Neetel Inside 文芸新都
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新都社作家の後ろで爆発が起こった企画
ソフトBL的爆発音/山下チンイツ

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 ソフトBLに親しんでいない人にはちょっと理解しにくい事柄かもしれないが、ソフトBL小説には「爆発もの」という定番ジャンルがある。というか王道ですらある。皆さんの身近にソフトBLコーナーを充実させている書店があれば、足を運んで確認してみるといい。無作為に手に取った一冊をぱらぱらとめくるだけで、そこに様々な爆発を見出すことが出来ることだろう。
 いくつかの例をあげてみよう。

・「おならで爆死」タイプ
 これはいわゆる、ノンケ(非ゲイ)の人物の穴を掘ろうとした際に起こる爆発である。きちんとした手順を踏まず、いたずらにアナルを刺激しても、いきなり快感を生じることは少ない。痛いとか、何だか変な感じ、とか、おならが出ちゃう、といったことになる。よくなる。あなる。
 そうして発生した大量のおならに、何かの拍子に火花が飛び散ったりして引火、爆発してしまう。小説の中だけの話ではなく、私も遠目で三件ほど確認したことがある。
 突然の爆発に動揺するノンケを、颯爽とゲイが救う、という様式美に読者は酔いしれ、男の穴を濡らすのだ。

・「勢いよく発射しすぎて爆発してしまった」タイプ
 これは別にソフトBL業界に限った話でもない。精力旺盛な男性ならこれまでの人生の中で二度や三度は経験があるのではないだろうか。あまりにも強烈な射精だったため、男根の摩擦と精液のなんやかんやが周囲の酸素とどうのこうのして爆発を起こすという、例のアレだ。
 これは私も恥ずかしながら経験がある。こうして冷静に文章を書いている私にも、若く弾けていた時代があったのだ。
 そして文字通り弾けた。

・「周囲が爆発している情況」タイプ
 吊り橋効果、というのは今さら説明をする必要もないだろう。「吊り橋の上を渡っている最中に男同士がすれ違うと高確率でソフトBL的な恋愛に発展する」という有名な法則である。人は極限状況における興奮状態を、恋愛中のそれと錯覚しやすい。
 つまり、前二例であげたような爆発がぽんぽんと起こっている場所では、自然と恋愛感情も湧き上がりやすくなる、つまりはソフトBLを書きやすくなる、というものだ。
 既にソフトBL的爆発が起こっている、というお膳立てがあっての、さらに吊り橋効果なわけだから、ソフトBL的効能は二乗となり、その二乗は人数や人物関係によっては三乗四乗となり、ボルテージは青天井となる。近年のソフトBL小説のヒット作のほとんどがこのタイプである。
「とりあえず爆発させとけばええんや」とは、昨今、ソフトBL作家とソフトBL編集者の間で合い言葉となってしまっており、その現況を憂う作家、読者も増えていると聞く。
 私自身、確かにこの種の作品を大いに楽しんで読んでもいるのだが、心の底ではやはり「爆発とは、密かに小さく、胸の内で起こるもの。すなわち恋」と思っている節がある。
 口には出せないが、こうして記すだけで胸の内が熱くときめき、軽い爆発で内臓をやられているのを感じる。

 と、ここまで書き終えたところで、不意に後ろで爆発音が起こり、私は驚いて振り返った。だがよく見ると何のことはない、私のアナルに男根を挿入していた恋人が射精したのだ。それからすぐに私の股間からも爆発音が響き渡った。

(了)

       

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