Neetel Inside 文芸新都
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文学練習

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 茹だるような暑さの朝、僕は頭を抱えていた。
 この暑さのせいではない。
 ここ最近、毎日見続けている夢のことでだ。

   ○

 その夢は毎回逃げる人の後ろ姿が見えるところから始まる。
 僕はそれを息を切らしながら懸命に追っている。
 辺りは暗く、数メートル置きにある街灯の小さな明かりだけが頼りだ。
 前を行く人の姿がハッキリと見えるのは街灯の下を通る一瞬だけだ。
 それでも僕は毎回逃がすことなく後を追い、そして追いつく。
 僕が追いつき相手の肩に手をかけると、相手は恐怖に歪んだ顔をゆっくりとこちらに向ける。
 そして、僕はその顔を確認すると相手の首にゆっくりとナイフを突き刺し横にひく。
 首から吹き出る血を浴び、目の前が真っ赤に染まっていったところで毎回目が覚める。

   ○

 夢だからと言って人を殺すのは気が引ける。
 それも毎日みると罪悪感さえ生まれてくる。
 気になることもあった。
 最初に殺したのは妹だったので何かとても大変なことをしてしまった気分になった。
 それに、二回目からは見知らぬ誰かを、それも毎回違う人物を殺しているということだ。
 その事実に気づいた時、なんだか連続殺人犯にでもなった気分になり、数日間食事を食べることすらままならなかった。
 しかし、いつからかその気持ちさえなくなっていた。
 「暑い」
 思わず声に出してしまうほど、室温が上がっている。
 僕は冷房をつけ、冷凍庫からアイスクリームを取り出す。
 今日は妹が旅行から帰ってくる日だ。
 妹が旅行に行ってからまともに掃除していないせいか、部屋の中がすこし臭う。
 あいつが帰ってくる前に掃除をしておこう。
 テレビでは天気予報士が今日が真夏日になることを告げていた。

       

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