Neetel Inside ニートノベル
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DieBention
三話「アップダウン、無限尻取り」

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 結局踏み切りが口を閉じることはなく、口から私を取り込み、そして肛門から私を排出した。いや、待てよ……これ踏み切りって両側が口でもあるし、肛門でもあるわけだし、え、まさか踏み切りってそういうのが趣味な変わった……。
 ……私は何を考えているのだろうか、踏み切りは生物じゃなく、建造物じゃないか。そもそも、あの可愛いうさぎだって自分の糞を食べるって言うし、そういうのが趣味な人がいたっていいじゃないか! まあでも、そういう方々とはお友達にはなりたくないけど。

 踏み切りを超えると先程とは売って代わっての坂が始まる。さっき歩いていた道はちょうど小さな谷の間と言ったところで、私の家に帰るためには今の踏み切りを渡ったあとすぐに始まる坂道を十メートルほど登り、やはり十メートル下りをしないといけない。
 何事もなかった、踏み切りで止まることもなく、このまま順調に行けば十分、いや五分たらずで家に帰れる。そう、もうちょっとで秘密の花園に行ける。腹に溜まりに溜まった彼を出せる。そんな気の緩みが仇となったのだろう、突然、お腹が唸りだした。
 そう、私は忘れいたのだ、長期の連続活動は腹の調子を悪化させると。どこかで一度立ち止まり、軽く体をリセットしないと次に進めないことを。
 幸いといえば幸いなのかもしれないが、山を登り切ったところにトイレがある。そこでしてしまうのもいいかもしれないが、その公衆トイレ、最高に最悪なのだ。
 なにが最悪か。
 一、匂いが半端ない。
 ボットン便所というわけではなく、れっきとした水洗便所なんだが、使用年が素晴らしく長いのか臭いとかそういうレベルじゃない。寄りつけないレベルだ。
 二、周りから丸見え。
 言葉のままです。
 しかもしかも、そのトイレ。場所が微妙なのだ。さっきも言ったとおり、山の上にあるのだ。私の家に向かうには確かに山の上からも行けるちゃいけるんだけど、正直遠回りだ。
 十メートルほど坂の登ったところにある横道に入り、下りになっているそこを通るのが一番の近道なのだ。
 そう、その通り、この私、どうやってもトイレに運のない人間らしい。諦めの境地に達した時、肛門も諦めのきょうちにたっし……。

 はっきりいってもうむり。だめ、でちゃう。
 そうだ、こういうときは、なにか別のことをかんがえればいいんだ。
 坂はあと五メートルほど残っている。しかもまだ上り坂。
 どうしよう、でも、さっきの歩道みたいに人通りが多いって訳じゃないし、しちゃってもいいよね。
 あ、あ、あ、あ……。
 だめ、だめだめだめだめだめだめだめ。お家に帰って、ゆっくりとトイレにこもってするって今決めたじゃない。
 そうだ、そう。尻取りをしよう。
 
 そういう経緯で、なぜか私は尻取りを頭の中で始めた。
 しりとり、りんご、ごりら、らっこ、こあら、らっぱ、ぱんだ、だらくしたからす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか。
 
 やりきった。坂の途中にある横道に入り、今度は坂を下る。

 からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか、からす、すいか。

 下りは上りと打って変わってすぐに終わった。正直歩けていることが奇跡なくらいだったが、さすが『からすいか』だ。私もびっくりするほど尻取りのルールが意味不明になっているが、たしかに今の私は尻取りが必要かもしれない。
 さあ、家までは本当にあと少しだ。
 さあ、歩むお、歩むよ!
 最後のこの一本道を!!

       

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