Neetel Inside ニートノベル
表紙

ロボキョーシ
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日本の教育はもはや死にかけていた

学校では麻薬や武器の売買が公然と行われ、
それらを手にした生徒達が学校中を徘徊する始末…

授業が始まるとなれば、入ってきた教師を待ち伏せて射殺したり、ブービートラップを仕掛けるなど序の口である
授業に対する抗議の暴動が起き、職員室を制圧して戒厳令を敷くことなど当たり前

警察や機動隊が出動しても、最早 手に負えず
特殊急襲部隊や軍隊が出動することなどザラである

こんな世の中でテレビをつければどんなニュースが流れるか
分かるだろう?

「京都の曼珠院中学校で教諭・生徒間の武力衝突が発生し、
 大規模な銃撃戦に発展。教諭8名と生徒16名が死傷しました
 衝突の原因は生徒達が地下で極秘裏に栽培していた麻薬植物を
 発見されたことにあると見て―」

「神奈川県の丈島中学校で、1~2年生を取り仕切る成島派と
 3年生を取り仕切る山崎派が支配領域を巡って衝突し、
 成島派が学校を制圧しました たった今、成島派による
 山崎派の公開処刑が行われる模様です―」

そして、ここ東京の私立八重歯中学校でも状況は何ら変わってはいない

ここは2年3組……
ここも教壇と生徒達の席が防弾ガラスで仕切られたごくありふれた教室だ…
かつてはこの防弾ガラスが教室に無い時代もあったそうだが
今となってはもう博物館入りのものといっていいだろう
そんな教室で一人の女性教師が無秩序に騒ぎ立てる生徒達を相手に
果敢に英語の授業に挑んでいた

彼女の名前は宇都宮ソニア
桃色の髪のショートヘアーに、豊満な胸、
スカーフ状の襟の白いブラウス、紺色のスカートを着こなす
ブラジルと日系アメリカ人とのハーフの超美人教師だ



     


     

「Nationalityは国籍をあらわし、Date of birthが誕生日という意味です
 日本語と違い、日、月、年の順番に書くので要注意です
 ここはテストに出しますからね~」
 
授業内容はパスポートの読み方に関するものだった
ソニア先生は一つ一つの単語をとても流暢に発音し、
指示棒型のペンタブで単語に片仮名でルビを振っていく

自分の持てるあらゆる知識を総動員し、必死に学んだ日本語で
生徒達へと語りかけるその姿は教壇と生徒達との間にガラスが
あることなどすっかり忘れさせてしまう

だが、そんな彼女の熱心さは生徒達には一方通行なものでしかなかった
生徒達は彼女の熱心な授業に一切耳を傾けず、好き放題やらかしていた


「なぁ~ 注射器持ってねー?」
「はァ? この前貸したろが」
「失くしたんだよ ボケが」
「ハァ? さっさと死ねや 殺すぞ テメー」

仲間同士で机を向かい合い、
ドラッグ入りの煙草や注射器をまわし合って
吸引や喫煙を楽しむ連中もあちこちで見受けられる

「うぁっ……あぁっ!」
「あれぇ~? 便器が喋ってんだけど~~?」
「あぁっ……ああああああッ!!」
「ウッハッハッ! 言葉責めでイキやがったべ~こいつ」
「ほら、ノビてねぇでちゃんと銜えろや 俺の番だろーが」

イチモツをぶら下げて乱交に勤しみ、猛獣と化した男子連中の姿も当たり前のように見られる

「お前さぁー バカなの?」

3~40万近くのお金を片手でパタパタとならしながら、
女子生徒たちが男子生徒一人を責めあげていた

「こんなハシタ金持ってこいって誰が言ったよ?
 ホント クズだな」

「もう死ねよ おめー」

ガラスの向こうで起きている無秩序な光景をただ見つめるソニア先生は
自分の努力の報われなさに挫けそうになっていた……

(……やっぱり今日もダメか)

だが、彼女は自分を見つめてくれている3~4人の生徒たちの目線に気が付いた

(……!)

挫けてはいられなかった
たとえ、3~4人とはいえ彼女の言葉に耳を傾けてくれる生徒がいる
彼女は奮い立った
彼女は一旦 中断してしまった授業を再開する



きっかけはソニア先生が指示棒でSEX(性別)という項目を指した時のことだった

「続いてここのSEXという言葉ですが……」

次の瞬間、ざわざわと音を立てていた教室が一瞬で静まり返った
先ほどまで自分の授業に目もくれていなかった生徒達もこちらに釘付けになっている

(も……もしかして、私の授業聞く気になってくれたのかな……?)

しかし、彼女の淡い期待は当然のごとく裏切られることになる

「SEX!? ソニアちゃん、SEXしたいの!?」

「え?」

「え?マジ? ソニアちゃんが相手してくれンの?」

「マジで嬉しいっすわ~ 前から先生を犯りたいって思ってたんで~
 もちろん、バックで」

ソニア先生はただパスポートの書類ではSEXが性別を意味することを説明しようだけに過ぎない
そんなことはしっかりと彼女の話を聞いていれば分かるはずである

SEXという言葉だけを捕まえ、彼女がSEXしたがっていると勝手に意味を解釈した彼らの反応は、
先生の授業になど 一切興味が無いことを改めて知らしめることとなった

「今からそっち行きますんで準備しといてくださいねー」

そう言う生徒達は次々とポケットなどから銃を取り出し、
ガラスに向かって一斉に発砲してきた

「きゃああああ!!」

皹が入ったガラスが雪のように白く染まる
だが、それでもガラスが割れるような気配は一切無かった
防弾ガラスなのだから当然といえば当然だ 


「やっぱかてぇなぁ~ オイ」

「おい、アレ 使えや アレ」

そう言うと、生徒の一人がポケットからナイフを取り出してきた
個人携帯用の小型のレーザーブレード
ロシアで生産された超強力な切れ味を誇り、耐久性もAK並の性能を誇る小型携帯兵器
その使い勝手の良さに中東や中国などで大量に違法コピーが行われたほどだ

「こいつならガラス焼き切れんじゃねぇの?」

「よっし!!試してみようぜ!」

レーザーブレードを持った生徒はブレードをガラスに押し当て、人が入れるぐらいの大きさの切り目をいれていった

「おー!切れてる!切れてるー!」

切り目を入れられた部分が赤く光り、溶けて行くのが分かった

「やめなさい……!みんな!」

静止するソニア先生の言葉など発情したケダモノ達の耳に入ろう筈もない

「先生が誘ってきたんだろぉ~?
 SEXなんて口にするからだぜ」

ガラスがくりぬかれ、そこから先陣を切って2人の生徒が突入してきた

「やっ……やめて!丸山君……!谷川君……!」

丸山も谷川もこのクラスでは筋金入りのワルである
さきほどコカインを仲間と吸引してたこともあり、彼の顔は高揚感でニヤついていた

「へへへへ……いいじゃねぇかよぉ 先生ェ
 俺ら 教え子だぜぇ」

「性教育についてもちゃんと教えてくれよぉ~~」

ソニア先生は戦慄した
目の前にいる2人の顔が生徒の顔ではなく、飢えた獣の顔をしていたからだ

「いっ……いや! やっ……やめてっ!!」

思わず
キスを求めてくる2人の顔を手で払いのけようとするが、
敵うはずもなく、丸山に両手を押さえつけられてしまう

谷川はズボンのチャックからイチモツを取り出し、
先生のスカートの中に突っ込もうとしてきた

「ん……いやっ!!いやああああああ!!」

「ぐへへへ……叫んだって誰も来るもんかよぉ」


その時だった
生徒たちの居る側の扉が開いた 入ってきたのは、八重歯校長であった

「一体、何をやっとる!!このバカ者共!」

この学校では校長以外にも体育を担当しているだけあって八重歯校長の怒号が
教室に爆音のように鳴り響いた 並の生徒ならその気迫に腰を抜かすところだが、
流石 八重歯中学生といったところか
直ぐに教室には笑いが起こった

「あ~~~も~~~ 八重歯ちゃん来ちゃったじゃん!」

「ちょっと誰ェよぉ? タレこんだのぉ~?」

緊急事態が起こった時、誰かがそれをリークして、
八重歯校長が駆けつけてくることは当たり前のことになっていた 
彼はこの学校で唯一 生徒達と同じ部屋に入って会話出来る教師だった
空手の国体選手だったこともあり、61歳ながら身体はがっしりとしており、素手では殆ど彼には勝つことは不可能だからである
生徒達も彼が今、ここに居るのは誰かがタレこんだためと思っていた。無論、今回の場合でもタレこんだ生徒がいたことは事実である(月島という名前の生徒、さきほどソニア先生の話に聞いていた真面目な生徒達の一人)

「全く なんて汚い教室なんだ!少しは掃除しろ!ここもちゃんと拭かんか!」

校長の歩いていく道には麻薬の粉や、セックスに勤しんでいた連中の愛液が飛び散っている
校長はそれらを指差して、生徒に掃除するように命じながら、
一歩一歩 教室の中を歩いていく

「貴様等のようなマン汁塗れ、粉塗れのクソ共は、いくら口で注意しても一向に直そうとしない!どうせ俺がこの教室から出て行ったら お前等はやりたい放題やるに決まってる!」

次第に苛立ってきた八重歯校長は床に落ちた粉や愛液に八つ当たりするかのようにグリグリと踏み付け
ながら教壇にいる丸山、谷川、ソニア先生のいる教壇へと歩を進めていった

「もう止めだ! 貴様等に聞く耳が無いのなら
 貴様等には身体で言い聞かせることにした!」

そう言う八重歯校長の腹に向かって丸山は
べレッタ9mm拳銃のトリガーを引いた

「ぐッ!!」

校長の腹に着弾したべレッタの9mm弾の衝撃が炸裂する
膝はつかなかったものの、校長は少し腹を抑えてひるんだ

「あー、やっぱ防弾チョッキちてまちたかぁ~ 八重歯校長?」

ヘラヘラと笑いながら谷川は赤ちゃん風の喋りで膝をついた校長を見下ろした
硝煙立ち昇るべレッタを天井にむけながらも、丸山は憎たらしい笑みを校長に向けていた

「身体で言い聞かせるってこういうことでちゅかぁ~? 校長~?」

丸山はべレッタの銃口を八重歯校長の額に向けながら、へへへと下卑た笑い声をしていた

「死んでくだちゃいね~」

その丸山にべレッタ9mm拳銃を向けられながら、八重歯校長は不敵な笑みを浮かべた

「いいのか? 後悔しても知らんぞ?」

その言葉にイラついた谷川が校長の頬にタウラス9mm拳銃を突きつけてきた

「ごちゃごちゃうっせェんだよ! このハゲ!
 こいつがありゃ先公なんて怖かねェんだよ!」

校長を射殺せんとする形相の二人を止めようと
ソニア先生が必死で静止する

「やめなさい! 丸山君!谷川君!」

だが、彼女の声など全く届くことは無かった

「うるせぇ 死ね!」

堪忍袋の緒が切れた丸山と谷川が顔中に血管を浮き立たせ、
校長に向けた銃の引き金に手をかけようとした刹那だった
彼らのべレッタとタウルスが突然弾けとんだ

「ぐはぁっ!!」

「ごぃっ!!」

手をおさえる丸山と谷川たちを見て、校長は目の前の光景は
当然の成り行きとでも言いたげにフッと笑みをこぼした

「遅れて申し訳ありません 皆さん」

機械の駆動音と共に見知らぬ声が教室の入口から聞こえてくる
生徒達の注目が教室の入り口に一斉に集まった
教室の扉に立っていたのは右手に持った9mm機関拳銃の銃口から硝煙を立ち昇らせるロボットだった
真っ黒なゴーグルを目元に着用し、身体はフルメタルで覆われている
口元だけは人間のそれであったことが、逆に彼のメタルボディーぶりを余計に強調させた

「今日から我が校に赴任されてこられた新しい先生を紹介する
 ロボキョーシ先生だ」


     


     

「どうも皆さん 初めまして」

メタルボディのロボキョーシが駆動音を立てながら、
教室の中へと入っていった 9mm機関銃を持つ姿に驚いたのか
それとも彼の姿に驚いたのか 先ほどまで騒いでいた生徒達は
黙って彼を見つめたまま、彼の歩く道を譲っていく
彼は床に落ちている精液や粉を踏み付けながら
そのまま丸山と谷川たちの元へと一歩一歩 歩いていった

「そこの茶髪の君、名前は?」

ロボキョーシは丸山の方を向きながら、
彼の名前を尋ねた

「丸山だ!このアホ!」

「では、丸山だこのアホ君 今すぐ銃を捨てたまえ」

早速、ロボキョーシの丸山に対する切り返しの上手さに
教室中が大爆笑に包まれた
このクラスでは筋金入りのワルで通っている彼にとって
自分の言った悪口をあっさりと利用されたことは屈辱以外の何物でも無い
丸山は顔を真っ赤にしてブチ切れながら叫んだ

「丸山義一だ!」

 
「では、丸山義一君
 君の行為は教師への暴行だ。
 模範学生法3条第一項に違反している
 直ぐに謝罪をし、もう二度としないと誓え」

丸山の罪状を語るロボキョーシの冷静さに苛立ち、
丸山は唾をロボキョーシの顔面に吐きかけた

「……教師に対し唾を吐きかける行為は
 模範学生法3条第二項に違反している
 直ぐに謝罪をし、もう二度としないと誓え」

唾を吐きかけられたことにも一切動じることなく、
ただ淡々と言うロボキョーシに苛立った丸山は再び大声をあげながら
教師に対する罵倒を浴びせた

「教師なんてクソ喰らえだ!」

丸山がこの言葉を吐き終えてから1~2秒経った時だった
ロボキョーシの真っ黒なゴーグルに2つの不気味な赤い点が
映し出された まるでそれは目のように、丸山を睨んでいた

「……これより教育指導を行う」

次の瞬間、ロボキョーシは丸山の胸倉を掴みあげた

「……え?!おい!何すんだよ!?コラ!」

丸山は胸倉を振りほどこうと、ロボキョーシの手を掴んだ
岩のように硬いその手に触れた瞬間、彼は振りほどくことなど不可能だと
本能的に察知した 

「くッ……離せってんだ!」

丸山はべレッタを突きつけ、ロボキョーシの頭部目掛けて5発近く発砲した
銃弾はただ火花をあげて弾け飛ぶ……
だが、ロボキョーシのメタルボディにはかすり傷など一つも
ついてはいなかった

「くそぉぉおおッ!! はっ……離せ!!離せええぇぇえッ!!」

飛び散る火花をまといながら、ロボキョーシは
そのまま丸山を防弾ガラスへと投げ飛ばした

「うぉああぁぁぁあああああぁぁああああ!!!」

丸山が投げ飛ばされたガラスは粉々に砕け散り、
そのまま床へと落ちて散らばっていった

「きゃあぁあああっ!!」
「おわぁあっ!!」

そのガラスの近くにいた生徒達が驚き、後ずさりする
もう彼らの顔に先ほど好き放題やりまくっていた時の
驕り高ぶった表情は微塵も無かった

ロボキョーシはガラスの山に倒れこんだ丸山の襟首を
もう一度掴み、丸山を引きずり起こした

「直ぐに謝罪をし、二度としないと誓え」

だが、引きずり起こされた丸山の顔はガラスの破片で血塗れとなっており、
完全に失神していた  ロボキョーシは彼の胸倉から手を離した
人形のように気を失った丸山は床へと力なく倒れた

「後で職員室に来るように」

次の瞬間、ロボキョーシの口元目掛けて銃弾がとんできた
口元だけは装甲で覆われていないためか、そこを狙われたのだ

「谷川君、やめなさい!!」

ソニア先生が谷川の手を掴み、銃を下ろさせようとしたが
谷川はそれを払いのけて勝ち誇った

「へっへ~!口元だけは生身だろ?
 ざまあ見ろ このボケ!」

だが、次に谷川の目に入ってきたのは
銃弾を八重歯で銜えたロボキョーシの顔であった

「ぁ……あ……」

谷川の顔から血の気が段々と引いていくのが目に見て分かった
彼は完全に戦意を喪失したのだ

「銃弾を歯で……!」

驚く生徒たち、ソニア先生を他所にロボキョーシは銃弾をゴミ箱へ向かってプッと飛ばした 銃弾は見事に
ゴミ箱へと入った

「みんなは真似しないように!」

ロボキョーシは右手の人差し指を前に翳しながら、
自分を見つめる皆に向かって自分のやった行為を真似しないようにと注意した
皆はただロボキョーシに向かってただ頷くしかなかった

「さてと」

そう言いながらロボキョーシは、谷川の方へと向き直り
一歩一歩 じわじわと威圧感むき出しで彼の元に近づいていく

「谷川君 教師に対し銃を向け、発砲することは
 教師への暴力にあたる 
 故に君は模範学生法3条第一項に違反している
 直ぐに謝罪をし、もう二度としないと誓え」

戦意を喪失した谷川であったが、彼にも意地があった

「舐めんじゃねぇー!!!」

彼 谷川は最後の勇気を絞り出し、
ロボキョーシの股間を思いっきり蹴り上げた
それこそ相手の金玉を天まで蹴り飛ばしてやるような気持ちで
だが その直後 

「どぐぎゃあぁぁあああああああああああああ!!」

彼の足甲の骨を砕かれたような痛みが彼に襲い掛かった
コカインで高揚感に浸り、赤くなっていた彼の顔から
どんどん血の気が引いていく……

彼 谷川は完全に見誤った 
一見するとロボキョーシの股間部分はタイツ状の繊維で
覆われているように見える 故に柔らかそうに見えるのは
至極当然のことである 
その読みは間違ってはいなかった 
だが、間違っていたのはその繊維の下にあったモノの硬さを
彼が予想してなかったことだ

「チタン製の骨格を特殊繊維で覆っている」

潜水艦や航空機等に使用されるチタン金属……
そんなものをたかが人間のカルシウム如きで砕ける筈もなかった

「あぐぅぅぅぅ……!!!」

足をおさえてうずくまる谷川は
まるでネズミのように小さく見えた

「皆 席につきたまえ」

ロボキョーシはその赤い目でクラスの皆を見つめた
目の前の丸山と谷川のみじめな姿を見せられたのだ……
彼らが彼の言葉通りに従わないわけがなかった

まるで先ほどの無秩序が嘘のように教室は静まり返っていた

ロボキョーシは駆動音と共に教壇へと歩を進めながらも、
右腕から内蔵されていた指示棒型のペンタブを取り出すと
ボードに自身の名前を書いていった
その字はロボットと思えないほどの達筆で、洗練された美しさを持っていた
ロボキョーシは皆の方を見つめ、口を開いた

「今日からこの学校で
 皆さんに生活指導を教えることになりました
 ロボキョーシです どうかよろしくお願いします」

彼は頭を下げ、ロボットらしからぬほどの
洗練されたお辞儀をしたのであった

ソニア先生はその光景を前にただ呆然と立ち尽くしていたのだった……



     

「それでは授業中、失礼しました」

そう言うと、八重歯校長とロボキョーシは教室の外へと出て行ったのだった


チャイムが鳴り、ソニア先生が教室から出て行く
彼女の目には見慣れた廊下だった
同じ空間として作られた筈なのに、そこは防弾ガラスで
教師専用通路と生徒専用通路とに仕切られている

今日の授業は全て終わり、今日も残って授業計画を立てようと
職員室へと向かうために、視線を移した時であった

「お待ちしておりました」

彼女が視線の先に居たのはロボキョーシであった
彼は彼女とはガラスを隔てた生徒専用通路の方に立っていた

「先ほどはお見苦しいところをお見せしました」

ソニア先生は深々と頭を下げ、ロボキョーシに最敬礼をした
上体を倒し、上体を戻す動作は大変 静かで
美しく日本人らしいお辞儀であった

「申し遅れました 私は宇都宮ソニアです。
 英語と国語と社会と地理と日本史と世界史を教えています」

自己紹介を終えて、会釈をした彼女を見つめながら
ロボキョーシは駆動音と共に無機質に話し出した

「宇都宮先生 先ほどは授業中とはいえ失礼しました」

ロボキョーシはソニア先生に負けない最敬礼をすると、
そのままゴーグル越しに彼女を見つめた

両者は再び職員室へと向けて歩き出した

「いいえ、危ないところを助けていただいて
 ありがとうございます・・・・・・
 ですが、ロボキョーシ先生」

「はい」

通常ならば何の話をされるのかと気になり、
上がり気味になる筈の語尾が全く何の変化も見せず、
ロボットらしく何の高低も無く単調に響いた

「少しやりすぎじゃありません?
 銃とか取り出したり、投げ飛ばしたり・・・・・・」

ソニア先生のロボキョーシを見つめる表情は
生徒に対して暴力を振るったロボキョーシを責めているかのようであった
だが、ロボキョーシはその表情に対し何の変化も見せず無機質に答えた

「私は模範学生法を遵守すること、生徒の暴力から教師の安全を守るよう
 プログラミングされています」

「・・・・・・そうですか」

自分の考えをルールで返されてしまうのはある意味、辛いことだ
ソニア先生の顔は自分の言葉を無機質に返されたことにがっかり
したかのような表情になっていた 


ふと、ロボキョーシのゴーグルがジジーっと駆動音という音を発した
ソニア先生がそれと同時に視線をロボキョーシと同じ場所に向ける

「ぁあっ・・・・・・ぁっ! んあっ・・・・・・ぁっぁ…ぁんっ…!」

「はぁっ・・はぁっ・・はぁっ・・はぁっ!」

そこにはセックスに興じるカップルの姿があった
女子生徒は教室から引っ張り出してきた机の上にうつ伏せに押さえつけられ、
後ろから男子生徒に両腕を掴まれながら、何度も何度も犯されていた


「あぁっ・・・・・・あぁっ・・・・・・んあぁっ!!」

バックで激しく膣をえぐられながら、彼女は妖艶な甘い声で獣のように喘いでいた
女子生徒の上着のボタンが全て外され、たわわに実った乳房が
男子生徒によって揉みしだかれていた
スカートもパンツも床に投げ捨て、お尻を突き出した彼女に向かって
男子生徒は何度も何度も己のペニスを突き刺している

まさにケダモノの交尾としか言えぬほどの濃厚なセックスであった

「あぁ~~ もう・・まただわ・・・・!!」

その様子にもはや顔を真っ赤にする様子も無く、
うんざりとするだけのソニア先生の顔が
こういう行為が日常的に行われていることを証明していた

「こら!下条君!古泉さん!
 ちゃんとコンドームつけなさい!」

自身のペニスを古泉という女子生徒の膣に何度も突き刺しながらも
下条はソニア先生の顔を見ずに返事した

「いっ……いいじゃん!先生ぇっ!
 生の方が…気持ち良いんだからさ!」

「ぁっぁ…ぁんっ…!」

快楽に溺れ、汗を滝のように流す古泉を
更なる快楽へと追い詰めるため、腰を振り続ける
下条の姿には愛などは感じられなかった
あるのは、ただ己の性欲を満たすための"暴力"しかなかった

「ほぉらッ! どんどん突いてやるよッ!
 君がブッ壊れるまでッ!!」

「ぁぅ……!! やっ…やめっ!!あぁんっ!!」

古泉は押し寄せる快楽にただ無抵抗に喘いでいた
もう彼女の身体は限界に達しているであろう
だが、下条はそんなことはお構い無しにただひたすら
己の性欲をぶつけていた

「うッ!! で・・・・・・出るっ!!」

下条が昇天を迎えようとしたその時だった

「おわっ!!」

ロボキョーシは下条の背中を掴みあげ、
直ぐに後ろの傘立てへと放り投げた

「おわぁあぁあっ!!」

古泉の膣から引き抜かれた下条のペニスから、
白く濁った液体が膣と、ペニスの両方からボタボタとあふれ出した
しかし、それに構う暇も無く下条はそのまま傘立てへと倒れこんだ
下条の重みに耐え切れず骨がバキバキとへし折れ、
傘立てはもはや完全に破損した

「が……はぁっ……」

壊れた傘立ての棒に背中を打ちつけ、痛みのあまり
下条は悶絶していた

「しっ・・・・・・下条くん!?」

下条を心配するソニア先生を他所に
ロボキョーシがペニスを丸出しにしたまま倒れる下条を見つめながら罪状をつげた

「下条君 君は不健全性危険行為を犯している
 君の行為は模範学生法5条第1項に違反している
 君を2ヶ月の停学処分に処する」

下条はロボキョーシを痛みで悶絶しながらも鋭く睨んでいた
だが、ロボキョーシは彼のそんな反応など気にも留めず、
古泉の方へと向き直った

「ぁ……はっ…」

先ほどまでの快楽の嵐が過ぎ去った後も、力無く寝そべる古泉の恥部からは
真っ白な精液と彼女自身の愛液が恥知らずに混ざり合い、ボタボタと落ちていた
そんな惨め過ぎる姿を晒す古泉の髪の毛をロボキョーシは鷲づかみにした

「あぁっ!!痛い!!痛い!!」

「ロボ先生!!」


「古泉君 君は不健全性危険行為を犯している
 君の行為は模範学生法5条第1項に違反している
 君を2ヶ月の停学処分に処する」

古泉は丸出しにした乳房を揺らせ、
ビショビショに濡れた女性器を晒しながらも、
ロボキョーシにひきずられるように廊下を歩いていった

「ぃっ・・・・・・ぃたいっ!やめて!」

この古泉は親にも髪の毛を引っ張られたことはない
初めて本気で髪の毛を引っ張られる痛さのあまり、
古泉は泣きじゃくった

その声に動じることなく、ロボキョーシは駆動音と共に
淡々と彼女の置かれている状況を説明していった

「不妊具の着用無しによる性行為は
 妊娠の危険性がある……
 ただちに君を産婦人科へ緊急搬送する」

「ぁっ!おねがい!いやぁっ!」

「ロ・…ロボ先生っ!ロボ先生!!」

髪を引っ張り、引きずるという行為は
泣き叫ぶ女子生徒への処置としては残虐な仕打ちである
そんな仕打ちを無機質に体罰として執行するロボキョーシの姿に
ソニア先生はただ圧倒されるしかなかった

ロボキョーシと古泉の背中をソニア先生はただ見送ることしか出来なかったのだった



       

表紙

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