原作8

 トメリカ王国では、寒冷による不作で、トマトの値段が跳ね上がっていた。
 平民には手の届くはずもない値段になり、貴族がトマトを独占した。
 宰相は国王にトマトを国が買い、平民に配ることを提案した。
「トマトがなければ、米を食べればいいだろう」
 国王トマート13世の知能指数は100。良くもないが悪くもない。
「た…たしかに」
 だが、この国の99%は知能指数は50以下。恐ろしいほどの知性だと宰相は打ち震えた。
 翌日、宰相は「トメリカ人なら米を食え」の布告を発した。米は栄養価が高く、保存もきく。まさに理想食だ。
「俺たちに米を食えだと?」
 布告文を読んだ民衆が不満の声をあげる。トメリカ王国では米とは家畜のエサである。これは国王が民衆を家畜とみなしていると受け取られた。
 考えてみて欲しい。為政者から「日本人ならドックフードを食え」と言われたらどう思うか。ドックフードは栄養価が高く、保存もきく。理想食であるが、そんなことは関係ない。
 各地では国王打倒の声があがり、貴族VS平民の戦いへと突入していった。
「やめろ、愚民ども。国王陛下の名の元にトマト庫を明け渡せ」
「なぜあなたたち貴族はそんなことが言えるの? 私たちだっておなじ人間よ。トマトを食べる権利がある。あなたたち貴族こそトマトを放棄すべきだわ」
「ははは、バカなことを。トマトは神から与えられた天恵の食物だ。我々、神に選ばれた貴族こそが食べるにふさわしい」
「その傲慢さが神を怒らし、トマトの不作を招いているとなぜわからない」
「違う。これは愚民にトマトを与えてはならないという神の意志だ。その証拠に貴族が食べる分のトマトは神は与えてくださっている。貧乏人は米を食え」
「もはやあなたたちと話す言葉ない。米を手に取るくらいなら、このトマトを取ってあなたたちと戦う」
 彼らは激しく争った。両手は赤で染まり、鋼の鎧は赤で装飾された。やがて両陣営の地面までが真っ赤に染まった。
 やがてこの戦いを止める救世主が現れた。国王である。彼はたった一言で争いを収めた。
「その投げているトマト食えばいいんじゃね?」
「「た…たしかに」」
 こうして貴族と平民は和解した。
 なお、これが後にスペインに伝わり、夏の風物詩となるトマト投げ合い祭り、トマティーナの始まりとなったことはよく知られたとおりである(新都書房刊:「最近のトマトって品種改良が進んでおいしいよね」より)