Neetel Inside 文芸新都
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 俺の朝は、軽快な目覚まし時計のベルによって始まる。
「うるさい」
 無残にも主人を起こそうと奮闘した目覚まし時計は今日も上から殴られる。
 そうして俺はまた眠りにつく。
「学校いくか」
 そう決心したのは二つ目の目覚ましがなったときだった。

「おはよう」
 決心してからの俺の行動は早い。
「おっす!!」
 現にこうしてしっかりと目の前の間抜けな友達と挨拶もできている。
「にしても今日もつまんねーな」
 さっき楽しそうに挨拶をしていたかと思うと、いきなりそんなことをぼやく栗原。
「そうだな」
 いつものことなので気にしない。
「なんかこう女の子とドン、とかないのかな」
 ありえないような戯言をぼやくのもいつものこと。
「そのイベントなら昨日あった」
 が、しかし俺は昨日のゲームを思い出してつぶやく。
「ふーん、で、それなんてエロゲ?」
「聞くな」
 長い間付き合っていると分かるものなのだろうか?くやしい。
「でも、よく考えたらこの学校共学のくせになんで女子が一人も教室に居ないんだよ」
 あっちの世界なら教室に女はいたがな。
「どこで俺は人生の選択肢を間違えたんだろう」
 栗原はそう言うと、頭を抱えて天を仰いでいる。かわいそうな子だ。

 今日も教室には黒板にぶつかって削られ、文字を書き出すチョークの音と、それをノートに写すために削られていく黒鉛の音だけが聞こえる。
 今日はついでにいびきも聞こえる。主に目の前の席から。
 俺は黙々と黒板に書いてあることをノートに写していく、なんて無い昨日と同じ作業。
 そんな作業を繰り返している間にも、やっぱり前の奴は机に突っ伏して眠っていらっしゃる。これでクラスで五本の指に入る成績だと言うのだから神様は才能の分け与え方を間違えている。
 ノートをとる作業を四回繰り返したところで昼休みがやってきた。
「ん?もう昼か、疲れた疲れた、めっしめっしめっしー♪」
 やっと目の前の栗原がおきたかと思うと、すぐにかばんから弁当を取り出して食べ始める。
 お前は本当にのんきだな。
「食べるか」
 それから友達とたわいのない会話をは繰り返して昼の授業に移る。
 またノートをとる作業に移る。
 一体こんなことを学んでなんになると言うのだろうか?
 そしてまた二回ほどそんな作業を繰り返すとやっと帰宅の時間だ。
「事故に気をつけて帰るように」
 担任の固定された挨拶。
「起立、礼」
 強制される礼。
「さよなら」
 馬鹿みたいにそれを実行する俺たち。
 反吐が出る。
「なぁこれから部活?」
 栗原がいかにも遊ぼうぜと言った風に話しかけてくる。
「そうだ」
 なんか朝からこいつとしか会話してないような気がする。
「真面目ですねー」
「はいはい」
 いつものように汗を流す、マネージャーはどっかのゲームみたいに、「はい先輩タオル使ってください」都会って頬を赤らめもしない。むしろもっと働いてくださいと言うところだ。
 部活も終わり一人で帰るなかにまたカップルを見た。先輩だった。
 みんな死ねばいいんだ。
「ただいま」
 風呂に入って飯を食う。習慣化した一種の儀式。
「スイッチオン」
 ヘッドホンをつける、部屋の明かりを落とす。
「はぁ、腐ってるな俺」
 いきなり光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 俺はヘッドホンをはずして携帯を見つめる。
「祭りね」
 メールの相手は朝から話しているあいつだった。
 内容はいたって簡単、「今日の祭り一緒にいかね?」
 そういえば今日は花火大会だったか。
「いかねーよ馬鹿」
 俺は俺の世界に浸りたいんだ。
 光る携帯、ディスプレイには新着メール一件の文字。
「はいはい、誰ですかっと」
 また同じやつから同じ内容。
「だからいかないって」
 数分してまた、けたたましく光る携帯。ディスプレイには新着メール十件の文字。
「行かないっていってるだろ」
 いらつきながら携帯の電源を切る。



「糞」
 なんで俺はこんなところに。
「そんな顔するなよ。祭りだぜ祭り」
 結局俺は来てしまった。なんて意志が弱いんだ。
 と言うかメールの次は自宅に電話。そしてお迎え。このコンボで行かないわけには行かないだろう。
「何で男と二人で行かなきゃならないんだ」
 俺の有意義な時間はこいつによって消された。
「何?」
「呼んでくれて最高に嬉しいと思っただけだよ」
「そうかそうかwww」
  皮肉を口にするが通用していない。
「で?なにするの?」
「は?」
「祭り来たんだから何か目的あったんだろ?」
 こいつのことだ、どうせ何かたくらんでいるに違いない。
「ばれた?」
 白い歯を覗かせて口を緩める。やっぱりな。
「実はな」
「ナンパでもしにきたか?」
 こいつといったらどうせこの程度だろう。
「そうそうナンパだよナ・ン・パって今日は違う」
「珍しい」
 俺の勘も鈍ったものだ。
「後でじっくりお前には俺をどういう風に見てたのか説明してもらおう」
 肩に手を置いてまま微笑まれるが、どういう風に見ていたかは聞かないほうがお前のためだと思うぞ。
「ワーワー、ドキドキー」
 反応しておかないと五月蝿そうなので適当に反応する。
「女子を呼んでの夏祭り回りなのでした」
 胸を張っていかにもどうだと言わんばかりに俺を見ているが別にすごいとは思わない。
「帰るわ俺」
 それどころか俺はうんざりだ。

       

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