Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


「奢るって言ったんだから奢らせてよ」
 と、エリに強引にバーに連れ出された。
 エリは相変わらずのカルアミルク、俺は黒ビール。アテはタンドリーチキンで。これはエリの最近のお気に入りらしい。
 そんな、口では迷惑だと言いながらも『また誘え』と言えるような気楽な場をお開きにして、俺は自分の部屋に辿り着いたわけだ。
 が。
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
 扉を開けたら、なんだこれは。
「アウラ…お前」
 俺は、右手で自分の首を掻きつつ、思わず問い返してしまう。
「…またヘンなアニメ観た?」
「…はい少し…」
 髪の毛が撥ねている。また鏡の前で左右に首を振りながら整えてたんだろうな。
 重力への逆らい具合と負け具合が面白い。
「それで、ですね」
「うん」
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
「立場的にはそうなる」
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
「一応ね」
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
「コペンハーゲン解釈だと、どうかな」
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
「……いや、アウラ、なんか朝帰りを責められてる新婚さんみたいな気持ちになったから、やめてくれないか」
「問おう、あなたが私のマスターか…?」
 アウラはそう言って咥えたままだった俺の煙草を取り上げ、爪先立ちで俺にキスをした。


(special thanks:ゴザル先生)

       

表紙
Tweet

Neetsha