Neetel Inside ニートノベル
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T-れっくす
3rd Albunホワイト・ライオット・ボーイ<Disc 2>

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新年の幕が明け、新都社にオーケンが手抜きで書いたような性春小説が載る頃、ボクは向陽高校の第二音楽室を目指して歩いていた。

病院を退院し、学校に通い始めたのはいいが担任の先生に留年を告げられたのでボクは放課後の部活をメインに学校を番長登校するようになっていた。

まぁ、前任の番長はボクが追い出したんだけどね。その番長が在籍していた音楽室のドアを開けると同じバンドメンバーのマッスとあつし君が出迎えた。

「おぅ、ティラノ。ひさしぶりじゃん。調子どう?」
「うん、大分いいよ」

ボクがドラムの前のあつし君に返事を返すとマッスが肩から下げていたベースギターを弾き始めた。

デュグン、デュグン、デュン。独特の低音を聞きながらボクは椅子に座って二人のセッションを眺めていた。あれ?こいつら、ちょっと上手くなってね?

ボクがそんなことを思っていると後ろのドアが開き、三月さんが部屋に入ってきた。

「みんなおつかれー、鱒浦くん昨日言ってたパンフレットもらってきたよー」
「ああ、ありがとう」

三月さんからパンフを受け取るとマッスはそれをボクの前に広げた。

「向陽町ティーンズバンドバトル『光陽ライオット』!俺たちの次の目標だ!これに出て優勝出来るように頑張ろうぜ!!」

事態をボクが掴めないでいると三月さんが説明してくれた。

「ティラノ君が入院してる間2人でずっと練習してたんだよ。生まれ変わったボーカリストを迎え入れるために、って」
「病院で演ったような曲たくさん書いたら絶対優勝出来るって!」

あつし君がテンション高く立ち上がる。ボクはパンフの内容に目を落とした。「えーと、オープニングアクトは『となりの壁ドンドンズ』。あ、エスカさんの『きんぎょ in the box』も出るんだ」

「『きんぎょ』最近キテるよな。こんど『Dareka』と全国ライブ周るんだろ」
「...すげーよな。『Dareka』はポストバンプって言われたくらいのバンドなのにな。タイアップに恵まれてればなー。インディーズに落ちぶれなくて済んだのに」

バンド談義を繰り広げる二人を見てボクは本音を伝えることにした。

「お前ら、ホントにこのライブで優勝するつもりなのかよ。『光陽ライオット』つったら10年前からある権威ある大会。
そんな目の肥えた客達の前で楽器経験半年ちょっとのボク達が演奏して勝てると思ってんの?」

あつし君がつばを飲み込んだ。「やるからには優勝狙うに決まってんだろ」マッスの強い決意を聞いてボクは「よし!それでこそT-Massのメンバーだ!」

と二人の元へ駆け寄った。肩を組み合うボクらを見て三月さんが言った。

「漫画やドラマで見たけどこういうライブって大方やる前から優勝決まってるんじゃないの?主催者側は『きんぎょ in the box』を売り出したいんでしょ?」
「いや、大丈夫」

あつし君がボクの体から離れて言った。

「決勝トーナメントは主催者投票の他に観客からのツイッター投票があるんだ。『きんぎょ』に組織票が集まっても逆転できる可能性はあるよ」
「ウチのボーカリストは色々と人気物だからな」

マッスが横目でニヤけながらボクを見つめる。

「決勝は地元のTV局も入るらしいし『きんぎょ』に勝てばメジャーデビューの話もくるかも」
「まじで!?」
「とにかく最初の目標は予選リーグを通過することだな。ティラノ、TVの前で下半身露出すんのはやめてくれよ」

マッスがボクをからかうとボクは部屋の片隅に置かれていた自分の赤いストラトキャスターのストラップを肩から下げた。

メジャーデビューか。俄然やる気が出てきたぜ。ボクはギターにアンプをジャックし晴れの舞台に向けて号砲を打ち鳴らした。

       

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