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* ?????の塔 *
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* 残された姫の結末 *
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出口が閉ざされてすぐ、立川はるかは念動力から解放された。けれど、ピクリとも動かなかった。
ぐったりと、壁に持たれて座り込んでいた。
身体が重かった。
怪我や疲労はない、ただ、伊藤月子に裏切られたという現実が立川はるかをそうさせていた。
無理もない。ずっと仲間だと思い、慕って、信じていた相手にあっさりと、残酷に裏切られたのだから。
そんな立川はるかに同情する者はこの塔にいない。部屋の入口が開き、わらわらとモンスターたちがなだれ込んでくる。
塔を居着いていたモンスターたちの生き残り。散々仲間たちを虐殺した相手が弱っている。そんな機会を逃すはずがない。
まずは腹いせに半殺し。そのままあっけなく殺すか、食い散らかすか、陵辱の果てに苗床となるかは、モンスターの中で最も力のある種族によるところだろう。
一匹のモンスターが、立川はるかに近づいた。子供ぐらいの身長のゴブリン。おそらく知性のない、蛮勇高い個体だ。
その手には大きな棍棒。それを振り上げ、立川はるかの頭に振り下ろした。
ぐしゃり。
まず、頭が砕けた。
そのまま腕、上半身、下半身。モンスターは突如発生した光の刃によって三等分に斬り飛ばされた。
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▲ 立川はるかのレベルが上がりました ▲
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▲ 【敗戦国の姫 レベル31→32】 ▲
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▲ 戦士の剣技 レベル15→16 ▲
▲ 魔法使いの魔法 レベル13→14 ▲
▲ 学者の知識 レベル10→11 ▲
▲ 盗賊の身体能力 レベル15→17 ▲
▲ バニーガールの魅力 レベル12→13 ▲
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立川はるかの口がぽそぽそと動く。小さく、何かをつぶやいた。
モンスターの集団の中に爆発が発生する。それも、いくつもいくつも。モンスターは粉々に砕け散り、炎に呑み込まれ、次々に力尽きていく。
パニックに陥るモンスターたちを、拾い上げた短剣でバサバサと斬り、突き、えぐる。
刃が扱いに耐え切れなくなり折れてしまう直前まで、モンスターの命を奪い続けた。
激しい憎悪が立川はるかを動かしていた。
どうして、あれほど信じてしまったのだろう。
もっと疑わなければいけなかった。
激しく後悔していた。
浅田浩二を殺してしまった。今になって罪悪感が襲ってきている。
強姦された、殺すに値する相手だ。でも、あの超能力者が働きかけてくれたなら、平和的に解決していたかもしれない。
助けたかった。彼を、『救世主』にすがる彼を助けたかった。
負の感情が膨れ上がっていく。もはや完全な逆恨みな部分もあったが、立川はるかは自分が正だと疑わない。
周囲のモンスターたちは皆、肉塊、血だまりと化していた。
部屋の中央には返り血を浴び、全身が真っ赤に染まった立川はるか。
閉じた扉に背中を向け、戻る。
モンスターを発見した瞬間、殺す。気配を感じればそこに向かい、殺す。フロアのすべてのモンスターを殺し終えたら階段を上り、殺す。
彼女は止まらない。