Neetel Inside ニートノベル
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変態性癖→いつか世界へ(仮)
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 この物語は、それぞれ特異な性癖を持った少年少女が、エイリアンの間で起こった地球侵略権争いの代理戦争の兵士として参加するという、青春群像物語である。





 ある日の放課後の事である。俺は通学路の階段で座り込む一人のお婆ちゃんを見付けた。
 「うほ、いいお婆ちゃん……」
 キラキラと輝く白髪、垂れた頬と適度なホクロ、背は少し曲がっている。しかし顔はしっかりと前を向いていて、首には真珠のネックレスが掛かっているが、薬指には指輪がない!

 YES!

 YES!

 YES,I am!

 俺は出来る限り自然に、彼女に近づいていった。やべー、緊張するー! 
 「おば……お姉さん」
 「んぁ?」
 「どうされましたか?」
 「ふぅーん……、疲れちゃったの」
 と、彼女は気だるげにため息をついた。抱きしめたい衝動を必死に抑える俺を横目に、駄目押しでもう一つため息をついて、「歳かねぇ……」と小さく呟く。

 キミ☆カワうぃ~ね~!

 誘ってるよね? 誘惑してるよね? 大人の魅力がムンムンです。
 これだから老女はたまらない。この機会に何としてもお近づきにならねば。
 「娘の夫が来るってんでね、ご馳走作ろうと思ったら、色々買いすぎちゃった」
 良く見るとお婆ちゃんの横には、ぱんぱんに膨らんだ買い物袋が置いてあった。ふむ、確かに袋4つは流石の俺でも厳しい。
 しかし、言われてやっと気づくとは……。彼女に目を奪われるのは良いが、気の使えない男は嫌われる。ここはナチュラルにお手伝いするべきだろう。
 「あの、お姉さん。宜しかったらお姉さんを……いえ、その袋を、家までお持ち帰……おも、お持ちしましょうか?」
 「あら、優しい子ねぇ。でも迷惑になっちゃうから……」
 「いいえ、美しい人に重労働はさせられません!」
 俺はそう言うと、買い物袋を持って階段を4,5段駆け上がった。
 「ほら、こんなの楽勝ですよ!」
 実を言うと結構キツイ。
 「あなた元気ねぇ……ちょっと待って」
 お婆ちゃんは「よいしょっ」と言って立ち上がると、腰をぽんぽんと叩いた。可愛いなぁ。
 「ほら、行きましょうよ!」
 「はいはい、今行きますよ。うふふ」
 笑い方もキュートだ! 

 「そこまでだぁ!!」

 突然、空から耳慣れた声が聞こえてきたかと思うと、目の前のお婆ちゃんが物凄い勢いで吹き飛んでいった。お……お婆ちゃーーーん!!!

 「大丈夫だったか? 真野!」
 空からズドンと降りてきた野郎は、俺の同級生だった。
 「塚本!」
 「危なかったな、アレは敵の送り込んできた汎用戦闘……」
 「ふっざけんなーーーー!!!」
 満身の力を込めたアッパーが塚本に突き刺さる。何処にかって? 当然股間だよ。
 「ぷぎゃーーーーー!!!」
 一瞬、宙を舞った塚本は、身を捩じらせながら階段を転げ落ちていく。
 「てめぇ、何してくれてんだこの野郎!」
 「はぁ……はひ、はひ」
 「俺達の運命の出会いをぶち壊しやがって!
 赤い糸で結ばれた二人は、これから少しずつ距離が縮まって そして恋におちて、夢じゃないよね? 何度もほっぺつねったりして、そんな毎日を過ごす、筈だったのにー!!」
 「おち、落ち着け! 取り敢えず殴るのをやめてくれ!」
 「私だって同じ気持ち、あなたの隣にいたいから、喧嘩して笑いあって……」
 「まて、これ以上著作権のある歌詞を引用するのはやめろ! それにお前、さっきから女パートしか歌ってないだろ!?」
 「俺は声が高いからそこしか歌えないんだー!」
 「知るかー!」
 「お婆ちゃん死んじゃったらどうするんだよー!」
 「だから待てって、アレはそう簡単に壊れたりしないって!」

 「その通りだ、少年!」
 
 「お、お前は……コーチ将軍!」
 階段の上に突如、短パンにポロシャツを着たグラサン親父が現れた。どうもこの馬鹿塚本と知り合いらしい。
 「惑星ソラリアの技術を用いる事で、より安価で、より高品質に量産可能となったスーパー・コンピューター・お婆ちゃん! その名もBBA48-ver.YONEKO!!」
 米子さんていうのか、良い名前だ。
 「さぁ、立ち上がれ! BBA48! こんな軽い攻撃では、お前はビクともする必要もない!」
 吹き飛ばされて、ぐったりと横になっていたお婆ちゃんが、ギチギチギチと音を立てて立ち上がった。よかった、生きてた。
 「必要は、ネセサリーですからねぇ」
 お婆ちゃん、それ英訳しただけです。
 「くそ、やはり変身するしかないか……」
 俺に殴られて、既に満身創痍の塚本は、ふらふらと立ち上がった。子供臭いヒーローのベルトを腰に装着して、中二臭いポーズを取る。おいおいマジかよ。恥ずかしいから止めてくれ……。
 塚本が「変身!」と叫ぶと、突然辺りは甘い香りに包まれて、そこら辺に落ちている生ゴミや砂利や木の葉が塚本に向かって集まってきた。そして一瞬の内に、塚本はゴミまみれになった。
 「仮面ライダー! グルコース!」
 「うわー、ゴミ屑ライダーとか無いわぁ」
 「うわぁ! 失敗してる!」
 「え、これがデフォルトじゃないの?」
 「今だ! やれ、YONEKO!」
 気が付くと米子さんが僕らの目の前に立っていて、口を大きく開けていた。何かコォーーとか聞こえてくるんだけど、何の音かな?
 「まずい!」
 塚本は俺を突き飛ばした。グラサン親父とは逆方向の、階段の一番下まで転げ落ちる。
 「ギョエー!」
 「うわぁぁ! スーツが! スーツがお釈迦になった!」
 「こちら側の勝ちだな、勝利の証にそのベルトを貰うぞ。やれ! YONEKO!」
 「イエス、ネセサリー……」
 見上げると、米子さんが塚本に馬乗りになっていた。うわー、いやらし羨ましい。けしからん。っていうか彼女は僕のだ!
 「塚本! 彼女から離れろ!」
 「逆だろ! 俺、身動き取れないわ! お前老女絡むと本当理性飛ぶな!?」
 「うるせー! 俺は熟女好きなんだー!」
 「熟女の範囲が広すぎるんだよ! ってかお前、これが人に見えるか!?」
 「人に見えるかだと!? どこまで米子さんを侮辱す……」
 米子さんは、塚本の上で見る見る変形していって、金属製のアームだらけの、何だか凄い形になった。
 「なんじゃこりゃー!」
 「だからロボットなんだってばー!」

 ロボット? 嘘だろ……。だって彼女はそんな事一言も教えてくれなかったのに……。何で塚本が知ってるの? え、もしかして……米子さんと塚本って、そういう関係だったの? お互いの秘密は、ホクロの数まで教えあえる様な仲なの? 人前で平気で騎乗位始めちゃう程な破廉恥な仲なの? 俺という存在がありながら……。

 「よくも……、よくも俺から米子さんを奪ったなぁぁぁ!!」
 「なんだか良く判らないけど誤解だー! それに言っておくが、俺は男にしか興味が……」
 「うるせー! お前ら両方殺してやるー!」
 「キリング・ミー・ソフトリー!」
 「ふぬおおおおお!」
 俺は叫びながら階段を猛烈な勢いで駆け上がった。何でだろう、前が良く見えないや。あぁ、そうか俺、泣いてるんだ。
 「危険分子確認、排除します」
 米子さんのアームの一つが、俺を吹き飛ばした。宙を舞うその数秒の間に、俺は自分がフラれた事を理解した。

 『力が欲しいか?』

 野太い声が頭を貫いたと思うと、俺は地面に落ちる直前の状態で宙に浮いていた。

 『力が欲しいか?』

 周りの皆も止まっている。もしかして時間が止まったの?

 『力が欲し……』
 「うるせぇ! 何度も言うな! 一遍聞けば判るわ!」
 『……すまん』
 「とりあえず降ろせ。この体制きついわ」
 『おう……』
 急に時間が動き出した。俺はそのまま勢い良く地面に叩きつけられた。
 「いってぇ!」
 『力、欲しいか?』
 俺はまた微妙な体制のまま、時を止められてしまった。
 「……とりあえず、俺を動ける様にしてくれない?」
 『おっけー』
 野太い声の主がそういうと、ガクンと体が動く様になった。周りを見回すと、米子さんも塚本もグラサン親父も、皆動いてない。やっぱり俺だけを残して、時間がとまってるみたいだ。
 『それで、話を始めてもいいか?』
 なんだか知らない間に、急に下手に出てるな、変な奴。というかさっきから辺りを見回しても見当たらない。一体どこに居るんだ? 俺は立ち上がって辺りを探してみた。
 『うわ、危ない!』
 足元から声がした。地面を見てみると、鹿の角の生えた半裸の一寸法師の様な、気持ち悪い生物がぴょんぴょん飛び跳ねていた。
 『あ、ここ、ここ! 踏むなよ!』
 「な……なんで。なんで奈良県で開催された平城遷都む……むぐ」
 急に口が開かなくなった。
 『あ、それ以上は禁句だ』
 俺が喋れないのを良い事に、奴は一気に喋り出した。
 『それじゃ、話に入るな。単刀直入に言って、力をあげよう。具体的には只の変身能力だが、何でも好きなキャラクターに変身できる力だ。ミッ○ーでもキ○ィでも、貴様が望めば何にでもなれる。
 そして、そのキャラクターの力は、貴様の想像力の強さによる。何でこんな事をするかっていうと、要は我らの敵を倒して欲しいのだ。ほら、貴様の友を襲っているロボットと男が居るだろ? あれを倒して欲しい。
 という訳で、どんな変身アイテムが欲しいんだ?』
 奴が質問すると、やっと口が開くようになった。
 「変身? 変身するヒーローなんて、この世に一つしかないじゃないか!」
 『それで?』
 「懐中電灯だ」

 体がガクンと衝撃が走り、時間が動き出した。右手には、知らない間に懐中時計が握られていた。
 「優しく殺して! 優しく殺して! きりんぐみーそふとりー!」
 塚本の悲鳴が心地良い。待ってろ塚本、今殺してやる。俺は右手を高く掲げ、赤いスイッチを押した。フラッシュビームが辺りを包み込んでいく。
 光が消えると、俺は銀色の肌に赤いストライプの入った、メチャメチャ格好良い姿になってた!
 「な、何だ! 何だあれは!」
 「ヘアッ!」
 あれ、喋れない。
 「うわ、真野ダサ! 今時ウルトラのお方とかダサ!」
 「ゼアッ!」
 うるせぇ! 仮面ゴミクズライダーより数倍マシだ!
 「全身タイツ! 全身タイツ!」
 「ジョア!」
 お前も全身タイツに憧れてたじゃねぇか!
 俺は手刀で十字を作り、例のアレを放った。
 「ぎゃぁぁぁぁ!」
 塚本と一緒に米子さんが燃えていく……。
 「死ぬぅぅぅぅ!」


 燃えてしまえ、俺の恋!



 俺は明日から、新しい恋を探します。
  



 いつか、本当の、運命の赤い糸をたぐって……。

 『あ、コーチ将軍が逃げる! おい、追いかけろ!』
 俺はクルリと反転すると、足元の小動物へ十字を作った。
 『追いかけ……おわぁぁぁ! 死ぬぅ!』
 「ジェア!」
 八つ当たりだ! 食らえー!
 『助けてー!』
 「ヘア!」
 あぁ、誰か年老いてて美しい、独身の女性は居ないかなぁ……。




つづかない

     


       

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Neetsha