Neetel Inside 文芸新都
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ハンバーグのいい匂い
動く

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翌日、



今日も学校がはじまる。

なにげない1日。

今日も弁当箱からハンバーグの匂いがする。

今日もあいつは話しかけてくる。

「またうまそうだなハンバーグ!誰が作ってんだ??それ」

「僕」

「母親はサボりかよ(笑)」

「母親はいない」

がやがやとしていた教室が一変、長い沈黙が続いた。

そう、僕には母親がいない。

いや、いなくなった。

父と母はいつも楽しそうにしていたが、突然母は違う男性と付き合いはじめて、いきなり離婚した。

父と母は仲がすごく良いと思っていたこと、あっさり自分を捨てた母のことなど、僕に人間を信用できなくさせるには十分すぎた。

それ以来、あまり人と会話しなくなった。

風の噂で母の離婚は流れ、むこうから話しかけてくる人も滅多にいなくなった。

中学になって以来、その事は伝わっていないようなので、今日のような事はよくあった。

しかし、今回の相手はショックと動揺を隠せていなかった。

「知らなかった、本当にごめん」「別に大丈夫」ここまではいつも通りだった。

しかし彼は「明日俺の分まで作ってくれよ!」と喜作に話しかけてきた。

面倒くさいなという気持ちと嬉しい気持ちがすこしあった。

今日も部活のはじまり。

今日も姫野は友達と楽しそうにして・・・・・姫野がいない。

どうしたのだろう。

となるともうかえりたいな。

帰ろうとした僕に部長の横井が「なあ」といってきた。

何の用だろうか

「何だ」

「お前も知っていると思うが、姫野が昨日車にひかれたろ??」

mjk

「だから今日皆でお見舞い行こうって話なんだけど谷もどうだ??」

「もちろんいく」

「お??思ったより乗り気だな」

「・・一応部活仲間だからな」

「お前姫野好きだろ」

「なっ・・・」

なんだか今日は人と喋りやすい。

たぶん昨日の姫野との会話が原因だろう。

またこれも面倒くさいなという気持ちと嬉しい気持ちがすこしあった。

     

部活も終わり、

姫野が入院している病院へ歩き出した。

部活の盛り上げ役の花田がワイワイと前で喋っている。

「なあ」

横井である。

「お前なんで喋らねぇんだ??」

「色々あって」

「無理矢理喋らせてもいいのか??」

横井は何を言っているのだろうか、

まさかとは思うけど・・・

横井は声をひそめて

「皆に姫野が好きなこと言うぞ」

と言った。

やっぱりと思った。

「言わないでほしいなら喋れ。」

強引ながら

こいつは僕のことを考えてくれているようだ。

「喋るか??」

「・・あたりまえだろ」

この人達なら大丈夫だろう。

「そういえばお前漫画とか読んでる??」

唐突だけど話題がほしいのだろうか

「ワンピースとか見るよ」

「以外(笑)喋らない奴でも漫画読むのか~」

「喋るとか喋らないとか関係ないよ。」

「そうかそうかごめんな」

頭をかきながら横井は笑った。

自然と忘れていた感覚を思い出していた。




      僕もまだ笑えるのか

     

それから十分ほど歩いた。

大きな病院に着いた。

姫野はどうなったのだろう、打撲程度ならいいな。

病院内に入ると自然に皆喋り声が小さくなった。

姫野のいる部屋の前に着いた。

花田がドッキリやらねぇか?と提案した。

元気になると思い、皆賛成した。

花田はバッグからあるものを取りだし、皆に渡した。

扉をバタと花田が開け「ひ~めの!」と言った瞬間皆が「大丈夫かぁぁ!」と言いながらクラッカーを鳴らした。

姫野はキャア!と驚いたあと笑いだした。

皆もワハハと笑っているが多分心の中は笑っていないだろう。

姫野は左の足と腕を骨折していた。

足は吊り上げられ、腕は肩にもたれかかっている。

僕はかなりショックだった。

昨日本屋で始めて喋って、その帰りに事故にあったのだろう。

本当にショックだった。

その後皆ワイワイやっていたが、僕は一言も喋れなかった。

結局僕は何もしてあげられないのだろうか、

何か元気づけられる事はできないのか…

僕はベッドでずっと考えていた。

そして結果思いついた。



 …本があった。

       

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