来たるべき日が訪れた。
腐敗した強者を地の底へと陥れ、弱者が手を取り助けあう世界へと生まれ変わるのだ。
薄汚いアパートの一室でケンイチは思考を巡らせていた。
これから革命をし、そこから新たな世界が始まると思うと胸が高なった。
準備は万端。
志を同じくする者の元ヘと向かうべく、
彼はアパートを後にした。
今日は彼が、彼らが、この閉じた世界を変えるために立ち上がる日。
無事成功することを祈り、ミライは学校へと向かっていった。
チバから招かれた凄腕のハッカーは金髪碧眼の男だった。
「俺は、第五構造体議会の警備を麻痺させればいいんだな?」
金髪の男は尋ねた。
「そうだ」
「了解だ。
言っておくが、俺は報酬分しか働かないからな」
「それでいい。
お前が仕事を成功させてくれれば、後は自分たちでやる」
「革命だか、反抗期だかしらないが、報酬分の働きはしてやるさ」
依頼の確認をした後、彼はこんな所じゃ落ち着けない、と言いどこかへ行ってしまった。
「よし、お前ら!
日頃の鬱憤をはらす時が来た!
思う存分やってくれ!」
隊長であろう男が声高く叫んだ。
この時ケンイチは自分の求めていたものとは違う何かを感じ取っていた。
しかし、ここまで来て、後戻りは出来なかった。
「所詮はゴロツキか」
金髪の男はどこからか、彼らの会話を聞き、呟いていた。
そしてこの後、革命が実行された。
ハッカーの活躍により警備システムは無効化され、議長、議員、その総てが殺された。
ここまでは順調だった。
しかしここからがダメだった。
新たな代表者が決まらなかったのだ。
結局は仲間内で殺し合いを始める始末。
そして構造体防衛軍の介入も始まり、あっという間に制圧されてしまった。
ケンイチはどうにか逃げ出し、そしてボロアパートに帰っていった。
「革命なんてできっこない。
いや……やり方を間違えたんだ……
ミライに合わせる顔がないな」
彼は一人、膝御抱えて涙を流していた。
後に彼は革命の主犯者の一人として捉えられ、銃殺刑にされた。
この革命の一件は、失敗であったが、これを種火として、第五構造体各地で暴動が起きていた。
住民は皆鬱憤がかなり溜まっていたのだろう。
金持ちは殺され、犯され、完全に紛争地となっていた。
革命から一月程たったある日、ミライは身体を売りに行くべく、街を彷徨っていた。
敬愛していた父は殺され、金は一文無し。
彼女には娼婦になるしか道が残されていなかった。
少なくとも彼女が考えた限りではそうするしかなかった。
ケンイチを失い、父も失い彼女には何も残されていなかった。
しかし、一つ、たった一つだけ彼女には残されたものがあった。
「あたしは……世界を変える。
狂った世界を変えてみせる。
ケンイチ君が出来なかったこと、お父さんがやらなかったことを、絶対にやってのけてみせる。その為なら……」
目の前でゲリラがM6に撃ちぬかれるのを見て彼女は呟いた。
その顔は笑みを浮かべながらも涙を流していた。