Neetel Inside 文芸新都
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文芸クリスマス企画~あんち☆くりすます~
僕のサンタさんはどこで僕をしているのか/G.E.

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 僕は知っているんだ! サンタさんが普段、なにをしているか。

「なに寝ぼけたこと言ってるのよ……そんなこよりも、サンタさんからのプレゼント、早く決めちゃいなさい」
 ママはこうやって、僕の話を聞いている素振りを見せて、話をはぐらかす。
 僕は知っているんだ! サンタさんの収入源を!

「そんなこと言ってると、今年はサンタさんこないぞ?」
 パパはこうやって、僕の話を聞いている素振りをみせて、話をはぐらかす。
 僕は知っているんだ! サンタさんの笑顔の理由を!

「えー、またそんな嘘ついてー。そんなこといってるとね、サンタさん来ないって、お父さんが言ってたもん!」
 お友達のさっちゃんはこうやって、僕の話を聞いている素振りをみせて、僕の事を叱る。
 僕は知っているんだ! サンタさんがどうやっておもちゃを手に入れているか!

「はい、はい。……分かったからこの問題を解こうな?」
 僕の担任の先生はこうやって、僕の話を聞いている素振りを見せて、僕に問題を解かせようとする。
 僕は知っているんだ! サンタさんの洋服が真っ赤な理由を!

 毎年、僕はクリスマスにサンタさんが来るまでの間、いつもこうやってサンタさんが危険だって、皆に説明するのに、皆は僕のことを「嘘つきだ」って言って、誰も僕の言うことを信じてくれないんだ。
 この間なんて、さっちゃんに「そんなこと言ってる暇があったら、私とおままごとやりなさいよ。そうすれば話を聞いてあげないこともないわ」って言うから、旦那さん役をやってあげたのに、ママゴトが終わると、さっちゃんは「今日はありがとう。あー……サンタさんの話は、この間訊いたからもういいや」と言い残して、帰ってしまった。
 この間なんて、パパに「なんで皆が黒って言ってる物を白っていったりするんだ? いいか? サンタさんはそんなことしないし、サンタさんは身近な場所にいるんだぞ。お前の思っているサンタさんなんてどこにもいないんだ。分かったか?」って、叱られた。パパの特別痛いげんこつの痛さは思い出すだけでも、頭が痛くなりそう。
 この間なんて、担任の先生に「どうしてこんな問題も解けないんだ? お前を指すといつも『サンタさんの話』をするけどな、俺が訊いているのは、サンタさんの話じゃなくて、今、黒板に書いてある問題の答えなんだよ。サンタさんはもういいから、答えを教えてくれ」って、怒られた。その後クラスの皆が、僕の事を見てクスクス笑っていたのが印象に残っている。
 この間なんて、サンタさんに「お前の行動は逐一把握している。ヘタな行動はするな、もう、お前にプレゼントは渡さないぞ」と脅された。あれがどのサンタさんだったかは覚えてないけど、でも、あれは確かにサンタさんで、いつもとは違うかっこうをしてたけど、絶対に、あの人はサンタさんだったんだと思える。だって、あのサンタさんは黒い服だったけど、赤い服を着た瞬間、あの人はサンタさんになると思う。

 もうすぐクリスマスだっていうのに、ママが僕の事を心配して病院に連れていってくれた。
 病院の先生とママがどんなことを喋ったのかは知らない。だって僕は看護婦さんにサンタさんについてを喋っていたから、ママとお医者さんがサンタさんについてなにを喋っていたのかは知らないし、そもそもあの人は歯医者さんじゃなくて、お医者さんのかっこうをしたサンタさんだと思う。この看護婦さんもきっとサンタさんのお友達かお嫁さんで、本当のことを知っている僕を見張っているんだ。きっと僕はそうだと思った。
 
 もうすぐクリスマスがやってくるというのに、街の皆はクリスマスを歓迎する気まんまんで、僕は恐ろしい限りです。
 あっちこっちに電飾が飾り付けられた街並みは綺麗ですね。でも、僕はダメです。なにがダメなのか、そんなの簡単です。クリスマスが来るということは、そこからサンタさんも来るからです。サンタさんがどうして僕達におみあげ……あ、間違えた。プレゼントを持ってくるのかなんて、知りません。でも僕は知っているんです。サンタさんが、そのプレゼントを手に入れるためなにをしているか知っているんです。
 僕の方がみんなよりサンタさんのことを知っているのに、皆は僕のほうがサンタさんを知らないと言います。なぜかは知りません。僕が知っている真実を、皆は知りたくないからかもしれません。
 
 ある日、僕に誰かが出来ました。
 パパとママが僕の元に誰かを連れてきてくれました。誰かはまだ喋れませんが、目がクリクリしててそのついでに頭もクリクリなので、女の子かどうかは知りませんし、。分かりません。
「僕です、ベロベロー」
 僕は誰かを笑わせようと、必死に、必死に面白い顔をしようとしましたが、ダメでした。誰かは笑ってくれませんでした。

 誰かがまた僕の所に来ました。
 誰かは背が伸びて、いつの間にか一人で歩けるようになっていました。しかも口を達者に動かして何か喋ってるようです。ガラスを一枚隔てた場所に居る僕には、誰かが何を言っているのかわかりません。なにより、僕は驚きました。誰かはついこの間生まれたばかりのはずなのに、なぜ、誰かはこんなに大きくなっているのでしょうか? ……これもきっとサンタさんの策略としか思えません。
 でも、そんな誰かですが、可愛かったと思います。僕に顔が似ているのかどうかは分かりません。最近、僕は、自分の顔を見たことがないので、わかりません。

 最近、外は寒そうですが、僕の居る所は相変わらず暖かいままで、外そ僕の居る場所の差を見ながら、舞い散る枯葉を見ては、ひたすらクリスマスが近づいてきていると繰り返していました。そんな僕の前にクリスマスがもうすぐやってきます。
 なんと、サンタさんがついに僕に会いに来るらしいです。僕はサンタさんをどう倒そうか、って考えるのを辞めました。

 最近、思ったことがあります。
 もしかしたら、僕は誰かでも誰でもないサンタさんで、もしかしたら僕がサンタさんなのではないかと。どうして僕にはクリスマスとサンタさんが毎年こないのかって考えたらそうなりました。
 もしかしたら、真っ白いこの部屋で寝ている僕は僕であるけどサンタさんの何かで、本物の僕であるサンタさんは今日もどこかで子供のために強盗や殺人をしているんじゃないかと。
 誰が僕に、サンタさんは君たち、子供のために人の命を奪って強盗してるんだって教えてくれたのか、全然思い出せませんが、もしも、僕がサンタなら、僕が僕にそう言っているだけだったのかもしれません。
 何者でもない僕は、今日も腕を拘束され、足を拘束され、ベッドの上に体を拘束されたまま、寒そうな外の世界を見ながら、もうすぐ来るであろうクリスマスを楽しみにして、こう思い続けるのです。
 ……僕のクリスマスは、いつ来るのでしょうかって。
 


 はじめましてこんにちはこんばんはおはようございますおやすみなさい。
 G.E.です。
 大便を我慢する話やら、パンツを覗きみたい話やらを書いている、いたのですが、たまにはこんなのもいいじゃないかと思って筆を進めた結果がこれですよ。
 なんなんですかね、これ。

       

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Neetsha