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封島賞
第二回 大賞

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第二回封島賞 大賞

稀望の宇宙-くらやみ-

次点:愛してその悪を知る

選評

プロットからにじみ出る作者の情念 封島

     


     

 第一回から数ヶ月が経ち、数はそれほど多くないが本賞には様々な意見を頂いた。その中でも大賞決定前に行う「個別評」について言及してもらえたのは自分にとって収穫だった。ただ、あくまで主役は新都社作品であり、自分の文章はその引き立て役でしかないことを自身の肝に銘じたいと思っているし、読者諸兄もその点に留意をお願いしたい。とはいえ堅苦しい雰囲気で生真面目に書くつもりもなく、そもそも書けないので、気楽な感じで見ていただきたいと思っている。もちろん「自分はまじめに論評したい」という方がいれば、審査員に立候補してもらっても構わないし、別の場でレビューサイトを作ってもいいんじゃないかと思っている。その際は「批評はなにも生み出さず、文句を言っているだけ」という誹りを受けることを覚悟しなければならない。

 第二回封島賞は前回よりも多くの作品がノミネートされ、そのうち9作品が選考対象となった。ジャンルも様々で、SFからギャグ漫画まで多様な作品を読むことができたのは幸運なことである。異なったジャンルから優秀な作品をひとつ選ぶというのは、本賞のコンセプトであるにせよ非常に難しいことで、うれしい悲鳴を上げている。
 今回ノミネートされた作品のうち、最も完成度の高かったのは「居酒屋魔法少女よだれとなみだ」である。画力が非常に高く、かつ「もはや少女ではない魔法少女」という錯誤した設定や、それを生かした居酒屋という背景は読者を惹きつける魅力がある。もし「漫画の完成度」を競う賞レースであったとしたら間違いなく一番の出来である。
 「居酒屋魔法少女よだれとなみだ」とは異なった趣で「読ませる」作品であった「稀望の宇宙-くらやみ-」に関しては、ストーリーが良くできており、構想や設定の完成度が非常に高い。そのおかげでキャラクターの動機付けもしっかりしており、キャラクターに感情移入しやすい。「なぜそう行動したのか」を知ることは読者にとって非常に重要である。行動に理由があれば、その行動自体を肯定できなくても、ある程度納得できるものだ。この作品はしっかりと人物像が描かれており、物語が自然に頭に入ってきて心地良い。それだけに、下手とか上手とか以前の「絵の雑さ」は残念だった。重要なシーンは、力を入れて描くべきだっただろう。少なくとも「なにが起こっているかわからない」という事態は避けるべきだった。
 「CDM クソミンチ山ヨネ子の殺人事件簿」「愛してその悪を知る」は、ギャグ漫画であるが、なかでも「愛してその悪を知る」は非常に優秀なギャグ漫画であった。この作品はたとえきぼんに連載されていたとしても、作者がどう言い張っても、ギャグ漫画である。360度どの視点から見てもギャグ漫画である。ギャグ漫画はストーリーものの作品とは違い、理不尽さや唐突な展開が重要だが、「愛してその悪を知る」はその点において非常に抜きん出ている。一方「CDM クソミンチ山ヨネ子の殺人事件簿」は、ギャグ要素において非常に中途半端であった。絵が上手なだけに惜しい。
 「変な卵もらった」と「蟻男」は、不思議な作品だった。正直言って推薦がなければみていたかどうかはわからないが、両作品とも見所は随所にある。ただ、見ている側としては、読後の満足感よりも不満の方が多く残る。「変な卵もらった」は展開が退屈すぎるし、「蟻男」はテキスト主体で漫画を見ている気がしない。アイデアとしてはありだと思うが、漫画としては首をひねりたくなる。

 今回の大賞は「稀望の宇宙-くらやみ-」である。荒削りな部分は多々あるが、よく練られたストーリーや設定は非常に出来が良く、読者を感動させる資質を秘めている。「居酒屋魔法少女よだれとなみだ」や「愛してその悪を知る」も良作ではあったが、「稀望の宇宙-くらやみ-」は、作品に秘められた可能性という点で、他作品に勝った。

 第二回選考においては、「クソさ」がほとんど評価の争点に上がらなかった。作品を純粋に楽しめたという点ではよかったが、少し残念でもあった。新都社独特のパワーをもった「クソさ」が、ぼくの脳みそを震撼させ、恐怖させる日が来ることを願ってやまない。

     


       

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