Neetel Inside ニートノベル
表紙

首領蜂隊に志願したんだけど。
集中しましょう、私に

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「ああ、今日の訓練も疲れた……魔璃亜も疲れてる?」

「大丈夫です」

「そっか、魔璃亜は強いな」

「愛するマスターと一緒なら疲れなんて感じません。
 何度でも、どこへでも、飛べます……」

「魔璃亜……」

「なんて言うとでも思ったか、童貞マスター」

「ちくしょう!」

「疲れました、だっこして下さい」

「おまえ日に日にワガママになってないか?」

「普通です」

「普通じゃない、魔璃亜は絶対に普通じゃないよ」

「童貞のあなたに、女の子の『普通』がわかるんですか?」

「わかんねえよ! クソァァァァァ!!」

「落ち着いて下さい、童貞。
 ところでマスターの明日のご予定は」

「明日は休みだったな。何も考えてないけど
 貴重な休日だしゆっくりと……」

「デートですね」

「は? なに?」

「休日と言えば、デートです」

「だ、誰と」

「もちろん、エレメントドールの私とです。
 童貞マスターが他の女の子なんて誘えるはずないですし」

「うるせえ! っていうかなに勝手に決めてんだ。
 魔璃亜とデートするなんて俺は一言も……」

「デートしたいです……マスター」

「そ、その上向き加減でまっすぐ見詰めるのやめて」

「お弁当作っておきますね♪」



 ―――――――



 ――翌朝――

「魔璃亜がいない……いつも朝起こしに来るのに。
 今日はデートのはずだけど、どこに行ったんだろう」

「おはようございます、マスター」

「え? なんで玄関から?」

「幼馴染が主人公の家に迎えに来るという
 シチュエーションがいいのではと思いました」

「普通にしようよ!」

「普通です」

「もういいや……おはよう、魔璃亜」

「それでは、出発しましょう」

「ところで、ずっと気になってるんだけどさ」

「なんでしょうか」

「魔璃亜の私服って、それどう見ても制服じゃね?」

「私服です」

「……まあ、いいか」

「マスターへの勝負服だって、言わせたいんですか」

「えっ?」

「言わせたいんですか!」

「なんで怒ってるの!?」

「どどどどどんぱち」



 ―――――――



「あのさ……デートの予定、何も考えてないんだ。
 俺、この街に来たばっかりでよくわからないし」

「童貞のマスターですから、想定の範囲内です」

「……ごめん……」

「大丈夫です、愛するマスターと一緒なら
 どこでも……楽しいと感じられます」

「魔璃亜……」

「なんて言うとでも思ったか、童貞マスター」

「ちくしょう!」

「では、私がリードしますので言う通りにして下さい」

「そうする」

「デートというものはですね。
 くっついて歩き回ってればいいと思います」

「それだけでいいの?」

「マスターは私のものだと、この街の多くの人達に
 はっきりと見せつけてやるのです。
 ふふふ……クククッ……楽しいですね♪」

「魔璃亜って……」

「普通です」

「わかった、魔璃亜とくっついて歩けばいいんだね」

「絶対に離れてはいけません」



 ―――――――



「デートって本当にドキドキするんだな。
 周囲の目線がなんか違うっていうか……
 すげえ見られてる感じがする」

「集中しましょう、私に」

「うん……でも、そんなに強くしがみついてると
 ちょっと歩きづらいよ」

「……いいんです……」

「ん……?」

「歩きづらい方が、長く楽しめます」

「ああ、うん、なるほど」

「50メートルおきにキスしましょう」

「え? いや、それはちょっと……」

「距離は私が測っているので大丈夫です」

「そういう問題じゃない」

「のどが渇きました。アイス買って下さい」

「いいよ……なにが欲しい? 俺は抹茶にしようかな」

「ひとつのアイスを、マスターと一緒に食べるに
 決まってるじゃないですか」

「……バニラでいいかな……」

「それでは、一緒に食べましょう、マスター」

「…………」

「あっ……みんな見てますっ♪ 
 マスターと私が顔を近付けて、ひとつのアイスを食べてるの、
 みんなにジロジロ見られちゃってるぅぅぅ♪」

「魔璃亜って……」

「うふふっ♪ 楽しいですねっ♪」

「デートってこんなに恥ずかしいとは思わなかった……」



 ―――――――



「ふう……疲れたけど、楽しかったよ。
 魔璃亜はどうだった?」

「23回……」

「へっ?」

「デート中、マスターが他の女を見た回数です」

「そんなのカウントしてたの? 
 っていうか見てない、そんなに見てないって」

「エレメントドールに嘘はいけません」

「ごめん」

「次のデートでは半分以下に減らすようにして下さいね」

「もしハイスコアを更新しちゃったら?」

「あなたは死にます」

       

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