Neetel Inside 文芸新都
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ご飯の前にショートショート
河童

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僕には楽しみがある
今夜もコンビニでビールを買い
八百屋できゅうり買い
川原に行くのだ…

河童

駅から少し歩くと、今では珍しい自然にあふれた川原につく
このあたりにはホタルもたくさんいるし
川にはいろいろな魚がいる
しかしいくら澄んでいても海ほどあるこの川の底はやはり見えない
だからこそ僕は楽しみにしているのだ

がやがや

毎日のことで慣れてはいるが
本当にうっとおしいやつらが来た
マスコミの連中だ
こないだのお盆休みに来ていた家族づれが河童を見たとかで騒いでいる
毎日いくら見張ったって川は波音を投げかけるだけなのに
まあ、このままここにいられては僕の楽しみが実行できないわけで
かるく歩みよっていきそしらぬ顔で僕は聞いた
「なんかあったんですか?」
マスコミがガザガザうめいた
「このあたりの方ですか?では河童が出たことはご存知ですよね?」
僕はさっき以上にそしらぬ顔を作って
「ああ聞いたことありますけど、あんまり信じてないですねえ
あの家族毎年ああ言って騒ぐんですよ。去年は幽霊だったかな?見たとかで」
マスコミからガセという言葉がポロポロ落ちるのを見つけた
もちろん少しは恥ずかしそうに、見つからないように拾い集めていた
そして僕は心の中で笑みをつくり
「来年また来て下さいよ。宇宙人がでるかもしれませんよ」
マスコミの一人はこんな時間にガセを土産にするのがまずいようでいろいろ聞いてきたが
まあすぐに帰ってしまった

さて、ここからがお楽しみ
僕は川の中にきゅうりを一本投げ上着を置き
三回手を叩いた
するとかわらしい子どもの河童が飛び出してきた
まだしゃべることはできないが
僕の買ってきたきゅうりをあさり、バリバリと食べ始めた
このために今日一日頑張ったんだ!
本当にすがすがしい気持ちだ
そしてコンビニのやわらかなビニル袋から缶ビールを一本とり出した
「今夜はキレイな月がでているね」
ぼくは自分の指の間にひろがる水かきを月を透かし、ビールを飲んだ

さあママのところに行こうか
僕はかわいい我が子を抱え、川に飛び込んだ

ぼくには楽しみがある








       

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