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◆ “超能力者(レベル1)”の伊藤月子が現れました ◆
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「長かったなぁ……」
“救世主”は、今までにない気配を屋上から感じていた。
いる。屋上に『アイツ』がいる。間違いない、ハズレではない。これまでのハズレたちとはまったく違う、別格のオーラを醸し出している。
“救世主”は、自分が激しく高揚していることに気がついた。
これまで侵入者に対して“戦士”と“バニー”、“魔法使い”の性癖を発散させたこともあった。“学者”の知識で世の理を解明もした。“盗賊”の俊敏さで塔内を駆け巡りもした。どれも自分を興奮させてくれた。けれど所詮は『アイツ』を待つだけの暇つぶし。すぐに虚しさを覚えたものだった。
けれど、今回は違う。胸の鼓動がいつもよりも早い。ドクンと一度鳴るごとに身体が揺れるようで、呼吸も苦しく、体温もやけに高く感じられた。
そう、これはまるで、恋。しかも、初恋のよう……。
相手を想い続け身を焦がす気持ちで待っていたことを考えると、まぁ、恋と言っても過言ではないだろう。
ただ、向けられた感情はひどく混濁、歪曲、邪悪なものだったが。
“救世主”はふと、思う。
――もし伊藤月子を殺したら、自分は何をすればいいのだろう。
考えたことがなかった。復讐心に駆られ、それしか生きる目的がなかった。この長きにわたる復讐劇が終わったとして、塔から脱出できるとは限らない。むしろ出れないだろう(という推測)。
――どうしよう。
改めて思う。
が。
――まあいいや。とりあえず殺そう、そのあとに考えればいいや。
次の瞬間どうでもよくなっていた。