Neetel Inside ニートノベル
表紙

海老名物語
セーラたんとの出逢い

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とあるソーシャルネットワーキングサイトにて。
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まりも : 「誠氏ね誠氏ね誠氏ねー♪」
まりも : 「というわけで、誠氏ねは間接的に自虐ネタとやりますたw(;゚д゚)....」

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今日も誰も反応なしか・・・
海老名はインターネットエクスプローラーを閉じ、パソコンの電源を切った。
そして、布団にもぐりこみ電気を消すべくリモコンのボタンを押した。
電気が消えてしばらくして深い眠りについた。

そう、すべてはここから始まったのである。

******1・セーラたんとの出会い*******

「ん・・・ここはどこだ」
真っ暗で何も見えない。
周りは真夜中の山奥のような闇に包まれている。そのなかを歩いていると
しばらくして、何か光が見えた。
不思議な感覚だった。小学校の天気の良い昼間に理科室の暗幕を全て閉めきって
ミツバチの生態のビデオを見ている時のワクワク感に似ていた。
「あれは・・・」
ピンク髪の釘宮ボイスの聞こえてきそうなキャラクターが立っているのが見えた瞬間
真っ暗だった視界がヤマダ電気のように明るくなった。
そこにいたのは、そう、まさに普段から大切にしている人形、いや、嫁のセーラたんだった。
しかし、目の前に立っているのは人形ではなく明らかに人だった。
「セーラ・・・たん?」
僕は恐る恐る人影へと近づいていく。
先ほど開けた視界と同じ光が、こんどはセーラたんから発せられた
輝きにより真っ白になっている。いまこの世界にいるのは僕とセーラたんだけのような感覚だ。
セーラたんの口が動いている。何か言っているようだけど遠くて聞こえない。
もう少し近づいてみれば何を言っているかわかるはず…
「$&%&□▲;・x・」
わからなかった。
ビックリマンシールを抜いたあとのビックリマンチョコを抱えているような気分になった。

そこで目が覚める。

「夢にしてはリアルだったなぁ。誠氏ね」
部屋を見回す。なんてことないゴミ屋敷だ。同人誌で溢れてる。
壁は嫁のポスターで埋め尽くされ、机にはエロゲが積まれている。
「今日も学校か・・・またつまらない一週間の始まりだ・・・」
今日は月曜日であり、スーツを着た大人たちがすでに窓の外を通りすぎているのが見える。
僕の部屋は一戸建ての二階にある。服を着替える為に引き出しを
あけると、そこにはチェックのシャツとチノパンが何本か入っていた。
「これもそろそろだめかなぁ・・・3箇所も穴開いてるし。あと1箇所穴開いたら捨てよう。」
そう心に決め、いつものようにチェックのシャツを着て、第一ボタンをしめた。
部屋からでようと、扉を開けるとセーラたんが立っていた。ゼロ距離で。
ホラー映画における突然音量を大きくしてビックリさせてくるシーンが脳裏にフラッシュバックする。
これが映画館なら確実に座っている椅子を揺らしていただろう。
「え?え?なんで?え?」
混乱しながらも疑問はちゃんと口にする。
セーラたんは人差し指を立てて
「禁則事項です。」
どっかで聞いた台詞を口にした。
夢の中では日本語はおろか、まともな言葉さえ喋っていなかった気がするが…
というかなぜそっちなんだ…
無言でお茶を飲ませてくれる便利なほうじゃないのか…
まぁでも、考えてみれば魔法使いまっしぐらだった自分の家にセーラたんがいるんだ。
僕にはセーラたんがあるんだ。こんなに嬉しいことはない。
それにしても、これが昨日夢で見たセーラたんと同一なのだとしたら
いつのまに日本語を話せるようになったのだろうか。
右手に取り付いた宇宙人みたいに本を読んで覚えたのだろうか。
だとしたら目の前のセーラたんは官能小説音読機並に危険な感じがするがどうしたものか。
もしかしたら床に大漁に転がっている同人誌の展開に・・・それなんてエロゲ?
フットーしそうな頭であれこれ考えていると
「あなたが海老名さんですね♪あなたが私を呼んでくれたんですね♪」
うん、意味がわからない。確かに夢には出てきたけど呼んだ覚えは一切ない。

     

ここで、僕の自己紹介を少ししておこう。
僕はどこにでもいる理系大学3年生だ。
趣味はアニメ鑑賞、エロゲ、グッズ収集とヲタ道まっしぐらである。電車にも興味はあったが、
最近はすこし遠のいている。
僕がその中でも最近とりわけ好きなのがエロゲの「ダンロップ」だ。
そう、このゲームに登場するメインヒロインがセーラたんだ。
「海老名!起きたならさっさとご飯食べなよ!もうすぐBOSSの沸き時間なんだから!」
母親が呼んでる声がする。専業主婦という名のニートである。
少し前にネットで中学生だと自己紹介しているの見たことがある。
だがそんなことよりも今はご飯が大事だ。
「お母さん、いまセーラたんが部屋にいたんだよ」
「昨日は長門ちゃんで今日はセーラたん、明日はなにかしらねー」
そんな雑談をしながらご飯を食べ終え一度部屋に戻る。
「ところで、あの、その、せせえせセーラたんは、なななん、なんでここ、ここに?」
最高にクールな笑顔で美少女と会話する僕。普段からリア充で培ったコミュ力が発揮されたに違いない
「呼ばれたからってさっき言いましたよね~?」
「あ、はい、そそそそうですね、あああ、あの、それで、あの」
「先に言っておくと、そこに転がってる同人誌みたいな展開はありませんよ~」
そんな!エロゲから出て来て美味しい展開が無いなんて!
裏切られたような気分に浸りながらももうすこし話を聞く
「あ、あ、あのじゃぁ、じゃあ妄想を現実にしたり、
突然左腕がうずいたりそういうアレがあったり・・・?」
「そういうのも無いですし、私が力を譲渡とかもナイですねー。
キスされても使い魔になったりしないでしょうね。」
そんな!エロゲから出て来て俺TUEEE展開が無いなんて!
裏切られたような気分に浸りながらも、もう少し話を…
「海老名!もう家でる時間でしょ!40秒で支度しなぁ!」
聞こうとしたところで家を出る時間になってしまったようだ。
仕方ない、玄関へ向かおうとすると当然という顔でセーラたんがついてくる。
サラっと流したけど母親にセーラたんは見えていないみたいだった。
見えていたところで、また新しい人形を買ったとしか思われて無いだろうけど問題ない。
いつものように海老名駅へ向かう

家から海老名駅までは、バスで一本である。最初のバス停から駅までずっと乗っているので、
椅子に座り睡眠をとりつつ駅にいけるのだ。これが毎朝の日課でもある。
バスに乗り込みいつもの後ろから2番目の右の座席に座る。当然のようにセーラたんも隣にすわる。
そういえばセーラたんはお金を払っていなかったところを見ると、やはり周りには見えていないらしい。
セーラたんに話し掛けてみる。
いない歴=年齢の僕でも平然に話しかけることくらいはできる。
「ど、どどどこまでついてくるんですはぁ?」
声がひっくり返ってしまった。リア充としていままで生活してきたはずの僕の悩みの一つでもある。
「私のこと呼んだのは海老名さんなんですからね///どこにでもついていきますよ♪」
やばい、かわいい。ていうか、なぜ照れてるんだ。
僕は人の心を読むのも得意であるが、わからなかった。

しばらくすると車内にだいぶ人があふれてきた。停留所で待っている人がバスに乗りこむのも
ままらないほどだ。しかし周りから見えていないはずのセーラたんの席には誰も座ろうとしない。
もっとも座ろうとしたら僕が打ち殺すが。神聖なセーラたんに触れようもの
なら僕がくぁwせdrftgyふじこlp;@・・・おっと取り乱してしまった。
「・・・絶対に座りたくない・・・・気持ちわ・・・」
後ろの女子高生が何か言っているが、聞き取ることが出来なかった。

そんなこんなで持ち前のリア充オーラでセーラたんの席を死守しつつ学校へ着いた

     


セーラたんが現れたんだ、本人はああ言っていたけど何か能力に目覚めているかもしれない
僕は人通りの無い通路へ進んだ。ここは以前カラスの巣ができて閉鎖されていた通路で人の気配はない。
「かめはめ波!」
ぶはっ!
手からは何も吹き出して来なかったが、普通に後ろにいた学生が吹き出していた。
「今のかっこう良いですね!もう1回お願いします!」
無邪気なセーラたんの声が耳に痛い。そう無邪気さとは時に残酷なものである。
あれは僕が小学校のころだった。
タニシは生命力が強から水ならどこでも生きられると聞いた僕と友人が
タニシをニスに入れて飼育しようとしたことがある。
結果、タニシは謎の液体を吐いて全滅してしまったのだった。

結局あと3回ほど残念な結果を迎えたところでやめた。
一度、路上格闘家の技に変えてみたがダメだった。
僕より強い相手に会いに行く旅は始まらないようだ。
あとに残ったのは決定的なチャンスにシュートを外したサッカー選手ぐらい残念な大学生の姿だった。
居たたまれなくなったので、最初の講義のある教室へ移動しようとすると
スノーボード日本代表のような雰囲気の学生とすれ違った。
コイツとは同じ学校というだけで特に仲が良いわけでは無い。
「うお、海老名か、あいかわらず気持ち悪いな」
だが、リア充にはリア充の人間が寄ってくるもの。
しかし、リア充の中にも「いじられキャラ」はつきもので、僕がまさにそうだった。
小学校の下校の時にランドセル同時10個持ちの記録に毎日挑んでいた時から変わっていない。
ドッジボールが強い転校生が現れてから11個持ちのタイトルホルダー、もといランドセルホルダーになった。

そんな過去の栄光を思い出しながら最初の講義がある15号館へと向かう。
途中で、明らかに周りから浮いている挙動不審な学生に出くわした。
この学校での僕の数少ない友人の吉田だった。
僕とほぼ同等なスペックであるが、詳しいところはいらなさそうなので
またこんど。
声をかけて吉田と移動することにする。
もちろん、僕にしか見えないがセーラたんも一緒だ。
「吉田氏、今日の課題のテキストを見せてくだしあ」
「あ、はい!わかりましたです海老名氏!」
「15号館はやはりいつ来ても落ち着きますな、吉田氏」
「だにょ!」
15号館は大学内では隔離棟とも呼ばれていて、超リア充が集められたとしか思えない人選だ。
どうでもいい会話をしながら目的の15号館の前に着いた。
「ささ、早くしないと遅れてしまいますよ吉田氏」
そういいながら15号館の入り口に入った瞬間、吉田の隣に見慣れない女の子が出現した。
「え・・・・?」
どう見ても小学生にしか見えない少女だった。
※18才以上です という親切な噴出しが見えるのは気のせいではないようだ。
「セセセセーラたん、あの、よ、よ、よ」
「吉田氏の横に幼女が見えるって言いたんですね。わかります。
アレが吉田氏の嫁みたいですね~。アグネスが出てこなけりゃ良いですけど。」
つい数時間前に現れた割には妙な人名を知ってるな…
というか、吉田の嫁って?吉田がロリコンなのは知っていたけど…
そういえば、さっき久々にメールが来たので見てみたら
無料でロ●コンと電話♪というタイトルの迷惑メールだった。誰がするか。
「え?え?く、くわしく」
「#%’%’(~~#”」
「何・・・だと!?」
思わず驚いて大きな声がでしまった。
教室にいる人すべての視線が僕に向くが、すぐに教授が現れて元に戻る。
もう一度吉田を見ると幼女がいなくなっていた。
授業は滞りなく進み、気づけば昼休みになっていた。

     

講義の方付けをしていると隣に座っていた吉田が先に方付けを済まし話しかけてきた。
「海老名氏!今日もshop99で買ってきたおにぎりですか!」
「いえ、今日は買って来てないのですよ」
「そうでしたか!いつもは乞食のようにshop99なのに今日はなにか良いことあったのですか!?」
まじでうるさい。少し放っておこう。
そういえば講義が始まってからセーラたんの姿を見てないことに今気づいた。
どこかで問題を起こしていなければいいが。まあ、姿は見えないんだけど。
一人で騒ぐ吉田を適当にあしらいつつ、学食へ行くことにした。

学食につくと、いつも通りの安っぽいショーウィンドウに日替わりランチが入っていた。
今日のランチは親子バーグ。学食ならではの安っぽいハンバーグの上にお弁当用ミニハンバーグが乗っているという
腹をすかせた学生をあしらうために存在するかのようなランチだ。
だが、僕はそれを迷わず選択した。
ホコリを被った券売機に、ゲーセンで培った連コインで小銭を入れる。
食券を買う速さなら学園内でもトップクラスだろう。一方、吉田は電子マネーを使っていた。許さん。
混み合う食堂でなんとか席を確保して、昼ごはんを片付け始める僕と吉田。
吉田は懐からプリキュアふりかけを出してご飯にかけていた。
「そういえば、海老名氏!幼女画像フォルダが100GBを超えたでござる!
特に記念すべき100GB目の幼女画像の黒髪ツンデレ巫女服でも下はスクール水着は壁紙にしてしまいましたよ!」
嬉々として幼女を連呼する吉田。一緒にいる僕にも注がれる周りの視線が妙に痛い。
本気で吉田にはゆうメンタルクリニックへの通院を勧めたくなったが、今はこらえる。
黒髪ツンデレ巫女服でも下は(以下略)の幼女はさっき僕が見た幼女の特徴に一致していたからだ。
「デケデケデケデケッ・・・デンッ!おふっ!キュアブロッサム!
ところで海老名氏はご存知でしたか、今回プリキュアの作画は――」
どうやら、ふりかけのおまけのプリキュアキラキラシールは大当たりだったようだ。
吉田の口が初代プリキュアのOPテーマのようにアップテンポになる。
「――プリキュア!オープン マイ ハート!大地に咲く一輪の花 キュアブロッサム!」
吉田は喚起の雄たけびを上げていた。キモい、キモ過ぎる・・・・。
さすがの僕でも電車の中でエロゲの話するのが限界だ。

それにしても朝に吉田の隣にいた幼女と100GB記念の幼女の関係が少し気になる。
セーラたんもダンロップで僕が一番お気に入りのヒロインだったこともあるし。
だがセーラたんルートは100回以上挑戦して未だに攻略出来ていない。
「そういえば前のプリキュアのあるシーンの中に隠してミクミクニシテヤンヨって書いてあったんですよ!知っていましたか海老名氏!」
吉田はまだ何か言っているが、あまり興味は無いので放っておこう。キュアブロッサムは僕の嫁候補だが。
ふと目を奥のほうへやってみると、長いピンク色の髪の毛が風に靡いているのが見えた。
セーラたんが食堂の端のほうに座っていた。
む・・・。誰かと一緒に座っている。
誰もセーラたんのことは見えないはずなのに。
まさか、実はセーラたんは裏世界の人間で、それで表の世界と裏の世界とのバランスが崩れて
裏の世界の住人がこちらへと流れ込んできて・・・!
そうしたらセーラたんと僕に隠された能力が開花するのか。
やはり僕は勇者になる運命だったんだな!
そんなことを考えながら見ていると、前に座っていたのは先程の黒髪ツンデレ巫女服幼女だった。
セーラたんと巫女服幼女。よく見ると会話をしているようだ。
耳を傾けると会話の断片が聞こえてくる。はたから見たら盗み聞きのようだが実はちがう。
ちゃんと僕は心の中で二人の会話に相槌を打っている。
口に出さずとも第三者と会話する技術、エアー会話だ。リア充の僕には必須のスキルだ。
「海老名氏には、あなたのことも見・・・・やっぱり――」
食堂のざわざわしている中で特定の会話を聞き取るのは難しく全然会話を聞き取れない
「やっぱり、海老名氏とアニメの話をするとついつい声が大きくなってしまいますな!!!」
「おぅふッ吉田氏、静かに、静かに!」
吉田のせいで後の部分をまるまる聞きとることができなかった。

     

昼休みも終わり、午後の授業が始まる。
と言っても出席さえしていれば単位がもらえるような授業だ。
一番前の席で僕と吉田はいつものようにノートパソコンでエロゲに興じていた。

吉田はどうやら先週とは違うゲームみたいだ。見慣れないゲームだ。
「吉田氏、新しいゲームはじめたのですか?」
「はい海老名氏!実はこれ、おととい発売したばかりのエアウォークってゲームなのですよ!」
ころころ嫁を変えやがって。
僕はいつものようにダンロップを起動した。
「お!!そういう海老名氏はまたセーラたん狙いですね!!・・・まぁがんばってくださいです。ふひひ」
何か今少し違和感を感じたのは気のせいだろう。
そんな話をしているうちに講義が終わった。
僕らは今日の最後の講義を受けるべく教室を移動することにした。
さっきまでいなかったセーラたん、それに今回は黒髪ツンデレ巫女服幼女も付いてきている。
幼女のほうは吉田について来ているみたいだ。
だが吉田には見えているのか・・・?いくら僕のスペックでも少し聞きにくい。
そんなことを考えながら歩いていると吉田が少し後ろのほうで止まっていた。
「どうしたのですか吉田氏?急いでください、講義に遅れてしまいますよ!」
「き、きいてください海老名氏!!今目の前に一瞬だけ100GB記念の画像の黒髪ツンデレ巫女服幼女が見えた気がしましたです!!
 これは僕の日ごろの行いの良さのおかげですかね海老名氏!!」

       

表紙

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Neetsha