(M13)》《金屑化(M13)》《炬火の炎(M13)》など除去が豊富な黒赤デッキだった。《ザスリッドの指輪(M13)》《帆凧(M13)》をつけたクリーチャーを《金屑化(M13)》されたり、アンコモンになって帰ってきた《弧状の稲妻(US)》こと《炬火の炎(M13)》で《苛まれし魂(M13)》《悪名の騎士(M13)》《エルフの幻想家(M13)》を一掃されたり、のこりライフ3の本体に《チャンドラの憤怒(M13)》が刺さったりときびしいたたかいとなったが、クリーチャーのうすい相手のクロックをこちらも充実した除去スペルでしのぎながら焼ききれない緑の中型クリーチャーで2-1と押しきった。前回MTGの大会にでたのがオンスロート期だったのでじつに約10年ぶりの真剣勝負であったが、幸先のよいスタートを切ることができた。対戦表に戦績を書いて提出したあと「スタンダードのデッキとか持ってます?」と対戦相手がきいてきたので「あ、はい、イベントデッキまんまですけど」と筆者はこたえながら例のゾンビデッキをとりだしてみせた。カジュアルとはいえこちらもひさびさのスタンダード対戦となったが、《出産の殻(NPH)》からでてきた《食百足(DKA)》にボコボコにされてしまった(いまは5マナで5/4に警戒とトランプルに不死までついてくるのだ。そりゃ「マックは高くなった」と揶揄されるわけである)。巨大ムカデに蹂躙されるままの筆者に「それ使えば不死消せますよ」ととなりのプレイヤーが筆者の場に立っていた《墓所を歩くもの(AVR)》を指して教えてくれた。なるほど、よく考えてみればそのとおりである。「MTGははじめてですか?」と対戦相手の問いに最近また復帰したことを伝えると「ぼくの友人も2月からはじめたんですよ」とむこうの卓で一升瓶をわきにかかえながら《世界火(M13)》を撃って大笑いするプレイヤーをしめした。
 2回戦は《エイヴンの従者(M13)》《軍用隼(M13)》《群れの癒し手(M13)》《警備隊長(M13)》とやっかいな白クリーチャーを中心とした白緑デッキ。とくに《エイヴンの従者(M13)》がとてもいやらしく、これが2体ならんだ状態で《軍用隼(M13)》にアタックされて「賛美は重複します」と4点くらったときは《もぎとり(M13)》の旧イラストのように顔面蒼白になってしまった。《群れの癒し手(M13)》《警備隊長(M13)》のコンボも強烈で、こちらの《血狩りコウモリ(M13)》《吸血鬼の夜鷲(M13)》のライフゲインもあいまって非常に長い対戦となった。おたがいクリーチャーをずらっとならべるが除去を引けず場は膠着状態となる。だが《咆哮するプリマドックス(M13)》で《平和な心(M13)》を無効化しながら《エルフの幻想家(M13)》でアドバンテージをかせぎ、《血狩りコウモリ(M13)》でじわじわとライフを吸いとった筆者がなんとか1ゲーム目をとった。2ゲーム目はさらに大量のクリーチャーが相手の場にならび圧倒されてしまったが、3ゲーム目は《苛まれし魂(M13)》と《ザスリッドの指輪(M13)》の速攻が決まってギリギリ時間内に終わらせることができた。もう白とはあたりたくないと思いながら筆者はつぎなる対戦にむかった。
 3回戦は《フェアリーの侵略者(M13》《ウスーンのスフィンクス(M13)》《硬化(M13)》と青をふくむ白青緑。筆者の《不敬の祈り(ON)》もむなしく《エイヴンの従者(M13)》と感動の再会を果たしたわけだが、《遙か見(M13)》《レインジャーの道(M13)》がはいっているとはいえ3色構成はやはり安定感に欠け、終始優勢にゲームをすすめることができた。黒の飛行&緑のビーストで押しきろうというときの《睡眠(M13)》には一瞬ヒヤリとしたが、つづけざまに登場した《ウスーンのスフィンクス(M13)》を《吸血鬼の夜鷲(M13)》&《捕食(M13)》で葬ってそのままフィニッシュとなった。ちなみにこちらの《吸血鬼の夜鷲(M13)》&《ザスリッドの指輪(M13)》とむこうの《アジャニの陽光弾手(M13)》&《怨恨(M13)》のおかげでまたしても長期戦となり、2ゲーム目の途中であえなく時間切れとなってしまったが1ゲーム目をとっていた筆者が勝者となった。
 4回戦は安心の白緑デッキ。《エイヴンの従者(M13)》に軽くあいさつをしながら筆者はうしろの席から越乃寒梅をすこし拝借してたたかいに望んだ。しかし《悪名の騎士(M13)》《吸血鬼の夜鷲(M13)》で白の飛行クリーチャーをけちらしながら《殺害(M13)》で《歩哨蜘蛛(M13)》《自然の伝令、イェヴァ(M13)》を瞬殺した筆者が前の2戦がウソのようにあっさりと2ゲームを連取した。「《殺害(M13)》何枚はいってます?」「2枚です」「ですよねー(苦笑)」
 ここで予定されていた4戦が終了し、全勝の筆者ともうひとりのプレイヤーのダブル優勝と思いきや「みなさん時間はまだだいじょうぶでしょうか? よければ5回戦をおこないたいのですが」とまさかの店長さんの続行宣言でデュエルスペースは騒然となる。なぜなら時計の針はすでに22時をまわっていてこれ以上のデュエルは深夜手当が発生するからだ。店側にとってもこの出費はけっして小さくないはずだが、店長さんの目は本気(マジ)であった。その覚悟に圧倒されて何人かのプレイヤーがドロップしたが大半は最終戦にのこった。正直なところ筆者も終電があやうかったのだが、デュエリストとしてここでぬけるのは《破滅的な行為(AP)》であり、やはり「続行」を宣言した。さあ、優勝決定戦である。
 5回戦はやはり白緑。今大会でもっとも多かった組みあわせである。ただこれまでとちがうのはエンドカードとなりうる《荘厳な大天使(M13)》の存在だろう。またプレイヤー自身のプレイ精度も非常に卓越していてプレッシャーのかかる決戦となった。
 1ゲーム目は《アクラサの守護者(M13)》に賛美された《セラの天使(M13)》に制空権をにぎられ、さらに《絹鎖の蜘蛛(M13)》にこちらの小型飛行クリーチャーを落とされて苦しい展開となる。だが《垂直落下(M13)》で天使を落とすと《血狩りコウモリ(M13)》《本質の吸収(M13)》などのライフゲインでねばり、《ザスリッドの指輪(M13)》で巨大化した《苛まれし魂(M13)》でからくも逃げきった。2ゲーム目も先とまったくおなじ展開となり《絹鎖の蜘蛛(M13)》にゲームをコントロールされてしまうが、こちらも緑の地上クリーチャーをならべて対抗する。おたがい決め手に欠けて場は膠着ぎみとなるが、筆者のライフが2になったところで相手の場に《ぬいぐるみ人形(M13)》が登場してあとがなくなる。筆者はトップデッキした《捕食(M13)》でブロッカーの《酸のスライム(M13)》を排除すると総攻撃をしかけた。どうせあと2ターンしかもたないのだと筆者は思っていたのだが、これは《ぬいぐるみ人形(M13)》のタップ能力のほうに注意がいっていた結果であり、戦闘ダメージでも能力は誘発することを完全に失念していた。当然むこうは《ぬいぐるみ人形(M13)》でブロックを宣言する。だがのこりの攻撃はスルーとなり、相手のライフを削りきるにじゅうぶんなダメージを発生させた。つまり筆者のライフは《ぬいぐるみ人形(M13)》の能力で0となり、相手のライフもこちらのクリーチャーの戦闘ダメージで0になるという状況だ。ここで筆者は「クリーチャー同士の戦闘ダメージがプレイヤーへの戦闘ダメージより先に処理されるのだから、《ぬいぐるみ人形(M13)》の能力によって筆者のほうが先にライフが0となって負ける」と考えた。しかし対戦相手は「うーん、この場合どうなるんでしょうね」と場に視線を落としたまま手をあげてジャッジを呼んだ。となりで対戦していたプレイヤーたちもこちらの場をみながら「あーこれは微妙ですね」と言いあっていた。彼らが言うに「ダメージはスタックに乗らないから《ぬいぐるみ人形(M13)》の能力が誘発しても解決される前に彼(筆者の対戦相手)のライフが先に0になる可能性がある」ということだった。ダメージがスタックに乗らなくなったことは知っていたが、筆者にはいまひとつ理解できず再度たずねてみると「ダメージはスタックに乗らない、つまりすべての戦闘ダメージは同時に処理される」とさらに説明してくれた。ここで筆者もやっと合点がいった。現在のルールではクリーチャー同士とプレイヤーへの戦闘ダメージは同時に解決されるということであり、そうなるとたしかに《ぬいぐるみ人形(M13》の誘発能力がスタックに乗りはしてもむこうが優先権を得る前に状況起因処理によっておたがいのライフがチェックされ、この時点ではまだライフが2のままである筆者の勝利となるのだ。
 ジャッジ(店長さん)が長らくカウンターのほうでオラクルのチェックをおこなっていたが、やがてどこかに電話をかけはじめて英語でなにかを話していた。筆者たちは《暗黒の儀式(MM)》をおこないながら《最後の審判(6th)》をまった。
 しばらくすると店内に巨大な影があらわれ、「おぉ」とデュエルスペースがざわついた。ここでまさかのトビー・エリオット登場となり、彼は《ゴーレム皮の篭手(MRD)》のような手を筆者の肩において「You Win」と告げた。
 復帰戦をみごと優勝でかざることができた筆者は優勝賞品のフォイルカードを受けとるとお礼もそこそこにあわてて店をあとにした。なんとか最終電車に乗ることができた筆者は《ルビーの大メダル(TE)》のように情熱的なかがやきを放つフォイルカードをながめながら勝利の余韻にひたった。アナウンスとともに電車が発車すると車掌にすぐさま《睡眠(M13)》をキャストされ、目的駅までにアンタップできることを祈りながら筆者は《まどろむドラゴン(M13)》とともにねむりについた。
 というわけで2回にわたって長々とつづってしまったプレイヤーズリポートだが、字数がきびしくなってきたのでそろそろ締めにはいろう。今大会をとおして筆者が感じたことは「スポイラーをながめてデッキ構想を考えたり、体験版ゲームで擬似プレイしたりするのもわるくないが、やはり実際にカードを手にしてほかのプレイヤーと対戦するのはなににもかえがたい悦楽である」というごくあたりまえのことだった(勝利を得ることができればなおさらすばらしい)。今後の課題としてはもうすこし落ちついてプレイできるようにしたい。アップキープに《ザスリッドの指輪(M13)》の効果で+1/+1カウンターを乗せわすれたり(《マスティコア(UD)》なら致命傷になっているところだ)、《咆哮するプリマドックス(M13)》でクリーチャーをもどしわすれたり、装備品の装備コストをまちがえたりと対戦相手に迷惑をかけてしまったことは反省すべき点だ。それでも彼らは筆者にたいして寛大に接してくれ、カジュアルプレイを持ちかけてくれたり声の小さい筆者にかわってジャッジを呼んでくれたり対戦表を書きこんでくれたりとたいへんお世話になった(彼らはまた《機知の戦い(M13)》を引いたからにはデッキの半分以上を土地にしてでも採用するといったMTG的ユーモアにも富んでいた)。とくに筆者に戦闘ダメージの処理をわかりやすく教えてくれたり終電を調べたりしてくれた最終卓の3人のプレイヤーには大きな感謝を送りたい(そして筆者の優勝を田酒(純米大吟醸)山廃で祝ってくれたフェブラリー氏とわざわざニューオーリンズからかけつけてくれたトビー・エリオットにも)。
 10月にはラヴニカへの回帰が発売される。今回で味をしめた筆者はそのプレリリース・トーナメントにも参加するつもりだ。できればそのリポートもまた報告したいと思う。

       

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