Neetel Inside 文芸新都
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創造

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創造

「うむ。これは実におもしろい生物だ。我々と同じような二本の腕と足を持ち、同じ肌の色をして、髪まで生えているぞ。どう思う、A隊員。」
「ええ、本当に不思議です。見たところ雄の個体のようですね。しかし、うるさい生物だ。」
 檻の中に入れられたその肌色の生物は、何事かを叫び、涙を流しながら、脅えた様子で檻を揺らし続けている。
 その時、もう一人の人物が息をきらせながら檻を台車に乗せ走ってきた。
「隊長!」
「どうしたんだね、B隊員。」
「雌の個体と思わしき生物を、発見しました!」
「なに?本当かね。すぐに見せたまえ。」
 B隊員が持ってきた檻の中には、先ほどの雄の個体と同じような生物が体を縮め、震えていた。雌の個体は、雄の個体よりも幾分か小柄なように思える。
「うむ、これは素晴らしい。すぐに同じ檻に入れ観察をしよう。」
 同じ檻に入れられた二つの個体は、それぞれお互いを警戒する様子でにらみ合い、近づこうとしなかったが、時間がたつにつれ、いくつかの言葉を交わし、警戒をとき身を寄せ合い、何事かを小声で話し始めた。
「どうやら独特の言葉を持ち、それで会話できるようですね。」
「ああ、その様だな。これほどの知能を持った生物なら、もしかすると作戦を成功する事ができるかもしれん。」
「そうですね。すぐに準備をしましょう。」
 そう言うと隊員達は、檻を押しながら宇宙船の方へ向かっていった。
「では、出発します。」
 宇宙船はみるみるうちに空へのぼり、大気圏を突破し、青く輝く星を背に宇宙へ出た。
「隊長、目的地が見えてきました。」
宇宙船を操縦していたA隊員が指差す先には青くきれいな星があった。
「よし、では作戦を開始しろ。」
作戦開始の合図を受けたA隊員は、宇宙船をその青い星に着陸させ、生物だけを星に降ろした。最初は戸惑っていた生物も、隊長達が降りてこないのが分かると、手をつなぎ森の奥深くへ逃げるように走っていった。
「これでいい。あの生物たちはきっと良い世界を築いてくれるはずだ。しかし、念のため時々様子を見にこよう。もし何かあっては作戦が失敗に終わってしまう。」
「そうですね。では、帰りましょう。我々のユーマ星に。」
 A隊員がそう言って操縦桿を動かすと、円盤のような形をした宇宙船は、音もなく宇宙にでて、青く輝く星へと帰っていった。

       

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