チュン…チュンチュン…
まだ冬の寒さが残るこの日、高鳥日菜乃(たかとりひなの)は1つの思いを抱いていた。
中学の日菜乃は人と関わるのが苦手で精神を病んでしまい、生きることを諦めていた。
「だけど…高校からは…頑張って生きよう、生きてみよう」
真新しい制服に着替え、髪を整えて鏡の前でそう呟いてみる。
でも自分の目は見れない。
「頑張ろう、頑張らなくちゃ」
口癖のようにまた呟く。
きっと生きることは楽しいはずなんだ。
私も皆みたいに笑えるようになろう…
日菜乃は何とか高校入学を機会に変わろうとしていた。
「私立光華高等学校入学式」
大きな桜並木が続く坂を登った先にある高校の門に大きく掲げられている。
周りは楽しそうに談笑している新入生達で溢れていた。
「怖い、人が怖い」
ここまで来るのだけでも電車の人ごみとか怖かったのにいざ高校に到着するとこんなに怖いなんて…
同年代の人が凄く怖い。
女子生徒「おはよう!仲良くしようね」
希望に満ちた真新しい制服の女子生徒が話しかけてくれた、恐らく新入生だろう。
「…ぉはょぅ…」
女子生徒「…?」
しばらく沈黙が続き、他の女子生徒に呼ばれ、話しかけてくれた生徒は去っていってしまった。
「もう嫌だ」
どうして私はこんなんなんだろう…
まともに挨拶もできなった。
当然だ…
家族意外と話すのは中学を卒業して以来だから…
ええ…と…何カ月ぶりだろう…はあ…
ただ周りに人がいるだけなのに
家を出るまでは絶対に変わってやるという強い意志を持っていたのに…
「もう挫けそうだよ…」
こんな調子で変わることができるのだろうか?
皆みたいに幸せそうに笑えることができるんだろうか?
希望に満ち溢れている新入生を見ながら日菜乃は早くも不安で満ち溢れていた。