「オォウ」
そこにはしぶとくバスタオルを巻いた立川はるか。
この瞬間ほどバスタオルに恨みを馳せたことは、伊藤月子にはなかった。
(それにしても……)
つくづく綺麗な身体をしている。ほぅっと、ため息を吐いてしまった。
バスタオルを巻かれた身体のラインは実に扇情的であった。まるで寸分狂わずシンメトリーが形成された砂時計のようなスタイルだ。
露出している腕や脚は、短剣を振り回しているようにも、目にも止まらぬ速さで跳躍するようには見えないほど女性的で、無駄な脂肪も筋肉もない。
くっきりと浮かんだ鎖骨。細い首筋。ぷっくりと肉づきの良い唇は艶かしく、しっとりと潤んでいるように見えた。
残念なことに、先ほど強姦されてしまったので処女ではない。男を知った身体なのにそれでも美しい。
じゅるり。気づけばよだれが出ていた。
震える手でバスタオルを外そうとしたが、これはあまりに難易度の高いミッション。先ほどのシーツの比ではない、彼女の唯一の装備を奪おうとしているのだ。
睡眠状態を確認する。問題ない、この上なく安全、99パーセント大丈夫だろう。だが伊藤月子は200パーセントの安心を感じたかった。
そこで閃いたのがマインドコントロールの応用。寝ていてなお働こうとする無意識(本能的に行おうとする反射など)を限りなくゼロにしてしまおう、というアイディア。
まずは精神に干渉し、無意識を目視する。やはり寝ていても多少の警戒はしているようで、何か刺々しい意識(きっと攻撃意識や防衛本能)がちらほら見られた。
それらを手で握るように潰していく。
すべての無意識を排除したとき、立川はるかは完全に無防備となる。そうしてようやく蹂躙できるのだ――伊藤月子はニンマリと笑い、ワキワキと手を動かした。
(ん?)
意識の中に、少しも敵意を感じないものがあった。言うなればピンク色の意識。いや何らかの能力にも思えた。
まるで危険はないようだったが、念のためそれも潰した。
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▲ 立川はるかのスキル:魅了(チャーム)が解除されました ▲
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「…………」
途端に、あれだけ飢えていた伊藤月子のテンションは急激に下がり、底。
これまでの興奮がウソのように、立川はるかの身体を見ても何も感じない。多少の嫉妬はあるけれど。
(……私も寝よう)
さっさとベッドから降り、ソファーに寝っ転がった。
いっしょに寝たい、なんて少しも思わなかった。