Neetel Inside ニートノベル
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ボクはイスに座り、ギターを抱えるとひとつ咳払いをし、目の前に座った三月さんに向かって言った。

「それではボクが始めて作った歌を聞いてください。『ボクの童貞をキミに捧ぐ』」

ドラムのイスに座ったあつし君が吹きだすとボクは思いついた歌詞をギターをかきならしながら歌った。

「初めてキミとあった時から~、したいと思ってた~セックス!セックス!セークッス!!」

三月さんが顔を背ける。うほほ、なんだかアガってキター!

「しまくり、しまくれ、ヤリまくれ!そしてそしてそしてボクのどーていをキミにささぐぅー!」

ゴン!後頭部に激痛が走る。「なに言ってんだ!お前は!!」後ろに座っていたマッスがベースの先の方でボクを殴ったらしい。

三月さんが顔をあげると「ごめんね。気にしなくて良いから」とマッスが三月さんに謝った。「なんだよ!せっかくノってきたのに!」

「マッス、そろそろいいんじゃない?」
「そっか、じゃあ繋いでみるわ」

ちょ、無視すんじゃねェー!マッスはアンプにつないでいたケーブルをベースにつなぎ、アンプのツマミをいじり始めた。そしてイスから

立ち上がるとおもむろにベースを弾き始めた。デュグン、デュグン、デュ。独特の低音が部屋に響く。三月さんが思わず立ち上がる。

「すごーい!鱒浦くんカッコイイ!!」

マッスは調子に乗って横にステップなんかをとりだして弾き始めた。こいつ、1週間でこんなに弾ける様になっていたのか。あつし君が

マッスのリズムに合わせてドラムを叩き始める。下のタイコがドン!ドン!と鳴るとちんこがじーんと痺れはじめた。負けちゃおれん。

ボクもギターをかき鳴らして歌いだした。

「ちーん、ちーんちーんぽこ、しゃぶ、しゃぶれー!」
「ちょっといいかげんに黙れよ。この祖チンギタリスト」

三月さんがボクにヘッドロックを仕掛けてきた。ボクは13秒で意識を失った。


「とにかくすごいよ!鱒浦君!あつし君もドラム叩けるみたいだし、学祭に出たら人気者だよ!」

ボクが意識を取り戻すと三月さんがテンション高めに飛び跳ねていた。

「いや、おれ簡単なリズムしか叩けねぇし」
「そんなことないよ。想像してたより全然叩けてた」
「そうだな。オレも正直口だけだと思ってた」
「あのなぁ...おれよっぽど信頼されてなかったんだな」
「ハーイ!すとっぷ!誰かお忘れじゃないですかミナサン!」
「もうお前帰れよ。KY童貞キモオタ野郎」

ボクの胸倉を掴む三月さんに対し「まあまあ、ティラノもアンプにつないで弾いてみればいいじゃねぇか、ギター」とマッスが呼び止めてきた。

持つべきものは友達だ。三月さんの怪力から解放されると「どうやってギターにつなげばいいか教えろよ」とボクはマッスに聞いた。

「あのなぁ、他に聞き方があるだろ。まぁいいや。あつし、こいつにギターアンプのつなぎ方教えてやってくれよ」

「OK」あつし君はイスから立ち上がるとボクからギターを取り上げた。

「うーん、マーシャルは立ち上がるまで時間がかかるからローランドでいいか」

そういうとボクのギターに黒いケーブルをつっこみ、大きい壁のようなアンプではなく腰くらいの大きさのアンプに反対側のケーブルを

つないだ。「ええ~こっちのかっこいい方のアンプがいいよォ~」ボクの声を無視し、あつし君は真剣そうにつまみを回している。何度か

ギターの音を鳴らすと「よし、これでよし。ティラノ、弾いてみ」あつし君がギターを手渡そうとすると受付に行っていたマッスが戻ってきた。

「ほら、立って弾けるようにストラップレンタルしてきたぞ。次からは自分で用意しろよな」マッスはギターにつけるストラップとギターを

弾くピックというモノを借りてきてくれた。ボクは「2人ともありがとう」とお礼を言うと立ち上がって思い切りギターをかき鳴らした。

デュワーン、じゃなくてジャギーン。なんていうかその時ボクに電流が走ったのを覚えている。もちろん漏電していたわけじゃない。

なんだこれ?ボクは衝動に駆られギターを何度もかき鳴らした。うおお!心臓が大きく脈を打ち始める!これが、これがエレキギターか!!

この時ボクは初めてこのギターの「声」を聞いた。中国製のバッタもんだってバカにしてごめんな。右手が止まらないなんて初めておな、

いや、今回は下ネタは止めよう。ボクは感情の高ぶるかぎりギターをかき鳴らした。

「ちょっと、ティラノ君。うるさい。ボリューム下げてよ」
「いや、もうちょっと聞いてよう。こいつ、なにかを掴みかけてる気がする」

三月さんとマッスがそんなことを言ってた気がする。うにゃにゃ!ボクは屈みこんでギターをじゃかじゃか弾き始めた。うほー!たのしー!

その時、ピン!という音と共にボクの額に鋭い痛みが走った。へ?突然の攻撃にボクは背中から倒れた。床に落ちたギターがドジャーンと

いうノイズを叫ぶ。

「ティラノ君、だいじょぶ?ちょっと興奮しすぎだよ」
「こいつ、デコから血ぃ出てるよ。大丈夫かな」

あつし君がギターを拾い上げるとボディを指差して言った。

「ほら、ここ。力入れて弾きすぎたせいで弦が切れたんだ。ツバでもつけとけば直るよ」

ボクは床に倒れたまま天井を見上げた。イっちまった。こんな衝撃を受けたのはけいおん以来、いや、初めてだ!これがボクのロックギター

との出会いだ。永遠の射精感。ギターを弾いている時はそれを体感することが出来る。自由になれる気がした15の夜。なんつってね。

       

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