Neetel Inside ニートノベル
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虐殺の死現実さん
プロローグ

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 死現実(しりある)きららさんがはじめに僕を殺したのは「死現実(しりある)きららってどっちもDQNネームだね」となんとなくいってしまったある日のお昼休みのことだった。僕はその日図書室で借りた『るろうに剣心』の完全版を返しに来たところで、彼女もまた借りた本を返しに来たところだった。返却カウンターのところで眼があってしまって、クラスメイトだったからとりあえず挨拶程度に話しかけて、そのまま本の話をしたら盛り上がってしまい、ついうっかり言ってしまったのだ。
 僕が彼女に対してDQNネーム発言をしてしまったあと、ものすごく長く感じてしまうような沈黙の時間が流れた。それから、彼女は一度も染めたことがないであろうそのつやつやと刃物のように光る黒い髪に結ばれた大きなピンクのリボンをちょこんと揺らして優しく微笑んで、言った。
「あの、悪いんだけど、殺すね」
 僕が何かを言う前に、彼女はポケットからナイフを取り出して素早い手つきで僕の胸を一突きした。悲鳴を出す暇すらなかった。
 焼けるような熱とクラクラするような痛みが体を駆け巡る。僕がこんなに苦しんでいるというのに、肝心の死現実さんはナイフで胸を突くという行為に興味を失ってしまったかのような目をしてこちらを見ていて、ふぅと溜息をつきながらナイフを引っこ抜いた。僕はそのまま床に倒れこんで、胸から逃げていく自分の血を眺めていた。
 殺すといったのに死を確認するまで僕を観察しなかったのはもしかしたらどうせ失血死するでしょと判断したのかもしれない。痛みのせいでやけにクリアになっている頭でなんとなくそう考えた。
 というのも、彼女は僕を刺した後も慣れた手つきで図書室にいる人間を次々ナイフで刺しているからだ。静かに近づいては刺し、静かに近づいては刺しを繰り返していた。気づかれていないのはこの空間に人が点在しているからなのかもしれない。ここはワイワイする空間ではないし、どちらかと言えば個人的な時間を楽しむ空間だ。だからイヤホンをして本に集中してる人間しかいなかった。結果、この空間にいる人間は全員彼女によって虐殺されることとなった。とどめこそ全員刺されなかったが、僕らは確実に死ぬ。彼女はそういう刺し方を心得ている。まるで、こういう時間を何度も何度も繰り返していたかのように。
 そして、最後の仕上げと言わんばかりに書庫にいる司書の先生もナイフで刺した後、彼女は物足りないような顔をして教室を出ていった。


 それからすぐ、僕の意識も途絶えた。

       

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