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* 僕の塔 *
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* 幻覚クラゲの巣 *
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「アッ」
伊藤月子は小さく、鳴いた。
「アッ、アッ、アッ、アッ」
何度も何度も、一定のリズムを刻む。
そこはフロアの行き止まり。伊藤月子はうなだれるように座り込み、ビクン、ビクンと身体を震わせている。
明らかに異常な状態だった。
「見ないで、陽くん……あ、アアアッ」
伊藤月子の頭には半透明の生物が張りついていた。それはまさにクラゲ。半透明でぶよぶよとしたそれは、複数の細い触手を伊藤月子の頭に突きしていた。
それはグネグネと動き、不気味な色の液体を送り込んでは頭の中を混ぜる。どうやら脳が液化しているようで、時おり鼻や耳から流れ出る。
「なんで、どうして……陽くんに見られてるのに……ふぁぁ、ああっ」
触手の動きが激しくなるにつれ、伊藤月子から漏れる声は甘く甲高いものになっていく。 そして、伊藤月子は身体を震わせ――
「ア、アアアアアっ!!!」
伊藤月子は絶頂に達した。クラゲに脳を弄られ、恋人の目の前で犯される幻覚の中、絶頂に達してしまった。
しかしクラゲの触手は止まらない。
「えっと……おはよぉ」
誰に言うわけでもなく、伊藤月子はつぶやいた。
「うん、行ってくるね。ありがとう」
様子は変わらない。しかし彼女は会話をしている。
――再び幻覚が始まったのだ。
「……陽くん、誰と話してるの?」
「壁に向かって独り言とか、気持ち悪いよ?」
「そんなことより、早く行こうよ。私お腹空いちゃったよ」
「ほんと? 楽しみ!」
そうして悪夢は繰り返す。
【ゲームオー×××××××××