Neetel Inside 文芸新都
表紙

文芸クリスマス企画~あんち☆くりすます~
サンタガールの危機/匿名ちゃん

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※抜けるレベルじゃないけど、読む時は周りに気をつけてください。



※R-15※



 我が家は代々サンタさんとして子供たちにプレゼントを配り歩いてきた、らしい。
 なんでらしいかって言うと、私はお父さん以外のサンタさんを見たことがないからだ。おじいちゃんやおばあちゃんどころか、お母さんだって私にはいない。
 でも、寂しくなんてないのだ。
 だって、私にはお父さんがいる。ダンディなおひげのナイスミドル。世間一般に思われてるサンタさんの像からは離れてしまっているけれど、それでもクリスマスには子供たちにプレゼントという名の夢を配る、正真正銘素敵なサンタさん。お父さんはサンタさんとしてだけじゃなくてお父さんとしても最高で、口数こそ多くは無いけれど、優しくいつも私を見守ってくれている。
 私はそんなお父さんが大好き。少しでも力になりたい。
 男手一つで私を育ててくれたのだ。恩返しがしたい。
 そんな想いは日に日に募っていき、ついにその日がやってきたのだ。


「ホントに手伝わせてくれるのっ?!」
 私はテーブルから身を乗り出すようにしてお父さんに訊ねた。
 十二月二十三日。もう夜といっても差し支えの無い時間なのに、窓を覆うカーテンの空から覗ける空が白いのは、緯度が高いせい。外はきっと凍てつくくらいに寒いんだろうけど、我が家であるログハウスの中は暖炉で薪が燃えているおかげで、温かいくらいだ。
 思わす声を荒げた私に、お父さんは一度食事の手を止めてナプキンで口を拭うと、
「そうだな。お前ももう十七だ。きっと上手くやれるだろう」
 そう言って、優しく微笑む。
 それだけでもう、私はノックダウン。ファザコンだって笑われるかもしれないけど、それくらいお父さんのことが好きで好きで、たったそれだけのことなのに頭がぽーっとなってしまう。
 でも、いつまでもそうしているわけにもいかないので、私は顔が火照っているのを自覚しながら、両手の人さし指を合わせてもじもじさせつつ訊く。
「……でも私、女だし、大丈夫かな?」
「はっはっは、そんなこと言ったらお父さんだって白髭でもお爺さんでもないぞ?」
 滅多に見せてくれない茶目っ気たっぷりの笑顔に、またドキリとさせられてしまう。
「そ、そうだよね! 頑張るっ!」
「その意気だ」
 私が胸の前で両手を握り締めると、お父さんは目を細めてそれを見つめてくる。
 すごく、幸せだ。
 たったこれだけで私をこんなに幸せにできるのは、きっとお父さんが世界で一番素敵なサンタさんだから。
 それが何よりも誇らしくて、けれど少しだけ嫉妬してしまう。
 だって、お父さんは私だけのものじゃなくて、皆のサンタさんだから。それがほんの少しだけ嫌だったけど、すぐに私は思い直す。
 確かにお父さんは皆のサンタさんだけれど、お父さんは私の、私だけのお父さんでもある。
 そして、私は世界で最高のサンタさんの娘だから、お父さんを手伝うことができるのだ。
 それは私だけの特権で、私にしかできない重要なお仕事。
「お父さん。私、頑張る!」
 決意を改めて宣言。
「いい子だ。……さて、ご飯が冷めてしまうよ。今日の深夜には出発だから、ちゃんと食べておかないとな」
 お父さんはそう私に微笑みかけると、まだ途中だった夕食に戻る。
「うん……」
 私は胸の奥から愛おしさがこみ上げてくるのを抑えながら、少しだけ顔を俯かせたのだった。


「うぅ、これで大丈夫かなぁ」
 その日の深夜、私は自室のベッドの横にある姿見の前でくるくる回りながら、自分の姿を確認していた。
 サンタのコスチュームである赤の三角帽とコート。女の子用にとお父さんが繕ってくれたコートは鎖骨と肩を露出するタイプの細身のもので、下はというと可愛らしいミニスカート。ちょっとせくしぃな黒タイツで寒さ対策もバッチリ。
「お父さん、可愛いって言ってくれるかなぁ……」
 私はいい加減くるくると回るのをやめて、今度は自分の顔のチェックに移る。
 髪は茶色。後ろは肩までより少し短くて、前髪が少し目に届きそうなのを見て切っておけばよかったなと少しだけ後悔する。顔立ち自体は自分でも可愛い方なんじゃないかなと思うけれど、ちょっと垂れ気味の目もぷっくりした頬も小さめの口も、子供っぽいんじゃないかと自分の中ではコンプレックスだった。
「おっぱいは大きいんだけどなぁ」
 揉むようにして自分で胸を鷲掴み、鏡の中の自分を睨みつけて口を尖らせながらぼやく。
 横には成長しなかったけれど縦にも成長しなかった自分の体は、どう考えても子供みたいなのに、そこばっかり育ってしまった。
 日常生活に不自由するほどの大きさではないけれど、不格好な気がするし肩は凝るしで、これもコンプレックスの一つ。
「うー、大丈夫かなぁ」
 自分の姿を見れば見るほど不安になってくる。
 今更だけど、こんな子供みたいなのにちゃんと手伝えるんだろうか。そして何より、お父さんに笑われないだろうか。
 子供っぽいならで全部子供っぽかったら自分の容姿にも諦めがつくというのに、胸だけ大人になってしまったから拘ってしまう。
 いっそ縮めばいいと、自分の胸をひたすらに揉み解す。
 すると、
「………………うっ……?」
 なにか、不思議な感覚が体に走った。
 胸に電気を流されたみたいな感じ。
「今の、何?」
 怖い。でも、気持ちよかったような……?
 その、正体不明の感覚が何なのか知りたくて、私はつい止めてしまっていた手を今度は丁寧に回すようにして動かす。
 さっきはどう動かしていたのだったか。
 記憶を辿るようにして、指に波打つような動きをするように指令を送る。小指から人差し指。一度曲げた指はまたすぐに伸ばして、まるで牛の乳絞りみたいに。
 どんどん変な気分になってきて、思考が狭まっていく。
 そう、乳搾り。乳搾りではどうやってお乳を出すんだったっけ。お乳が出るところは先っぽだから、多分先っぽを弄るんだ。
 コートとブラジャーの下で自分の胸が形を歪めるのを感じながら、先っぽの辺りを強く、押し付ける。
「んっ……!」
 電気はさっきよりも強い。
 もう、それが快感だと自分でも気付いていた。
 手は止めない。どこへ向いているともわからない、漠然とした罪悪感。これがどういうふうに呼ばれる行為であるか私は知っている。けれど、甘さを伴う痺れにも似たその快感は、どうにも手放し難い。脳を麻痺させる熱を持ち始めた体もそれを助長する。
「あっ…………ん……………………っ!」
 快感を味わいながら、私は一つの感覚に取り憑かれ始めてきた。
 足りない。
 物足りないのだ。
 このままだとコートやブラジャーの分厚い壁があって、存分に感触を楽しめない。
 もどかしさは快感が私を襲う度に強くなっていく。
 もっと、もっと、欲しい。このままじゃダメなのだ。もっと強く。
 手の動きは乱暴になっていくけれど、それでもまだ足りない。
 直接弄りたい。でも、もう出発しないといけないのだ。お父さんが待って――。
「お、父さん……っ!」
 ――ダメだ!
 こんな、エッチな事をするのにお父さんのことを思い浮かべるのはダメなのだ。いけない。とてもいけないこと。だってお父さんは私のことをそんなふうには思っていないのだから。幻滅されるかもしれないのだから。
 これは絶対にいけないこと。
 例え、もっと変な何かが来てしまいそうになったのだとしても。
 でも――。
「……お父、さんっ…………お父さん……っ!」
 手が止まらない。
 疼く、疼く!
 でも、『ここ』を直接弄っても、この物足りなさは満たされないのがわかってしまった。
 コートの上から押し潰すつもりで、握り潰すつもりで手を動かす。自分でもいやらしいと思う。服が乱れ、胸の形は一瞬とも留まることなく、先っぽにブラジャーの生地が擦れる。
 知らず、自分が内股に、前屈みになっていたことに気がついた。
 呼吸は激しくなる。
 そうだ。さっきから、こっちの方も疼くのだ。
 触りたい、弄りたい、ぐちゃぐちゃにしたい。
 けれど、こっちを、お腹の下にあるあそこを弄ってしまうともう戻れなくなる気がして、怖い。どこに行ってしまうのかもわからないけれど、その感覚は未知のもので、何よりもこっちをそういう気持ちで触るのは、胸にそれをするよりも遥かにいけないことであるように感じられてしまう。
 これ以上はダメだ。戻って来れなくなる。
「……お父さん――っ」
 意志に反して、右手がゆっくりと体を下の方に這っていく。
 鳩尾から臍、疼くそこは一度通り越し、スカートをたくしあげる。
 自分の吐息がやけにうるさい。
 半ば蕩けた頭で、ダメだってわかっているのに、手が止まらなくて、ついにその場所に手が触れて――。
「――もうそろそろ出るぞ。準備は大丈夫か?」
 部屋の外から、声が。
 反射的に体が硬直。けれど、すぐに今までやっていた行為をやめ、慌てて服の乱れを整える。
「……だ、大丈夫だよっ。いつでも出れるよ!」
 ドアを開け、そこに立っていたお父さんに平静を装って声を掛けた。
「ん? 顔が赤いぞ?」
「は、初めてだから緊張してるんだよっ!」
 先程までのことを思い出して激しく鼓動する心臓を宥める。
 気付かれていないか不安になって上目遣いに見上げると、お父さんは意外そうな顔をした後ににやりと笑う。
「はっはっは、お前が緊張か」
「もー、私だって緊張くらいするんだからね」
 頬を膨らませる。
 するとお父さんは苦笑すると、頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「はっは、すまない。じゃあ、行こうか」
 そう言って身を翻す父親の後ろ姿に、どうしても胸が高鳴ってしまう。
 胸がきゅーっと苦しくなって、つい撫でられた頭に手を遣った。
 顔も、体も、熱い。
「どうした? 置いてくぞ?」
「ま、待ってよっ」
 先を行くお父さんの呼び掛けに慌てて返事を返す。
 そして、急いでお父さんの後についていくも、私はある一つのことが疑問として心に浮かんだ。
 どうして今日に限ってあんな気分になったのだろう。
 変な物でも食べたのだろうか。
 今までだって自分の胸が小さくなったらいいと思って胸を揉んだことがある。でも、あんな気分になるのは初めてだった。いくら考えても答えは出ない。
「ま、いっか」
「どうした?」
「んーん、なんでもない」
 私はそれ以上考えることをやめて気持ちを切り替える。
「そういえば」
「なに?」
「その服、似合ってるぞ」
 振り返って告げられたその言葉に胸がときめいた。
「あ、ありがとっ」
 さっきまで考えてたことが馬鹿らしくなってくる。
 変な物を食べたかなんて。今日の夕飯を作ったのはお父さんなのだ。お父さんがそんな変な物を作るはずがない。
 こんなくだらないことを考えることなんてないんだと私は決めつけ、もう一度気合を入れ直す。
「よぉしっ、頑張るぞっ」



※R-18※



 日本。二十四日未明。
 日本にしては広い敷地を持つ家屋ばかりが並ぶ高級住宅地の上空。私はお父さんが手綱を取るトナカイのソリに同乗して、遠くにきらめく街の明かりを眺めていた。
「日本は真っ暗なのに明るいんだぁ」
 人工物に照らされた空は天然のそれよりは暗いはずなのに、故郷の空と同じように星が少ない。気温も少しばかり暖かく、その影響かは分からないけれど、故郷のピリリと引き締まった空気とは違って妙に濁っているかのような印象を受ける。
「そろそろ目的地に着くぞ」
「はーい」
 顔だけこちらに向けたお父さんに返事。
 なんで日本にいるのか。
 お父さんに聞いたところ、ここで子供達に贈るプレゼントを手に入れるらしい。その方法はわからないけれど、実際今ソリに乗っているのは私とお父さんだけだった。
 ゆっくりとソリが下降していき、あるお屋敷の庭に着地する。
「お前に言っておかなければいけないことがある」
 トナカイを宥めながらお父さんが言った。
「なに?」
「サンタのことについてだ」
 今更、どんな秘密があるというのか。
 思いのほか真剣なお父さんの言葉に、私は居住まいを正してその続きを待つ。
「サンタはどうやって子供たちへのプレゼントを手に入れると思う?」
「……わかんない」
 私は考えた末にそう答えた。
 それはずっと不思議だったことで、どんなに考えても答えは出なかった。
 でも、トナカイを飛ばすことができるのだから、そういう力があるのだろうと考えていたのだ。
 そして、お父さんがその答えを口に出した。
「サンタだって全能じゃない。プレゼントを買うにはやっぱりお金が必要だ。それでな、サンタは悪い人達からお金をとって、それをプレゼントを買うのに使っているんだ」
 明かされた衝撃の事実。
 私は驚きで口をあんぐりと開け、すぐに我に返って訊ねる。
「で、でも、それって泥棒じゃ」
「ああ。しかし、悪い人からしか盗まないし、それで子供たちに夢を与えられるならそうするべきだ。私はそう信じている」
「でも……」
 言い募ろうとする私の言葉を遮って、お父さんが告げる。
「もちろん、お前に強制するつもりはない。やりたくないというなら、サンタになれない以上お前とはここでお別れすることになる。この国は治安もいいし多少は苦労するだろうがやっていけるだろう。……どうする?」
 じっと、私の答えを待つお父さんの顔を見て思う。
 そんなの、ずるい。
 私がお父さんから離れられるはずがないのだ。
 躊躇がなかったわけではない。
 けれど、お父さんと一緒にいる為に、私は宣言した。
「やる。私もサンタになるっ」
「そうか。いい子だ」
 お父さんの、いつも通りの優しい笑顔。
 なのに不安を感じてしまうのは、なぜだろう。
 私はなぜだか痛む胸をそっと押さえる。
「まずはこの家からお金をもらう。行くぞ」
「うん」
 全部気のせい。私はお父さんの為に出来ることをしないと。
 私は色々な想いは降り捨てて、お父さんの後について行った。


 お屋敷に入ってからは、本当に一瞬の出来事だった。
 人気の無い暗い廊下。お父さんに指し示されたお金があるという部屋。針金のようなものでお父さんがそれを開ける。暗闇で覆われた室内。お父さんが持っていたランタンに明かりをつける。同時、お父さんの頭に棍棒のようなものが振り下ろされ、地に這う。唐突につけられた明かり。目がくらんでいる内に私も床に押し倒される。床に押し付けられながらもなんとか見えたのは、十数人の黒いスーツを着た男の人と、一人だけ仕立ての違う紫のスーツを着た、でっぷりと肥った男。
 簡単に言うと、私たちは捕えられたのだ。


「ほっほっほ、これはこれは可愛らしいお客さんですね」
 恐らく一番偉いのであろう紫スーツの男の人が、いやらしい笑みを浮かべながらそんなことを言った。
 やけに広いのに家具などを一切置いていない空っぽの部屋。それでも妙に狭く感じるのはずらっと並ぶ黒服達の威圧感のせいだろう。誰も彼もが妙に熱っぽい目で私のことを見つめているのが、何故だかとても気持ち悪かった。
 私は後ろ手に両手を縛られて床に座らされ、お父さんは気を失っているのか男の人の隣でぐったりと横たわっている。
 私は恐怖で視界を滲ませつつも、男の人たちに吠えかかる。
「お父さんを離してよっ!」
「ほほほ、面白いことを言う娘さんだ。盗人にそんなことを言う権利があるとでも? それに、あなたのお父さんは拘束されてないのですから、離すも何もないと思うのですが」
「あんた達がお父さんを気絶させたんでしょ!」
 怖い。これから何をされるのだろうか。
 恐怖で震えそうになるのを必死に抑え込む。
 せめて、せめてお父さんは助けないといけない。
 私は勇気を振り絞って叫ぶ。
「お父さんはサンタさんなのっ! だから……!」
「だから、なんです?」
 ぞっとするような冷たい声。
 思わず凍りつくと、男の人は笑みはそのままなのに少しも笑っていない目で私を見下していた。
「サンタだから、なんです? 盗みも許されると? わざわざ私の屋敷を選んだということは、私がどういう人間か知っていたのでしょう? なら、もし見つかった場合どうなるかわかって、覚悟していたのでしょう?」
 男の人が右手を上げると、すぐそばに立っていた黒服が懐から拳銃を出してお父さんに向けた。
「こうやって殺されるかもしれないと……」
「やめてっ!」
 涙が零れ落ちた。
 お父さんが殺されてしまうかもしれないと考えるだけで頭が真っ白になり、折角抑え込もうとしていた震えが体を支配した。
 泣きながら、私は懇願する。
「な、何でもします。だから、お父さんは、お父さんだけは……!」
「助けてほしいと?」
「はい……」
 男の人が繋げた言葉に、私は力なく頷いた。
「ふむ、そうですね……」
 品定めするような男の人の視線に居心地の悪さを感じて、私は身を縮こまらせる。
 湧いてきたのは少しばかりの後悔。
 一体何をさせられるのか。恐怖とともに襲い来るそれを必死に宥める。
 お父さんを助けないといけない。お父さんのためなら何でもできる。
 そうやって私は自分を奮い立たせていると、男の人が告げた。
「いいでしょう」
「ほ、ほんと!?」
 良かった。助かった。
 悪い人ではあるけれど、話したらちゃんと分かってくれた。
 安堵と共に訊ね返すと、男の人はにっこりと笑って、
「では、ここにいる私の部下の性欲処理をお願いします」
「…………え?」
 思考が、止まった。
 今、この人はなんて言った?
 セーヨクショリ。性欲処理。つまり、何をさせられる?
 私が思考を進めるのを待たず、男の人が感情を感じさせない声で黒服達に命じる。
「やりなさい」
 黒服達がにじり寄ってくる。
 欲情にぎらつく目。股間が膨らんでいる。
 私の頭は恐怖に染まり、足と縛られた両手を使い後ずさった。
「やっ……!」
「おっと、逃げたり暴れたりしたら愛しのお父さんがどうなっても知らないぜ?」
 黒服の一人がニヤニヤとした笑みを浮かべた。
 その言葉に私は動きを止めざるをえなくなる。
 お父さんを助けるため。けれど、怖い。嫌だ。気持ち悪い。
 僅かな逡巡。その間に黒服達は私を囲んだ。
「おっ、ガキのくせにいい体してんじゃねえか」
 黒服の一人が私の胸に手を伸ばし、掴む。
「やめ……!」
「暴れんじゃねえよ」
 振りほどこうとすると、肩を二人がかりで押さえられた。
「胸でっけえな」
「足もいい感じだぞ」
 そして、そのまま体中をまさぐられる。
 いくつもの手が私の体の上を這った。
 無遠慮に胸を揉まれ、太ももを撫でまわされる。帽子は奪われ、頭に顔を埋められ臭いを嗅がれる。
 気持ち悪い。虫が這っているかのような生理的嫌悪感に吐き気がする。
 黒服達は私の事情なんて一切考慮せず、それぞれ欲望のまま私の体を弄ぶ。
 体はしっかりと固定され、無理矢理開かされた脚の間には黒タイツ越しにパンツが見えてしまっていた。
「水色の縞パンか。本当にガキくせえな」
 じろじろと見られ、羞恥に顔が染まる。
 屈辱。私は懸命に涙を堪えた。
 お父さんの為に、お父さんを守る為に、我慢しないといけない。
 そうして、何とか気を強く保ち、
「それじゃあ、おっぱい御開帳ぉ」
 ずり下げられたコートから胸が露出したことで全部吹き飛んだ。
「きゃあああああああああああああああああ!」
 胸を見られている。
 恥ずかしい、何より気持ち悪い。
 何とか隠そうと必死で身を捩ろうとするけどそれも彼らは許してくれない。
「やだ……っ。やめてよっ……!」
「うわ、でっけえ。乳首も綺麗なピンクか」
 まじまじと観察されている。
 耐えられない。涙が零れ、頭が真っ白になる。
「それじゃ、直接いきますか」
「ひっ」
 触られた。
 左右から伸びる別々の黒服の手。持ち上げるようにしたり、マッサージでもするみたいにしたり、先っぽを乳首を引っ張るようにしたり、好き勝手に揉まれる。
「うっ……んッ……」
「お、感じてんの?」
 痛くて、気持ち悪くて思わず声を上げると、勘違いした黒服がにやりと笑みを向けてきた。
「そ、んなわけ」
「じゃ、こっちに訊くわ」
 他の黒服が今度は、私のアソコに、触れる。
「いっ……!」
「あれ、なんか濡れてね?」
 黒服の言葉に私は必死で首を横に振った。
「そ、れはちがっ」
「じゃあ、なんで濡れてんの?」
 多分、自分で胸を弄っていた時に濡れたのがまだ乾いていないのだろう。
 でも、そんなことを言うわけにもいかなくて、私は口を噤む。
 それを肯定の意志ととったのか、黒服は馬鹿にするような笑みを浮かべるとそこも弄り始めた。
「ひっ……やっ……あっ」
 おかしい。
 アソコを指で撫でられ、擦られる。
 気持ち悪いはずなのに、変な感覚が、胸を弄っていた時のような感覚が私を襲った。
 回すようにして、時に激しく時に弱く、強弱をつけられたその動きによってあの快感が引き出される。
「んっ……あっ」
「お、濡れてきたぞ」
 アソコが気持ち良くなると胸の方の刺激も快感に変わっていく。
 気持ち悪いはずなのに。自分の体が言うことを聞いてくれない。
 気持ちよくなんてなりたくない。
 なのに、電気の走るような感覚に声が抑えられない。
「いい感じにほぐれてきたな、本番に行くか」
 ほんばん……?
 ぼんやりとし始めた頭で答えを出すよりも早く、黒タイツのアソコの部分が生地の裂ける音と共に破かれた。
「え」
「それはオマ○コ御開帳ぉ」
 パンツが横にずらされ、アソコが直接空気に触れる感覚。
「あ、パイパンじゃん」
 一気に覚醒した。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
 私が叫ぶのも構わず、黒服が自分の股間のチャックを開ける。
 出てきたのは、黒い棒状のモノ。亀の頭に似ている形状で、赤黒くて、グロテスク。
「じゃ、俺一番でいくわ」
「さっさと終われよ」
「わあってるよ」
 私があまりの恐怖に目を見張っている間に、自分の体の上でそんな会話がなされる。
 なに、何をするつもりなの!?
 私は混乱し、
「じゃ、いただきまーす」
「ぎいいいいぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいい!」
 体を割り裂くような激痛に体をのけ反らせ、絶叫を上げた。
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
 黒服のアレが、私のアソコに入っている!
「血ィ出てんじゃん。通りで狭いと思ったわ」
 言葉の意味なんてわからない。
 口を上下に無理矢理こじ開けようとしたらこういう痛みになるのだろうという鈍痛。どこかが裂けたのだろう鋭い痛み。
「いたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい、っぐ」
「うるせえな、黙ってろよ」
 口を塞がれ、なおも叫ぼうと私はくぐもった声を上げ続ける。
 痛い、苦しい、頭がおかしくなる。
「お前もさっさと動けよ、後がつかえてんだ。それとももうイきそうなのか?」
「ちげえよ。ナカがせめえんだよ。……よし、そろそろ動いても良さそうだな」
 黒服のアレが中で動き始めた。
 奥まで突き刺したのか、最初は抜く動き。けど、それに希望を抱くよりも先にまた奥に。
 苦痛が増す。
「んーっ、んんんんん!」
「くっ、きっつ」
 なのに、変だ。
 痛い、今にも死んでしまいそうなくらい痛いのに、さっき体が弄られていた時と同じように、少し気持ちよくなってきている……?
 痛みが甘い痺れに置き換わっていくにつれ、黒服の動きが速くなっていく。
「だいぶっ、ほぐれてきたなっ」
 こんなのおかしい。
 こんな無理矢理されて気持ちいいはずがないのだ。
 だって、これは好きな人とする行為で、お父さんを助ける為に……。
「んんっ!」
 お父さんのことを頭に思い浮かべてしまった。
 快感が増す。強くなっていく。
 嫌だ! こんなの気持ち悪くなくちゃいけないのに、なんでこんなに。
 頭の中で、嫌悪と快楽が戦う。
 意志に反して快楽は嫌悪を塗りつぶす。塗り替えていく。
「んっ、んっ、んっ」
「そろそろイくぞ」
 黒服がこちらに呼び掛けた。
 私の方も、何かが来てしまいそうになってることがはっきりとわかった。
 怖い。気持ち悪い。
 けれど、それらに頭を割くことができなくなって、次の瞬間、
「イクっ」
「んーーーーーーーっ!」
 黒服のアレが中で何度も震え、体の奥に、熱いモノが。
 その瞬間、今までで一番すごい感覚が私の中を駆け巡り、体が勝手にのけ反り、痙攣する。
 イッた。無理矢理されたのに、イッてしまった。
 飛びかけの意識でもそれがわかってしまって、私は更に涙が溢れてくるのを感じる。
 黒服は最後の一滴まで吐き出し終えると、あれを私の中から抜いた。
 体が解放される。
「おし、次はだれにする?」
「つか、口も使おうぜ。効率わりぃよ」
 自分の上でそんな言葉が交わされている中、私はぐったりと横たわる。
 もう、嫌。誰か、誰か助けて。
 そんなことを考えていると、
「さて、もういいのではないですか?」
 突然投げかけられた男の人の声。
 ……これで、終わり?
 半ば朦朧とした頭で、それが自分への言葉であることを期待して男の人へと視線を向ける。
 やっと解放される。
 けれど、そう思って見つめた先、男の人は私ではなく、何故かお父さんに目を向けていた。
「そうですね。もう茶番はいいでしょう」
 なんの前触れもなく、お父さんが体を起こす。
 そして、体を払いながら立ち上がると、いつもとは違う何の感情もこもっていない目を私に向けた。
「……へ?」
「見ていて哀れになってきますね。自分が売られたのだとも知らずに自分を売った父親に尽くす姿は」
 愉しむでもない、心の底から憐れむような目で男の人が私を見る。
 お父さんはそれに無表情で答えた。
「そちらが提案してきたことでしょう。薬まで盛らせて」
「ええ。そうした方が手っ取り早く心を折れますからね。奴隷は従順な方がいい。それに」
 男の人が一度口を噤むと、お父さんがちらりと視線を送る。
「それに?」
「サンタは不老不死。初代サンタであるあなたの娘も同じような性質があると聞いています。売却ではなくレンタルで商売をすることになるのですから、処女のまま貸し出して変な癖をつけられるよりも、ここでしっかり調教してからの方が利益を見込めると考えただけのことです」
 二人は会話を続ける。
「食人家に解体趣味、果ては研究機関まで引く手あまたです。特殊な性癖を持つ方々は飽きっぽいですから、一カ月程度のレンタルを希望する方が多いですね。逆に研究機関は出来れば買いとりたいと言ってきた方が多かったです。ああ、安心して下さい。どこも私があなたに提示したよりは少額での申し込みでしたから」
「私はそちらにつてがないので気にしません」
「お父、さん……?」
 ようやく、私は声を捻り出した。
 そんな風にして出した声がかすれていたことも分かっている。
 理解したくない。脳が思考を拒絶していた。
 一言でいい。
 この状況に対する、何か。弁明でも謝罪でもいい。出来ることなら助けてほしい。とにかく、これが本意ではないと言ってほしくて、縋りつくようにお父さんに視線を送る。
 ――けれど。
「……ふん」
 お父さんは鼻を鳴らしただけで何も言ってはくれなかった。
「ああああ、いやぁ! お父さん! お父さん! 助けてぇ!」
 頭の中がぐちゃぐちゃになる。
 なんで、どうして。
 私、悪い子だった? 悪いことなんて一つもしてないよ。なのに、どうしてそんな冷たい目で私を見るの? やだ、やめて、助けて、もう嫌だよ。私、お父さんの為に頑張ったよ? こんなに汚れちゃったのもお父さんを守る為なんだよ? お父さんのことが好きで好きで好きで誰よりも大好きで、だから、そんな怖い顔しないで、いつも通りに笑って優しい顔で笑って。
 ぐるぐると廻る思考は口から出てはくれない。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 そうだ、全部夢だ。
 私は思考をやめる。体から力を抜く。
 これは全部夢で、目覚めたらきっと幸せな朝が待っている。
 そして、お父さんに怖い夢を見たって相談して、優しく頭を撫でてもらうんだ。「お父さんがお前を売るわけないだろう?」って。そうに違いない。
「さて、いい具合に壊れていますが、完膚なきまでに壊す為に皆さんもう一ラウンドお願いします」
 男の声で黒服達が私の体に群がってくるけど、もうどうでもいい。
 だって、これは夢だから。
 早く目覚めたらいいな。
 私は笑みを浮かべながら意識を手放した。




「それにしても、娘さんなんでしょう? いいのですか?」
 サンタの娘が犯されているのを眺めながら、男は隣にいるサンタに訊ねた。
 男は世間一般に言うところの善意など欠片も持ち合わせてはいない。しかし、それは自分がその価値観で行動しえないということを理解していただけで、それを嗤うことは無かったし、あくまで自分とは違う世界に生きる人間に限定してだが、それを持って生きることの素晴らしさも理解していたつもりだった。かたぎには手を出さず、自分の容姿がそういうものであるからこそ、下っ端や一般人相手には下種そのものの姿で振る舞っていたが、同じ程度にいる相手には「この業界には珍しい人格者である」と一目置かれているのだ。
 だからこそ、自らと同じ世界にいる人間に対しては容赦するつもりがないものの、わざわざ同じ世界に入ってこようとする人間に対しこうして問いかけることがある。
 サンタは無感動な瞳で娘の犯されているのを見つめながら、男に応える。
「いまさら返品したいとおっしゃられても応じかねますが?」
「いえ、私の方こそあのように素晴らしい商品を手放したくはないですよ。不老不死の奴隷などなかなか手に入るものではありませんからね」
 サンタの言葉に苦笑で返しながら、男は背に薄ら寒いものが走るのを感じていた。
 狂っている。
 子供に夢を配るなんて善意でしかない目的を叶える為に、自分の子供を売るという悪意を通り越し、腐りきっていると言ってもいいような行為を躊躇い無く行うその精神性が。サンタにとって、彼女は既に子供ではなく商品でしかないのだろう。その線引きの無情さと残酷さがあまりに醜悪だった。
 とはいっても、男自身も汚れきった世界に身を置いている以上、サンタよりも遥かに狂っている人間を見たことも少なくはない。そして自分自身がその同類でしかないことも自覚はあったから声にも態度にもそれを出すことはなく、狂人であろうがそれを利用する強かさと冷酷さを男は持ち合わせていた。
「ま、せいぜい稼がせていただきますよ」
「ええ、お互いにそれが幸せでしょう」
 視線を交わすことも握手も無く、契約完了の意を示し合う。
「では、そろそろお暇させていただきます」
「そうですか。それでは外まで部下に送らせましょう」
 そう告げて男が手を叩くと新たな黒服が部屋の外からやってくる。その黒服に男は顎で指示、サンタは何を言うことも無くそれについて行く。
「…………お、父さ……」
 娘のその言葉に応える者はいなかった。




【結論】クリスマスがなければこんなことも起こらなかったね☆





※あとがき※とっても見苦しいよ!






あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああなんでクリスマスなんてこの世に存在してるんだよマジざっけんな滅びろ滅びろいっそ地球ごと消え失せろやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
※作者はクリスマスのせいで若干心が病んでいます

※一万字を超えて作者びっくり! あっはっは、26kb!
※一人称で多人数のエロはむずかしいね!

※企画に参加してくださった方、読んで下さった方、ありがとうございます。企画者です、多分。言い出しっぺの方が正しいかも。私はコネも何もないやつですので皆さんがいなかったら企画は成立していなかったでしょう。少なくとも、私の心は折れていたでしょう。
 心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

以下、私の好きなクリスマスコピペ

「12月24日の午後9時から翌25日の午前3時までの6時間は
 1年間で最もセックスをする人の多い『性の6時間』です。

 貴方の知り合いや友人ももれなくセックスをしています。
 普段はあどけない顔して世間話してるあの娘もセックスをしています。
 貴方が片想いしているあの綺麗な女性もセックスをしています。
 貴方にもし年頃の娘さんや姉・妹がいて、いま家にいないのでしたら間違いなくセックスしてます。
 貴方と別れたあの娘も貴方がその娘にやってきたことを別の男にやられています。
 貴方の将来の恋人や結婚する相手は、いま違う男のいちもつでヒィヒィ言っています。
 すべてを諦めましょう。そして、ともに戦いましょう。」

       

表紙

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Neetsha