「この辺でちょっと休もうか。適当にサボらないとやってられんよ」
そう言ってマスターは崩れかけた建物の傍に腰を下ろす。
わかっているのだ。
言葉ではそう言うが、『少年』を待っているのだ。
約束があるわけでもない。責任があるわけでもない。
ただ、待ちたいから待っている。おそらくマスターは、そう答える。何かをごまかしながら。
少年も、マスターも、お互いを詮索しようとしない。少ない言葉で、話すことが出来る部分のみで、最大限に相手を慮ろうとしている。
この場所に。
子供が。
たった一人でいる、ということ。
その理由を。
せめて友人のひとりでも傍にいてくれていたなら。
マスターは以前、そう呟いていた。
私はマスターの右後の定位置に立ち、小銃を支える左手に少しばかり力を入れて握る。
「おー、おっちゃん、サボってばかりでクビになってもしらないぞー」
建物の上から、少年が顔をのぞかせる。
「キャンプに告げ口するのは勘弁してくれ」
両手を軽く挙げ、掌をひらひらさせながら軽く笑う。
この声を聞くたびに私は思う。
この人がマスターで、幸運だったと。
そして、次の声を聞くために、マスターの方へ視線を向ける。
「アウラ、少年にバーガーをひとつ渡してやってくれ」
「はい」
「おねえちゃん、なんかいいことあったの?」
(special thanks:月並先生)