Neetel Inside 文芸新都
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ポンチ短編集
TJS外伝 Lilithia 復讐の黒き魔姫 3/3 復讐の刻(後編)

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 ブリュンヒルデへの復讐を済ませ、リリシアは仮面の魔導士の待つ魔導士の館に向かっていた。館の前まで来た時には、すでに夜であった。
「ただいま・・。時間を忘れて散歩していたので遅くなりすぎたわ・・。」
リリシアがそう言うと、仮面の魔導士がリリシアの前に現れた。
 「今日は遅かったじゃないか・・。まぁいい・・ちょうど夕食の時間だ。さぁ、早く来たまえ。」
仮面の魔導士がそう言うと、リリシアは靴を脱ぎ館の中に入る。彼女は夕食をとるため、急いで広間へと向かった。
「ベル・・ただいま・・。」
リリシアがベルにそう言う。リリシアの帰りを待っていたかのように、ベルが答える。
 「僕と仮面の魔導士様は、君の帰りを待っていたんだじょ~。さぁ、一緒に夕食を食べよう!!」
ベルがそう言うと、仮面の魔導士がテーブルに座り、全員にこう話すのであった。

 「お前たち、食べながらでもいいから聞いてくれ・・。私はエルジェにある禁断の書を奪う計画を思いついた。私だけではない・・。君たちにも協力していただきたいのだが、かなり危険なことだが、やってくれるか・・・。」
 仮面の魔導士がそう言うと、リリシアとベルが答える。
「それはいいわね・・。人間界を襲撃できるから楽しそうだね・・。」
「人間共に恐怖と混乱を与えてやるじょ~!!」
二人が賛成の言葉を聞き、仮面の魔導士は納得した表情で答える。
 「ありがとう・・。君たちがいれば奪える可能性は0ではなくなる・・。だが注意したまえ、エルジェの術士は見かけによらず強いからな・・。下手をすれば君たちの命が危ない。」
仮面の魔導士の言葉に、二人の表情が凍る。しかしリリシアは、その恐怖を跳ね除けるかのように、仮面の魔導士にそう言う。
 「私・・。エルジェにいる両親に復讐したいの・・。勝手な願いだけど・・。それでもいいかしら・・?」
リリシアの言葉に、仮面の魔導士は少し不安そうな表情を見せる。しかし、仮面の魔導士はそれを水に流すかのような態度を見せる。
「よかろう・・。お前を捨てた両親に復讐するか・・。それなら私とベルで宮殿を襲撃する。今日の夕方水晶玉を見たとき、両親はたった今エルジェにある実家にたどり着いたようだ。復讐をするにはいい機会だぞ・・。」
 仮面の魔導士の言葉に、リリシアは興味津々な態度で答える。
「それでいつエルジェを襲撃するの!聞かせて聞かせて!!」
うきうき顔のリリシアがそう言うと、仮面の魔導士が答える。
「襲撃は明日だ・・。食べ終わったらすぐに寝て、魔力を温存するんだ・・。本番のときに魔力が出せなければ、魔導士として失格だぞ・・。」
 仮面の魔導士がそう言うと、食事を済ませた二人は就寝の準備に入る。彼は二人が自室に入ったことを確認すると、早速禁断の書を奪うための計画を考えるのであった・・。

 そのころ、自室では、リリシアが考え込んでいた・・。
「私を捨てた両親を殺せば・・私の復讐劇は終わる!!私を捨てた恨み、今ここで晴らして差し上げますわよっ!!」
 リリシアがそう言うと、ベルが答える。彼女のかつてない表情を見たベルは、意を決してリリシアにそう言う。
「両親に捨てられたというのは本当かい?君は本当に復讐するつもり・・。」
ベルの言葉に、リリシアは心の中で復讐の炎を燃やしながら答える
「ええ・・。殺しますわ・・。両親は私を捨てたんだもの・・。父親は私が生まれてから魔界へと帰り、母親はまだ7歳の私を置いて失踪したわ・・。私はその狂った運命の歯車を巻き戻すために、両親への復讐を誓ったのよ・・。」
 リリシアがそう言うと、二人は眠りにつくのであった・・。

 そして夜が更け、魔界に朝がやってきた・・。
仮面の魔導士と二人は、人間界にある魔法の国であるエルジェを襲撃するべく、彼は魔導士の館の地下にある「人間界への門」に手をかけるのであった・・。
 「見ろ、これが人間界に通じる扉だ・・。この扉はたしかエルジェの宮殿の地下室に通じている。さぁ、扉を開け、人間共に戦慄と恐怖を与えてやろうぞ!!」
仮面の魔導士はそう言うと、人間界の門を押し始めた。すると、目の前には人間界のような光景が目に広がっていた。そう、その場所こそがエルジェの地下室であった。
 「ま・・まさか本当に人間界につながっているとはね・・。こんな扉があったなんて・・。人間界には「魔界の門」と呼ばれる場所があるかもしれないね・・。」
リリシアは人間界への扉を見て、驚きを隠せなかった。
 「さぁ、今すぐエルジェに向かおうではないか!!一度入れば、もう二度とここへは戻って来れなくなる可能性があるのだが、それでも行くかね・・。」
仮面の魔導士が二人に問いかけると、二人は決意の表情で答える。その目には、人間界を襲撃するという気持ちで満ち溢れているようであった。
「二度と戻れなくてもいいわ!!私は復讐のために今を生きているんだから・・。」
「人間なんて僕の術で倒せるんだじょ~!!!」
 二人がそう言うと、仮面の魔導士が門の先にある人間界へと足を踏み入れる。彼が足を踏み入れたのを確認すると、二人も一斉に人間界へと足を踏み入れるのであった。

 エルジェの地下室へとやってきた彼らは、早速外に出る。ベルと仮面の魔導士は宮殿へ向かい、リリシアは一人自分の実家へと向かうのであった・・。
 「私の家があった場所は・・。確かここのほうかしら・・。」
リリシアは昔自分が生まれ育ったエルジェの町を散策しながら、自分の家を探す。しばらく歩いていると、見覚えのある家が彼女の目に映った。
「この家・・。私が母親と暮らしていた家だわ・・。ここに両親がいるのなら、早速復習して差し上げますわっ!!」
 リリシアは心の中でそう思いながら、実家のドアに手をかけた。扉には鍵がかかっていないのか、すこし引いただけで扉が開いた・・。
「鍵・・かかっていないわね・・。やっぱり誰もいないんじゃないかな・・?」
リリシアはそう言うと、恐る恐る家の中へと入った・・。

 家の中に入った彼女を待っていたのは、失踪したはずの両親の姿であった。成長した彼女を出迎えるかのように、両親がそう話しかける。
「リリシア・・大きくなったわね・・。さぁ、入って・・。」
リリシアの母であるグラシアが、リリシアを家の中へといざなう。
(こ・・ここはやっぱり嘘でも優しく振舞っていたほうが・・・無難なのかもしれないわ・・。)
リリシアは疑問を感じていたが、懐かしい両親の姿に感動していたが、内心嘘であった。
 「母さん・・あなたに聞きたいことがあるの・・。なぜ私を捨てたの・・。」
リリシアのその言葉に、深刻な表情でグラシアは真実を話し始めた・・。
「私はあなたが7歳の頃・・私は夫のことが心配でいてもいられなくなったの・・。そして、私は夫を探すため、ヴィクトリアスの地下の隠し部屋にあるといわれる「魔界の門」を通り、魔界へと赴きました・・。魔界に来た私は、魔界の首都であるルーズ・ケープに夫がいるということを知りました。私は必死に探し、ようやく夫との再開を果たしました・・。しかし、エルジェに置いてきたリリシアのことが心配で、またここに戻ってきました・・。」
 その言葉を聞いたリリシアの表情が冷たくなる。
「まさか・・夫に会うために私を・・そのために私を・・捨てたのっ!!」
怒りの表情を見せるリリシアだが、それを宥めるかのように父親であるガルアドスがそう言う。
「リリシア・・許してくれ・・。私を追うために母親は魔界へと赴いたのだよ・・。しかしまぁ生きててびっくりしたよ・・。他の人が育ててくれなかったら、今頃家の中で死体になってたよな・・。」
まるで彼女の心を逆撫でするかのような言葉が、リリシアの精神に大きなダメージを与える。その言動に怒りを感じたリリシアは、髪飾りを鉄扇に変え、両親にそう言い放った。
 「ううっ・・あなたたちはっ・・あなたたちは私の両親でも何でもないわっ!!あなたたちはただ私が邪魔者だったって思っているんでしょう!!だったら、あなたたちを殺して私も死んでやるわよっ!!」
リリシアは目に涙を浮かべながら、両親を睨みつける。その瞬間、リリシアは鉄扇手に取り、そばにいたガルアドスを斬りつけた!!
 「生きててびっくりした・・!!私が死んでいると思って嬉しがっていた癖にっ!」
鉄扇に切り裂かれたガルアドスは、その場に倒れ、ぴくりとも動かなくなった。
「キャハハハハハッ!!次はあなたよグラシアっ!!私がまだ子供の頃、父親を探しに行ってたんですって・・!!まだ子供の私が一人で生きていけるわけないでしょっ!!」
 怒りの表情を見せながら、リリシアはそばにあるものをグラシアに向かって投げ始めた。その様子にグラシアは必死に彼女を止めようとする。
「もうやめて!リリシアっ!!」
グラシアはリリシアの体を掴み、やめるように言うが、リリシアはその耳を貸さなかった。両親に捨てられたショックで、その心には怒りの感情しか残っていなかった。体を掴まれているリリシアであったが、すぐに振りほどき、怒りの表情でそう叫ぶ。
 「離せっ!!あんたなんか・・母親じゃないわっ!あんたなんか死んで当然の最低の母親だわっ!!私を捨てておいて、偉そうなこと言わないでっ!!」
リリシアはグラシアを床にたたきつけると、グラシアの頭に手をかけ、術を唱える。
 「私を捨てたこと・・後悔させてあげるわ・・。パーガトリアル・エクスプロージョン!!
リリシアが術を唱えた瞬間、彼女の周りにすさまじい爆発が起こり、家が粉々に吹き飛ぶ。その爆発が起こったのにもかかわらず、リリシアは無傷であった・・。
「これで・・これで終わったのよ・・。私の復讐は・・。」
 リリシアがそう言うと、ほっとため息をつく。その騒ぎを聞きつけ、宮殿の術士がリリシアを取り囲んだ。
「もう逃げられんぞ!おとなしくするんだ!」
エルジェの術士の一人が、リリシアを羽交い絞めにする。羽交い絞めにされた彼女は、叫びながら必死に抵抗する。
「離せっ!!離せえええええっ!!」
リリシアは術士に羽交い絞めにされたまま、宮殿の牢屋へと連れられていった。

 牢屋に放り込まれた彼女の前に、見覚えのある大きな体の男がそこにいた。リリシアはその男の顔を見ると、なんとベルであった。
「ベルっ!!どうしてあなたがそこにいるわけ!?」
リリシアの言葉に、ベルががっかりそうな表情で答える。
 「僕、仮面の魔導士と一緒に行動していたが、仮面の魔導士が禁断の書を奪って逃げるとき、見つかってしまい、慌てて逃げたんだけど、転んでつかまってしまったんだ・・。それより、どうしてリリシアがそこにいるんだ?」
ベルの問いかけに、リリシアが答える。
 「私、両親に復讐してきたの・・・。私のことを捨てておいて、えらそうな事を言うので、ついつい本気になって最大術を唱えてしまったわ・・。その騒ぎを聞きつけた術士に捕まり、ここに放り込まれた訳よ・・。仮面の魔導士様はいま禁断の書を奪って逃走しているの・・。」
リリシアがそう言うと、ベルが嬉しそうな表情で答える。
 「なんとかうまくいったみたいだじょ~。待っていれば、きっと仮面の魔導士が僕たちを助けてくれるよ・・。だから元気だしなよ、リリシア・・。」
ベルの励ましに、リリシアは少し嬉しそうな表情であった。
「ありがとう・・ベル・・。私、最後まで仮面の魔導士様を信じて待ってるわ・・。必ず私たちを助けに来てくれるんだからっ!!」
リリシアはそう言うと、二人は仮面の魔導士が助けてくれることを願い、エルジェの牢獄で待ち続けるのであった・・。

 ――そして数日後・・。
仮面の魔導士が魔導戦艦を奪うため、再びエルジェへと赴いた。
「お前ら、助けに来たぞっ!この地下には膨大な魔力を持つ魔導戦艦と呼ばれる魔導兵器がある。それを使えば、フェルスティア征服は夢ではないぞっ!!」
 仮面の魔導士が牢屋を破壊し、二人を助けに来たのだ。
「さぁ、地下に行くぞっ!!」
仮面の魔導士がそう言うと、全員は地下へと向かうのであった・・。


◆エピローグ◆

 ――過去の悲劇と復讐の因果を生き抜き、現在の彼女に至る。
その後彼女は仮面の魔導士とともにエルジェから魔導戦艦を奪い、地上界征服をたくらむが、レイオスたちによって、その企みは打ち砕かれた・・。おまけに、禁断の書も彼らに奪われた。その戦艦の中でリリシアがレイオスたちの仲間の一人であるリュミーネと戦ったのもこの場所である。しかし魔導戦艦での勝負では、リリシアに軍配が上がった。

 仮面の魔導士たちは墜落の瞬間に緊急脱出用ポッドを使い、脱出に成功した。しかしレイオスとその仲間たちは、魔導戦艦の子機を奪い、攻撃を開始した。そのおかげで、彼らが乗っているポッドは、地図にない小さな島に墜落した。その島こそ、地上界で唯一魔導術を使いこなせる魔導士が暮らす「魔導の島」
であった。しばらく辺りを見回していると、仮面の魔導士の前に一人の天使が現れた。

 その天使の名は「ガルエル」罪深き仮面の魔導士に制裁を与えるべく、密偵に来たらしい。その天使は仮面の魔導士に襲い掛かったが、仮面の魔導士の魔導の術で、なすすべなく玉砕した。彼はその天使を倒した後、草むらに打ち棄て、魔導の島の探索を進めることにした・・。
 しばらく足を進めていると、大きな大地の裂け目があった。怪しいと睨んだ仮面の魔導士は、早速その亀裂の中へと踏み込んだ。その中は五つの地下迷宮からなる古代の魔導の遺跡であった。その五つの地下迷宮を抜けた彼らは、死の世界(魔導の古代遺跡と呼ばれている)へと来た。そして彼らは、古代魔導の産物である魔導城を見つけた。彼にとっては格好の根城で、古代魔導人が築き上げてきた設備などが充実され、仮面の魔導士はとてもいい気分であった・・。
 しばらく城を見た仮面の魔導士は、ここを彼らの根城にすることにした。そして彼らは地上へと上がると、魔導の村にある魔導学校を基地として占領することを企てた。そして彼らは魔導の村にある魔導学校に赴き、魔導学校占領計画を開始した。
 
 しかし、その計画も、またしてもレイオスとその仲間たちによって邪魔を受けることになった。リュミーネは前回の借りを返すべく、リリシアと猛攻を繰り広げた。しかし、その戦いによって、リリシアは致命傷を負った。彼女がこの状態では危険なので、彼らはすぐさまその場を去り、魔導城に戻ることにした。
 魔導士城に戻った彼らは、リリシアを栄養液の詰まったカプセルの中に入れた後、彼らを追って地下迷宮にやってくるレイオスたちを迎え撃つため、五人衆を送り込んだ。
 体が石のように硬い「石のブロキス」。砂の体を持ち相手を砂の中へと引きずりこむ「砂のサラシュ」、水を自在に操る「水使いのウォレーナ」、野生のスピードと腕っぷしが武器の「野獣拳ガルガ」、そして5人衆の最後の将「闇のジャーク」を、それぞれの地下迷宮に配置するのであった。
 しかし、魔導城の檻からオーガが脱走する事件が起こり、5人衆のうち3人が食われてしまった。傷が完治し、リリーナイツを引きつれレイオスたちを迎え撃つために魔導城から抜け出したリリシアより先に魔力強化を受けたベルにより、脱走魔獣オーガを倒し、リリシアを無事に魔導城へと送り届けた後、彼女にも魔力強化を施すことにした。

 しかし、何度エナジーを込めても、リリシアの姿は変わらなかった。おかしいと思った仮面の魔導士は、すぐさまエナジーの放出を止めるが、彼女は拒否した。それを受け入れた彼は、ベルに送ったエナジーよりも多くのエナジーを彼女に注ぎ込んだが、意味がなかったが、リリシアの魔力は格段にパワーアップしたようなので、仮面の魔導士はほっと肩を撫で下ろした。
 レイオスたちが魔導城に乗り込んできたことを知り、まず最初の刺客としてリリシアを送り込んだ。魔力が数倍に上がった彼女にとって、リュミーネに勝てる可能性はアップしていた。リリシアは三階へと続く扉を守るため、レイオスたちを待ち伏せる。
 レイオスたちが現れた瞬間、リリシアはリュミーネにいきなり攻撃を仕掛ける。その攻撃に答えるかのように、リュミーネも反撃を仕掛ける。その二人の戦いの間に、レイオスとブレアは扉を開け、三階へと向かった。部屋には、彼女とリュミーネだけが残った。
 
 リュミーネとの戦いで、ついにリリシアが魔姫の形態へと変貌した。辺りに立ち込めるおぞましいほどの邪気。破壊的な精神力と魔力を持つリリシアの前に、もはや敵はないと思われた・・。
 しかし、リュミーネの魔力は、リリシアをも上回るほど成長していた。その光の魔力で、混沌と色欲の魔姫を打ち破ったのだ。そしてリュミーネは、傷ついたリリシアを抱き起こし、何度も何度も名前を叫んだ。リュミーネは涙を流しながら、リリシアの手をつなぎ、そう言う

 「リリシア・・・私と友達になってくれる・・?」
友達になろうというリュミーネの言葉は、彼女にとって何よりの「光」であった・・。

「私・・リュミーネと出会えて・・・本当に・・・よかった。また・・会えるかな・・。」

「きっと・・会えるわ・・。またいつか!」

Lilithia ~復讐の黒き魔姫~ 完

       

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