Neetel Inside ニートノベル
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イクリ。オレの家に勤める通称『お仕え係』。外見はオレと年の違わない普通の女子高生に見える。
 しかしその正体は、100%人工細胞からできている試作型アンドロイドである。科学者であり海外にいる両親達が偶然作ってしまったらしい、その辺意味がわからない。取りあえず彼女はお前らのステキな隠し子だという事にしておく、オレは未だに信じてはいない。

 そんな彼女の朝一番の仕事といえば、お風呂に入る事か、起きられないオレを起こしに来る事だ。大変面倒だろう、とても感謝しなければいけないのである。

「おはようございますミルさん」
「おはよう、イクリ」

 それがオレ達の普段から続けている挨拶なのだが

「今日は、イクリ来ないぞ…」
「何かあったぶひ?」
 ペット豚の『トロトン』も心配してますよイクリ~。

 少し様子を見てこよう、と言ってからオレ達はイクリの部屋に来たが、そこでオレ達が耳にしてしまったのはなんとも聞き慣れない彼女の声、そう、色艶な小鳥のようなか細い声だった。

「ハァ…、…ン…、ハァん、ミル…さん・・ミルさん…アッ…」

 イクリ、お前は何をやっているの?ってかナニをされてるのでしょうかね、ナニを!考えてみれば彼女も年頃の女の子、普段は純粋な子程、裏ではやりたい放題やってる事は珍しくないのだが、とにかくオレと一匹は彼女の部屋に入る事にしたのだ。

「イクリ、入るぞ」

 慎重にドアを開け、ぶたが一言

「ぶひ~~~!!」
「イクリ!」
「あ、…ミルさん、」

 なるほど原因がわかった、だがこれは一大事だ、どうやらオレと一匹のお仕え係は、体をだるそうにして身もだえていた、そんな事がわかっていたら、オレは一晩中お前に付き添うのにな、そう彼女は風邪を引いていたのだった。

「大丈夫かイクリ?」
「ミルさん…体が…熱いんです…、すごく…体が熱いの…。」
「トロトン!お前は台所から氷とタオルを持ってきてくれ!」
「わかったぶひ!」
「すいませんミルさん…トロトン、…ありがとうございます…それと、…ごめんなさい。」
「いいんだ、今日はゆっくり休めイクリ。」

 最近昼は暑いが夜は急激に冷えてたから彼女が風邪を引くのも無理はないか、きっと昨晩は凍えるような寒さが彼女を襲ったのだろう、そんな事ならオレが彼女の横に寝て、一晩中暖めてあげればよかった、そうすればみんな笑顔で幸せハッピーだったろうに!

「持ってきたぶひ!」

 トロトンの持ってきたタオルに氷をくるんでイクリの頭にそっとおいてやった、タオルを乗せる時、彼女の上がりすぎた体温を肌で感じて、風邪のつらさが伝わってきた。

「ミル…さん」
「いい、もう喋るな、いいかイクリ、今日のお前の仕事は体を休めて体調を整える事だ、わかったな?」

 彼女はゆっくりとうなずき、安心したように瞼をとじた。取りあえず、これで一件落着、あとは彼女の様子を見ながら、ゆっくり看病でもしてやればいいだろう。

「イクリさんが風邪を引くなんで珍しいぶひ」

「彼女だって、たまには引くだろう」

「トロトンは風邪を引いた事がないぶひ!」

 なんとかは風邪を引かないと聞いたことがあったが、敢えてそのなんとかは思い出さない事にしてやった真夏の朝の出来事であった。




       

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