Neetel Inside ニートノベル
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ボク達が楽器屋で楽器を買った次の週の日曜日、いつものようにネットで落とした「けいおん!」のアニメを見ていたボクの携帯電話が鳴った。

電話の先の相手はマッスだ。「もしもし、ティラノ?今出てこれる?」

ボクはちょうどちんこをいじりだした所だったので「あ~きょう無理。いまからおばぁちゃん死ぬから」と適当な理由で断ろうとした。

「不謹慎なこと言ってんじゃねぇよ。1時に駅前のミスドに集合な。ギター、持ってくんの忘れんなよ」

そういうとぶつ、と携帯が切れた。やれやれ。ボクに断る権利はないのか。時計を見ると12時半を指している。ボクはパソコンの停止ボタンを

押し、パンツを穿くと先週買ったギターを物置から引っ張り出した。買ったのはいいものの、弾き方がまるでわからなかったので速攻で

しまってしまったのだった。テレビのギタリストをまねして10円玉で上から下の弦をなぞってみたがじゃら~ん、と音がなるだけで

ボクがイメージしたジャキジャキした音や、ゴリゴリした音が全然でなかったので飽きてギターをベットに放り投げ、

「あ~あの店員にダマされたわ。こんど会ったら公開レイプしてやる」と暴言を吐き、ギターを弾くことをやめてしまったのだった。


1時ちょっとすぎ、ミスドの店内に入るとテーブル席の奥にマッスとあつし君、手前に三月さんが座っていた。ボクは三月さんの隣の座ると

「いやぁ、いい天気ですね。三月さん」と笑顔で挨拶をした。三月さんが苦笑してあつし君が茶化すとマッスは本題を切り出した。

「いまからみんなでスタジオに行こうと思ってるんだ。あつし、部屋の予約の取り方、わかる?」

マッスが聞くと「う、うん。ちょっとまって。今調べるから」と言いあつし君がアイフォンをいじりだした。

「え?なんだよスタジオって。みんなでダンスでもしようってのかい?」

ボクがジンジャエールを飲みながら言うと三月さんが説明した。

「みんなで音楽スタジオで練習したらどうだろう、って鱒浦君が話してたんだよ。ひとりで練習しててもうまくならないだろうからって」
「そう。ティラノおまえ、ギター買ってからちゃんと練習してるのかよ?」

マッスに聞かれるとボクは頭をひねった。練習してるというべきか、本当のことをいうべきか。ボクが答えようとするとあつし君が立ち上がった。

「あった、『スタジオガッチャ』。ここだと学割が使えるしアンプもいい奴が使える。駅からすこし遠いから今からでも予約取れるんじゃないかな」

あつし君がアイフォンの画面をマッスに見せると「決まりだ。あつし、電話してよ」と促した。そうか、あつし君は以前バンドを組んでいたから

スタジオに行ったことあるんだ。ボクがあつし君を見るとあつし君は画面をタッチしてスタジオに電話をかけた。

「あ、あのォ~学生4人で予約したいんですけどォ~、え、時間?...あ、2時間で...え?部屋代が一時間800円だから、ひとり、え?
はい、はい、わかりました。じゃあ2時からで。はいよろしくお願いします~」

あつし君がマッスとやりとりしながら予約を済ませた。あつし君はなぜか勝ち誇った顔をし

「ひとり400円な!ドリンクはスタジオに入る前に買っとけよ!」と急に場を仕切りだした。この地味男、なんなのだ。

「よし、それじゃいまからスタジオに行くぞ。あつし、道案内よろしくな」

マッスが鶴の声をあげるとボクらは楽器を持ちあつし君の後をついて歩いた。ボクがギターを引きずるように歩くとマッスがからかった。

「おい、もっと大事にしろよ。キングクルムゾン」
「えっ、キングクリムゾンじゃないの?」
「あ~どっちでもいいよ。それよりはやく唯にゃんモデル欲し~」

ボクらがそんな会話をしていると「おっかっし~な。この辺なんだけど」とあつし君が立ち止まりきょろきょろしだした。

「迷ったんじゃないの~やっぱり」
「やっぱりってなんだよ。ここだって言ってるんだよ。オレのアイフォンが」

ボクがアイフォンを覗き込むがこの辺にスタジオらしき建物はない。てかスタジオに行ったことがないからどんな建物かよくわからん。

「とりあえずそこのラーメン屋さんで聞いてみたらどう?」

三月さんの提案でボクとあつし君がビルの一階にあるラーメン屋に入った。「へい、らっしゃい!」頭にタオルを撒いた堅物そうな大将が出迎える。

「あ、あのォ~この辺に音楽スタジオ無いですよね?はい、無いですよね、すいませんでした」

ボクが外に出ようとすると「あるよ、ここの地下一階」と言い店の大将は地下に続く階段を教えてくれた。ボクらが地下に降りるとやっと

スタジオガッチャにたどり着くことができた。「もっと分かりやすいところにつくっとけよな」ボクが文句を言うと店員が出迎えた。

「あの、2時から予約している山崎ですけど」マッスが言うと一番手前のAという部屋に店員が招待してくれた。重そうなドアを店員が開けると

ボクらはおお~と声をあげた。鏡が各方面の壁に着き、大きなアンプといわれる機械とドラムが置いてある。

「すご~い。なんだか本格的~」三月さんが目を輝かせながらツマミがたくさんついた機械をいじくる。

「あの~その機械はあまり触らないようにお願いします」店員が言うと「はわっ!ごめんなさい!」と三月さんがぺこぺこと謝りだした。

ボクがその様子をみて勃起していると「ほら、先に飲み物買っておくぞ。なにが良い?」マッスが聞いてきたので「ボクはドクペで!」と

オーダーすると「申し訳ありません。スタジオ内での飲み物は水のみとさせてもらってます」と店員が頭を下げる。はぁ?どんだけ注文が

多いんだよ。ボクらは水を買い、トイレを済ませると楽器を抱え、音を鳴らす準備をした。ボクのバンドがいよいよ始動するのだ。後編へ続く。

       

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