Neetel Inside 文芸新都
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 「持って来ましたよ、ブラウ」
背負っていたボリスを、ブラウが用意していたパイプ椅子に座らせるサクラ。
「お疲れ様」
コーヒーの入った紙コップをブラウはサクラに手渡した。
そしてブラウは縄を取り出し、ボリスを椅子に固定した。
「で、どうするんですか?」
「まずは意識を回復させる」
そう言ってボリスを何度か小突くブラウ。
サクラはコーヒーに、簡易デスクに置いてあった砂糖とミルクを大量に投入し飲んでいた。
「くっ……どこだココは?
貴様は……?」
まだ意識は朦朧としているようだ。
「お客さん、料金滞納されると困るんですよね」
顰め面のボリスとは反対にブラウはニヤニヤしている。
「貴様まさか、チバのブラウか!
何故生きている!」
「簡単なことさ。
脳みそのデータ全部を別の体躯に引き継いだのさ。
まぁ、こんな事出来るのは俺ぐらいだろうけどな。
堕ちた楽園の魔法使いは簡単には死なないのよ」
「Shit! 化け物め」
「そう呼んでくれて結構」
ブラウは椅子に縛り付けられているボリスの背後に回り込み、
彼の首と自分の首とを接続した。
数分、ICEを解析し、そして彼はボリスの脳に侵入した。
「中々金持ちじゃないの」
「貴様、私の金が目当てか」
「金も目当てだよ」
ボリスの脳を物色するブラウ。
こういった事態の対処法をボリスは学んでいるのだろうが、ブラウの技術の前では何の意味も成さなかった。
 「接続成功っと」
「これは、俺の家のカメラ……」
「そう、お前の脳にあったそのカメラへのリンクを使って、
この映像を投影している」
ボリスは家の様子をいつでも見られるように、そのカメラを設置したのだろう。
「何をする気だ」
「まあ見てな」
カメラには彼の妻子が映っている。
動揺しているボリス。
「どうした?心拍数が上がってるぞ」
「貴様……まさか!」
ブラウの口角が釣り上がる。
「やめろぉ!」
叫ぶボリス。
止めろと言われて止めるはずのないブラウ。
カメラの映像に動きがあった。
映っていた彼の妻と子が頭を抱えて倒れこんだのだ。
<痛い、痛いよお母さん>
<大丈夫よすぐに治るわ……>
涙を流す息子と、痛みを堪え、息子を安心させようとする母。
ブラウは今、ボリスの脳を介し二人の脳に過負荷をかけている。
「マイケル! アカネ!
止めろ止めてくれ!」
「魔法使いに喧嘩を売ったんだ。
コレぐらいされても文句は言えないぜ」
しばらくすると二人は目や鼻から血を吹き出し、動かなくなった。
「あぁ……マイケル、アカネ……くそっ、くそぉ……」
ボリスは涙を流している。
「さて、正義の魔法使いである俺がこんなことをしたのがバレてはマズイのでね。
別に騙しちゃいないが、アンタにゃ死んでもらうぜ」
ボリスの脳内に保存されていた電子通貨を全て引き落としケーブルを抜き、彼の正面に立つブラウ。
「あぁ……くそぉ……」
ボリスは絶えず涙を流している。
「哀れだなボリス・ランバート。
新型機欲しさに馬鹿なことするんじゃなかったな。
えぇ?」
胸につけていたホルスターからブラウ愛用の拳銃、P8を抜きスライドを引いた。
「よい旅を、ランバート。
あっちで家族にあったらよろしく言っておいてくれ」
椅子に縛り付けられ、うなだれている男に照準を合わせ、ブラウは引き金を引く。
コーヒーを飲み終え、暇そうにしていたサクラに、ブラウは帰るぞ、と言い、
二人はその場を後にした。
 ……貸し倉庫には、椅子に縛り付けられた死体が佇んでいた。

 今二人はジークフリートに乗って第五構造体から千葉市へと戻っている。
本物の空は赤く染まっている。
「……貴方のああいうところ、キライです」
ボリスの妻と子共を殺したことを言っているのだろう。
「悪いね、やられたことは何倍にもして返す主義なんだ。
良い事にせよ、悪いことにせよ」
「貴方らしいです」
「まあな」
ゲリラとゴスペルの戦闘は既に終わっており、辺りは静まり返っている。
「そうだブラウ、帰ったらまた貴方のガレージ見せてくれませんか?」
「別にいいけど」
「ありがとうございます」
こうして二人は仕事を終え、薄汚れた街へと帰っていった。

       

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