Neetel Inside 文芸新都
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ニコ生漂流記
【ファイル1:出会いは唐突に】

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【ニコ生漂流記】 
【ファイル1:出会いは唐突に】
【記録:翔平】


私が、彼と出会ったのは
去年の11月であった。

目標年収を稼ぎきり、NEET生活に入っていた私は、
ネトゲ廃人となっていた。
そんな中、廃人仲間の女の子が”この動画面白いよ”と
教えてくれたのが、恭一郎氏の動画であった。
もともと、ニコニコ動画はしっており、
動画アップを目的として、
過去にサークルで活動していたこともあったが、
ニコニコ生放送がはじまったくらいから、
人間関係の悪化などでメンバーが萎えていき、
企画が少なくなっていき、結局活動は収縮した。
現在はたまに顔はあわせはするが、活動はしていない。

ちょうどその頃、新卒で就職した時期とかぶった私は、
しばらくネット社会から離れ、新卒社蓄としての生活を送っていた。
その期間にニコニコ生放送がはじまったようで、
噂すら耳にしたことはあったのだが、実際に見たことはなかった。
新卒期間に、かなりしごかれた私は、
収入の少なさと生活の大変さを比較した結果”釣り合わない”と考え
若いうちは、なんとかなりそうだとおもい、転職をした。
毎日働いている人には申し訳ないのだが、
なるべく長く自由に遊びたいため、年間目標金額をかせいだら、
NEETになれる。そして、いつでも仕事戻れるように、
ある程度資格が必要な、日雇い労働者の道をえらんだ。
はじめは大変であったが、徐々に慣れてきて。
安定した収入も得られるようになってきた。

そしてそんな暮らしの1年目のSUPER NEET期間に私は彼と出会った。
年間目標をかせいだとはいえ、半年しか仕事やっていないので
300数万しか稼げていない。お金の浪費を抑えるために
私が選んだ趣味はネトゲであった。
ネトゲも新卒期間に状況が変わったらしく、
昔のようにチャットで文字を打って連携する時期が終わり、
TS3というツールを使い、何十人もで
ボイスチャットを行い、連携とを取る、といった高度な
情報戦を繰り広げており、それまでのネトゲのイメージとは大きくかけ離れていた。
もちろん私はリアルの連絡先を教えあい催促で攻略を進める、
”固定パーティ”に入り、サーバーのTOP集団の一員としてブイブイいわせた。
しかし、そんなコミュニティも長くは続かず、4ヶ月も経つとリーダーが消え、
若干名のメンバーで構成されたコミュニティのみが、のこったのであった。
そして、TOPから失墜して自由気ままにネトゲを廃人プレイしているときに
そのコミュニティの1人に恭一郎氏の動画を紹介されたのであった。

実際始めに見た恭一郎氏の動画は生放送を誰かが録画し、
トリム(抜粋)した動画であったのだが、
私は、その話術やカメラワークそして、間の取り方に
「まさか・・・ここまで進化していようとは・・・。」
と驚嘆した。

動画は、巨大な大男がカメラに移り、”恭ちゃん”とよばれる
生主の座っている椅子が、その巨体の重量に耐え切れずに
破壊され、後ろへと倒れこむというところから始まっていた。
何かのネタであったであろう「パラグアーイ!」という
掛け声とともに倒れこむ彼の姿はシュールきわまりなく、
笑いの国、大阪に引っ越して、5年目になる
私の目と心を魅了するレベルに達していた。
自らもネタを仕込み大阪のコスプレ祭りに参加し、
毎年、多くの写真を取られたり、新聞に載ったりした経験があり。
割と自分が面白い気質の人間だと自負していたが、
ネット界では、こんなにも、自分よりもはるかに面白い一般人が
いようとは想像もしていなかったし、
井の中の蛙であった自分がはずかしくさえ思った。
しかし、動画はそこで終わっているわけではなく、まだ続いていた。


動画の次に始まったのは破壊で後ろに倒れた恭ちゃんが、
その衝撃に苦しむところからはじまり。
椅子の破壊を予想していたかのように
次々と発せられる、言葉の雨は私の全てを濡らし、
論理的に椅子が壊れる現象を解説している様はまるで、
長年練習してきた熟練マジシャンのマジックのように
華麗で美しい口捌きで私を釘付けにした。
「グッジョブ・・・。」
動画を見終えた私は自然とその言葉を発していた。
そしてそれから私が、ニコニコ生放送にどっぷりと浸かるのに
時間はそれほどかからなかった。

まず、ニコニコ生放送で登録したのは
もちろん恭一郎のコミュニティであったが、
何かと忙しかったらしく、放送開始を自動で通知してくれる
アラート等をしらなかった私は、行き当たりばったりで、
彼の放送にめぐり合っていたのだが、何故か入ることが出来なかった。

そう。プレミアムフォールである。
ニコニコ動画には本来無料会員と有料会員があり、
ニコニコ生放送はその放送が上限に達すると、
有料会員を優先的に視聴できる権利を与えるという、
なんともせせこましく、かつ誘金的なシステムであった。
そうなのだ。プレミアムフォールとはプレミアム会員ではないので
超人気生主に君臨していた恭一郎の放送から
自動的にはじかれていたのであった。
まず、私は、お金をあまり使いたくなかったので、
無料で優先的に見れる方法を探したのだが、
いくらググっても見つからなかった。
いや、実はあったが、
必然的に私はプレミアム会員になる運命であったのかもしれない。
すぐさま支払いがしやすいよう、楽天カードをつくり、課金した。
そして、プレミアム会員となった私は、
すぐさま恭一郎氏の生放送を拝見するにいたったのであった。

初めて視聴したの生放送では既に、3時間経っており、
視聴人数も20000人以上を軽く越えていた。
そして、目の前に移ったのは、
なんらかの方法でカメラのエフィクトを使いながら
リズムに合わせて暴れる”裸のデブ”であった。
「なんなのだ!これは!」
その驚きは次の瞬間、笑いへと変わった。
裸のデブがカメラのエフェクトを切り替えたとたん、
デブの腕が太くなり、まるでモンスターのように変化したのだ。
そして画面に流れるのは赤い「ビースト覚醒モード」の弾幕。
巨体で腕を大きく振りかざす彼はまさしく怪物そのものであった。
しかもBGMは有名なRPGの代表格であるドラゴンクエストの戦闘BGMときたもんだ。
そのとき、画面上を通して私はリアルで「モンスター」と
エンカウントしてしまっていたのである。
そのモンスターは私に物理攻撃することはなかったのだが、
数々の呪文や特技を繰り出したため、
私はステータス異常を引き起こしてしまったのであった。
・笑い
・強制拍手
・泣き
・過呼吸
・嗚咽
そして、曲がおわった。
「ハァハァ…やるね…ニコ生…やるね…彼」
私はそう、パソコンの前でつぶやいた。



・・・予告。
SUPER NEET期間が終わり。始まった過酷な日雇い労働、
私の新しいストレスの解消法はネトゲからニコ生視聴へと推移してゆく。
次回 -ニコ生放浪記- 

       

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