Neetel Inside ニートノベル
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ハザード
ジャンクパーツとバス会議

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「ウハハ! いつもより早いなマコト。集合前の30分前だ。さすがうちの隊長」
「うるせぇブッチ。何があったか知ってるくせに」
「しかし射撃音から計算すると、今より20分早くここに着いているはずですけどね?」
「・・・・・・途中で町長のおっさんに捕まったんだよ」

 あの時は殺されるかと思った。目の前の人間の拳から煙が上がっている時点で、俺は死を覚悟していた。生きている事が奇跡に感じた。あいつは人間じゃねえ。

「あははーやっぱり! マコトはほんと馬鹿だネー」
「ちょっとトチッただけだっつの」

 後ろから、笑いの混じった「ドジ、マヌケ」という声が聞こえた。振り返ると、見慣れた女の子が俺の目の前で足を止めていた。
 それからぐっと覗き込むようにして、俺の視界にニヤけた顔を映した。

「ふっふー。その顔からしてゲンコツ二、三発ってとこだね。この前なんか六発も殴られたんでしょ?」
「前は六発プラスαでおっさんのガキのお守りさせられたよ。つーか、あいつの鉄拳は兵器だ・・・・・・。いつか絶対人を殺すぞ」

 一割の冗談と九割の本気で構成されたその言葉を聞いて、ブッチはまた笑った
 というかもう一割の冗談も無い。『鉄拳』は、鉄の拳と書いて鉄拳だ。明らかに町長のおっさんのゲンコツはチタン製である事に間違いないだろう。

「よし、笑ける話もここまでだ」

 ブッチが言った。笑えねえよ、と返そうと思ったが、不毛すぎるので止めた。

「逆沖縄時間状態だけど、人数も集まってるし、これより東京自警団定期会議を始める」


     

 会議場所は、廃棄されたバスの中。ジャンクパーツに囲まれたこの場所は、ハカセにとってみれば夢のような場所らしい。これが薄汚れた景色にしか見えない俺は、やはり、天才とかいう存在とは遠くかけ離れているようだ。
 そんな粗末なバスの中に、全団員五名が毎週金曜日に集まるわけだ。相変わらず規模が小さい。

 そもそも『自警団』とは、今現在発生している第三次世界大戦が激化するにつれた一般住民への被害を最小限に抑えるための、いわば縮小版自衛隊のようなものである。どの地域にも『自警団』は各個存在し、それぞれの『自警団』の現状報告はこの『東京自警団』にやってくる。つまり、『自警団』の本拠地はこの『東京自警団』なのである。『自警団』がゲシュタルト崩壊しそうな説明である。
 そして、ここ東京自警団には大量の情報が入り込むため、それを迅速かつ正確に処理する必要もあるわけだ。
 その担当がブッチとハカセなのである。
 この二人と合わせて、五人。平均年齢が15歳と、自警団の運営が心配になる年齢である。まるでどこかのアイドルのようだ。
 リーダーのブッチ。15歳。
 開発担当のハカセ。16歳。
 交渉・会計担当のシュン。17歳。
 奪取・捜査担当のポフ(もといヌパン一世)。14歳。
 そして、兵器・戦闘担当のマコト。俺である。15歳と三ヶ月。
 以上、団員5名。

「まずこの一週間の状況報告を一人ずつ。シュン」

 バスの中でそれぞれのメンバーに決まった席は無く、皆適当に開いている席へ腰を掛ける。しかしまあ、座ると言っても背もたれのてっぺんに腰掛けるのがほとんどだ。なにしろバス全体が老朽化していて、座った瞬間にズボォッ! と席の底が抜けたりするのも少なくないからである。そこらへんの自警団よりよっぽど設備が悪い。
 今日、俺は運転席から見て三列奥の左列窓際の席に座っていた。ここから上を見ると、ちょうど天井が抜けているので空を見ることができるのだ。倍率は高い。
 ともあれ、シュンが口を開ける。

「僕の周りではしょぼい喧嘩しかありませんよ。たいした異常はありませんでした。北区、以上」
「相変わらず北区は荒れてんな。北区に新しく自警団でも設置しとくか?」
「予算ないヨー。人数は足りてるケド」


 ハカセが苦笑して笑った。シュンも止めておきます、と苦笑いを浮かべた。冗談だよ、とブッチが返す。
 ブッチがポフを指した。

「こっちも何も無し。どうでもいいけど、この前の南ナントカ要塞潜入作戦だっけ? あの時についでで持って帰ったアンティークがすごい高値で売れてラッキーだったなー! 南区、以上」
「自慢してんじゃねーよ、ポフ。こっちは散々警備員の相手してて忙しかったってのに」
「そう言うなよマコト。ポフだって目的の資料を根こそぎ奪ってきたんだぜ?」
「俺が言ってんのは分が悪いってことだよ、ブッチ。いくらポフの任務がスニーキングだったからって、文字通り体張った俺と儲けが一桁違うってのはおかしくねえかよ」
「私女だから」
「レディーファーストだろマコト。怒んな怒んな」

 女尊男卑もここまでになるとキツイな、などと考えながら俺はポフを睨むのを止めた。
 確かに役割として考えると、ポフはノルマをはるかに超えた働きを見せたと思う。しかし、『足止め』という一番地味で辛い肉体労働を強いられていたのは紛れも無く俺だったはずだ。生傷もどんだけ増えたことか。
 そんな事を考えているんだぜ、という顔をポフに向ける。しかし、ポフは舌を出して「へへー! べー」と言いだす始末だ。会議が終わったら許さないから覚悟しとけよあいつ。

「ハカセは?」

 ブッチが次に指したのは、何かの作業中のハカセだった。ん? 何? という顔のハカセにブッチが「いつもの」と言い、なるほどと納得した様子で、ハカセは作業を中断した。

「薬の取引が多くなってきてるネ。元々貿易区だから仕方ないと言えばそうなんだケド・・・・・・。でも、全部ミーのロボットが取引を潰してるから心配ないヨ! 西区、以上」
「なるほどね。・・・・・・ポフ、事が大きくなり始めたらお前の出番だぜ?」
「うぇー・・・・・・。仕事増やさないでねーハカセ」
「アハハ! 心配ナッシングだヨ!」

 ブッチも納得した様子で目線をポフから外した。
 ハカセのその流暢とは言えない、片言気味の言葉でポフをいろんな意味で笑顔にさせる。というか、個人的理由でポフには仕事を増やして欲しい。今度ハカセに相談してみるか。
 ハカセがブッチにノートPCを投げる。ブッチはそれを片手で受け取り、開きつつ俺に「マコトは?」と東区の情報を聞いてくる。器用な奴だ。IQ223あるのも頷ける(関係ねえな)。まあ、器用なのはいいが、電子機器は大切に扱ってもらいたい。良い子の皆は、お母さんやお父さんのPCをフリスビーの如く投げ渡すなんて事をしないように。

「今朝9:08、未確認の飛行物体を発見。L96スナイパーライフルで撃破。スコープで消滅を確認。毒物反応も見られなかった。偵察機に思われたが、形状・動き共に生物のようだったため、キマイラとも思われる。それ以外は異常なし。そして町長のおっさんを是非とも要注意人物リストに入れる事を提案する」

 東区、以上。

 

       

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