Neetel Inside 文芸新都
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     3 彼岸より


 親愛なるS

 私は今この手紙を、あの森で書いています。
 ここで幽霊の夢を見てから、もう何十年と時は過ぎ、私も年をとりました。
 そろそろ、潮時かもしれません。
 全ては次の世代の者に任せて、私は旅立とうと思います。
 でも悲しまないでください。
 どうせ遅かれ早かれ、生あるものは死ぬのですから。
 でも私はまだ向こう側に逝く気はありません。

 私は幽霊森の幽霊になりたいと思います。

 彼もそろそろ引退してもよい頃でしょう。
 次は私が、若者たちを応援する番です。

 もし、私に会いたくなったなら、どうぞここへお越しください。
 曼珠沙華の香りがしたら、私が近くにいる証拠です。
 そして切り株をベッドに夢を見れば、私が勇気づけてあげましょう。

 親愛なるS。
 私はそろそろ行こうと思います。
 本当に今までありがとう。
 君は最高の友達だよ。
 それでは。

 此岸の君へ、彼岸より愛を込めて。



       

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