Neetel Inside 文芸新都
表紙

新都社作家の後ろで爆発が起こった企画
リア充ry/真純

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 …カチャカチャカチャ……
 ッターン!



         「リア充爆発しろ」


 誰一人フォロワーのいないツイッターに送信完了。毎日思いつくたびに呟くのが俺の日課だ。
 むなしい?何それ美味しいの?
 どうせ俺のアカウントをチェックする輩など誰一人いない。フォロー人数稼ぎの業者だって「リア充爆発しろ」の7文字だけで埋め尽くされた俺のことなど敬遠することだろう。
 ブラウザのタブを2ちゃんに切り替えクソスレを立てる。10スレが連続で100レス付かずに落ちたところで、俺は大きく伸びをした。2時間しか寝ていないせいか、少し身体がだるい。
 カーテンが半開きの薄暗い部屋。床には使用済みのティッシュとふたの外れたペットボトル、空のポテチの袋が散乱している。その片隅に置かれている小じんまりとしたパソコンラックのパソコンモニターが俺の定位置だ。
 そのまま手近にあった漫画雑誌を枕代わりに寝転んで思い出した。そういえば今日は週刊誌の発売日だったな。ポテチのストックも切れたことだし外に出るか。

 モニターの電源だけ落として、薄汚れたズボンのポケットに千円札一枚と家の鍵、それと手垢だらけのスマホをねじ込み家を出た。
 いつものコンビニの脇で、若い男女が密着して何やら話している。中古に興味はないが、俺をチラチラと盗み見てはクスクス笑う様子が癪に障る。
 俺は視線を落とし、何も気づいていないフリをしながらコンビニの扉を開けた。



 4冊流し読みしたところで足がしびれたので、棚に置かれたポテチを3袋つかみレジに向かう。店員の目を見ないようにしながら釣りを奪い取り店を出ると、さっきの男女がまだそこにいた。
 俺と目が合った瞬間、男が顔を真っ赤にして噴き出した。
 なんだよ。何がおかしいんだ。
 俺は大人だからこんな奴相手にしない。手が震えているのは男が怖いせいじゃない。地面が歪んで見えるのは寝不足で疲れ目だからだ。
 女の「笑っちゃ悪いよwww」という囁きを背中に受けながら、ポケットからスマホを取り出し画面を開く。
 
 2ちゃんとネット徘徊のためだけに買ったスマートフォン。呪いの言葉をタップする。
 
 「リア充爆発しろ」
 
 これで少し溜飲が下がった。スマホをポケットにしまい直し、一歩踏み出した瞬間

『ドゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!』
 突然の轟音。何かの割れる音。誰かの悲鳴。後頭部に感じる熱風。
 振り返ると、人が燃えている。いや、正確には人だったものだ。
 俺を笑ったあいつらがいた場所には人間の足が、膝から下の部分だけが4本だけ残されている。その周囲には赤やピンクや白のよくわからない破片が飛び散っている。コンビニの窓ガラスもその破片のせいで割れてしまっている。

 …俺のせいか?
 俺の祈りが天に届いたというのか…?
 口元がほころぶ。まさかそんな都合のいい展開なんてないはずだ。しかし、胸にこみあげる高揚感は止められなかった。

「あはははははははあははははははははははは…」




 自分の声で目を覚ました。

 そこはいつもの汚い俺の部屋だった。頭の下の漫画雑誌が少し湿っている。
 クソッ夢オチかよ。
 
 ラノベのような展開が俺の身に起こるわけないんだよ。冷静に考えればわかることなのに。
 まだ使えそうな部分が残っているティッシュをかき集め鼻をかむ。千円札と家の鍵とスマホを引っつかんで、俺はのっそりと立ち上がった。

「コンビニ行こう」

 薄汚れたズボンのポケットの中で、俺はスマホを強く握り締めた。




 終わり。

 

       

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