Neetel Inside ニートノベル
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もみてぃっく
S05-2 新境地

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「その……サヤさん、質問なんですけど」
「どうぞ、ナギサくん」
「具体的になにをするんですか? 揉んでるだけじゃダメなんですか?」
 正直、こんな修業モドキをしても、何も変わらないと俺は思う。
 俺は男としての俺、そしてこの体の中に流れる血に勝つことなど出来無いと知っているからだ。
「ダメだねぇ。それだけじゅあ、女の子を気持ちよくさせることは出来無い」
「は、はぁ……」
 この間、ミカンの胸を好きに揉んでいいと言ったのはサヤさんじゃないか。なら俺に好きに揉ませてもらった上で……って俺は何を考えてるんだ。
「とにかく、まず第一に大切なのは、ナギサくん、あなたの気持ち」
「……気持ちですか?」
「そう、気持ち」
 サヤさんは未だにブラジャー姿のミカンの肩に手を触れて。
「この子は何?」
「……同級生のミカンさんです?」
「そう。ナギサくんの同級生のミカンちゃん。でも、その前にこの子は何?」
 サヤさんの質問の意味が分からない俺は、適当に。
「えっと……何って言われても、同級生としか良い用が無いんですけど……」
「違う、もっと根本的な話。――この子は何?」
「人……ですか?」
「そう、人。人でもこの子は何?」
 何かの洗脳なのだろうか、意味が分からない。と言うよりも、ブラジャー姿のままのミカンが可哀想だ……。
「女……ですか?」
「そう、ミカンちゃんは女の子。で、あなたは?」
「お、男ですけど……?」
「そう、あなたと、この子は違うの」
 ミカンの肩から手を離しサヤさんは続けた。
「脳の作りから、体の構造まで、ましてや染色体なんて全然違う。同じ人間でも違う人間なの」
 そんな生物的な話をされたところで、モミテクとか言うのと関係しているのだろうか。全く理解出来ない。
「それとコレと……ど言う関係が?」
 先ほど、サヤさんが現れてなかったら、俺は今頃ミカンの胸を揉みに揉みまくっていた……はずなのに。なんだかムカツイてきた。
「ナギサくん、あなた、女の子の胸を揉む時、どんなことを思って揉んでるの?」
 とミカンにカーディガンをかけながらサヤさんが言った。
「どうって……その、何も考えてないと言うか……ただ、本能に従って揉んでいるだけと言うか……」
「本能? それはそれは、簡単な言葉で逃げたねぇ」
 あの、太龍のような雰囲気を漂わせ始めたサヤさんは、恐ろしくも華麗に見えた――が、今の俺には揉みを邪魔シてきた人妻でしか無い。
「本能に従ったまま、自分の欲望に従ったまま、女の子の胸を揉みました。それじゃぁ、女の子は許せないよね。だって、それって、女の子の胸なら誰でもいいってことでしょ?」
「そ、それは……」
 ぐうの音も出ないとは、こういうことを言うのか……。
「ちゃんとした答えが帰ってこないってことは、そういうことで間違いないのね?」
 間違いない。俺は誰だっていいのだ。気持ちのいい、否、俺の手に収まり、そして理想の揉み具合の乳に遭遇できれば、何でもいいのだ。正直なところ、嫁探しなどは二の次になっている。今は、女の子の乳を揉めれば、それでいい――という考えになってしまっている。
「ミカン?」
 サヤさんはミカンに優しく語りかけて。
「ナギサくんに胸を揉まれて、どう思った?」
「……怖かった……。それに痛かった……」
「それだけ?」
「……でも、ほんの少しだけ……本当に少しだけ……気持よかったかもしれません」
「そう」
 サヤさんは俺のことを睨みつけながら。
「って、ミカンちゃんが言ってるけど、言われた本人としてはどういう気持ち? ナギサくん」
「どういうって言われても……複雑な気持ちとしかいいようがありません……」
「そう、そこは素直に嬉しがったほうがいいわよ?」
「は、はぁ……なら嬉しいです……」
 結局、修業と言っておきながらの説教なのか……。生まれて初めてのバイトで、しかも業務とは関係ないことで説教されるとは思ってなかった。
「ナギサくん」
 サヤさんは俺の目を睨みつけながら。
「あなたには才能がある。ミヤノっちから、才能があるって聞いた時は嘘としか思えなかったけど、さっきの揉みを見て、確信したわ、あなたにはモミテクの才能がある」
 そう言えば、ミヤノにもそんなこと言われたっけな……。
「ただね、あなたの場合、覚悟が足りない」
「……覚悟ですか?」
「そう覚悟。揉んでいいのは揉まれる覚悟のある奴だけだ。――って、女の子相手になら言えるんだけど、ナギサくんは男の子だからなぁ……なんて説明すればいいんだろう……」
 覚悟と言われても、俺になんの覚悟を持てと言うんだ? 俺はただ、自分のしたいように女の胸を揉んでるだけだ。もう、それでいいじゃないか……!
「そう、そうだわ。ナギサくんは“女の子を気持ちよくさせる覚悟”を持って、女の子の胸を揉みなさい!」
「それは……どういう?」
「自分の思うがまま、自分の欲望を相手にぶつけるんじゃなくて、相手の欲望を自分に取り込みながら、胸を揉むの。そうすれば、今までに見えて来なかった、違うわ、感じたことのなかった胸の感触が味わえるはずよ!」
 相手を気持ちよくさせる。そうか、これがミヤノの言っていたことなのか……そうか、そういうことなのか……。
「まぁ、とりあえず、実戦あるのみよ!」
 いつもと同じ、変わらぬ雰囲気に戻ったサヤさんは、まるで景気付けのようにミカンの肩に掛かってるカーディガンを取っ払い。
「さあ、ミカンちゃんを気持ちよくさせる覚悟を持って、ミカンちゃんの胸を揉んでみて!」
「……いいのか? ミカン」
「良くない……でも……サヤさんの頼みだから……後、さっきみたいに乱暴にしたら……今度ばっかりは……分かってるよね?」
 とドスの聞いた声でミカンは言った。
「分かった……」
 揉みたいだけじゃダメだ。そう、相手を気持ちよくさせる。そう考えないとダメだ。落ちけ俺、相手はおっぱいじゃなくて、ミカンという女性なんだ。失敗はもう許されない。ミカンの雰囲気からして、後がないのが分かる。相手を知る、そういうのじゃない。俺は、ミカンと言う女と胸を通じて対話をするんだ!
 ……俺は目を閉じ、そっと両手をミカンの胸に近づけさせ、その小さな胸を優しく、そして柔らかく、まるで妖精が湖の上で踊り遊ぶように触った。
 触ってすぐに力を入れてしまったら、乱暴に揉んでいたあの時と変わらない。そう、優しく、しかし、そこに俺という何かを残すためにゆっくりと小さく力を指に入れ、胸を揉む。
 まるで、スルメを噛んで味わうように、俺はゆっくりと、優しく、そして何よりも、ミカンを気持ちよくさせる覚悟をしながら、ミカンの胸を揉み続けた。
 視覚情報が皆無なのに、何故だろう、ブラジャーの下にあるミカンの胸が頭の中に映し出される。なんだこれは……見えるぞ……見える。
「……ん……あ……ぅ……」
 なんだろう、耳からは甘い女性の声が聞こえる。マッサージをされ、気持よくて声が漏れでているような、そんな甘い声だ。
「……もう……だめ……かも……サヤさん……助け……ん……」
 この声はミカンなのか? ――もしそうなら、俺のせいで、こんな甘い声を出しているのか?
 っと、その時、あの忌々しい感情が俺の心の奥底から沸き上がってくるのが分かったので、俺は慌てて、ミカンの胸から手を話、目を開けた。
「……ナギサくん……あなたすごいわね……」
 とミカンの肩を支えながらサヤさんが言った。
「な、なにがですか……?」
「いや……だって……そのー、揉み方を全く教えてないのに……ミカンちゃんのこと骨抜きにしちゃうなんて……」
 ミカンの方に視線を移し、俺は自分のしたことが怖くなった。
 ミカンはまるで魂の抜けた人形のように体をぐったりさせながら、顔を紅くそめ、まるで生まれて以来初めてエクスタシーに達したかのような、満足した顔で、天井をぼーっと見つめていた。
「……ミカンちゃん? 大丈夫?」
 とサヤさんが声をかけるが、ミカンはうわ言を繰り返し、まるで気絶寸前、意識が途切れる間近という感じで、顔に滴る汗がエロイ!
「俺が……ミカンを……こんな……?」
「そうよ……ナギサくん……あなた、本当にすごいは……こんなのモミテクだけじゃない……天性の才能よ……」
 そんな才能あっても、正直なところ嬉しくないが、嫁探しにはかなり重宝しそうだ……。
「こんなのモミテクじゃない……もみてぃっくよ……!」
 とサヤさんは怒鳴るように俺に言った。
 モミテクといい、もみてぃっく……って、誰がつけた名前だよ……。そもそもモミテクともみてぃっくの違いって……なんだよ……?

       

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