Neetel Inside ニートノベル
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 例えばの話をしよう。
 夢が現実世界に与えうる影響とはどれくらいのものか? ということだ。
 夢、と簡単に言ってしまえばそれまでだが、視覚情報だけではなく嗅覚や味覚まで感じることもあり、ある学者は『夢は第二の現実』だとも言っている。
 寝言に返事をしてしまうとその人間が戻って来れない――そんな俗信もある。しかし、その俗信は最近の研究で正しいものではないか、と言われつつあり、議論が絶えることはない。
 夢に生きる人間も、間違いなく存在する。第一の現実に生き甲斐をなくし、第二の現実=夢へと逃げ出す人間というのも、幾つか例がある。
 また。
 夢の住民が、現実へと向かうケースも存在するのではないか――そう言われている。


 ◇◇◇


 とあるケースの話をしよう。
 それはどうしようもなくて、その場から諦めてしまった人間のお話。
 ある箱庭を用意した。
 それは、“彼”が一番優位に立てる箱庭だ。それ以外の人間は少なくとも彼より優位に立てることは有り得ない。
 さて、それでは。
 ケースを開始するとしよう。


 ◇◇◇


 俺が目を覚ますと不思議に身体が軽く思えた。なぜだろう。今日見た夢が原因なのかもしれない。
 妹に叩き起されるとかいうシチュエーションも、そんなのはライトノベルでしか存在しないという理論は少なくとも俺の家でも成立する。というか俺に妹は居ないって話になるけれど。
 俺は、どうしようもない――人間だ。
 中学生までは勉強ができるとかで持て囃されていた――そんなことも今は昔、高校生になってから学力もあっという間に落ちてしまって、大学も落ちて……まあ、そんな感じだ。ああ、自分のこととはいえ話すのが辛い。
 さて――行動開始だ。
 そう考えて、俺はようやく起き上がった。

       

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