Neetel Inside 文芸新都
表紙

球体関節人形
BJD#1(title:despair)-Mayumi Minato

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      (1)


 非生体の心臓がおふくろの胸膜を食い破って胃に穴を開けた日から、俺の中の価値観や人生観といったものはすべて型崩れを起こした。
 中学三年のときだった。それまでの俺は、ハンドボール部で最後の大会のために土日返上で汗を流していたし、勉強だってそれなりの順位を行き来していた。交友関係も学年の垣根なく広く維持していて、D組の今西弘樹(いまにしひろき)といえば、教師連中にしてみれば健全な男子生徒の代表例だっただろう。おかげで内申点はそこそこよかった。
 そして健全な俺は健全なりに、適度な努力とある程度の才能でこれからも同じようにうまく人生は進んでいくのだろうと思っていた。
 もっとも、それはおふくろの心臓が故障していると聞かされるまでの話で、そしておふくろが死んでからは、俺の内外面はすっかり荒廃してしまった。
 約四五〇グラムのボールを投げるという行為に徒労感を覚え、机にむかって黒鉛を磨耗させつづける作業に虚無感を覚え、周囲の人間と笑顔を見せ合わなければならない暗黙のルールに抵抗感を覚えた。ようするに俺は疲れてしまったのだ。天国の母親の分も頑張るだなんて、ドキュメンタリィドラマみたいなことはできなかった――むしろ、おふくろの残したものがすべての歯車を狂わせていったから、少なからず恨みに思う節があったかもしれない。そんなことを打ち明ければ、親父に殴り殺されるだろうけど。
 不健全になった少年に、社会はそれなりに厳しい。というより移り気だ。友人は日に日に目減りしていき、教師の期待はほかのやつへ注がれることになった。当時の俺が、彼らに対し寂しさや悔しさを覚えていなかったかと問われれば、否定はできない。しかし、それらの感情に対抗しようとも思えなかった。俺はずるずると落ちていき、結果として卒業後に門をくぐったのは、受験期当初は考えもしなかった中の下レベルの公立高校だった。
 それから三年が流れるが、俺はあまり変わってないように思う。結局は惰性なのだ。たとえば今みたいに、漕いでいる自転車に変速機(ディレイラー)がついてないみたいに。
 高校へのルートは一本道に近い。緩い傾斜。ドロップハンドルに体重を預け、クランクに力を伝える。このKHSのピストバイクは、一年前にバイト代を貯めて購入したお気に入りだ。交遊での出費などほとんどなく、暇ばかりしているからこそ可能だった。
 校門近くで、のろのろとママチャリを漕いでいる倉持千紗(くらもちちさ)の後ろ姿が見えたので、ブレーキをかけつつ並走する。
「よう。不良娘」
 面倒くさそうに見てくる。「……なんだ、今西か」
「今日は早いんだな。遅刻常習犯がどんな心変わりだ?」
「べつに。たまたま時間に目が覚めただけ」
「いつもそうしてくれよ。朝はさ、曽田(そだ)だけだと張り合いがないからな」
「あいかわらずダチの少ない野郎だ」
「おまえにゃ言われたかないよ」半眼で見るが、倉持はどこ吹く風だ。「それによく言うだろ? 百人の友だちより、数人の親友をつくれってサ」
「それ、昔のあんたと正反対じゃん」
「親友は否定しないんだな」
 にやついて見ると、不機嫌そうに罵倒された。
「し忘れただけだ、バカ」
 俺と倉持は自転車を駐輪し、昇降口にむかう生徒の波に合流する。が、捕食者の登場に魚群が散るように少年少女は避けていく。基本的におとなしいここの生徒たちにしてみれば、校則を過度に違反している倉持の茶髪とピアスは、ひと目で「不良」というレッテル貼りに直結するらしい。レッテルもなにも実際に問題児なわけだから、正しい判断だけど。
 あと追加情報として、その倉持とつるんでいる俺も不良だと思われている。俺は俺でそのポジションに安座しているから異議を唱えるつもりはない。
 俺たちのクラスは理系の八組だ。着くなり、倉持はヤンキー背負いしていた鞄を枕代わりにして机に突っ伏す。私に近寄るなという言外の声明だが、おまえには誰も話しかけようと思わないから安心しろと言いたい。
 俺は自席にドイターのリュックを放り投げ、先にきていた曽田恭平(きょうへい)に近づいていった。ふだんどおり、黙々と文庫本の頁をめくっている。こいつには倉持とはまた違った近寄りがたさがある。寡黙さはそのまま防壁の役割を果たす。
「今日はなに読んでんだ?」
 後ろからとり上げてみる。曽田は眼鏡の奥の目の色を変えることなく、振りむいた。
「人間失格」
「えらくボロくさい見た目だな」確か太宰治の著作……で合っているみたいだ。「祖父さんの本棚から借りてきたのか?」
「当たり」
「あんまり読み込みすぎて鬱になるなよ」ふざけて言いいながら本を返す。
「どうかな」口だけで笑った。「実はもう遅かったりするかもしれないぜ」
「おまえのは簡単な病気だな」
「簡単になるものだろ?」
 そんなくだらないやりとりをしていると、担任の教師がやってきた。HRがはじまる。季節の変わり目に体調を崩さないように。受験校をそろそろ決めるように。時期に合わせた当たり障りのない話題がつづき、終了しかけたときだった。
「そういえば美術の安達(あだち)先生から伝言があったぞ」興味なさそうに言った。
 この高校は、三年の理系といえども文化的な科目が設定されている。生徒の進学先のランクアップに力を入れていないからだ。卒業生の大半は地元で就職するか、授業料をかき集めることだけに躍起な近辺の私大に進むことになる。俺は私大派だった。
「課題の自画像の提出期限が今日までなので絶対に出しなさい、とのことだ」
 しまった、と思った。
 まだ半分も描けていない。創作系全般に苦手意識を持っているため、時間がかかるのは毎度のことだが、今回は完全にその存在を忘れていた。HR後、すぐに曽田と倉持に進捗(しんちょく)状況を聞いてみたが、どちらも提出済みであるみたいだった。
「怠慢も少しは直さないと後々苦労するぞ」
「中学のときから美術はクソなんだよね、あんたって」
 終業後――彼らに耳の痛いことを言われながら廊下で別れ、俺は職員室で鍵を受けとってから美術室へむかった。むろん、課題を完成させるために居残るのだ。
 美術室の三年用作品保管場所には、俺の白紙に近い自画像しか残っていなかった。ため息をつきつつ準備をし、鏡を見ながら用紙にデッサンを起こしていく。しかし、すぐに出来がおかしい気がして消しゴムで消す。自分でもよくわからないけれど、違和感がある。
 安達は、この課題のはじめに「自画像はただ鏡の中身を模写すればいいものではありませんし、できるものでもありません。そのときのあなたたちの心が表れるのです」とまるでどこかで聞いたような、実に教育的な説明をした。
 それを、聞き流せればよかったのだ。変に意識してしまった。
 俺は俺が描けない――同級生が描くような笑顔や真顔を真似することはたやすい。だが、それはきっと自分の本当の表情ではないと思ってしまう。疲弊し、堕落し、自己にむき合うことを避けてきた三年間。その中で俺は俺を見失ってしまったのだろう。
 もしかしたら、そういう考えにリンクするから、俺は課題を忘れていた――忘れようとしていたのかもしれない。現実逃避的に。
(……なーんて、ずいぶんと大仰な言いわけだな。あいつらに笑われるぜ)
 色々と考えてしまったが、目下の問題として提出期限が差し迫っているわけで、完成させなければ点数がもらえないのが現実だ。余計な思考は切り捨てて、ひたすら手を動かすことに専念する。色を塗り終え、完成したのは午後六時をすぎたころだった。
 急いで職員室にいくと、安達はまだ帰っていなかった。ほっと安心する。
「安達先生。課題の自画像やってきました」
「ギリギリ滑り込みセーフかしらね」あきれたように笑い、つづけた。「ちょうど今から八組の採点するところ。出席番号順に重ねてあるから、自分のやつ差し込んでおいて?」
「了解です」
 言われたとおりにする――と、デスク上のもうひとつの束のほうに目がいった。
「こっちのほうは採点済みのやつですか?」
「そうね。みんなよく描けているわ」
「へえ」と言いつつ手を伸ばす。
 好奇心が刺激されたといえばいいのだろうか。俺は勝手に、他クラスの連中の作品を鑑賞することにした。案の定、「そういうのは感心しないわね……今西くん」と採点をしつつ咎めてくるが、安達の顔はこちらにむいておらず、それ以上の注意もなかった。
 ぺらぺらと捲っていく。どの作品にも標準的な点しかついていない。しかし、安達が言ったようにそれぞれの顔にはちゃんと個性が表れているように感じた。これまでの人生の中でかたちづくられてきた、心と呼ぶべきものが。
 気になるものを見つけたのはそのときだった。
 一枚だけ付箋(ふせん)が飛び出している作品があった。
 引き抜いて、安達に聞いてみる。「なんでこれだけ付箋がついてるんですか」
 すると少し困った顔を見せた。
「ああ……その子。採点がまだできてないのよ」
「保留ってことですか」
「正直つけられないって感じかしら」ため息をついてから、安達は言ってきた。「でも、私の気持ちがわからないわけじゃないでしょう?」
 複雑な気持ちだった。「……まあ、俺が先生の立場だったら同じようにしますよ」
 その自画像には、まず人間が描かれていなかった。
 中央に座っているのは――人形。
 髪はなく服も着ておらず、個性を表すものはなにもない。しいて挙げるとすれば、デパートのおもちゃ売り場にあるようなふつうの人形とは違って、関節部分が球体でジョイントされており、顔の意匠は妙に端整で、より人間に近いリアルさを醸し出しているくらいだろう。そのせいか薄気味悪い印象が強く、見ていると無性に不安になる。
 いったいどんなやつが描いたのだろう。俺は裏をめくって、氏名を確認してみた。
 三年四組。出席番号三十四番。湊真弓(みなとまゆみ)。
 聞いたことのない名前だった。

     

      (2)


 安達に自画像の採点に色をつけてくれるよう頼んでから、学校を出た。
 夏が終わってからしばらく経つ。日が薄れ、空気の冷えはじめた帰り道を、ライトを瞬かせつつ走る。地元まできたとき、前方をだるそうに歩いていく女子高生の姿を発見した。
「おうい倉持」
 声をかけると、気まずそうな顔を一瞬だけ貼りつけた。珍しい反応だった。俺から逃げるように歩調をあからさまに速める。聞こえなかったふりにしては白々しい。
 俺は追いついて横に並んだ。「無視するなよ。絶対わかってただろ」
「無視したんだって気づいたなら近寄ってくんなクズ」
「俺じゃなかったら泣かしてるぜ、そのセリフ」歩みを止めない倉持に合わせて、ピストバイクをひきながら訊ねた。「今からバイトか?」
「……まあね」
 倉持は、授業は不真面目のかぎりを尽くすくせにアルバイトには熱を入れていた。一二年のころはスーパーでレジを叩いていたが、給料が少ないとの理由で辞めて、今は年齢を偽って時給のいい居酒屋で働いている。確かに大学生でも通用する風貌だけれど、職場が職場なだけにエピソードは顔をしかめるものばかりだ。酔っ払いにからだを触られたり、なかば強制的に一杯付き合わされたこともあるらしい(そういう怒りの捌け口はだいたい俺の役回りである)。ちなみに校則ではアルバイトは原則禁止なので、未成年飲酒と併せてなかなかに大変な違反ぶりだった――とはいえ、そこまでして金を稼ぐ理由を俺は知っているから、なにも口出しする気はないが。
「それならいいんだけどさ、おまえの居酒屋って方向違うだろ。こっちは駅だぞ」
 倉持は答えなかった。質問を重ねる。
「あと、そんな格好でいっていいのか? 即刻クビじゃねえの」
 いつもは私服で出勤していたはずだが、今の倉持は高校の黒いセーラー服の上にカーディガンを羽織っていた。これでは年齢詐称を自分から暴露しにいくようなものである。
「新しいバイトはじめたんだよ」答えた声はかすれていた。
「おいおい、また増やしたのか? 無理しすぎだ。死んじまうぞ」
 じっとこちらを見てくる。「それって心配?」
「当たり前だろ」
 すると、倉持はスレた笑みを見せてドンと胸を押してきた。俺は立ち止まってしまう。
「調子こいてんじゃねえよ。今西に心配されるとか、ほんとありえないわ」
 バイバイ。そう残して倉持は歩いていく。俺も「また明日な」と言いかけて――しかし、ふと思いついて呼び止めることにした。「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なに」と振り返る。
「湊って女子知ってるか?」
「みなと?」
「ああ、湊真弓。四組にいるらしいんだ」
「同じクラスになったこともないと思うけど……」倉持は思い出す素振りをしてから、わずかに睨むように見てきた。「そいつがどうしたっていうの」
「いや、ちょっとさ。変わったやつだなって思ったから」
「どう変わってるのさ」
「難しいな。そこがよくわからない。でも、変わってるって思う」
 納得しきれない感じで見てきたが、ふうと肩を下ろして倉持は言った。
「あっそう……とにかく、私は知らないよ」
「そうか。時間食わして悪かったな。バイト頑張れよ」
 それだけ言って、俺はピストバイクを反転させてまたがった。再度自宅へと漕ぎだす。
 今西家は住宅地内の一軒家だった。俺が生まれて少ししたあとにローンを組んで建てたと聞いている。おふくろの趣味が何割か入っていて、どこか西洋風な佇まいだ。
 ガレージに駐輪してから、玄関の鍵を開ける。そのままリビングに入るとスパイスの効いた香りが鼻腔に触れた。「お、今日はカレーか」
「おにいちゃん? ただいまくらい言ってよ」
「ただいま」
「今言ってもだーめ」あとは煮込むだけなのだろう、遥(はるか)はエプロンを脱ぎながら面白そうに笑った。口角の上がり方がおふくろにそっくりだった。
 遥は高校一年生で、俺の妹でありかつ後輩にあたる。兄の贔屓目はあるにしても、最近頬にできたニキビを減点対象に加えたとしても、十分可愛い部類に入ると思う。
「親父は今日も遅いのか」
「うん、さっき電話があったよ。先食べててくれって」
「じゃあ食べよう。腹が減ってるんだ」
 食器を用意しようとする俺を遥は制した。
「おにいちゃんはその前にすることあるでしょ」
 言わんとしていることはわかった。俺は二階の自室でジャージに着替え、洗面所で手を洗ってからリビングに戻った。食卓にはすでにカレーとサラダが配膳されていた。
 いただきます、とふたりだけの夕食を開始する。カレールーは市販のものだが、頬張ると同時にまろやかなコクが広がっていった。いつもと違う風味だ。
 遥は俺の表情を見ながら聞いてきた。
「どう、おいしい? 今日はちょっとチャレンジしてみたんだけど」
「うまい。また料理の腕上げやがったな。今すぐ嫁にいけるな、遥は」
「まだ法的に無理だからっ」あははと笑う。
 おふくろの死にネガティブな影響を受けた俺に対して、遥は前向きに変わった。有り体に言えば強くなった。おふくろの遺志を継ぐように、中学一年にして家庭を担う者の責任感が生まれたのだ。今では家事全般を請け負い、その働きぶりは同年代の女子と比べると雲泥の差だろう。無精者の俺にはもったいないくらいのできた妹だ――が。
 だからこそ、申し訳なく思うときがある。
「俺も料理ぐらいできるようならないとな……おまえにばかり負担かけてさ、もっと女子高生らしく友だちと遊びたいよな」
 遥はぴたりと手を止めた。「別に? そんなことないよ」
「本当の気持ちは示したほうがいいぜ」
「うん、そのつもり」にっこりと笑顔を浮かべた。「家事してるときが、なんか一番わたしらしく思えるんだ。それに、自分のテリトリーにおにいちゃん入れたくないしね」
「そのくせ俺のパンツは平気で干せるんだな」
 茶化してみると、予想どおり顔を赤くして叫んだ。「別にいいじゃんっ」
 それからは遥が機嫌を損ねてしまい、黙々とカレーを口に運ぶ時間が流れた。食後、遥が食器を洗っているあいだに俺は風呂に入り、つづけて自室で音楽プレイヤーを傍らに問題集を解くことにした。仮にも受験生の身でありながら、久しぶりの試みだった。
 そうして――ふと時計を見ると、短針が十時に重なろうとしていた。意外と集中できた。イヤホンを外してからだを伸ばしていると、一階から玄関の開く音がした。
 親父が帰ってきたみたいだ。そう思うとふいに、なにかを忘れているような不安感がじわじわと滲んだ。その正体に気づいたときには――すでに怒号が聞こえてきていた。
「はるかっ、遥はどこだっ」
「きゃ……お、おとうさん? 待ってっ」
 俺は階段を駆け下りて畳部屋にいった。
 そこでは、親父が遥を畳に投げ倒していた。
 遥は風呂をあがったばかりだったようだ。髪は濡れており、パジャマの上と下着しか身につけていなかった。それを親父は無理やり引っぱってきたのだ。俺はすかさずふたりのあいだに割って入る。「なにやってんだよ親父」と言いつつも、その動機を理解していた。
「母さんに夕飯をあげていないのはどういうことだっ」仏壇を指差して声を荒げる。
「ごめんなさい。わたしが忘れてたの。ごめんなさい……」
「忘れただと? こんな大切なことをかっ」
 おふくろには、毎日みんなと同じものを食べさせてあげる――それは、親父が一方的に決めた家のルールだった。絶対的な義務といっても差しつかえない
 後ろで泣きそうになっている遥を一瞥して、俺は親父にむき直った。「違うんだ。俺が、腹減ったから早く食べようって言った。おふくろはあとでいいって。遥は悪くない」
 苦しまぎれだったが、親父にはどうにか飲み込んでもらえたようだ。
「弘樹っ……この親不孝者がっ」
 俺は、親父の振り上げた拳を甘んじて受け入れた。視界が揺れ、口の切れた感じがする。背後で悲鳴が上がるが、怒りの矛先を遥から変えさせ、なおかつ事態を沈静化させるにはこれがベターなのだからしかたがない。
 おふくろが命を落とした日から、親父はおかしくなっていた。先ほどのほかにも、「最低でも一日三回はおふくろに話しかける」「おふくろの服も洗濯する」などという異常性さえ臭わせるルールを制定している。まるでおふくろが生きているかのように振舞いたがるのだ。そして、それが覆されかけると今みたいに激昂する。ふだんは俺たちのことを優しく見守ってくれるいい父親なのだが、こういうときばかりは悪質な存在に思えてしまう。
 親父は息を落ち着かせて、口を開いた。
「遥、母さんにごはんを用意しなさい」
 無言で頷いた遥は半裸のまま台所へいき、カレーをよそう。その後ろ姿からは、つい数時間前に見た溌剌さが跡形もなく消えていた。下女じみた卑賤さすらあった。
 親父は受けとったカレーを仏前に供え、鈴(りん)を鳴らして手を合わせる。嫌なくらいに澄んだ金属音が尾を引いていく。俺と遥は正座して親父に倣った。
 俺は薄目を開けて、小さな額のなかで笑っているおふくろを見た。――なあ、おふくろ。あなたたちは大丈夫だなんて言ったの、あんただぜ。おかしいよな。

     

      (3)


 親父の拳の威力は思ったよりも強烈だったみたいで、一夜明けると青痣とともに見た目相応の痛みが停留していた。さすがに放置というのはよくないかもしれない。とりあえず心配しきりの遥は遅刻させまいと先に登校させ、俺は自分で手当てすることにした。ガーゼとテープを探すのに手間どったため、家を出るころには一時限目の授業がはじまっていた。
 久方ぶりの重役出勤だ。教室のドアを開けると、複数の目がこちらにむけられた。
「今西か。最近遅刻は減ってきたと思ったんだけどな」現国教師が残念そうに見てきて、それからすぐに目を丸くした。「おい? その頬はどうしたんだ?」
「家の階段でこけただけですよ」
「そんな都合よく傷ができるか。ケンカじゃないのか?」
 ときどき親父の反感を買って怪我をした翌日なんかは、いつもこうだ。不良の今西は他校の生徒と殴り合った、と推定される。同級生たちのざわつき具合を見るかぎりは、今回も同じように思われているのだろう。が、自発的に誤解を解こうという考えには至らなかった。曽田、倉持と三人で友人関係が充足している俺には、そのメリットが感じられないし、なにより面倒くさい。
「あんまり問題を起こすなよ」教師はそう言って、黒板にむき直る。しかしすぐに思い出したように振り返った。「そういえば今西おまえ、今回のテスト赤点だったからな、今日の放課後に追試するぞ。忘れて帰ったりしないように」
 先日行われた中間考査の答案返却がはじまっているらしい。俺は生返事をしつつ、ついでに心中で同級生の前で恥をかかせなくてもいいだろと毒づきつつ、自席に座った。
(ん……?)
 そこで気づいたのが、曽田も倉持もいないということだった。倉持は十中八九、遅刻の線が濃いだろうけれど、悪友(おれ)と付き合っている点を除いて、学業面でも生活面でも模範的な曽田が欠席するのはそうそうあることではない。
 疑問に思い、こっそりと携帯を開いてメールしてみた。
 今日は休むのか? と打鍵して送信。
 風邪をひいた、とすぐに返ってきた。俺や倉持とは違い、不摂生とは無縁の健康体である曽田がウイルスごときに屈するなどありえないとは思ったが、彼自身がそう言うのだから、俺からはなにも追及すべきではないのかもしれない――そう考え、携帯を閉じた。
 経文のように解説を垂れ流すだけの授業は、並大抵のやつなら退屈に思えてくる。教室の随所でヒソヒソ話がもれてきていた。教師はわかっていて注意しない。知識欲のある人間だけ聞いていればいいというスタンスなのだ。なかば職務放棄ともいえるが。
 隣席とその前の女子の会話を耳が拾う。
「ねえねえ、五組の三上(みかみ)くんの話って知ってる?」
「また彼女変わったらしいね」
「なんかヤだよねえ。今の子ってわかる?」
「四組の若山(わかやま)さんでしょ」呆れたみたいにこぼした。「前の彼女も四組だったような。よくそんな簡単に鞍替えできるなあって。確か、湊さんって言ったっけ」
 湊――聞き捨てならない名前だった。俺は反射的にふたりを見る。それが、睨まれたと思われたらしい、気まずそうに口を噤んで黒板に顔を戻してしまった。
 さすがにショックではあったけれど、かといって挫けるほどでもない。チャイムの余韻を残す授業後、すぐさま彼女たちに声をかけることにした。
「なあ、ちょっといいか」
「な、なにかな」
 完全に厄介者に絡まれたときの顔をしている。俺はため息を封じて言った。
「さっきの話なんだが」
「あ、ごめん。なんか邪魔しちゃったよね」
「それはいいんだ。その、湊って女子のことで。おまえらなんか知ってんの?」
 ふたりは顔を見合わせてから答えた。
「私は別に噂程度にしか……」
「それなら三上くんのほうが。正直、湊さんに詳しい女の子なんていないと思うし」
「? そりゃどういう意味だ?」
「たぶんあの子、友だちいないよ。無口だし、ノリ最悪だし」
「なに考えてるのか全然わかんないし」――ねえ? とふたりが見せ合った笑みは、学校というたかだか数万平方メートルの社会の落伍者への侮蔑を如実に物語っていた。俺はおふくろが死んだあとの自分をふいに思い出して、つい辛辣な口前で言ってしまった。
「ずいぶんと楽しそうじゃねえか。そんなに面白いか?」
「えっ」彼女たちは俺の顔を見て、正確には頬のガーゼを見て、さきほどのケンカ云々を思い出したのだろう、目をそらしながら言った。「そういうわけじゃないけど。とにかく、わたしらはなんにも知らないから。もういいよね?」
 彼女たちはそそくさと廊下に出ていく。
 傍から見れば、本当に因縁をつけているみたいだったろう。自分から低評価を助長してしまったことになにやってんだと反省しつつも、俺は次のことを考えていた。
 とりあえずは三上にコンタクトをとってみよう、と。


 昼休みに入り、行動に移ることにした。
 五組にむかおうと教室のドアを開ける――と、倉持が登校してきたところだった。俺に気づき、軽く頬を緩ませようとしたのも束の間、朝の現国教師と同じような反応をした。
「どうしたの、その頬」
 隠し立てしても無駄だろうし、そもそも倉持(と曽田)はこちらの家庭事情をよく知っている。俺は正直に言った。「昨日の夜、親父にぶん殴られたんだ」
「そう……痛む?」
「今はそうでもない」
「遥は」
「あいつにはなにもなかったよ」
 倉持はまぶたを狭めたあと、さもわかっていると言いたげに肩をたたいてきた。「それならいいんだけどね、腐っても兄貴ってところ?」
「そんなの知らねえよ」
 なぜだか照れ臭くなって、俺は身を引いてしまう。
 その隙間から倉持は教室に顔を覗かせ、聞いてきた。
「なに。今日は曽田休みなの」
「ああ」
「孤独な午前中だったね」にやりと犬歯を見せてから言った。「今から購買いくの? だったら私のぶんも買ってきてよ。それで一緒に食べよう」
「悪いけどひとりで頼む。俺は用事があるんだ」
「どういう」
「五組の三上に話を聞きにいく。湊真弓についてのな」
 倉持は露骨に気に食わなさそうな顔をした。どうも、先日からこの話題に対する態度は一貫して友好的とは言いがたい。おおかた、俺たちの輪はすでに完成されているから、それを改変させてしまうかもしれない存在に敏感になっているのだろう。
「なんなのあんた最近。その湊って女子のことばっかじゃん。変わってるって言ってたけど、そんなに気になることなの」
「いや、まあ……それは自分でもよくわからねえ」
「あきれた」胸の前で腕を組み、うなだれる。「そんなにバカだとは思ってなかったわ」
「反論はできないが……ただ」
「ただ?」
「類は友を呼ぶみたいなもんがあるような気がする。俺だけじゃなくてさ、おまえとか曽田にもなにかしら通じるものが。シンパシーっていえばそれっぽいか」
「ふぅん」倉持はいまだ胡散臭そうな眼差しだったが、自席までいって机に鞄を放り投げると、すたすたと戻ってきて俺の背中を押した。「それなら私も一緒にいく」
「なんだよ珍しいな。いつもなら面倒くさいとか言うのに」
「いつもがあるってことは、例外もあるだろ」
「そりゃあそうだろうけど……」
 とは言いつつも、倉持を追い返す理由のほうこそ特に見当たらなかったので、ふたりで五組へ足を伸ばした。適当な生徒をつかまえて三上隆治(りゅうじ)を呼び出させる。
 三上は面倒くさそうに姿を現した。それなりに美形ではあるが、誠実さという観点からは評価しづらい外見だ。こと異性関係においてそういう類の、軽薄な印象を与える実績が多々あるため、少なからず先入観も手伝っているだろうけど。
「倉持……と今西か。話があるって?」
「まあ、話なんて大それたもんでもないけどな。ただ、ちょっと聞きたいことがある」
「なんだよ。言っとくけど、暇じゃねえぜ」
「湊真弓って女子のこと……知らないわけがないよな」
 一瞬、怪訝そうな顔をしたが、すぐに飄々と返してきた。「そりゃ、いくらオレだって前カノの名前を忘れるほど薄情じゃねえさ」
「それに目星をつけてここにきたんだ」
 教えてくれよ、彼女のこと。そう言うと、三上は面白そうに笑った。
「なんだよ今西……オレのおさがりをもらおうって腹か?」
「そうじゃない」
「だよな。だったら彼女連れてこねえか」
「? 彼女って誰だよ」
 三上は倉持を指差した。彼女はぐっと口を閉じて黙る。
 俺は嘆息交じりに真実を述べた。「んなわけあるか。デマにもほどがあるぜ」
「だったらなんで」
 少し迷ったあげく、
「説明しづらいし、おまえも説明がほしいわけじゃないだろ」
「まあな。興味ねえわ」とこぼしながらも、表情は笑いを噛み殺していた。「それでどういうことが聞きてえんだ? ちなみにタダじゃねえぜ」
 倉持が俺の背中を押しのけるようにして、低い声で三上に迫った。「調子こいたことぬかしてんなよ。さっさと知ってることを吐きな」鋭い視線を至近距離で浴びせる。
 しかし、そんな横暴な態度では聞き出せるものも聞き出せなくなる。俺はあわてて両者のあいだに割って入って、三上に指を一本立てて見せた。
「ジュースでどうだ?」
 舌打ち交じりに言う。「……オーケー。それで手打ちだ」
 それから三上は、湊真弓との一ヶ月間の関係を話してくれた――順を追って整理していくと、アプローチをかけたのは三上のほうからだったらしい。理由は実に単純かつ短絡的なもので、それまでは小うるさい感じの派手目な女子ばかりと付き合ってきたから、たまには物静かな女子を横に置いてみたくなったのだ。際どい言い方だが、箸休めというか、肉食に飽きたから気分転換に菜食に臨んだといったところだろう。
 とんとん拍子にふたりの仲は進展していった。
 理想的なまでのアクションとレスポンス。それを三上は、等身大の人形の手を独りで引っ張っているみたいだったと――つまり、彼と反対方向にも同方向にも意思を働かせず、ただ慣性だけが彼女にはあったと表現したけれど。
 別れ話も三上からだった。菜食はもとより味気ないものだが、湊真弓はもはや無味無臭としか言えなかったという。交際の一環として遊びに出かけたり、高校内でも一緒にすごす時間を重ねてみた――がしかし、ふとひとりで行動しているような錯覚に陥ることがあった。本当の意味で、自分は“静かな物”を“横に置いている”だけなのではないかと思ってしまうのだった。それが彼女を突き放した最大の理由であるようだった。
 聞きながら、俺の脳裏では彼女の描いた自画像がちらついていた。物言わぬ、与えられたベクトルに従うだけの人形(ひとがた)。家のパソコンで調べたところによると、あれは球体関節人形という名称らしい。輪郭や手足の可動域をより人間に近似させ、表情のつくりもリアリティを突き詰め――そして、人が愛す。愛玩として、また時には性的な要素も含めて。
 俺にはまったくもって理解できない世界だった。とはいえ、湊真弓の自画像に感じた漠然とした不安感は、ディスプレイの中にも確かに息づいていた。その正体は、限りなく精巧に人間を模しておきながら、血脈の気配さえ漂わせない矛盾感だと気づいた。でも、それだけではない気がするのだ。もしかしたらそれは、なにかに魅せられる前の怯えにも似た感情だったのかもしれない。
 ――などと柄でもないことを考えていると、倉持がだしぬけに訊ねた。
「それで? どうせヤッたんでしょ。どうだったの」
「おい、やめろよそういうのは」俺は彼女の肩をつかんで諌めた。「聞かれたくないことだってあるだろうが。……ましてやおまえは女だぜ」
「ジュース一本おごるんでしょ。聞けることは聞いておけって」耳打ち気味に言い返してきてから、三上を見る。「それに、結構話したそうにしてるじゃん」
 俺は倉持と視線を揃えた。彼はにやにやしている。
「そうなのか?」
 口を開いたのは少しあとだった。「別に? どうってことねえよ。ふつうに部屋に連れ込んで、ふつうにヤッただけだ。まあ、見た目に反してホイホイついてきたのは意外っちゃあ意外だったけどな。あいつ、ダッチワイフにはちょうどいいんじゃねえの。気味悪いぐらいのマグロだったぜ。オレは後悔したね。あんな胸糞悪い思いは金輪際したくねえ」
「ひどい言い草だな」
 俺は少しむっとしていた。顔も知らない、話をしたこともない人間を悪く言われて。
「おまえは知らねえんだよ、あいつがどんだけおかしいヤツか。なんなら見てくればいいじゃねえか、すぐ隣だ」そこまで言ってから、ふと疑問に触れた様子でつづけた。「ていうかそうだろ、わざわざ俺を引っ張り出さなくてもよかったじゃねえか。直接当たるのが一番だと思うけどな。オレが女を狙うときは、絶対そうするぜ」
「あんたのことは聞いてないよ」
 倉持が冷静に言う。そして俺のほうにからだをむけた。
「まあでも、それは私も気になってた。あんた、なんでそんな遠回りするの」
 瞬時にして二対一の数的不利。相手が三上だけなら適当に笑って誤魔化せそうだが、倉持にはその手は通用しないだろう。彼女の目はそういう姿勢だ。しかし、回答を避けきれないこの状態で、だからこそ俺は言葉につまってしまった。正直なところ、俺自身も俺が回りくどい明確な理由など知らないからだ。しいて言うならば、なにかに魅せられる前の“怯え”――さきほどの考えが、純粋な警戒心という意味でも俺の中にあったといったところだろうか。
 湊真弓に関わることでなにかが変わる――分岐する。
 根拠など存在しないし、その吉凶はわからないが、そう思えてしかたがない。
 だから俺は慎重になっているのだ。日常の変化を拒絶する心と湊真弓へとむかう心、そのふたつのあいだで板ばさみになっている――とまで言うとさすがに修飾がすぎるだろうけれど、現に俺の内面的な状況はそれにかなり近い。
 俺は考えつつ言った。「迷い……があるのかもしれない。三上に言われるまでもなく、湊真弓がただの女子じゃないってことは、薄々感じてるんだ。でも、そういうところが彼女を気にかける理由になっているっていうか――」
 だが、しだいに自らの言葉に思考が掻き混ぜられるようになっていき、併せて、自分だけ脱衣させられるようなこの告白に恥ずかしさを覚えた俺は、無理やりに話を切った。
「――そもそも、そんなこと別におまえたちには関係ないじゃないか。俺はもうこれでいいよ。話、ありがとな三上」
 くるりと背をむける。「待ってよ」と倉持が跳んでついてくる。さらにその後ろから三上の声が追いついてきた。
「取引忘れんじゃねえよ。コーラ頼むわ」
「わかったわかった」
「あと、ちょっと聞けよ」まだなにかあるのかと足を止めかけたが、次の言葉は俺に対してではなかった。「倉持、オレまだおまえのこと諦めてねえからな」
 どこからその自信が湧いてくるのかは不明だが、三上は不敵に笑んでいた。一方、倉持のほうはといえば、迷惑そうに顔をしかめて親指を逆さにたたきつけるだけだった。
 五組を離れてから俺は彼女に聞いてみた。「三上となんかあったのか?」
「昔、一年のころにコクられた。それでフッた。終わり」
 不機嫌――というより明らかに怒っている口調で言った。今の応酬だけが原因というわけではなさそうだった。いったいなにが腹の虫を刺激したのかはわからないが。
「ふぅん」とこぼし、とりあえずは話を進めないようにしておいた。触らぬ神に祟りなしである。この場合は相手が鬼神で、いっそう性質が悪いことだしな。
 八組の前で倉持と別れ、俺はそのまま昇降口外の自販機でコーラを買い、五組へととんぼ返りする。受けとった三上は一気にあおったあと、ぽつりと呟いた。
「さっきの話だけどよ」
「なんだ。興味ないんじゃなかったのか」
「うるせえな。もう言わねえぞ」
「悪い悪い」口先だけで謝っておく。「で、なんだよ」
「おまえの迷いってやつは正しいと思うぜ」
 三上の目には、かすかに真面目さがうかがえた。
「そして、俺が純粋に湊に関わった人間として言えるのは、関わらないほうがいいってことだ。面白半分に話してたけど、今思い出したわ。一番胸糞悪いことがあった」
「それって……」
「本番の前に、あいつはオレの耳元でこう囁いたんだよ――」


 午後の授業はあっという間にすぎていった。
 そして放課後、三年の今の時期になって単位を気にしないほど馬鹿ではない俺は、おとなしく現国の追試に出席することにした。一緒に帰ろうと誘ってきた倉持だったが、そのことを言うと再噴火気味に怒りをあらわにしたので、俺は平身低頭を貫き通すしかなかった。こんど埋め合わせになにか奢ってやらなくてはいけないかもしれない。
 追試をする教室は、現国教師が担任を務める三組だ。教師はまだきていないみたいだった。ちらほらと数人の生徒が離れて座っている。俺は後方の席に腰を下ろした。
 五分ほどして教師がやってくる。くたびれた顔には、追試(こんなこと)に時間を割くのがもったいないと書いてあるようだった。
「全員揃っているか? 出欠とるから、返事するように。……最初、今西」
 軽く手を挙げた。「いますよ」
「お、忘れてなかったな。えらいぞ」
 帳簿に鉛筆を走らせながら言い、つづけてほかの生徒の名前を呼ぶ。その最中、俺は今日の夕飯はなんだろうかとか、そろそろピストバイクの汚れたバーテープを外してトラックグリップに交換しようかとか、そんな益体のない思考をぼんやりと並べていた――が。
 それらは次の瞬間、すべて消し飛ばされた。
「次……湊。湊真弓」
「――はい」
 慌てて声のしたほうに顔をむける。俺の右斜め前に座っている女子が返事をしたのだ。
 校則に従順な制服の着こなし。地味な学校指定のリボン。小さな肩。白いうなじが見え隠れするぐらいの黒髪のストレートボブ。洒落っ気も化粧っ気もない無色の横顔。そして、微細な変化も確認できないほどに、造られたように無機質な表情。
 なるほど。
 確かに。
 彼女は人形だ。

       

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