Neetel Inside ニートノベル
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Another World
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 人生ってのは、つまらない。
 学校の窓から外を眺めながら、高校二年生、青木 武文(あおき たけふみ)はそう思った。ちなみに今は放課後。武文は教室に残って、勉強していた。周りに人は居ない。一人で、黙々と勉強している。
 武文は、スポーツ万能で、頭も顔も良いため、皆は彼を人気者として出なく、羨望の眼差しで見ていた。だが、全てに精通していたせいで、武文は皆と壁があるように感じた。実際、勉強においてもスポーツにおいても、彼の右に出るものは居ない。
武文は、寂しい、というよりもつまらない、と感じていた。
「この世界が変わればなぁ・・・。」
 武文は、そう呟いた。
 ふと何気なく外を見やる。部活生がまばらに練習している。サッカー、野球、ソフトボール、ラグビー・・・。集団で、決められたメニューを無我夢中にこなしている。
 その光景に、一つため息をついて、鞄に荷物を詰め込み、教室を後にした。

 帰り道に通っている河川敷。川で、子供が遊んでいる。歩いている先には、自転車に乗った人と、学生。
「昔は、ああやって遊んでいたな・・・。」
 小学生の頃は、何でも出来て人気者だった。中学生から、友達は妬みからか、尊敬からか、徐々に少なくなっていった。その頃から、つまらない、と思うようになっていた。
 側から、自転車が通り過ぎていった。武文は、その自転車を何気なく眼で追っていた。
 その瞬間だった。武文は、周りの様子が変わったように感じた。まるで、違う世界に紛れ込んだような・・・。川を見る。そこには、さっきまでいたはずの子供たちがいない。過ぎていった自転車も、ましてや目の前にいたはずの学生でさえも。
「どういうことだ・・・?」
 武文は、せわしく辺りを見渡す。明らかに何かがおかしい。額から冷たい汗が流れ落ちる。
 もう一度、川に目を向けた瞬間だった。そこには異様な光景が広がっていた。
 見たことの無い服を着ている、赤くて長い髪の女性が、身の丈ほどもある巨大な剣を振りかざしている。その目線の先には、犬やらライオンやら分からない巨大な生物。女性よりも大きい。
「はぁぁ・・・!!」
 女性が気合を込めると、女性の持つ剣が炎を纏う。それを見て、怪物は猛スピードで襲い掛かる。女性はすばやい身のこなしでそれをかわし、炎を纏った剣で、怪物を切り裂いた。怪物はうめき声をあげ、女性から距離を置く。あんな剣で斬られたというのに、まだ戦う気でいる。その怪物の後ろから、突然、金髪の男性が怪物の後ろから音も無く現れ、手に持ったダガーで首を切り落とした。
「OK、もう大丈夫だな。」
 男性が、ダガーを腰にしまい、そういった。女性は安堵の息をつく。
「よかった~。助かったよ、ジャック。」
「ま、手柄はオレがもらったけどな。」
 そう言って男性は笑った。
 武文はその様子を見て、逃げようと方向を変えた瞬間、足を止めた。
 武文の目線の先には、先程二人が戦っていた怪物と同じもの。じっと、武文を見据えていた。
「う、うわぁぁぁぁ!!?」
 武文は振り返って一目散に走った。怪物が追いかけてくる。怪物のほうが圧倒的に早い。怪物が大きな爪を振りかざし、武文めがけて振り下ろす。
「うわぁ!!」
 武文は転がって避けた。その時、武文はあの二人がこっちに走ってくるのを見た。
「間に合えぇ~!!」
 女性が炎を放つ。同時に、怪物の爪が振り下ろされた。武文はどうすることも出来ない。全てがスローモーションに見えた。怪物の爪が武文を切り裂き、その後、怪物は炎に包まれた。大量に出血しながら、武文は倒れた。辺りは真っ赤に染まっていた。
「く・・・!間に合わなかったか!」
「早く、香住さんの所へ連れて行かないと・・・。」
「・・・」
 武文の意識は、ここで途絶えて、何も聞こえなくなった。

     

「どこだ、ここは・・・?」
 目が覚めた武文は、見知らぬところに居た。見渡す限り、真っ暗。自分の足元だけが妙に青く照らされている。深海にいるような感覚を覚えた。
「よぉ、哀れな人間。」
 暗闇の中から、地面から響くような声がした。
「誰だ!?」
「なぁに、今は知らねぇでいいんだ。いずれ分かる。」
「な、何を言ってるんだ・・・?」
 武文は、声がするほうを向く。暗くてよく見えないが、そこには椅子に足を組んで座っている誰かが居た。
 『それ』は、白い歯を浮かべて、言った。
「お前、見たんだな?」
 武文は、パニックになっていて、『それ』の言っている意味が分からなかった。
「何が言いたい・・・?」
「しらを切らないでもいいぜ。俺には全部わかってる。『Another World』のものを見ちまったんだろ?」
「あ、『Another World』??」
 武文はさらにパニックになっていた。自分の置かれている状況、『それ』の言っていること、全てが分からなかった。
 その武文の様子を見た『それ』は、またニンマリと笑って、続けた。
「お前は、一度は殺された。お前を殺したのは、『キメラ』という生物だ。」
「キメラ・・・合成獣?」
「ニュアンスは近いが、違う。キメラは造られた生物だ。錬金術に近い作り方でな。」
 さらに武文の頭はこんがらがっていった。必死に頭の中を整理しようとしている。
 『それ』はさらに続けた。
「お前、キメラと戦ってた人間、知ってるだろ?」
 武文の頭の中に、赤髪の女性と、金髪の男性の姿が出てきた。
「そいつらは、キメラや『Killer』っていう集団と戦っている奴らだ。お前も、今日からそこで一緒に戦うことになるはずだ。」
「お前、何でそんなことが分かる!?」
 『それ』は、先程よりも大きく白い歯を見せ、言った。
「だいたい分かるさ。お前がこれからどういう道を行くかが、な。」
「道・・・?」
「ああ。『人生』っていう選択肢さ。お前も、知らず知らずのうちに選んできたんだよ。だが、ここからは一本道だ。曲がっても、結局同じ道に戻る。」
「もう、決まっていることなのか?」
 『それ』はもう一度笑って、
「ああ。」
 そう言い切った。
 武文は絶句した。その様子を見た『それ』は、立ち上がり、武文の下へ歩み寄ってきた。身長が176㎝ある武文より大きい。暗くて顔がよく見えないが、輪郭は細く、来ている服はあの二人のものと似ていた。
「今日から、お前も『能力』を得る。それは、お前に秘められたものではなく、俺がお前に与えるものだ。念じれば、お前に与える能力は大きく発展する。ま、限界はあるがな。」
 『それ』は、武文の胸を指差した。
「お前は、今日から『雷』の使い手となる。よく考えて使え。」
 『それ』は、そう言った後、今度は武文の額を指差した。その瞬間、武文は、自分の体に電気が走ったように感じた。そして、声を上げる間もなく、武文は倒れた。

     

 ・・・し。・・・もーし。
「もしもーし!!」
 何処かで聞いたような女性の声で、武文は目が覚めた。体を起こすと、そこはまた見慣れない場所。武文が体を起こしたことで、隣にいる赤髪の女性が安堵の息を漏らした。
「よかった~!そのまま死んじゃうかな、って思ったよ!」
 武文は辺りを見回す。事務所のような場所で、武文は布団の上に寝かされていた(死んでいた?)。
「ここがどこか分からないだろ?」
 金髪の男性がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「はい。」
 武文は当然だ、と思いながらそう答えた。すると、給湯室と書かれた部屋から、茶色のショートヘアーをしたキャリアウーマン風の女性が出てきた。
「あなたはここに運ばれたのよ。かなりの重傷を負ってね。」
「あの、ここは・・・?」
「ここは『南波探偵事務所』だよ。」
 背後から声がして、武文は驚いて振り返った。そこには、椅子に座ってコーヒーを飲んでいる男性がいた。眼鏡をかけていて、真面目そうな雰囲気を出して入る。
「僕はここの所長の南波 慶介(なんば けいすけ)といいます。君は、なんでそんな傷を負ったんだい?」
 その瞬間、武文の頭の中で、様々なことが思い出された。得体の知れない怪物、そいつに腹を切り裂かれて、『それ』との会話。
「・・・キメラ」
 武文がそう呟いた瞬間、場の雰囲気が一気に冷たくなった。武文の側に居る金髪の男性が、武文に聞いた。
「お前、どうしてその単語を知っている?」
「へ?」
 武文は、質問の意味が分からず、聞き返した。男性は、さっきよりも強い口調で、
「一般人であるはずのお前が、なぜキメラを知っている!?」
「え・・・あ、よく分からない人から教えてもらって・・・」
「一般人が、キメラのことを、『Another World』のものを知ってるはずが無い!」
 そう言って、男性は腰からダガーを抜き、武文の首に突きつけた。
「言え!お前は何者だ!」
「落ち着けジャック。」
 コーヒーを飲みながら、慶介はそう言った。そして、つかつかと武文に歩み寄ってくる。
「君は、どうやってキメラを見た?」
「家に帰る途中の川沿いの道で、何気なく川を見たら、見ました。」
 武文は正直にそう言った。慶介は少し考え込んで、言った。
「『Killer』、って知ってるかい?」
 武文は頷いた。それを見ると、慶介はグルグルと武文の周りを周り始めた。そして、しばらくすると、こういった。
「この子は、『Killer』ではない。ましてや、能力者でもない。だが、それなのにキメラを見た。うーん・・・」
 すると、また慶介は考え始めた。その間に、ショートカットの女性が前に出てきて、言った。
「所長が考えてる間に、自己紹介済ましときましょ。私、宝木 香住(たからぎ かすみ)。あなたは?」
「香住さん、敵かもしれないのに、なんでそんなこと・・・。」
「この子は『Killer』じゃないんでしょ?じゃあ敵じゃないわよ。」
「あたしは朝井 ひな(あさい ひな)!よろしくね!」
 男性と香住が話している間に、赤髪のひなが自己紹介した。男性は驚きの声をあげる。
「青木 武文です。」
 武文も自己紹介する。
「ほら、敵じゃないから自己紹介するんでしょ。あんたも早くやりなさい。」
「・・・江雲 ジャック 浩太(えぐも じゃっく こうた)」
 そういいながらも、まだジャックは怪しがっている。
 その時、事務所の扉が開いて、大柄な男性が入ってきた。山から下りてきたような格好をしている。笑顔だが、武文は雰囲気からすごい威圧感を感じていた。
「はぁ~!!やっぱり山の空気はうんめぇな~!!」
 本当に登っていた。香住はぺこりと頭を下げて、
「小川山さん、ちょうどいいところに来ましたね。」
「あぁん?・・・誰だ?こいつ。」
 小川山、と呼ばれた男は、武文を指差して言った。香住が紹介する。
「この子は、青木 武文君。なぜだかキメラを見ちゃったらしいんです。」
「あぁ~、そういう場合もあるなぁ。俺は小川山 三蔵(おがわやま さんぞう)。よろしくな!」
 そう言って、三蔵は右手を出した。間近で見ると、なんだか怖い。
「あ、青木です」
 武文は恐る恐る手を差し伸べた。武文が三蔵の手に触れた瞬間、三蔵は思い切り(武文はそう思った)手を握った。武文の手からミシミシと音が鳴る。
「いでででで!!!!」
「はっはっは!!脆弱だなぁ!最近の若者は!!なぁ、ジャック?」
「いや、三蔵さんに握られたら、誰だってリアクションは同じだよ。」
 三蔵は笑ったまま給湯室へ入っていった。

       

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Neetsha