Neetel Inside ニートノベル
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青いセーブデータ
はじめから

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立入禁止!
扉に貼られている紙にはそう書いてある。
しかし、文字など効果はなく勢い良く扉は開かれる…。


「お父さん遊ぼー」入って来たのは小さな少女。
「待て、動くな!止めろ葵!」そしてそれを止める男。
いつも通りの桐山家の日常である。

科学者として研究を続ける、霧夫。
そしてその娘、葵。
毎日研究ばかりの父に遊んでもらいたく、葵は度々研究室に無断侵入する。

「そこを動くなよ!絶対動くなよ!」
霧夫は何度も叫ぶ。
「いや!遊んでくれるまで止まらないもん」
だが、鬱憤の溜まっている少女には無意味な言葉であった。
「あー!俺の研究がー!若返り薬がああああ!」
「どうせそれも失敗作でしょ?それに若返りなんて必要ないよ、もっと機械が発達すれば」
「そうだが…全身機械にするってのは、本当に良い事なんだろうか」

―――機械
彼らの言う"機械"は、ただのパソコンやらゲーム機のことではない。
近年発達したサイボーグ技術、人体よりも都合のいい動きができる義手や義足が現れて以降
自らの体の一部を機械に取り替える人々が増えていた。
そしてメンテナンスを繰り返せば永遠に動作するこの技術に、不老不死を考える者も現れていた。

「お父さんだって、機械に助けられてるじゃない」
霧夫は実験事故で右腕を失い、義手を移植していた。
「確かにな、でもこいつは便利だが生身の感触が」
「またその話、聞かされたら日が暮れちゃうよ、それより遊ぼう!」
「遊ぶと言ってもな…あー近くの研究所にでも見学に行くか?何か発表があっただろ、人体の内なる能力…だったか」
「内藤研究所?いいよ!行きたい!地下のケーキバイキング行っていい?」
「それで気が済むならいいぞ、好きなだけ食え」
喜ぶ葵の声を聞き、自然と頬が緩む。
用意してくる、と言う葵を見送り霧夫も着替えを始める。



「やっぱりおっきいねー!」
車で十数分旅をし、二人は内藤研究所の前に立っていた。
看板には大きく、人体の内なる能力!!と書かれている。
「この時代に機械じゃなくて生身を研究するとはね」
霧夫が不思議そうにつぶやく。
「お父さん早く入ろ!」
「待て待て、最初は発表からだぞ?時間が決まってるからな」
「えー!でもその後はケーキだよね?」
「もちろんだ」
満面の笑みになる葵の手を引き、霧夫は研究所へと入る。

発表会場に着き、霧夫は呟く
「さて、今度はどんな胡散臭いことを発表するのかね」
内藤研究所は、これまでにも幾つか発表をしていた。
タイムマシン、異世界移動、ワープ装置…色々と発表して来たが、どれも不十分な内容で実際に成功したことはなかった。
そのためか研究所とは名ばかりで、本当は地下の飲食店が本業ではないのかという噂まで流れている。

「皆様、お集まり頂きありがとうございます」
司会の女が現れ、挨拶を始める。
「長そうだし私、おトイレ行って来るね」
葵が小さい声で、夢中になっている霧夫に呟く。
挨拶が終わり、拍手と共に大きな青色の宝石が現れる。
「これぞ、我が研究所が生み出した人体を強化する宝石、ブルークリスタル!」
「我が研究所の実績を全て詰め込んだ、最高傑作となっています!」
司会が自信満々に叫ぶ。
「おお、綺麗ではあるな、葵はこういうの好きか?」
霧夫は語りかける、だが横に葵はいない。
「おい、葵?」
周りを見渡す、何処にも居ない。
驚いた霧夫は席を立ち上がる。
「では、起動をしてみましょう」
発表は進行しているが焦った霧夫の耳には届かない。
「何処だ…何処に行った…」
再び周りを確認する。
すると入り口のドアが開き隙間から葵の姿が現れた。

―――その瞬間、青光が研究所を包んだ。

       

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