真冬の1月の寒空の下、ボクはどろのついた雪をはねのけながら歩きで国道を下に降りていてた。
あぶねー、あぶねー。あともうちょっとであのおばさんに犯されてしまうところだった。きっとあの女、週3回のスタジオのアルバイトで気に入った男を見つけたら
ギターの練習とかこつけて家に連れ込んで喰っていたのだろう。山田あつこは華麗なるスパイダー。あんなとこにいたらいつ貞操を奪われるかわかったもんじゃない。
ボクは歩みを止め星空を見上げた。オリオン座がすっげぇはっきりボクが住んでいる街を照らしていた。よーし。テンションがアガったボクは
ジャンパーを脱ぎ、一気に丸ハダカになった。一度、大自然オナニーをしてみたかったんだよねー。「ホァ、ホァ!ホァ~さむ!やっ!きもちぃ!」
あつこさんにしゃぶられていたかもしれない息子はすぐに勃ちあがりボクは向陽町を見下ろしながらイチモツをしごく手を早めた。当然周りにはだれもいない。
俺だけのprecious time. そうさ、この瞬間だけは、生きてる、ってことを実感できるぜ。「くぁ!くぁ~くはぁ~~ん!!」
絶頂まであと少し。すると背後からざっ、と雪を踏む音が聞こえた。ボクは肉棒から右手を離し恐る恐る振り返った。
「や、なに?痴漢?」
「変態?何なの?」
後ろに立っていた大学生くらいの女の子二人がボクを見て抱き合って後ずさりを始めた。ヤバイ。このままだと露出狂のレイプ魔と言いがかりをつけられて豚小屋行きだ。
ドースル?ボクがとった行動は、そう!ピョンピョンしよう!!
「もののけじゃ~もののけじゃ~」
「きゃ~、妖怪!!」
「ショウコ、早く逃げよ!魂吸い取られるよ!!」
ボクを見て怯えまくった二人は驚いて腰を折りながらも反対方向へ全力速で去っていった。ふぅ。なんとか事なきを済んだか。ボクはすっかり萎えてしまったたいまつに
再び摩擦熱を与え、その灯火を新雪にほとばしらせていった。
自慰を済ませたボクは歩道の切り株に腰を下ろし今日の事を思い出していた。いきなり朝っぱらから農場で働かされたこと、天使のような鳴き声でボクを呼ぶひよこの群れ、
耕作さん家でいただいた歯が抜け落ちるほどうまい採れたて卵の黄身、30代半ばのあつこさんの骨と皮だけのカラダ。
一体こんなことやって何になるんだ。ボクはギターの練習でこの山奥に来たのになんでアラフォー女の性欲処理をしなきゃなんないんだ。
再びムラついた気持ちを沈めるためにボクはギターケースからギターを取り出した。エレアコの音色がぼーんとヨゾラに響く。
あれ?なんかおかしいぞ?二回、三回、と弦を引き下ろすたび、その違和感は大きくなっていく。うへへ。ボクは元来た道を逆に登り始めた。
「おかーさん、いってきまーす...ってうひゃぁ!」
玄関の引き戸を開けたあつこさんがボクの姿を見て玄関に尻餅をついた。ボクはぬかるんだ土から頭を上げて叫んだ。
「あつこさん!昨日は女として恥をかかせてしまい、まことにすいませんでした。本来なら腹を切って自害すべきところですが私、数年後に最強のギタリストになるゆえ、
この度は寛容なる心で許して頂きたき候、時期尚早でボク早漏!」
「なに言ってんの?!わかったから、とにかくそこからどいて」
あつこさんに体を引き上げられると作業着を着た耕作さんが階段を下りてやってきた。
「お~、おまえら、昨日はお楽しみだったみたいじゃねぇか~」「はい!娘さん、最高でした!」「クォラ!」
あつこさんに小突かれるとボクは山田さん家にギターや荷物を置き、泥だらけの服のまま仕事場に向かう山田親子の後をついて歩いた。