Neetel Inside 文芸新都
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人食い炬燵
出るか、出ないか。

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まともな飯を食ったのは一体何日前か。
金がないわけではない。面倒なだけだ。炬燵の上には卵かけごはんが収まっていたこともあったように見える黄身のこびりついた茶碗、鮭のふりかけ瓶、味付け海苔などなど白米にいかに味をつけるかという怠惰な工夫をしたあとと、本来やらねばならない作業のために用意した参考文献がそれ自体は綺麗なまま布団に埋もれている。
茶を沸かすのも面倒で、空になったペットボトルが狭い部屋をさらに足の踏み場のないものにするために転がり、いや転がってはおらずただそこここにあって、ここは本当に女の部屋なのかと言われんばかりの様相だ。
それゆえ基本的には他人など招きたくはないが、数少ない友人の中にはごくたまに酔っぱらって押しかけてくる輩もいるのだから焦る。関取一人も収まらないような、狭い部屋に似合いの狭い押し入れにゴミと言うゴミをすべて押し込み、途中そいつから送られてくる錯乱したメールを見てそいつを迎えに行くべく居場所を解読し、挙句やっとのことで部屋に上げれば押し入れの中で盛大にゴミが崩れ落ちる音がした。
「まぁ…ゴミが崩れる音を女の部屋で聞いたのは初めてだったけど」
お前、お前、それなら何度も戻した上に非常ベルを意味もなく押し(いや、意味があるということは大ごとに違いないのだからないに越したことはなかったが、……ん?いや意味がないのなら押すな)さらに駅の大階段を猛ダッシュ☆ライジングしてしまうような飲み方をするな。そんな輩にどうこう言われる筋合いは……それとこれは別か?嗚呼、そうだな、普段がんばっている人間がたまに羽目を外してしまうのと、普段から怠けている人間の結果としてのこの部屋、どちらが責められるに足りるかと言われれば反論のしようもないさ。
ダメ人間と言われればそれまで。実際そうなのだ。自分をダメ人間と決めつけることで楽になろうとしているダメ人間。それでも何がどうダメなのかを考えることに頭を働かそうとはせず酒を飲んで煙草を吸って、もうこれでいいか、と酔ったふりをして諦め許しを請う。酒の席で、喫煙所で、「俺は私はこの数年間の学生時代を経てこう変わった」としんみり語る先輩らを横目に、痛みの伴わない劇的な経験を望む自分の浅はかさにまた酔った。きっと語り手の先輩はそんな話をしたことも忘れ今日も忙しく過ごしているだろう。私はと言えば、炬燵に体の3ぶんの2を食われたまま、かろうじて意識を保っている有り様だ。どうしてくれようか。このまま眠りについて白い巨大ムカデに襲われに行くのが無難ではあるな。何故か最近同じ夢ばかり見るのだ。
いや―、そうだな、カップ麺でも買いに行くか。

       

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Neetsha