Neetel Inside ニートノベル
表紙

イクリ-- mooning.
まとめて読む

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初めに

これは男性向け作品です。
女性でも読む事ができますが以下の単語に抵抗を感じる方は見るのをオススメしません。

・射精
・自慰
・オナニー
・パンツの臭い嗅ぎ尽くすぶひ~!
・チアガール犯す

等々、これからも増える予定…。

以上です、それでは作品をお楽しみください。
コメント頂けますと参考になり大変助かります、よければコメントお願いします。

TOP絵・サムネ参考
(Photo by (c)Tomo.Yun ■URL(http://www.yunphoto.net)
(http://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=15667)

     



 朝、部屋にお勤め係のイクリがオレを起こしに来ていないのを確認し、一人朝勃ちを鎮めようと、こないだの立ちバック動画を閲覧しながら『せがれ』を慰めていた。

「イクリ、まだ来るなよ、もう少しなんだ…!」

 画面の中のチアガールがガンガンに性感を受け、顔をとろかせながら興奮しているのを見ながら、オレは慰めスピードを加速していった。

 ドアのノックがなる。
「ミルさん、入りますよ」
「!!」


 イクリだ!まずい、今入られると…!!それにしてもイクリの奴、今日はオレだってかなり早起きしているのにもうオレを起こしに来るとは、

「もう少し待ってくれ、今は取り込み中だから!」

 オレはそう言って慰めを終わらせようとゴールであるティッシュを手に取り『せがれ』をやさしく包んでやった。

「くっ!、出る!イクぞ!来い!我が息子達よ!来い!!!!」
「おはようございますミルさん」


 あともう少しという所でなぜが制止していたはずのイクリが部屋に入ってきた、たぶんオレの『来い』という言葉だけ聞こえたのだろう、我ながら失態だった。

 だがオレはやめなかった、寸止めの苦しみは知っている、イクリ、お前には悪いが今のオレはお前の貞操観念より『せがれ』の方が大事なんだ!悪く思うなよイクリ!

「ッ!!」
 イクリは部屋に入ってくるなりオレを発見し声にならない悲鳴を上げた。
 無理もない、自分と同い年くらいの男子が、PCモニタに映った犯され中のチアガールを見ながら血相変えてハァハァハァハァ息を荒げているのだから、さぞかし彼女の目には奇怪に写った事であろう。

 だがそれは予想済み、想定範囲内なのだよイクリ…、オレは本気を射(だ)すと決めていたのでイクリの予想済みのリアクションには悪いが無視して、ホワイトペニスシャワーの解放に全勢力を注いだ!!

「う、出る、出る出る出る!イクよ!イクから、…絶対、、!!くゥ、クぅッ!!あァ~~~~ア”ァ”!!ッ”!!!!!!」


 ---白濁、解放!!---



 朝だった、ただそれだけの事、それだけの事なんだよイクリ…、今朝の挨拶はオレからする事にする。

「おはよう、イクリ」

 少し間を置いて、肩と声を震わせながら、おそるおそる彼女はこう答えた
「おはよう、ございます、ミルさん」

 その時、彼女のマシュマロで作ったようなと柔らかな長い髪と、彼女のうつむき気味の表情は、オレの目に光って写っていた。

     

 朝だった、変えのいないオレのお勤め係のイクリはまだオレ部屋に来ていない
 いつもだったらこの時間にはオレの部屋に来ていて
『おはようございます、ミルさん』
 と挨拶しているはずだが…

「イクリの奴遅いな…どうしたんだ?」

 すると慌て気味のノックで部屋のドアがトントコトンと鳴った、すぐドアが開き、おさえめな凜としたイクリの声が弾んだ。
「おはようございますっ、ミルさん」

「おはようイクリ」
 オレは彼女との温度差を感じさせる、落ち着いた返事を返した。
 しかし逆効果か彼女はさらに慌ててしまった。


「じ、実は今日は寝坊してしまって…」
 彼女のいつもと違い少し乱れたパジャマ姿で、前ボタンの間から見える肌色率は高かった。

「昨日何かあったのかい?」

「はい、昨日はテレビでステキなキスの仕方をやっていたので、少し練習していました」

「やってみてよ、見たいなイクリのキス顔」


「わかりました」と恥ずかしそうに言って、オレが座っているベットにイクリは来た、かがみ込んでオレの顔をのぞき込む…

 この時いつもポーカーフェイスのオレも少しドキンとした、キスとは関係ないがイクリの体から甘い香りがしていたし、近くで見る曇りなき純度100パーセントのガラス玉のようなイクリの瞳にオレは吸い込まれそうになっていたからだ。

「イクリ…このままだと…」
 キスしてしまう、彼女は優しくオレを見つめながら笑っていた。
 夢から覚めるようだがこれは昨日彼女がテレビで見たステキなキスの仕方だという事を思い出した、畜生。

「イクリ…ありがとう」


「どういたしましてっ」
 おさえめに凜とした声で彼女は返した。

 今日はいい日になりそうだ。

 窓越しに、綿毛のような薄い雲がちらほら浮かんでいる。

 また今日も始まる。


     

 ドドドドドドド!!
 聞き慣れた不快な音でオレは目を覚ました。

「トロトン、朝からうるさいぞ」
 ペット豚の『トロトン』にオレは朝からしつけをする。

 スコ!ンスコ!ンスコ!スコ!
 奇妙な擬音が鳴っている、奴はどうやら何かの臭いを嗅いでいるようだ。

「ナニ!? 」
 トロトンの野郎!何の臭いを嗅いでいるのかと思ったらとんでもないものを持っていやがった!


「ぶっひー!ご主人様!イクリさんのパンツ嗅ぎ尽くすぶひ~!」

「トロトン!貴様どこからそれを!?」

「今日イクリさんが朝風呂に入っている時に拝借したんだぶひ!」

「なるほど、朝風呂中は部屋ががらあきだからな。」


「部屋から物色したんじゃないぶひ」
「?…どういう事だ?」

「洗濯カゴから物色したぶひ!一日履いていたイクリさんのパンツは香りがたくさんついてて幸せぶひぃ!」

 (こいつ!…今日の朝飯はとんカツにしてやろうか?活きのいい豚がこのままだと手に入りそうだ)

「というかうらやましい…。」
 クソ!オレも男か…つい本音が出てしまった。


「ご主人様も嗅ぐぶひ?」
 そういって奴は自分の家畜小屋(室内にある)からイクリのパンツをもう二枚持ってきた。

「…ありがとうトロトン」
 いろいろ考えたがこの際だ、自分の欲望に忠実になろう…。

 イクリのパンツを左で持ち、右手で仰ぐように香りを確かめる。

 --イクリの香りがする--

 濃いイクリの香り、いつも近くにいる時に感じるあの香りが今ここにある…、それもかなりの濃度だ、香りを楽しめば楽しむほどオレの心は満たされていった。

「あぁ…幸せだ。」

「何が幸せなんですかミルさん?」


 悲しい時間が終わるように幸せの時間もいつか終わりがくるのだ、そしてほら、また悲しい時間だねorz

「いつから…見ていた?」
 オレはもうだめだと思ったが一応聞いてみた、あの家畜は部屋の隅でパンツを枕に寝たふりをしていた、しかし家畜はバカなのかパンツを枕にしているのでイクリのパンツがそこにある事がバレバレである、きっとあいつは寝たふりをすれば全て流れると思っているのだろうよ、我がペット家畜よ、だが一番重要なのはそこではない、イクリのシルクのランジェリーなのさ、そう、君が枕にしているその芸術品だ。

「というかうらやましい…。あたりからですかね。」

 オレ達は終わった、言っとくけど『オレ達が』終わったからな、そこで寝たふりをしている豚畜生が、終わったのはオレ一人じゃねーぞ。


「お二方、今日から朝食はわさびだけにしましょうか?そんなに朝から香りを楽しみたいのでしたら」

 いつもの笑顔を一応出しつつ迫るような言い方の彼女は正直怖かった、今日のあの笑顔はきっと怒っているのだろう、おい豚、お前も反省しろ、オレを一人にするな!

「正直、すいませんでした」
 オレは正直に謝った、あの豚は謝らなかった。

 人生とは辛い事の方が多いように思える、だけどきっと辛い事は終わる、今日のオレ達の、幸せだった時間が終わるように…。

     

イクリ。オレの家に勤める通称『お仕え係』。外見はオレと年の違わない普通の女子高生に見える。
 しかしその正体は、100%人工細胞からできている試作型アンドロイドである。科学者であり海外にいる両親達が偶然作ってしまったらしい、その辺意味がわからない。取りあえず彼女はお前らのステキな隠し子だという事にしておく、オレは未だに信じてはいない。

 そんな彼女の朝一番の仕事といえば、お風呂に入る事か、起きられないオレを起こしに来る事だ。大変面倒だろう、とても感謝しなければいけないのである。

「おはようございますミルさん」
「おはよう、イクリ」

 それがオレ達の普段から続けている挨拶なのだが

「今日は、イクリ来ないぞ…」
「何かあったぶひ?」
 ペット豚の『トロトン』も心配してますよイクリ~。

 少し様子を見てこよう、と言ってからオレ達はイクリの部屋に来たが、そこでオレ達が耳にしてしまったのはなんとも聞き慣れない彼女の声、そう、色艶な小鳥のようなか細い声だった。

「ハァ…、…ン…、ハァん、ミル…さん・・ミルさん…アッ…」

 イクリ、お前は何をやっているの?ってかナニをされてるのでしょうかね、ナニを!考えてみれば彼女も年頃の女の子、普段は純粋な子程、裏ではやりたい放題やってる事は珍しくないのだが、とにかくオレと一匹は彼女の部屋に入る事にしたのだ。

「イクリ、入るぞ」

 慎重にドアを開け、ぶたが一言

「ぶひ~~~!!」
「イクリ!」
「あ、…ミルさん、」

 なるほど原因がわかった、だがこれは一大事だ、どうやらオレと一匹のお仕え係は、体をだるそうにして身もだえていた、そんな事がわかっていたら、オレは一晩中お前に付き添うのにな、そう彼女は風邪を引いていたのだった。

「大丈夫かイクリ?」
「ミルさん…体が…熱いんです…、すごく…体が熱いの…。」
「トロトン!お前は台所から氷とタオルを持ってきてくれ!」
「わかったぶひ!」
「すいませんミルさん…トロトン、…ありがとうございます…それと、…ごめんなさい。」
「いいんだ、今日はゆっくり休めイクリ。」

 最近昼は暑いが夜は急激に冷えてたから彼女が風邪を引くのも無理はないか、きっと昨晩は凍えるような寒さが彼女を襲ったのだろう、そんな事ならオレが彼女の横に寝て、一晩中暖めてあげればよかった、そうすればみんな笑顔で幸せハッピーだったろうに!

「持ってきたぶひ!」

 トロトンの持ってきたタオルに氷をくるんでイクリの頭にそっとおいてやった、タオルを乗せる時、彼女の上がりすぎた体温を肌で感じて、風邪のつらさが伝わってきた。

「ミル…さん」
「いい、もう喋るな、いいかイクリ、今日のお前の仕事は体を休めて体調を整える事だ、わかったな?」

 彼女はゆっくりとうなずき、安心したように瞼をとじた。取りあえず、これで一件落着、あとは彼女の様子を見ながら、ゆっくり看病でもしてやればいいだろう。

「イクリさんが風邪を引くなんで珍しいぶひ」

「彼女だって、たまには引くだろう」

「トロトンは風邪を引いた事がないぶひ!」

 なんとかは風邪を引かないと聞いたことがあったが、敢えてそのなんとかは思い出さない事にしてやった真夏の朝の出来事であった。




     

 パジャマの生地越しに、うっすらとソコを感じる、やわらかな胸の谷間の先端にある、すばらしき第三ボタンとでも言おうか、その第三ボタンが大変くっきり見える薄生地をまといながら彼女はオレの前に現れた。

「おはようございます、ミルさん」
「おはよう、イクリ」

 オレの魂の高鳴りはすでに初めてエロ本を拾ったあの日より高ぶっていた!!


「イクリ、そのパジャマはどうしたんだ?」

「はい、こないだペット豚のトントロさんに買ってきてもらいました、そろそろ新しいのが欲しかったので」
「ペット豚のトントロよ、お前はよくやった!」
「え?」
「いや、なんでもないこっちの話だ」

 あぶないあぶない、つい本音を吐いてしまった、気をつけねば。


「しかしそのパジャマ最高だよ、乳首がどこにあるかすぐにわかるな!」
「そういう素敵なパジャマを一生懸命探したぶひ!」

 おぉそこにいたか、名誉勲章物の偉業をなしとげたペット豚のトントロよ、お前は本当によくやったよナイス!ケツ穴犯すぞ!

「イクリさんはいつも無意識的に生地の厚い服を買う傾向にあったので、もうすこし破廉恥さ、というのを追求してみたぶひ!」
「お前はいい豚だ!ってか最高の豚だよトントロ!」

オレがなでなでしてやると家畜は喜んだ。

「ぶっひ~~~!!」


「つまりこのパジャマはそういう視線で買った、・・・という訳ですね?」

 イクリが怒っている気がする。オレ達は何か一つ間違いを犯している、なんだ?、そう、自分達のありのままの欲望を本人であるイクリの前でさらけ出していたのだ!しまった!言わなきゃよかった!これじゃ、今度からそのパジャマ着てもらえなくなるぞ!オイオイ!イクリの乳首は今日で見納めかよ!今日で最初で最後って、そんなのありかよ!!!!オレは悲しみのあまりその場で泣き出した。


「え、、、、どうしました、ミルさん?」
「え、、ぐ、、くそッ!、、、クソウ!!」
「ご主人様?」

 ペット豚とイクリはオレの事を心配している、いいんだ、オレは変態さ、朝起こしに来くれているお使い係のイクリに大変欲情してしまっている変態さ、もっと乳首を

「見たい・・・」
「え?」
「ぶひ?」
「もっと、、、乳首が見たい!、もっと見たいんだよぉお!!」


 オレは泣いた、小一時間程泣いた、そして気がつけば周りに誰もいなくなっていた、そうさ、オレの人生なんていつもこうさ、正直に生きれば生きる程、周りに誰もいなくなっていくもんさ、そうさそうさ、クソ!畜生!おっぱい見たい!乳首見たい!イクリ!キミのだ!キミの乳首が僕はもっと見たいんだよぉおおおお!!!!


 空は今日も蒼い、雨の日もあるだろうが太陽はきっと明日も輝き続けるだろう。

 それから何日が経っただろうか、オレはあのパジャマの事が忘れられなくなって、イクリの部屋からそのパジャマを持ってきて『ぺリット』という名前をつけてベットの中で飼う事にしたんだ。

 それからオレ達はどうなったって?
-----------
-----------ぺリットに聞いてくれ

-----------オレ、たぶんまだあいつと一緒だから



                          fin

     

「おはようございます、ミルさん」
「おはよう、イクリ」

 毎日のように交わされる挨拶。お互い完全にそれが日常となっているのだろう。今日も違和感などなく一日が始まる。

 そういえば、彼女との生活ももう長いことになる・・・あれはたしか・・・そう、オレが小学生くらいの時だったかなぁ。



--イクリ--morning. before side--



 オレがイクリという女の子に出会ったのは小学校中学年の時だった、突然両親からの電話と共に彼女はやってきた、初めて会った時の彼女はなにもわからず、いつも泣いてばかりいた。

「泣くなよ、どうしてそんなに泣くんだ?」
「うぐ、、、え、、、、ふいぃいいい・・・」

弱ったなと思いながらも彼女の頭をなでなでしてやった

「大丈夫だから、よくわからないけど、オレがついてるぞ、これからずっとな」
「、、、うん・・・え?」
「オレ達、オレとお前は家族なるんだ、今日から」
「・・・家族ってなに?」

 おいおい冗談で言っているのか?とちょっとおかしくなってしまった。

「ははは、家族の意味がわからないのか?家族っていうのはずっと一緒にいて、ずっと一緒に生活するんだぞ?だから、お前が泣いていても一人じゃないし、オレがついてる、だから」

 小学生ながら一生懸命やったものだ。

「もう、泣くな、悲しい原因はオレがなんとかするから」
「・・・うん、、(ぐす)」
「ちょっと待ってろ」

 そう言って、オレは家の冷蔵庫から棒つきアイスを持ってきた、今日のおやつにとっておいたオレのとっておきだ、だけど今は・・・

「これやるよ」
「・・・これ何?」
「バニラアイスっていって、舐めると甘くて美味しいんだ、ほら・・・こうやって・・・どうぞ」
「・・・食べればいいの?」
「あぁ、うまいぞ~」
「・・・・・・・・・」
「どうだ?」
「ストロベリー味が良かった」

 なァアアあああアニぃいいいいイイイイイイイ!!!!??????

「そ、そうか、えーっと今ストロベリー味はないなぁ、、、そうだ、今からコンビニいって二人で買ってこようか」
「熱帯通販で頼めばもっと美味しいの手に入るよ」

 オレの心が泣いていた、しかし、この件のおかげで彼女が実は知識豊富な事がわかったし、彼女の辛そうな涙の雨が止んでいたのが少し嬉しかった、けど忘れてはいけない、オレの心は泣いていた!畜生ちくしょう畜生!!!なんかやりきれねぇ!!

「オレの名前はミル」
「え?」
「自己紹介まだだったからさ」
「あ、、、その、私はイクリ、イクリっていいます」
「イクリか、いい名前だな」
「ミル、、さん?」
「なんだ?」
「あ、いや、、、なんでもないです」
「そか、あそうだイクリ」
「うん」
「これからよろしくな!今日からからオレとお前は」
「・・・」
「家族だ」

 それが彼女との最初の出会いだった気がする、それからいろいろあるのだが、今回はこの辺で。


                          fin

     

 コンコンと朝日差し込む部屋に朝日が差し込む、その部屋の住人であるミルという青年が眠そうに重い眼をこすった。
 そう、朝が来たのだ、そしてこの家のお使え係のイクリも来たのだ。
 イクリとは、幼いころこの家に来た、100%人口細胞からなるアンドロイドだ、知識が豊富で容姿端麗、そのうえプロポーションも美しい曲線美を誇るまさに芸術品のような女性だ。
 眠たいけどそろそろ起きるしかないだろう、彼女が入ってくる。
 そういえば今日は彼女の誕生日だっけ・・・。

「おはようございます、ミルさん」
「おはよう、イクリ」

 毎日交わされる挨拶だが、今日は少し違和感を覚える、その原因は昨日買って来たイクリへの誕生日プレゼントがあるからだ、ちなみに渡すチャンスは朝しかない」

「ぶっひ~~~!御主人様!イクリさん!おはようぶひ~~~!!」

 朝からぶひぶひ言ってるこいつはペット豚の『トロトン』だ、豚のクセによく喋る、喋るといってもやはり豚みたいなのでそんなに長く話せない、疲れてくると日本語ではなく豚語を話すのだ、なでなでしてやる。

「ぶっひ~~~~!!!」

 豚は喜んだ、オレそれを見て朝の日常が始まったのだなと認識した。
 よし!イクリにプレゼントを渡すぞ!昨日買ったこのフリルのエプロンをな!裸エプロンの時に栄えるこのフリルのエプロンをなぁ!!
 という事でさっそく渡す事にする。

「ミルさん、どうしました?」

 勘付かれたか、彼女は普通に聞いてきた、このオレの裸エプロンへの執着は気づかれていないであろう、うむ、気づかれていないさ。

「イクリ」
「はい、何かお飲み物でお持ちしましょうか?」
「誕生日おめでとう!」
「え、、、、あ、ありがとうございます!」
「これ、オレからのプレゼント」
「うわ、なんですかこれ、ありがとうございます!」
「裸エプロン」
「はい?」

 だからさぁ・・・なんで正直に言っちゃう訳?『裸エプロン』だなんて本人の前で・・・。

「裸・・・エプロン?」
「いや、肌がエピローグを迎えそうなんだ、ほらオレ昨日徹夜でチアガールをズブズブに犯す動画でびゅーびゅー射(だ)してたから」

 人前で意味のわからないくらい正直に話してしまうオレの悪い癖出る、今から精神を鍛えに北極横断したい衝動に駆られた。

「チアガール・・・犯す・・・びゅー、びゅー・・・?」
「いや、なんでもないんだよ、イクリ、キミをおかずに今夜は抜こうだなんて考えてないさ。」

 もうわかった、今のオレは絶好調だ!なんでもできるさ、きっと神になったんだな、目の前でイクリの表情が青くなっているのはきっと神の身業、運命だったのだよ!

「イクリ!」
「?」
「SEXさせろ」

       刹那

「ぶっひ~~~!!!!御主人様~~~~!!!!!」

 オレはふっとんだ、格闘ゲームの空中コンボの始動並にふっとんだ、そう、彼女の右腕で。

「朝から何言ってるんですか!まだ夢でも見てるんですか!?」
「ごめんよ、SEXしたいけど、どうやら夢を見ているみたいだ」
「もう!お盛んなのはわかりましたから!!朝食ができているので居間に来てくださいね!まったく、もう知らない!!あほぅっ!!!」

 バタン!とドアを閉めて出て行く彼女。
 あぁ、オレなにやってるんだろう、アホなのかなぁ?

「御主人様、大丈夫ぶひ?」
「トロトン・・・」
「イクリさん怒ってたけど、プレゼント持っていったぶひ、よかったぶひね」

 なでなでしてやる。

「ぶっひ~~~!!!」

 豚も喜び、イクリも喜んでいる、いいじゃないか、こんな日常で。
 朝の何気ない会話に微笑しつつ今日の身支度をするミルであった。

     

 オレの名前はミル、この家の主、この家にはオレの他に一人と一匹が住んでいる。
 一人はイクリ、彼女は100%人口細胞のアンドロイド、美しくどこか寂しげのある面持ち、知識は博学でいろいろオレと一匹を気遣ってくれる、この家でメイドのような仕事をしている(正確にはメイドではないが)。
 そしてもう一匹はトロトン、ペット豚でいつもぶひぶひ言っている、喋る豚だ、なぜ喋るかは考えると頭が痛くなってくるからオレは考えるのをやめているんだ。
 さーて、朝日も登り一日が始まろうとしている、イクリがもうじきオレの部屋にやってきて朝の挨拶の始まりだ、そういえば今日はトロトンに新しい家を通販で頼む約束をしてたような、朝一番で済ましておくか。

 トントン、部屋のドアが鳴る。
 ほら来た!

「おはようございます、ミルさん」
「おはよう、イクリ」

 オレの部屋の隅にあるペット小屋から家畜も姿を現す。
 お目覚めかい?マイペットよ。
 
 「おはようぶひ~、御主人様とイクリさん、今日もがんばろうぶひ~」
 「おはようございます、トロトン」
 「起きたか、トロトン」
 
 なでなでしてやる。
 
 「ぶっひ~~~!!!」
 
 オレは約束を思い出す。
 そういば、トロトンとも長い付き合いだったな、そろそろ小屋を新しくしてやるか。
 
 「トロトン、一階の居間で落ち合おう。」
 「?・・・あ、御主人様!もしかして!」
 「ふふ」
 「よかったわね、トロトン」
 「ぶひぶっひ~~~!!!」
 
 喜ぶトロトンを尻目にオレはすぐに着替えを済ませ、一階につく、居間にあるPCの電源をつけて熱帯通販でペット用の小屋を探す、いくらかリストを作っておいて、トロトンがすぐ選べるようにしてやる。
 トロトンにはたまに世話になる時があるからな、今日は奮発してやるか、おや?
 
 ドドドドド!!
 
 豚がやってきた。
 いつもより元気な感じがするな、きっと楽しみだったのだろう。
 
 「ぶっひ~~~!!!ご主人様~~~ありがとうぶひ~~~!!!」
 「はは、まだ買ってないぞ、ほら、リストを作っておいたからあとは自分で選べ」
 「わかったぶひ~~~!!!」
 
 トロトンはそういって右前足でマウスを器用に操作して、リストのペット小屋に目を通していく。
 すごい操作と閲覧スピードだ、こいつにそんな特技があったとは・・・っていうか自分で選べって冗談で言ったんだけど普通にPC扱えてるし・・・普通に見てるし・・・。
 オレはこの豚はもしかしてロボットなのでは?と思ってしまった・・・、自称アンドロイドもいるしな。
 
 「トロトン、どれがいいの?」
 「あ、イクリさん、ブタはこれにしようと思うぶひ!」
 「どれどれ、見てやるか・・・、ほうヒノキのペット小屋とはまた豪勢なのを選んだな」
 「御主人様、値段を見て欲しいぶひ、高かったらもっと安いのにするぶひ」
 「どれ・・・、ふむ、まぁいいんじゃないか?」
 「ぶっひ~~~!!!!」
 「よかったわね、トロトン」
 「よかったぶひ~~~!!!ありがとう御主人様ぶひ~~~!!!」
 
 そう言ってブタは器用にPC操作をしてこの家の住所とオレのクレジットカードの番号を入力していく。
 豚が何故オレのカード番号を知っているのかはこの際考えないで置こう、まだトラブルも起こってないし考えたら頭が痛くなりそうだ・・・、それに知識豊富のイクリもついている、悪い事にはならないだろう。
 
 「御主人様、ありがとうぶひ~~~!!!楽しみぶひ~~~!!!」
 「よかったわね、トロトン」
 「ぶっひ~~~!!!」
 
 そしてオレはイクリの持ってきた朝のミルクココアにありつく、うまい、彼女の入れたミルクココアは格別だ。
 一日が今日も始まる、豚の歓喜の雄たけびとイクリという優しい天使と共に。
 
 



                     fin

     

「これでも喰らえ!」

 ばっし~ん!と、この家の主であるミルはハエたたきを炸裂させる。
 クソッ!なんであの野郎にオレの攻撃はあたらない!?
 朝から謎のハエ出現でミルは戸惑っていた・・・それと同時に奴を必ず殺すという誓いも立てていた。

「御主人様!そっちにいったぶひ!!!」
「おう!まかせろ!オラァアアアア!!!!!!」

 ペット豚であるトロトンもオレに協力してくれている、ナイスだ豚よ!

「ぶっひ~~~!!!」
「行け!トロトン!体当たりだ!」

 しかし攻撃ははずれてしまった、命中率低いからな、あの技・・・。
 その時部屋のドアがトントンとなってこの家のお使え係のイクリが入ってくる、天使のご登場である。

「おはようございます、ミルさん」
「おはようイクリ、、、待て、そこを動くな・・・!」
「はい?」

 あのハエ野郎、あろう事か、イクリのはちきれそうなたわわな二つのふくらみ部分のパジャマに止まっていやがる・・・、ははぁ、わかったぞ、オレがお前を潰そうと手を出せば、自動的にイクリにセクハラしてしまい、仲間打ちをさせようって魂胆だな?さすがオレ、普段からの素晴らしい読みのテクニックは今日も冴えている、だがそんな事はさせん。

「イクリ、ちょっとそのまま、、、動くな、動くなよ。」
「はい、どうしたんですか?」
「しっ」

 室内の時間は完全に止まったように思える、オレ、イクリ、ペット豚のトロトン、そしてこれから殺されるであろうハエは亜空間に入ってしまったかのようにその場に立ち尽くしているのだ。
コ・ロ・ス!!なにがなんでもオマエを!!

「ウオオオオオオ!!!!」

 ハエよ!お前がオレ達の仲間打ちを狙っているというのなら!オレは恐れない、そう!イクリの胸を意図的に揉めば、お前の自動的なセクハラ攻撃は完全に誤算になるのだ!!!

「きゃ、ミルさん、やめてください、なにしてあァん!」

 イクリ、怖いんだね。
そう、彼女の肩は震えている、無理もない、朝の挨拶に来ただけなのにいきなり美しいたわわを揉まれてしまっているのだから。
 オレはイクリの背後に回り後ろから抱きかかえるようにイクリの胸を揉む事にした。

「イクリ、一つになる準備はできた?」
「えぇ、ふぁああ!」

 ミルは彼女の胸を揉みながら聞いた、彼女は快楽への反応で質問を返した。
 ふふ、このまま揉みしだいて大きいたわわをもっと大きくしてあげるからねイクリ。

「ミルさん、いいかげん・・・ん!」

 イクリは力が抜けてきたのかオレによしかかるようにしながら上目遣いで見つめてきた。
これからオレ達はどうなってしまうのだろうと考えれば考えるほど、オレのイチモツは硬くなるを連発するのである。
 だが、いくら硬くなろうが、なにも起こりはしない。
 オレは右腕でイクリの頭を優しく撫でてやった。
 イクリは先ほどまで震えを止めてゆっくり瞳を閉じた、天使のような笑みを浮かべている。
 その時、オレのイチモツの硬さはぐ~んと上がった。

「」
「」

 無言の会話、オレは彼女の上着のパジャマのボタンをはずし、静かにずらすと完全な彼女のたわわを眼にすることになった。

「ミルさん、おっぱい、見たかったんですか?」
「うん、とっても」

 頬を赤らめた彼女の発言にオレは正直に答えた、初めて見る彼女のふくらみ、美しい。

「イクリ、おっぱいをいただいていいかい?」
「いい・・・ですけど・・・」

 まさか朝からこんな事になろうとは・・・。
人生で最高の気分をミルは感じていた。
 まず、オレはイクリの白魚のような透き通るような白さ際立つ肌に触れる事にした。

「あッ---」

 途切れるような吐息、先ほどとは違い今度は直に触れているのだ感触も先ほどとは違うだろう。

 イクリの興奮と吐息はどんどん上がっていき、ミルはこれから始まるであろう展開を覚悟するのであった。




                           next.





     

「あ、・・・んっ!」

 ミルの部屋でその使用人のイクリは切ない声を響かせる、露出した二つの胸の膨らみを当主であるミルに揉まれながら。
 これからどうすればいいんだ?とりあえず、イクリのたわわに直に触れる所まできたが・・・。
 白く大きな膨らみ。白魚のような美しい輝きを朝日を反射させて放っている、やわらかく張りがあり、膨らみの先端部分は淡いオレンジ色を輝かせていた。
 
「ミルさん、はぁ、ん、ミル、さん---」

 先端の乳首をつまむ、優しく指に収め、ゲームのコントローラーのように素早く転がしてやる。
 イクリはびっくり。
 
「はぁ、---ん!ミルさん~~~」

 乳首を動かした時イクリの体が一番悶えたポイントをもう一度思い出し、今度はゆっくりそのポイントに到達するよう指で刺激を与える続ける。
 
「あ、あ、あ、---ん!、ん!?、、、はぁはぁ。」

 オレはそろそろその膨らみをもっと直に感じたい衝動に駆られていた、そう、イクリの生おっぱいに自身の顔を埋めたいと思っていたのである。
 
「ミルさん、あん!、、、ふふふ」

 イクリは最初びっくりしたようだが、オレを優しく両腕で包み、頭をなでなでしてくれた。

「ミ~ルさん、甘えん坊だ~れだ?」

 いたずらな天使の笑顔を携えながらオレの体はイクリに包まれている事を実感する、彼女の体温を密着した肌で感じ、彼女の鼓動を直にオレは聞いていた、彼女の存在を確認でき、とても安心感を得る、最高の気分を、最高の体験を今オレはしている。
 久しぶりに誰かに甘えている、そう感じながらミルは遠い記憶等を思い出し、イクリに甘え続けるのであった、そう、子供が母親に甘えるそれのように・・・。
 
「イクリ、あったかいよ」
「私もです、ミルさん、胸の奥からトクン、トクンって言ってます」
「オレもだ、イクリ、イクリ・・・」
「・・・ミ~ルさん...」

 オレはイクリを求め、イクリもオレを受け入れた、幸せの時間、最高の歓喜であろう、オレとイクリは幸せだった、美しい朝にお互いの肉体を求め合った。
 
 オレはイクリの純白の胸に優しく包まれながらイクリを求めた、柔らかな突起であるイクリの乳首を口に含み舌で滑らかに転がしてやる事にした。
 
「あぁん、はぁん、あ...ミルさぁん...ん!?、っあ”ぁっ!!」
「イクリ、まだまだ」

 オレは片腕でイクリの下半身の裏側である桃のようなお尻をさすりつつもう一方の腕でイクリの胸を揉みながら口でイクリの首筋にヴァンパイアのようなキスをした。
 イクリを両腕で感じながらイクリの香りと味を楽しむ・・・最高の気分だ。

「あ、あ、ん、ミルさぁん、気持ち、、、!あぁん、ふぁん!!」

 イクリの吐息がオレに掛かる、耳元で聞こえる彼女の艶やかな声色はオレを一層興奮させた。
 
「ミルさん、首にキスするなら・・・」

 イクリの言った事を瞬時に予想して彼女の頬に優しくキスをする、たわわの先端を優しく指で転がしながら。
 
「あぁん、ふぁ、、、んぁ!ふぁん!!!」
「こうかいイクリ?」
「あぁん、ミルさぁん、ん”っ、、、そうじゃなくてぇ、、、」
「こっちかな?」

 オレはイクリの桃尻を指全体で優しく優し~く立てるように這わせてやる。
 
「あぁ、あぁ!あぁ!!、んぁあああ!!!!」

 イクリは軽く痙攣してしまった、気の性か彼女の下半身から濃いイクリの香りがした、彼女はオレの指で性感を感じすぎて、軽くイってしまったみたいだ。
 
「イクリ?」
「っっつはぁ、、、はぁ、、、はぁ、、、、ミル、、、さ、ん、あはぁ、はぁ」
「もっと欲しいかい?」
「そう、じゃ、はぁ、ぁっあはぁ・・・ですね、そうじゃ、なくてぇえ、、、!」
「?」
「私達、まだキスもしてないじゃないですかぁ、ん!!」

 顔をしっとりとした汗と興奮で思いっきり赤らめながら彼女はオレからの口付けを求めた。
 そういえばイクリと出会ってから、オレはこいつに何をしてやれただろう、いつもお世話になってばかりで、迷惑かけてばっかりで、本当に助けられている、彼女の笑顔にも、だったら今日ばかりは思いっきりかわいがってやろうじゃないか、今日ばかりは彼女を優しく、いや、これからも・・・。
 
 そして、オレ達は。
 
「ん、、、ん」
「」
 
 お互いファーストキスを互いに捧げ合うのであった。 




                        next


     

「ミルさん、今まで・・・本当に、、、ありがとう、ございました。」

 オレのお使え係であるイクリはそう言った、最後の言葉だった、何もできなかった俺はその場に立ち尽くした。
 なぜだ?彼女はこの場所にいてはいけない?突然のオレの両親からの研究所の都合でイクリはこの家から出ていかなければいけない、つまり、くだらない現実がそこにはあった。

「御主人様・・・」

 ペット豚のトロトンもオレの事を心配している、当然だ、オレもイクリも、今まで見せたことのない顔をしていたのだろう、誰か。

「御主人様、朝ごはん、、、イクリさんが最後に作ってくれた朝ごはんあるぶひよ。。。」
「最後とか言うな!!!!!!!」
「ぶひっ!・・・御主人様・・・。」

 誰か---。

「オレは、、、、」

 誰か------

「どうすれば、、いい?」

 ----助けてくれ----
 
「御主人様・・・」

 その時トロトンはぐっっと自分の気持ちを押さえ冷静さを誰よりも取り戻した。

「御主人様、簡単ぶひよ」
「・・・どうすれば・・・いい?」
「イクリさんを追えばいいぶひ!」

「追う?イクリを?」
「そうぶひ、追ってイクリさんを止めるぶひ!」
「追って、、、止めて、、、って、」
「ぶひ?」
「止めて、、、って、どうやればいい?止めるって、、、どうすればいい?」
「御主人様、それは、僕よりも御主人様の方が知ってるはずぶひ、僕はここ数年で飼われているだけ、でも」
「」
「ご主人様とイクリさんは何年ずっと一緒にいたぶひ、だから」
「」
「イクリさんの事を知っているのは、一番知っているのは、僕ではなく御主人様ぶひ!」
「」
「今まで、どういう時にイクリさんは喜んだぶひ?」
「」
「今までどういう時に怒ったぶひ?」
「」
「どういう時に、、、」

「」


「笑ったぶひ?」


「・・・!!」


 オレは走った、全力で、そう、彼女の元に、彼女の笑顔に会いに。

     

 空港に到着した。
 予想はしていたのであろう、そこには・・・
「・・・・・・・・・・」
 黒いスーツ越しでもわかる筋肉質のサングラス男、その数、50、確実にこちらを見据えている。
 中には警棒やスタンガンもちらほらと見える。
「御主人様・・・」
「トロトン・・・無理に付き合わなくていい、オレが選んだ道だ、最後まで、あがいてみせるさ」
「違うブヒ、怖いならやめてもいいと言おうとしたけど、その調子なら言わなくていいって思ったブヒ!」
 黒スーツが一人が口を開いてこう言った。
「ミル・グリースだな、バカな事を考えているならやめておいた方がいい、我々は争いを止める為にいる、キミが何も行動を起こさなければ、争いは起きない」
「ずいぶん舐められてるブヒ」
その言葉だけで十分だったオレは50人のスーツの男達に立ち向かった。


 イクリ morning 最終話 


 長年いた住まいを離れてこれから研究所に住む事を強制されたイクリは飛行機の中で今までの事、これからの事を考えていた。
「・・・」
(私、どうなるのでしょう、小さい頃の事よく覚えていないけれど、とても冷たい部屋の中でずっと泣いていた記憶だけある、あれから、どうなったんだっけ・・・)
「・・・リース」
(何か・・・聞こえる・・・)
「イクリ・グリース!」
「・・・あ、はい」
「食事の時間だ」
 飛行機の中で考え事をしていたせいで周りの声がまったく聞こえなくなっていたらしい、自分の監視役の黒いスーツを着た男が機内食を持ってきていた。
「今、おなかすいてないので」
「食べておいたほうがいい、お前の健康管理も我々の仕事だ」
 そういってむりやりスプーンを握らされる、そのスプーンをじっと見つめ、イクリは家族の事を思い出していた。
(・・・あれ、なんで私、こんな所にいるんだっけ?)
 スプーンを握った手が解けて、また全身の力が抜けていく。

(_______________私の

             家族は?______________________)


 目を覚ますと豚がいた。
「あ、御主人様大丈夫ブヒ?」
「あぁ、トロトンおはよう、じゃないな、・・・なんでここ・・・」
 オレは何故ここにいるのか考える、周りを見渡すと空港だなこれは、でもなんで・・・。
「ご主人様がんばったブヒ、一人くらい倒せるものかなと思っていたブヒ、でも御主人様最初の一人に即効で投げ飛ばされてしまったぶひ、何度も何度も投げ飛ばされても立ち向かっていって最後に投げられた時に打ち所が悪くて意識を失ったブヒ」
 オレは、全て思い出し、どうしようか、考えた。
「ご主人様、どうするブヒ、今日はもう帰るブヒか?」
 一瞬帰るという選択肢に怒りを覚えた、何を言っている、あきらめる気か?イクリはお前にとってそれだけの存在なのか?と、けどすぐに冷静に考え直した、一度落ち着いて帰宅し、作戦を立て直すか・・・だが、それは帰って考えるか、今ここで考えてすぐに行動するか、どちらも悪くない選択肢だ、他にも選択肢は探せば出てくるだろう、重要なのは、どれが一番イクリを連れ戻す事に貢献するかだ。
「トロトン、何か、作戦はないか?」
 豚に聞いてみる。
「そうブヒねぇ、取り合えずイクリさんが向かった先は何処かを探す事からブヒねぇ。」
「と、するとイクリがオレ達の家を出てから空港に着くまでの時間から何か手がかりがあるはず」
「イクリさん、僕達に研究所の在り処教えてくれればよかったのにブヒぃ・・・これじゃ手紙も出せないブヒぃ」
「それはイクリも知らないだろう、知っていたらオレ達に伝えるはずだ、きっとこの空港で待ち合わせしていたんだろうさ」
「どうするブヒ?」
(わからないブヒよ~、って感じだ、どうする?何か手がかりはないか?    !!)
「トロトン、頼みがある」
「なんでしょうブヒ?」
「今からイクリの匂いを嗅げ、及び追跡しろ」
「む、無理ブヒ~、ぶたは犬じゃないブヒ~!」
「頼む!名犬ラ○シュ並の動物パワーを見せてくれ!!・・・・ダメなら今夜のエサはトンカツにするからな!」
「そんな~共食いは嫌ぶひ~ってか無理ブヒよ~!!」
「オレもやるから」
「え・・・ブヒ・・」

-------------------------------------------

「ついたぞ」
 黒いスーツの男がイクリに目的の研究所についた事を告げる。
 一瞬でわかった、私は過去に戻ってきてしまっていた、何もかもが許されない、悲しい事しかない施設、ここから抜け出せない事はわかってしまった、ここで生き、ここで死ぬのだろう、私はそういう物だから、私は人間じゃないから。
「・・・はい」
「こっちだ」
 黒いスーツの男が入り口の警備員にカードを見せてイクリに中に入るように促す、イクリはいわれるがままに
研究所に入っていった、研究所に入る時警備員の体の大きさと筋肉質な体つきを見て自分は完全に抜け出せない事を悟った。
 研究所の中に入ると中は以外と狭い通路と両脇に並ぶ部屋だけだった、入り口から3つ目の部屋に入るように指示されたので言う通り入るとそこには何もおいていない空虚な空間だった、少し考えると事の異常さに気づく、しかし遅かった、イクリは黒いスーツの男に後ろから一撃をくらい意識を失った。
 ピピッ、ピピッ、スーツの男の携帯電話の音が鳴る。
 ピッ
「・・・・はい、準備はできました」
「なんの準備ができたんだ?」
「きっとぶた達の楽園の準備ぶひ?」
「トンカツ食べ放題ってか?」
「き、貴様はミル・グリース!」
「それとゲストのドーベル犬、ジャポラ君も一緒だ!」
「ヴァウ!ヴャウ!」
「いけ!ジャポラ君!かみつく攻撃だ!!」
「ガァルルルルァアア!!!!」
「ひ、ひぇええええええ!!!!」
 ミルがドーベル犬にそう命令すると共にトロトンと一緒にスーツの男に襲い掛かった、初めはジャポラの攻撃にとまどったスーツの男だったがすぐさま冷静さを取り戻し、腕に噛み付いたジャポラを引き剥がそうとした、だが、ミルとトロトンがそれを全力で阻止する、二人は妨害役、ジャポラは攻撃役という連携が完全に出来上がっていた性か黒いスーツの男へのダメージは蓄積されていった。
「く、くそ!離せ!離せ!!!」
「誰が話すか!、トロトン、トンカツになりたくなかったら絶対に離すなよ!」
「そのネタもうやめてブヒ!豚は傷つくブヒ!」
「グルルルル!!ヴウウゥウウワン!ワン!ワン!」
 必死に犬を剥がそうとするスーツの男だったが長期戦になるにつれ体力がどんどん落ちていった、無理もない、個人的な能力では黒のスーツの男の方が勝っているのだが、スタミナの総量はやはり3:1では3人の方が上なのだ。
「うぐ、、、、ッ!、、ッ!」
「そろそろブヒね」
「ヴァンヴァン!」
「それじゃあ、いくぞ黒スーツ、オレ達三人の必殺技をなぁ!」
 そういってオレ達は倒れているスーツの男から離れ一斉にジャンプ、男のみぞおち目掛けて肘打ちを同時に喰らわせた!
 喰らわせた瞬間ミルは『◆ダイヤモンド◆クオリティッ!!◆』と叫んだ。
「ガブァ!」
 スーツの男は変な声を上げてしばらく痙攣したあと、意識を失った。
「やったぶひ~!豚と御主人様、それとゲストのジャポラ君のおかげで勝ったブヒ~!」
「イクリ!」
 オレはすぐにイクリの無事を確認した、特に外傷がなく、意識だけ失っている事が先ほど戦った男の強さを物語っていた。
「よかった、無事みたいだ」
「よかったブヒ~!これで一緒に帰ってまたみんなで一緒に幸せにくらすブヒ!」
「ワンワン!!」
 ペロペロ
 ははっ、ゲストのジャポラ君も喜んでいるみたいだ。
「ご主人様!奴等に見つからない内に早く逃げるブヒ!」
「そうだな」
 とその刹那、オレはイクリを抱きかかえて部屋を出ようとしたら黒いスーツの男達が部屋の前に突如現れた。
「先ほど『◆ダイヤモンド◆クオリティッ!!◆』と聞こえたので来てみたらこんな事になっているとはな・・・」
 しまった、オレ達の必殺技の威力がでかすぎて気づかれてしまったか!
「クッ!」
 オレはイクリを抱えて無理にでもそいつらを押しのけて外に出ようとする。
「気が動転して冷静な判断もできないみたいだな、そんな事では我々の手から逃げる事はできない」
 突如オレの腹に衝撃が走る、それからだんだん意識が落ちていって・・・・。
「ご主人様!」
「ワンワン!」
「子供は早く寝るんだ、大人の仕事に口を出すものではない」
「グ・・・ちく・・・しょ・・・」
 オレは意識を失った。


「おはようございます、ミルさん」
「おはようイクリ」
「おはようブヒ~!ご主人様~」
「おはようトロトン」
 なでなで
「ブッヒ~~~~!!!」
「ミルさん、何か今日はうなされていたみたいですけどどうかしましたか?」
「え、・・・いや、特には・・・ ・・・」
「?」
「なんか・・・悪い夢を見ていたみたいだ」
「そうですか?最近はやっと気温が下がってきましたから、きっと体が季節の変わり目でついてこれなくなっているのかもしれませんね」
「ご主人様お体気をつけてくださいブヒ~」
「あ、ああ、・・・そうだな」
「では御朝食の用意ができていますので、着替えが終わりましたら降りてきてください」
「あ、ああ、ありがとう・・・イクリ」
「ふふ、変なミルさん」
 そういって彼女はオレの部屋を後にした。
「ご主人様どうしたブヒ~?さては、昨日エッチな動画を見ようとしたらとんでもないブラクラを引いたブヒ?」
(トロトンがいて・・・イクリがいて・・・)
「オレが・・・ここにいて・・・」
「ブヒ?」
「トロトン、一つ聞きたい事がある」
「?」
「オレ達はこれからもここで生活を続け何気ない日常を続けていくんだよな・・・?」
「そうだブヒ、だから難しい事は考えなくていいブヒ」
「そうか・・・トロトンオレ達、イクリを・・・いや・・・なんでもない」
「ぶひ~、ご主人様なんかおかしいブヒ~、またなにか新しい遊びでも思いついたブヒ~?」
 オレはたしか・・・オレはたしか。
「さらわれたイクリを助けに来たはずだ」
「何を言ってるブヒ?イクリさんなら今一階にいるブヒ~」
「いや、たしかにイクリを救いに、オレと、そう、トロトン、お前と一緒に空港でイクリの香りを嗅いで黒いスーツ達のいる研究所に行ったはずだ!そうだよ、覚えてるだろ?!トロトン!オレ達と、そうドーベル犬のジャポラ君も一緒だっただろう!?」
「ドーベル犬?ジャポラ君?」
「そうだよ!思い出せ!オレ達はたしかに一緒に研究所に行ったはずなんだ!たのむトロトン!思い出してくれ!」
「ん~~~~~、ご主人様の言うとおり思い出したいブヒけどなんにも思い出せないぶひ~」
「な・・・」
 本当に夢だったのか、たった一瞬の悪夢だったのか?だとしたら・・・この瞬間を生きていくしかないが・・・そうか・・・夢だったのか・・・。
「いや」
「ブヒ?」
「な~んてな!どうだ驚いただろ~!
「ブッヒ~!演技だったブヒ~?わからなかったブヒ~~~!」
「この前知り合いから芝居劇をやるから脚本を覚えていてくれって頼まれていてな、つい練習してしまった、迷惑かけたなトロトン」
「ご主人様すごいブヒ~!一瞬本当におかしくなってしまったと思ったブヒ~」
「オレがおかしくなるはずないだろ、その証拠に今までのは演技だったんだからな」
「ブッヒ~!イクリさんにも教えてくるブヒ~」
「ははっ、まぁ本気を出せばこんなもんだ」
 何事もない日常が始まり続いていく、これで良かったんだよな・・・これでいいんだ・・・。
 
 










「人の記憶を弄んで楽しいかい?母さん」
「あら~、ばれてたの?」
 オレは目を覚ました。
 人間の記憶の研究をしているミルの母、『セラ・グリース』はそこにいた。
「あんまり難しいことばかり考えてないで、楽に行きましょうよミル?あなたはなんでも難しく考えすぎなのよ、あ、そうそう、新しいメイドが欲しいの?じゃあ代わりのを用意するわね、だからあなたはこんな所にいないで早くおうちに帰りなさい、トロトンも次期つくわ」
「いいんだよ、オレはこれで、母さん、用件だけ言う」
「なぁに?」
「イクリを返してくれ!」
「だから、新しいメイドが欲しいなら、母さんが用意してあげるっていってるでしょ?早く帰りの支度をしなさい、飛行機はもうとってあるんだから」
「母さん、もう一度だけ言う、イクリを返してくれ」
「あ、そろそろ向かえの車が来るそうよ、ミル、母さん外で待ってますからね、見送ってあげるわ」
 オレは母さんを置いて走り出す、あれから時間は経っていないはず、母さんがイクリの場所を教えてくれないなら自分で探すまでだ」
 その瞬間、奴が覚醒した。
「ツバクカクシルマ!!」
「ぐぁああ!!」
 謎の呪文が聞こえたかと思った瞬間オレは激しい頭痛を覚え走るのをやめその場にへたり込んでしまった。
「ミ~ル~、母さんの言う事聞かなきゃダメよ~?あんまりいたずらしたらおしおきしちゃうんだから」
「オレに・・・何をした・・・」
「簡単よ、いたずら好きなミルちゃんの為に頭脳にチップを仕込んでおいたの、いろんな合言葉でミルは母さんのいいなりで~す」
「く・・・なんて親だ・・・」
「ミルが母さんの言う事を聞かないからこうなるのよ」
「母さんがイクリの居場所をオレに教えればこうならないんだよ!」
「あ、ほ~ら~、時間だわ、早く車に乗らなきゃ、飛行機間に合わないでしょ」
(またはぐらかす、いつもそうだ・・・)
「わかった、また夢を見たいのね、だったら早く言ってくれればいいのに、すぐに眠らせてあげる」
「ぐ、くそ・・・!」
 オレの母、セラ・グリースは脳内のチップを使って人の精神意識を操る事ができる、正確には自信の脳内に埋め込められているチップを使って支持しているのだが。
「母さん、やめてくれ、オレはイクリを取り戻しに来ただけなんだ!」
「ねぇ~え、ミル、今日ばかりは母さんの言う事聞いて、ね?」
「いやだ!絶対に譲らない!!」
「わかったわ、しかたないわね」
 その瞬間オレの脳内に埋められたチップがオレに眠るように支持する、オレは恐ろしい眠りに襲われすぐその場で眠りそうになる、ここで眠るわけにはいかない!かくなる上は!!
「あら?どうしたのミル?母さんにだっこしてもらいたいの?」
「食らえ母さん!!!」
 そういってオレは母さんの脇腹を思いっきりくすぐった!
「あ、あは、あひゃははは!!」
「どうだ母さん、早くオレのチップへの命令をやめろ!」
「あふぁ、あはははは!ん・・・こらぁ!!ふぁは!、やめなさい!みる!!」
「母さんがいけないんだぞ!早く命令をやめろ!!」
「ふぁ!、あは、そんないできない」
「ならばこうだ!!」
 オレは全身の性感帯を所かまわず押しまくる!!
「ふぁあああ、ゆあめ!!・・・、やまえ!やぁめぇて~~!!」
「どうする?ここで一生オレに笑わされるつもりか!?オレは母さんがやめるまでやめないぞ!死んだってオレはやめない!死ぬまでだ!オレが死ぬ前に母さんが寿命で死ぬかもしれないけどなぁ!!!」
「わはは!あはぁん!、わぁ、わぁかったわ、やまれましゅ!やめるから~~ッ!!」
「よし!」
 オレはくすぐるのをやめた、それと同時にオレの脳内チップ内への母さんからの命令も止まったようだ、これでイクリを迎えにいける、だがその前に一応オレは無駄だとわかっていても聞いてみた。
「母さん、知ってるんだろ、イクリの場所、・・・教えてくれ」
「はぁ・・・ハァ・・・はぁ・・ふぅ・・・ひどいわ・・・・ミル・・・あ、はぁ、・・・ハァン・・・」
「母さん、オレはイクリを探しに行くよ」
「はぁ・・ハァン・・・はぁ・・・・」
「さよなら母さん」
「通路右、突き当たり、3階まで階段を登って一番奥の部屋、キーロックがかかってるから、暗証番号は9769よ」
「・・・・ありがとう、母さん」
 そういってオレは部屋を後にした。
「はぁ、・・・ハァ・・・、いつも部屋に閉じこもってばかりのあの子が、こんなにも真剣になるなんて・・・ふふ・・・」
 母は息子の成長に笑みをこぼすのだった。
 
 
 3階まで登って一番奥の部屋の前にくる。
(ここにイクリが・・・)
 ゴクリと覚悟を決めて入ろうとしたその時。
「入れ」
 声がした、懐かしい声、もう10年以上も聞いていない、けれど忘れるはずのない、懐かしい声が今は冷たくドア越しに聞こえてくるのだった。
 ガチャリ
「ミル、久しぶりだな、また会えるとは思っていなかった」
「父さん・・・」
「率直に用件だけ言おう、オレはまだお前に会おうと思っていない、時期がくればこちらから会いに行く、つまり、今は即刻家に帰ってもらえないか?」
 懐かしい声、懐かしい顔、懐かしい、なにもかも・・・。
 人間機能研究科の科学者「ユニバ・グリース」がそこにはいた。
「断るよ、オレはイクリを・・・!!」
「ならば、また少し眠ってもらおう」
 !!
「うぐァッ!!」
 父は一瞬でオレの後ろに回って後ろから掌打をくらわせた。
「私の研究はうすうす勘付いているだろう?」
「クッ・・・人間機能研究・・・人間の肉体の限界を研究する学問、人間の未だ発見されていない力を研究、実装し続ける研究だろ・・・?」
「そうだ、そしてその技術を私は私自身に施している、そしてお前は生身の只(ただ)の人間、この意味がわかるか?」
「・・・ ・・・」
「お前は肉体的には私には勝てない、つまりお前に残された道は私の言う事を聞いて素直に帰るか、そのどれだけ知識が詰まっているのかわからない脳で私に立ち向かうかだ」
「・・・」
「経験、知識、忍耐、全てが私の方が勝っている、やめておけ、あの実験マウスの事はあきらめろ」
 オレは一瞬何がそのマウスなのかわからなかった、だがすぐに察知した、と同時に自分の父親がどんな人間か認識を始める、こんなのが父親だという事に悲しさを覚えた、そして、
「誰がマウスだって?」
 自身の父親に生まれて、初めて
「あの実験代に名前なんてあったか?」
「誰がマウスだって聞いてんだよ!!!!!!!」
 怒りを覚えた!!!
「怒りで我を忘れるとは、ずいぶん無様だな、ミル、お前はもう帰れ」
 静止の言葉だったのかもしれないがオレには挑発に聞こえた。
「いいからイクリをッ」
 全身に力を込める、どの道この男は自分の妨害をする事はわかっていたので父親でも遠慮なく排除させてもらおうと思う、物理でごり押ししようという父親だ、こちらも例外的な力を使わせてもらう。
「返せぇええええ!!!」
 全身、オレは父親にとびかかった、父親ユニバは予測していたのだろうすぐに身構えてオレへの攻撃からの反撃を狙う、しかしオレはユニバのすぐ近くまで来た瞬間斜め2時の方向に前転し、ユニバの後ろにあったパイプ椅子を手に取る、そのままイスを目標に叩きつけた。
「オゥラァアアア!!!」
 クゥワァン、という音と共にパイプ椅子は宙を舞った、ユニバの片腕を薙ぎ払っただけでミルの攻撃ははじかれてしまったのだ、すぐさまユニバは攻撃に移ろうとミルに早足でミルに近づく、ミルは予想していたので攻撃の後すぐに後退して次の武器をさがす、室内は研究施設そのもの、いろいろな試験管や実験器具をその場で作れるように戦いに必要な鉄パイプや金槌等もそなわっていた、ミルは鉄パイプを手に取り身構える、身構えた瞬間、鉄パイプで人殴ったらやばいのではと思ったが自分の前にいるのは人間を越えているので罪悪感はすぐに消えた、むしろ鉄パイプじゃしょぼいのでもっと強い武器が欲しいとまで思うようになっていた。
「ずいぶん身のこなしがいいな、何か運動でもしていたのか?ミル?」
「世間話は父さんがイクリを返してくれたらゆっくししよう」
「・・・」
 刹那目の前にいた父親は消えた、と見えるくらい早い速度で上空にジャンプした、ミルは空中からの攻撃は予想していなかったので素直に後退して何をされても大丈夫なように距離をとったがしかし!父親は空中で服の中から羽のような物を広げて物理法則を無視し、鳥が風にのるような速度と角度でミルに突進してきた。
「なに!・・・ぐほぁ!!」
 空中からの奇襲攻撃にミルは後ろにあった試験管セットを倒しながら後ろに3m程吹っ飛ばされた。
「これが科学の力を実装した新人類の力だ」
「ぐぅ・・・物理の法則を無視するなんて反則だろう・・・」
「ミル、これ以上は無駄だ、帰れ」
「なんで・・・」
「・・・」
「なんで父さんも母さんもイクリを実験代にしようなんて思うんだよ!今まで普通に生きていたじゃないか!イクリはそんなに悪い事でもしたのか!?なんで今まで普通に生かしていたのに突然ひどい実験代にしようなんて思うんだよ!!」
「・・・」
「教えろよ!知ってるんだろ!!」
「・・・」
「てめぇ!教えないってんなら!」
 オレは立ち上がる、そして落ち着きを取り戻す、冷静さを最大限に引き出す、オレの人生でうまくいってきた事だけを思い出す、その時の感覚を体に身につけ、不要な考えや感覚をどんどん頭の中から排出していった、そう、オレは本気の状態になった。
「今から、親父を倒し、イクリを迎えに行く、親父、オレはあまり強くない、だから手加減はできない、オレと戦って只で済むとは思わない方がいい」
「ミル・・・いい目をするようになったな」
 すぐさまオレは駆出した、近くにある鉄パイプを回収していく、何本もの鉄パイプを手に抱えて、ある程度の数になったら親父に向けて投げる、すぐに手刀で払われてしまうが何本かはユニバの直撃コースだったらしく、ユニバは体制を変えたり、その場を飛びのいてしまわなければいけないみたいだ、オレはツバメのような速さで鉄パイプを拾いユニバに投げつける、だいたい奴の直撃コースがわかってきたのでそこを狙う、もちろんユニバは体を移動させる、つまりオレは奴が体を移動させた場所に向かってあらかじめ予想して鉄パイプを投げてやった、その一本の鉄パイプだけは今まで出していない渾身の力を振り絞って。
「ぐぅ、なに!」
 大体鉄パイプがそろそろ直撃がくるだろうなと予想していたユニバは自身の回避ポイントにきた鉄パイプを手刀で払おうとしたみたいだが、その一本だけオレの渾身の力が込められているとまでは予測していなかったみたいで見事直撃した。
 オレはそれがチャンスだとばかりに今度は鉄パイプを低速で投げてやる、ユニバは今までと速度が違う鉄パイプにすぐ対応する、だが対応には一瞬のスキができる、オレはそこに目掛けて渾身の一本を投げる。
「ぐぅお!」
 直撃、ミルは手を休める事はない、今度は一辺に三本程を低速で投げる、宙に浮かんだ三本、すぐに対応するユニバ、その時ユニバは鉄パイプの他に対応しなければいけない物ができてしまっていた、全ての力を振り絞り渾身の一撃を握っている鉄パイプに込め突進してくるミルだったのだ!
「ォオオ!!!!!!」
「なにぃ!ミルぅ!!」
 ゴゴ!!
 鈍い音がした、人間に本気で鉄を食らわすとこんな音がするんだなとミルは学習する、重症の一撃をくらい跪いている父親の側で。
「親父、イクリの居場所を言え、殺すかもしれない」
「・・・ ・・・ミル・・・」
 もう一発食らわす。
 ゴゴォ!
「ウグゥ!」
「親父、イクリはどこだ?」
「・・・ック・・・そんなにあの娘が大事か・・・」
 ゴキ!
「グはッ!」
 少し加減してもう一発。
「早くしろ」
「自分の・・・ミル・・・お前の・・・妹の命を引き換えでもか?」
「・・・」
 くだらない妄想に付き合っている暇はない、そんなつまらんエピソードはいらないんだよ。
 いらないんだよ。
「どういう事だ?」
 オレは質問してしまっていた、その先の展開がつまらない物になるとわかっていたのだが。
「私と母さんが人間の記憶や肉体の研究をしている事はわかっているな?」
「・・・」
「それは全て、生まれて間もない、お前の妹を助ける為だったんだ・・・」
「そんなつまらない嘘はごめんだ、早くイクリを・・」
「嘘じゃない!!・・・ミル、お前に真実をみせてやろう」

 

 研究所の奥、最深部にそれはあった、液体の入ったカプセルにオレの妹らしい、肉片と、イクリの姿が。
「イクリ!」
「これが真実だ・・」
「今ここから出してやる!」
「無駄だ、このカプセルは普通の人間じゃ壊す事はできない」
「じゃあ、早く出せ」
 オレは戦った時の殺気を父親に向ける。
「ミル、話を聞け、彼女は死んでいない。」
「早くしろ」
「話を聞け、ミル、聞いた後、お前の彼女を出すという願いを叶えよう」
 こうやってはぐらかされている気がしたが、イクリの姿を見て少し安心したのか、彼女が生きているという話ならば、今はそれを信じようと思った。
「見ての通り、あれがお前の妹になるはずだったものだ」
「あのイクリと一緒に浮かんでいる肉塊がか?」
「そうだ」
「それで、あの肉とイクリがなんの関係がある?」
「あの肉塊と一緒にお前の妹の脳も保管してある、そしてその脳は損傷が時間と共に損傷は進んでいく」
「・・・」
「そして、その・・」
[[まって・・・]]
 突然声がした、モニター付近のスピーカーからだ。
[[突然私が話してびっくりしたよね、ごめんなさい、でもお父さんとお母さんは悪くないの・・・]]
「誰だ?」
 答えはわかっていたがオレは問いかけてみた。
[[私は体のないあなたの妹のベル・グリース、始めまして、お兄さん、私があなたの妹です」
 あぁ、こんな施設全て壊してしまいたい、こんな事実等なんの意味もない、イクリを早く救って逃げてしまえばよかったんだ、こんな父親も妹も、もうどうでもいいだろ?
「そうか・・・」
「ミル・・・」
[[お兄さん、私は体が欲しいってお父さんとお母さんにお願いしたの、最初はずっとここにいれば誰にも迷惑かけないと思っていた、けど・・・]]
「けどなんだよ?何も知らずに平和に生活していたイクリを犠牲にしてもいいのか?」
「ミル!」
 父さんがオレに殴りかかってくる、オレは容赦なく一撃を喰らわせた
 グガゴ!!
 父さんは沈む。
「答えろ」
[[私は体が欲しい、イクリさんを犠牲にしてでも]]
「お前は人間でもなんでもない、ただの自己中心的なモンスターだ」
[[それはお兄さんも同じだと思うわ]]
「同じじゃない、少なくとも、オレとイクリには人間的に生活する権利がある」
[[体を失った私にはその権利はないというの?]]
「いや、ある」
[[だったら]]
「ある、しかし、イクリを犠牲にするという権利はない!!」
[[!!]]
「もういいだろ、イクリを返してもらおう」
 オレは持っていた鉄パイプで目の前のガラスを割った。
 ガッシャアアアアアンン!!!
 ガラス片と水が研究所の床を濡らす、それと同時にイクリと肉塊も出てきた。
「イクリ・・・無事か?」
 抱きかかえた彼女は体温があった、オレは安心する、するとゆっくり彼女は目を覚ました。
「ミル・・・さん・・・」
「イクリ、もう大丈夫だ、帰ろう。」
[[ma...tte...]]
「!!」
 先ほど壊したカプセルからイクリと一緒にでてきた肉の塊がもぞもぞと動きながらこちらへ這いよって来ていた。
[[wa...ta...shi...so.to.ni.de.ta.i...:;; so to no sekai wo siri tai...]]
「そこに眠っている奴に頼むんだな、誰かを踏み台にしないと生きていけない奴なんてな、誰も助けようとは思わないんだよ、我が妹よ」
[[そん・・・naのって・・・ない・・・よぉ、、、私・・・datte・・・生きたい・・・せ、かいを・・・見たいの・・・]]
 もう聞くのをやめた、オレはイクリを抱きかかえて外にでようとする、だがイクリは・・・
「ミルさん・・・待って」
「・・・」
 オレは本当はわかっていた、彼女がこう言い出すのを、だけどどうすればいい?こんな問題解決方法なんてあるのか?オレだって助けたいさ、だけどな!助ける方法なんてどう考えてもみつからないじゃないか!だったら、心を鬼にして、『選ぶ選択』をオレは取る、そうしないと、一生ここで立ち止まったままだからな!オレも、イクリも全員が犠牲になる、ならばこいつ一人を犠牲にすれば・・・・・・・・・・・・そうだな、オレもか・・・だがオレは選ぶ、選ばせてもらう、それがオレの選択、周りの奴がいくら奇麗事を吐こうが知った事じゃない!そいつらは助ける方法も知らないし、責任なんて1mmも取らないんだからな!!何人かは、助けようとするだろうさ、だけど時間が経ち、無理だとわかればごまかすように笑って終わるもんさ、オレはそれを知っている。
「イクリ・・・」
 どうしようってんだよ・・・オレには・・・完全に無理だ・・・お前が無理だとわかってごまかそうとしたつまらない笑い顔なんて見たくないんだよ・・・。
「ミルさん、無理しなくていいですよ、この子の事、助けたいんですよね?」
 ・・・オレの事はお見通しなんだな、だけどどうする?
「ベルさん、外に出たいですよね、ちょっと待っててください」
「ど、どうするつもりだ?」
「ミルさん、たぶんあなたのお父様とお母様は妹さんの記憶だけを私に移植しようとしたんだと思います」
「!!・・・それじゃあイクリはどうなってしまうんだ?」
「わかりません、それは・・・」
「もちろん、ベルだけがそこにいる事になるわ」
 気がつけば後ろにミルの母親、セラ・グリースがいた。
「母さん・・・」
「ミル、あなたの気持ちはわかった・・・・もうイクリさんの事はあきらめるわ、どこにでも好きにおいきなさい」
 母さんが『イクリ』の名前を出したのには驚いた、はぐらかしてばかりだったのに・・・、つまり、彼女の存在を認めこの件からは完全に手を引く合図でもあった。
「セラさん、そこで質問なのですが・・・」
「なぁに?」


 鮮やかな青色インクに丁寧に雲を描いたような美しい空、気持ちいい雨日後の風が吹き、草花は雨で潤った葉と太陽に向けて光合成をしてその生命の強さを咲き誇っていた。
「あはははははは!!お兄さん!えい!」
 パシッっと彼女のボールをキャッチ、返してやる。
「おっとっとっと・・・わぁ!!」
 歩きなれない体の性か、彼女は転んでしまう、彼女の事が心配な父親のユニバ・グリースとセラ・グリースは手を貸そうとする。
「大丈夫だってば~、でもありがとう!お父さん!お母さん!」
 今まで一度も喋ったことがないのだ、なんにでも反応を返す、なんにでも楽しそうに喋る、彼女はいつも笑顔だった。
「ミル・・・」
 父さんがオレに囁きかける。
「イクリさんの事は、本当に感謝している」
「もう、いいよ、これはイクリが決めたんだし・・・」
「ミルちゃん、ありがとね」
「だからいいって母さん」
「ぶっひ~~~!ぶたもキャッチボールやるぶひ~~~!!」
「あは!こっちだよトロトン!」
 楽しそうに遊ぶトロトンとベル、オレはその微笑ましい光景を見ながら、目を優しく薄め、深く考えていた・・・。
「これが・・・イクリの、選択・・・」
「あははは!お兄さん!あ、ちょっと、待ってね」
 そして彼女はいつもの表情に戻る。
「ミ~ルさん、どうしたんですか、浮かない顔して?」
「そりゃあ、イクリの選択がまだ・・・」
「いいんです、私は元々生まれるはずのない存在でしたから、元々生まれるはずの人に、半分この体を譲っても」
 そう、イクリはあの日、自分の脳にもう一人分の脳を移植する事にしたのだ、最低限の大きさのチップに脳のデータを完全に移行したチップを自身の脳内に・・・、その結果、イクリの体はイクリとベルの物になったのだ、こうしてバトンタッチするような感覚で体をお互いに譲りあって現在に至る。
「いつか、後悔するぞイクリ?」
「もちろん、ずっとこのままってわけじゃないですよ、ユニバ様の研究が進めばベルさんの体もできるらしいですし」
「でもそれはまだできると決まったわけではないし、当事者の父さんはこの研究に10年以上かけても技術的に必要な物ができると決まったわけじゃない・・・」
「じゃあ、ミルさんが研究を進めればいいじゃないですか」
「な!?」
「ミルさんならできます、私、信じてますから・・・」
 そう言って彼女はオレを優しく抱きしめた。
「ミルさん、嬉しかったですよ、助けに来てくれて」
「・・・」
「あんまり無理しないでください、ミルさん、時々自分を殺して嘘ばっかりいいますから」
「・・・すまない」
「ミルさんが辛くなったら私が見抜いて笑顔にしますね、だから、これからもよろしくお願いします!」
 世界最高のひまわりとはこういう事をいうのだろうなと思った。
 澄み渡る空と心地良いそよ風がオレとオレの大切な人達を包む、もうそろそろ夏がくる、きっとこの夏は今までの人生で一番、安らげる夏となるだろう、そうだな、予定はみんなで立てよう、新しい家族も増えたみたいだから。

 
 
                                      FIN
 
 
 


 
 
 
 
 

       

表紙

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Neetsha