Neetel Inside ニートノベル
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もみてぃっく
S02-1 見られている

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「というわけで、乳は揉めたけど俺の求めていた乳では無かった……」
 この間のタカオカさん騒動の全てをナオに説明する俺。
「あっそう。それでなに、なんでまたぼくのこと呼び出したわけ?」
「んー……だって、ナオが指名した女子が、俺の求める乳を持っていなかったから、ナオの乳でその責任を取ってもらおうと思って」
 自分の顔が赤くなるのが分かる。はずかしぃよう!
「なんでナギサが顔赤くしてるのよ……」
 まるでこれじゃあ、男と女が逆だな。そんなことを思いつつも、俺の顔の紅葉は止まらない。
「……やっぱり……人間、恥らいを持ったほうが素敵かなと……」
 あの後のタカオカさんの変わり様を見てしまっただけに、なおのこと俺はそう思う。
 タカオカさんは変わった。
 あの騒動以来、いや厳密には俺におっぱいを揉まれて以来、タカオカさんは変わってしまった。それまで抑えていた自分をさらけ出すことにしたのか、天然ドジっ子キャラを捨て、今ではハキハキキャラへとシフトチェンジしてしまった。
 そんなタカオカさんを見て焦るクラスメイト、そして泣き崩れるイケメン君。全くもって、カオスだった。
「あっそう。それでなに?」
「……いや……なにって訳のほどでもないのですが……この俺に乳を揉ませてください。そして俺の求める乳だった時は俺と婚姻してください」
 床に頭がめり込むほどに土下座をする俺。
「だからさ、この間も言ったけど嫌だって!」
 土下座をしたまま固まる俺。
 本心から言うと、呼び出しに応じてくれただけあって、もしかしたら、もしかしたら、この間のあの時から気が変わって……乳を揉ませてくれるんじゃないか? と思っていたのだが……ダメだった。
「な、なぜ……だ……」
 心が閉じかけている中、かすれるような声で俺がそう言うと、ナオは呆れながら言った。
「だからね、嫌なものは嫌なの」
 なんでよ! おっぱいなんていうのは男にも装備されてるけど、男的な俺的な解釈だと触られても問題ない、逆に言うと、可愛い子似なら揉まれたいのに! ならその逆の思考をたどって考えると、女的にはイケメン的な俺的な存在におっぱいを揉んでもらうというのは、もうなんというの! ヘブンに旅立てるくらい嬉しいことだと思うのにッ!
「……さいでございますか」
 冷静に考えれば、普通に嫌だって分かる。嫌だからタカオカさんも、俺のことをフルボッコにしたんだろうし。
 そんな俺を見て、ナオは一つため息を付き言った。
「この間のクラス写真見せて」
「まさか!?」
 またかよ。と思いながら、土下座状態を解除して、机の引き出しから一枚の写真を取り出しナオに渡そうと立ち上がると、足がしびれていてうまく動けなかったせいか、ナオを押し倒すような形になってしまったのです!
「……ナギサちゃん?」
 人殺しもじさない。そんな視線を俺に叩きつけてナオは言った。
「そんなに早死したいの?」
「チガイマス、足ガ痺れてたンデス」
「そう。なら早くどいて?」
 と作り笑顔で笑うナオ。
 俺はそんなナオが恐ろしくなり、痺れた足を構いつつ立ち上がり、机の引き出しから一枚の写真を取り出した。
「……はい、これです」
「この間は適当に指さしちゃったから、今回はナギサが好きそうな乳してる女の子を選んであげる」
 と先ほどとは打って変わって、目をキラつかせながらナオは言った。
 うーんとやなんで居る横で、正座して座らされている俺。足の感覚がもう無い。立てる自信ももう無い。そんなことを思っていると、ナオが。
「じゃぁ、こんどはこの子でどうよ?」
 と一人の女生徒に人差し指を向けて言った。
「マジっすか? ナオさんマジで言ってるんですか?」
「マジもマジの超大マジ。この子は多分、あんたの好きな乳持ってるわよー」
 ナオが指さしたのはクラスの中でも一番地味で有名なニシヤマという女生徒だった。
「……いや……その子は……ね、見た目で分かるでしょ?」
「ん?」
 ナオは何かを理解したように。
「ああ、地味で目立ってるってやつね。でもいいじゃん。ナギサが気にしてるのは『性格でも、ましてや顔でもなく胸』なんだから」
「まぁそうなんだけどさ……」
「ならいいじゃん?」
 ニシヤマは正直近寄りたくない女子だ。
 別に不潔とか、一人でボソボソなんか言ってるとか、そういうことはない。ただたんに不気味なのだ。
 目を隠すように伸ばした前髪。背中まで伸びた黒髪。「井戸から来ますた」と言われても違和感がない。
 でも、ナオがそこまで言うなら、もしかしたら、もしかするのか? 俺はそんなことを思いつつ、ナオの顔を見て。
「分かった。やってみる……いや、揉んでみる!」



 まずはニシヤマの実態を調べることが先決だ。
 そう、ストーキングだ。実態を調べるにはつきまとって観察すればいいだけの話。
 この間のタカオカさんの時しかり、知らない相手を知るには、近くで見つめればいい。動物を観察する時と同じで、手を出さずありのままの姿を見つめればいい。
 そんなことを思いつつ、ナオに支持された次の日、俺は早速ニシオカをストーキングすることにした。
 朝、誰よりも早く登校して、まずはニシヤマさんの机の中を調べる。自分でもヘンタイじみた行為だと思うが、コレが案外言い情報源にもなったりする――らしい。
 ニシヤマさんの机の中は空っぽだった。ダメじゃねーか、あのストーキング専門サイトめ。と怒りを感じつつ自分の席に着く。
 さすがにロッカーには鍵が掛かっているので、中を開いてそれを調べるなんてことは出来無い。ピッキングなんてエキスパートなこと、俺にはできないし。
 誰もいない教室は寂しくも、学校そのものの匂いがして、謎に落ち着いた。
 一人で居る教室は切なくも悲しいが、これはこれでいいかもしれないと思っていると、知らぬ間にクラスメイトの奴らが数人登校してきていた。
 珍しく朝一で登校してきている俺を見て、どうしたんだよ? と声をかけられたが、「まぁ、たまにはなー」と適当に流しあしらっておいた。
 俺はあまり人付き合いが美味い方ではない。自分で分かってるんだから、周りの人からすれば空気と同然な扱いな俺だろうが、まぁ、それはそれで寂しい。でも、自分から声を掛けるのは正直怖いので、声をかけられた時は嬉しくて嬉しくて、顔面崩壊しそうになる。
 そんな訳で、俺は多分気持ち悪い顔をしていたのだろう、教室に入ってきた先生がドン引きしながら俺にこういった。
「ナギサ、お前……顔洗ってこいよ……」

 俺がストーキングをしてやることと言ったら、後ろからバレないように付きまとうこと。それだけだ。
 その日一日、ニシヤマを観察したが、放課後に部活動としてか、文系部の部室に行くくらいのことしか分からなかった。
 まぁ、初日だしな。と思っていたその時の俺は相当甘かった。
 その次の日も、そのまた次の日も、ニシヤマの行動は全くブレなかった。
 誰と話すわけでもなく、誰と一緒に帰るわけでもなく、基本的にスタンドアローンとでも言えばいいのか、一人、孤独に行動するニシヤマ。
 だが、そこに寂しさとかそう言うものは感じなかった。ニシヤマはそれが当たり前。ニシヤマは一人が当たり前。気のせいか、本人さえも一人が当たり前。そんな雰囲気が漂うほどに。
 タカオカさんをストーキングしていた時に感じた「何かある」という確信も感じないし、こりゃどうするかな……と、一人、朝の教室で悩んでいると、後ろから突然ボソボソと声が聞こえてきた。
 空耳だろうと、最初の内は無視したが、確かに人の声が聞こえてきたので、うしろを振り向くと、そこにはニシヤマがぽつんと立っていた。
「……ニシヤマ? どうしたんだよ?」
 俺は体をニシヤマの方に向けて言うが、ニシヤマは何一つ答えずに席に戻っていった。
 なんだったんだ……? と再び体を前の黒板の方に向けると、今度は視界を遮るようにニシヤマが俺の前に来て、小さい声ながらもこう言った。
「……あなた? ……わたしを……見てるのは……?」

       

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