Neetel Inside 文芸新都
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新都社作家の後ろで爆発が起こった企画
クララのバカ……/匿名希望

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 俺の名前はデューク東郷……。しかし名前などただの記号にすぎない……好きな様に呼んでくれて構わない。ゴルゴ13という名前で知られていることが多いが、実はそう名乗ったことも、そう呼ばれたこともあまり無い。
 さて、俺の生きる上で最も重要なことについて教えようか……。
 それは、どんなものでも俺の後ろに立つことは許されない、ということだ……。
 これまでに俺の後ろに立った奴は……どんなものだろうと本能的に排除してきた。
 女子供だろうと容赦はしない……。それが命の削り合いの場で生き残るための上策だ。

 このクセは生きる上でなかなかに不便だ……。
 幼い頃からだるまさんがころんだには絶対混ぜてもらえなかった……俺が鬼になると全員死ぬからだ。
 女子供だろうと容赦はしない……。

 先日、依頼でアルプスに行った時のことだ。
 草原に案内された俺の背後には、車椅子の少女がいた……。
 少女は立ち上がっていないから許してやろう……殺すまい……。俺は例のクセを必死で抑えた……。
 そんな俺の気持ちを裏切るように、少女は車椅子から立ち上がってしまった……。
 依頼主は、ハイジとかいう少女だったろうか……。
 女子供だろうと容赦はしない……。
 
 もちろん俺の後ろに立ってはならないのは人間に限らない……。
 火のないところの煙だろうが、背後霊だろうが、俺の後ろに立てば次の瞬間には消えちまう……。
 しかし、今回は相手が悪かった……。
 爆発だ。俺の背後で大爆発が起こったのだ……。
 距離はおそらく数メートルしか離れていない。そこから俺の元へ爆音が届くのが0.050秒後……。
 俺は背後で爆発が起こったことを知る……例のクセのスイッチが入る……この時点で0.051秒……。
 俺の身体は高速で振り返ろうとする……この時点で0.053秒……。
 ほぼ同時に俺の右手は銃を取り出すべくフトコロへと伸びる……この時点で0.230秒……。
 爆音に遅れて、爆風が身体に届く……この時点で0.358秒……。
 熱い……マジで熱い、これ無理……。
 だが完全にマシーンと化している俺の身体は止まらない……振り返りきった俺は顔面にもろに熱風を受ける……この時点で0.640秒……。
 炎が顔の表皮と、毛髪と、衣服を焼く……この時点で0.870秒……。
 振り返ってみたものの、一体どうすればいいのか全くわからない…この時点で0.978秒……。
 右手の銃から銃弾を放ってみるも、虚しいだけだ……この時点で0.999秒……。
 
 1.000秒……俺の視界は途絶えた……。

       

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