Neetel Inside ニートノベル
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*   初心者の塔                              *
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*     何もない大広間                          *
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 その後、戦い方を首輪から指南された立川はるかはゴブリンの頭部を粉砕、残った身体を殴りまくってミンチにしてから屋上を後にした。

 次のフロアはがらんとした大広間だった。
 見渡す限り何もない。物もモンスターも存在しない。

「ここ、なに?」
『ここではトラップについてご説明します』
「トラップ?」
『はい。塔の中はアイテムやモンスターだけではありません。プレイヤーの障害となるトラップ、つまり罠が存在するんです』
「落とし穴とか、トラバサミとか?」
『そうですね。それはほんの一例ですが、単純に死に至らしめるもの、妨害を目的としたもの、実に多種多様です』
「ふぅん……って、死っ!?」
『さっき死んだじゃないですか……ああ、言い忘れてましたね』

 こほん。首輪は咳を一つつく。

『この塔で死亡、あるいは行動不能となった場合、それはゲームオーバーとなってそのフロアの入り口……今立っているところまで戻されます。簡単に言えばリセットされた状態ですね』
「そういや、さっきは気づいたら戻ってたなぁ……ゴブリンでテンション上がりすぎて忘れてた」
『……それはそれとして、このシステムがこのゲームの醍醐味なのですよ。
 さあさあ、存分にトラップを味わい、学習してください』

 死んでもリセットされる。そう言われても恐れてしまうのが人間であり、立川はるかも例外ではない。できる限り死にたくない、誰かを殺したい。それが立川はるかなのだ。
 じぃっと、目を皿のようにして床を見た。すると足元の床で少し膨らんでいるところがあった。

「ん、ボタン……?」
『気づきましたか。そのボタンをうっかり踏めば、もれなく爆死する即死型トラップです』
「それって地雷!?」
『平たく言えばそうです。このフロアにはひと通りのトラップを用意しましたので、いろいろ覚えてくださいませ』

 身体を張ってまで覚える気なんてさらさらない。立川はるかはのそりのそり、目に見えるトラップを回避し、ゆっくりと進んでいく。
 部屋の奥に階段がある。そこを目指す。
 だが、そう簡単にもいくはずがない。


 ぺちゃっ


「ん?」

 肩に、何かが落ちてきた。
 それはうっすらと黄色がかかった、ツンとすえた臭いのする粘液。
「なんだこれ?」と思うよりも早く。


 べちゃ、べちゃべちゃべちゃドロドロドロ


 大量の粘液が立川はるかに降りかかった。

「わ、わ! なん、なんだこれ!?」

 頭から足元まで、浸るように降りかかる謎の粘液。
 ややパニックになり、立川はるかはその粘液を掴み、拭い、振り払おうとした。

「うう、臭い……なんなんだよう……」
『あの、あんまり触れないほうがいいですよ』
「なんでよ!?」

 立川はるかは、首輪のその言葉をすぐ理解するようになる。


 ドロリ


 布の服が溶け始めたのだ。
 ずくずくと表面が泡立つように小さく穴が開き、そして次第に繋がり大きな穴となって溶けていく。

「え、ちょ、ちょっとぉ……!」
『これは装備品を溶かすトラップ。棍棒は素材が木なので溶けませんが、布の服は……』
「そんな、やだ、やだ!」

 はたいたり、パタパタと揺らしたりとどうにか粘液を取ろうとする。しかしそれは逆効果。激しく動くほどに摩擦が増し、布の服はぼろぼろとゴミクズのようになっていった。
 立川はるかが裸になるまで、そう時間はかからなかった。

「そんな、やだぁ……」

 胸、そして女性器を両手で隠し、身体中を粘液で汚したまま床に座り込んだ。
 ここには自分と首輪以外は存在しない、誰も見ていない。それでも恥ずかしい、恥ずかしすぎた。

『ほら言わんこっちゃない……どうせ誰も見ていないんです、堂々とすればどうですか?』
「そうは言ってもぉ……」

 一糸まとわぬ、しかも謎の粘液だらけの身体に棍棒を持つ少女。なんともマニアックな姿である。

『ほら、進んでください。そうでないと脱出は永久に無理ですよ』
「うう……」

 そう言われるとどうしようもない。立川はるかは両手で身体を隠したまま、もじもじ内股気味に進む。
 そんな状態でトラップを避けれるはずもない。カチリ。手のひらほどの大きさのボタンを踏んでしまった。

「う、そぉ……」
『あら? このトラップは……』


 ぎゅるり


 立川はるかの両脚に、太い、まるでミミズのような触手が巻きついた。

「な、なにこれぇ……」
『ええと、これは』

 首輪が答えるよりも早く、トラップは行動を移した。

 大量の触手が床から噴き出し、それらが立川はるかの全身を襲う。
 両腕、そして腰。逃さないと言わんばかりに巻きついた。

「え、ちょ、ちょっとぉ!」

 隠していた身体が無理やり晒される。立川はるかは顔を真っ赤にして叫んだ。
 もちろんそれだけでは終わらない。拘束する触手よりも細い触手が現れ、うずを描くように胸に巻きついていく。

       

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