「第五までは大体五日か。
あっちに着いて一日は余裕があるな」
森の中をジークフリートを操縦し、第五構造体を目指し動きるづける二人。
ジークフリートは複座式で、一人は操縦もう一人はオペレーターの役目をする。
大体の機士は複座式なのだが。
大きさは大体7mで重装でもなく軽装でもないバランス型。
モノアイタイプのカメラが特徴的だった。
背中には高さ3m、幅2m、奥行き1mのバックパックが付けられていた。
操縦しているのはブラウで、オペレーターをしているのはサクラだ。
「久々に外に出ましたが、こんなに静かでしたっけ?」
「こんなもんだろ。
さて、暇だしBGMでも」
操縦桿から手を離し右はじにあるボタンをいじるブラウ。
すると、ベートーヴェンの運命が流れだしてくる。
ダダダダーンで有名なあの曲だ。
「なんでこの曲何ですか?」
わけわからんと言いたそうな表情のサクラ。
「曰く、運命はこのようにして扉を叩くらしい。
それに俺たちが向かうのは第五構造体。
この交響曲も第五番だ」
「ついでに最初の"アノ"部分がモールス信号の"V"にあたるから、ですか」
「そうそう。
勝利(Victory)目指してってことよ」
「一々趣味が古臭いですね」
「懐古主義的なのよ」
ふ、とサクラはレーダーに目を追いやる。
敵影はないようだ。
「やっぱりおかしい。
前に構造体の外に出たときは襲われっぱなしだったのに」
サクラは眉間にシワを寄せ呟いた。
「そりゃ対策ぐらい講じるわ。
襲われっぱじゃあ弾薬が持たない」
どうでもいいことだがコックピットハッチは開かれており、
心地よい風が二人に当たっている。
日は既に傾いており、辺りが暗くなりかけている。
「一日目の目標地点に到着したみたいです」
「了解。
じゃあここで野営だな」
ジークフリートは立て膝の体制になり、丁度バックパックの下部が地面についた。
ブラウがバックパックのボタンを押すと、側面が開き、中には簡易ベットと、倉庫が鎮座していた。
倉庫の部分には念の為の予備バッテリーや、弾薬、食料が詰められている。
そこから二人分の食料をブラウが取り出してきた。
「この合成食料マズイんですよね」
サクラはかなり嫌そうな表情をしている。
「贅沢言うなよ。
味は置いといて、十分な栄養と水分は確保出来るだろ。
二人が食べている合成食料は色のないゼリー状のモノだ。
食事も無事終わり、夜の見張りは二時間おきに交代しつつやることになった。
夜中、敵に襲われることもなく、無事に一日目は終了した、
二日目の昼時、件の合成食料を飲み、二人は移動を続けていた。
レーダーには敵影はなく一日目と何も変わらず二日目は終わりを告げた。
三日目。
「構造体が近いからそろそろやばいな」
少し真剣な表情をするブラウ。
「まだレーダーには敵影ありませんね」
五分ほど移動を続ける。
「……機影発見。
5km先に一機。
旧米軍のM6タイプです」
曰く、ジークフリートにはレーダーに補足されない装置が付いているのだとか。
「ジークフリート、戦闘モード移行」
ブラウは言った。
「戦闘モード移行、了解」
復唱するサクラ。
ジークフリートのモノアイが赤く輝く。
駆動音が大きくなり、ロックオンサイトがモニタに映し出された。
腰にマウントしていた40mmライフルを構え、足に取り付けられたキャタピラでの高速移動を開始した。
機影まで後500mの所で、ジークフリートはライフルの二脚を用いた伏せの射撃姿勢に入った。
ロックオンはせず、精密射撃モードに移行した。
ロックオンをされると、警告音が発生し敵にバレるからだ。
「あの機体の識別コードは?」
「第五構造体のゲリラのものですね」
「じゃあ攻撃しても問題ないな」
一応敵の所属を確認したブラウ。
目付きは真剣なものになり、照準に敵を収めていた。
そして引き金を引き絞る。
40mmライフルの銃声が静かな森に鳴り響く。
敵は二人に気づいてはおらず、あっという間に穴だらけになり倒れた。
「敵機撃破」
「撃破確認」
そして二人はジークフリートを敵機の残骸に近づける。
ブラウはコックピットを開き、外に飛び出した。
「どこ行くんですか!」
「あの機体からゲリラ共の情報を取り出してくる!」
倒れた機体の頭部に近寄り、ハッチを開きメインCPUにケーブルを差し込み、
もう一端を彼の首にある挿入口に繋ぐ。
重要そうだと思う幾つかの情報をブラウは抜き出した。
対ゴスペル時の作戦概要や、この大破した機体のID、敵味方識別コード、パイロット情報、第五構造体の地図等だ。
そしてブラウはジークフリートの元へ戻りコクピットへよじ登った。
「あの機体のIDを拝借してきた。
これを使えば少なくともゲリラには攻撃されない」
さっきの機体にやったのと同様に、コクピット内のジャックと首とのジャックを繋ぎ、
IDを書き換えた。
IDのおかげもあり、この後戦闘もなく三日目は終了した。
四日目、五日目は、何事もなかった。
こうして無事、第五構造体に二人は到着した。