Neetel Inside ニートノベル
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Johann,-ヨハン-
第15章 焔龍解放

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 ガルーザ達が監視塔を潜り抜け城門へ着くと、城門に警備兵はいなかった。
 怪訝に思いながらも3人は跳ね橋を渡り、城内へと急ぐ。
 すると、石像――城門の両脇に1対で向き合う形で置かれている――の眼がすっと開いた。石像の皮膚が徐々に色味を帯び、胴体と尻尾に爬虫類じみた鱗が覆う。
 怪物は獰猛な鳴き声を上げると、巨大な翼を広げ3人に襲いかかった。
 「危ない!」 ガルーザが叫ぶと同時に、3人は飛び退き、危うく回避する。
 ―ブシュゥゥウ
 怪物は宙へ舞い上がり、嘴から白煙を吐き出した。ウェンディの周囲にもうもうと煙が立ち込める。
 ウェンディは咄嗟に水流を巻き上げ、怪物を地面へ叩き落とした。ガルーザが瞬時に首を斬り落とす。
 怪物は身体を痙攣させ絶命する。
 「あと1体!」
 「ガルーザ! ウェンディが‥‥!」
 シュジェに呼ばれ振り向くと、白煙を浴びたウェンディがみるみるうちに石と化した。
 「ウェンディ!?」
 もう1体の怪物が2人目掛けて白煙を吐き出す。2人は全力で地面を蹴る。 「絶対に煙を浴びるな!」
 怪物は城壁をずるずると不気味に這い、通気口に向かって登り始めた。
 「逃げる気‥‥!?」 シュジェが弓を引き絞り、矢を放つと、怪物の背中に命中した。
 しかし、怪物は平然と城壁を登り、通気口に侵入して城内に消えた。


 ―ズドドドドド‥‥!
 ヨハネス達は警備兵を殲滅しつつ城内を進み、飛空艇へ向かう。
 上階へ登ると細長い通路が続き、その先に扉が見えた。
 「あの先が飛空艇だ!」
 3人は急ぎ足で扉へ向かう。
 突然、ヨハネスは天井に何かが這いずる気配を感じた。 「気を付けろ! 天井に何かいる!」
 ヨハネスが叫び、3人は身構える。すると、天井の横溝からクリーチャー――首から頭部にかけて雄鶏、胴体から尻尾は蛇と蜥蜴を合わせた様な姿をしている。蝙蝠のような巨大な翼が生えており、全長は2m近くある――が這いずり出した。背中に矢が刺さっている。
 「あれは‥‥蛇の王バジリスクだ! 吐き出した煙を浴びると石になる、気をつけろ!」
 イヴが叫び、拳銃を抜くと、バジリスクに麻酔弾を撃ち込む。
 ――麻酔が効かない!
 「実弾はないのか!?」
 「‥‥こう見えても神父だからな」
 ―ズドドドドド‥‥!
 ネスビットが天井目掛けて銃を乱射し、バジリスクは悲鳴を上げた。出血してどさりと通路に落ちる。
 「忘れたなら、素直にそう言えば!」
 「‥‥俺にも弾をくれ」
 ネスビットとイヴが弾を撃ち尽くすと、バジリスクはぐったりと倒れ、動かなくなった。
 イブは息をつく。 「城内にはまだ警備用のクリーチャーがいる。油断するな‥‥!」
 すると、3人の後方から巨大な影が現れた。ネスビットが素早く太股のナイフを抜く。
 ―ギィィン!
 飛んで来たナイフを弾くと、男は彼女に斬りかかった。ネスビットは華麗に宙返りをし、剣が床にめり込む。
 「待て! そいつは俺の知り合いだ」 
 「ヨハネス‥‥! 無事だったか!」
 ヨハネスの姿を見ると、ガルーザは声を上げた。
 「久しぶりだな」 2人は再開の挨拶を交わし、握手をする。
 ガルーザは通路に横たわるバジリスクの死体に視線をやる。 「‥‥ウェンディがそいつに石にされた」
 「バジリスク血に解毒成分が含まれている。少量かければ元に戻るはずだ」
 「あんたは?」
 「アンリ君の友人だ。神聖教会の神父をしている。今は訳あって聖帝をやるはめになっているが」
 「貴殿が‥‥助言感謝する。俺は1度戻ってウェンディを元に戻す。このままだとアンリが泣くからな」
 ガルーザはバジリスクの血液を採取すると、通路を引き返した。
 「頼もしい味方だな」 イヴは飛空艇格納庫の扉を開けた。


 格納庫内はしんと静まりかえっていた。扉を開くとひやりと冷たい空気が流れる。非常灯が格納庫のずっと奥まで点々と灯っている。
 3人は飛空艇の搭乗口へと急ぐ。
 「飛空艇の鍵は艦長のテッサが管理している。搭乗口を破壊して飛空艇に入るしかない」
 「警報が鳴るんじゃないのか‥‥?」
 「ああ。警報が作動してから警備兵が駆けつけるまで約5分だ。その間に動力炉を破壊して脱出する」
 「5分か‥‥厳しいな。取りあえずガルーザ達が来るのを待とう」
 暫くすると格納庫の扉が開き、3人が合流した。
 「やあ、身体は大丈夫かい? ウェンディ」
 イヴが話しかけると、ウェンディは頷く。
 「ウェンディ、久しぶりー!」
 ネスビットがウェンディを抱きしめるが、ウェンディは嫌そうな顔をする。
 「挨拶は後にしろ。俺とガルーザ、そこのオークの女がここで護衛する。さっさと動力炉を破壊して脱出するぞ。‥‥いくぞ!」
 ヨハネスが扉を蹴破った。すると、警告灯が点灯し、警報がけたたましく鳴り出した。
 イヴ達は一目散に動力炉を目指す。
 3階へ登り、扉の鍵を破壊する。動力炉へ侵入すると、巨大な物体が視界に飛び込んできた。
 ガラスの向こう側に精霊サラマンドラがうずくまって眠っている。サラマンドラの頭部がイヴ達の目前にそびえ、イヴは束の間圧倒された。
 「‥‥我に何用だ」
 サラマンドラが薄っすらと瞼を上げ、囁き声を響かせる。
 「ここから開放しに来たんだ。そのかわり、俺達に力を貸して欲しい」 イヴが前に進み出る。
 「何が望みだ」
 「俺達は真実を知るために四精霊の証言が必要だ。それに協力して欲しい」
 サラマンドラはイヴの言葉を聞くと頭を上げ、ウェンディを見やる。
 「‥‥なるほど。罪深きヒューマンの男よ、何が為にガイアの記録を求める」
 サラマンドラに問われ、イヴは瞼を閉じる。
 「友を救うため、そして死者の無念を晴らすためだ」
 精霊サラマンドラは身動ぎせず暫しイヴを見据え、告げる。
 「残念だが、我はお主の力にはなれない」


 「奴らはまだか‥‥!」
 イヴ達が飛空艇に侵入してから5分が経過したが、一向に戻ってくる気配がない。
 「上手くいってないのかもな‥‥足音だ! 警備兵が来るぞ!」
 「ちっ‥‥」
 3人は武器を抜き、身構えた。
 「ネスビット、グレネードだ」
 「え‥‥う、うん」
 ネスビットがグレネードを渡すと、イヴは躊躇なくピンを抜き、精霊サラマンドラに向かって投擲する。
 ―ズドーン!
 動力炉に爆音が響き、コントロール・ルームが瓦礫と化した。
 「徹底的に破壊しろ」
 「オッケー!」 ネスビットが更に一撃グレネードをお見舞いすると、壁が崩れ、サラマンドラを覆うガラスが横倒しに倒れた。
 同時にサラマンドラから発する凄まじい熱気が3人を襲い、ウェンディが水のベールで3人を包む。
 サラマンドラを幽閉する檻を破壊すると、イヴは踵を返した。 「時間がない。急いで脱出するぞ」
 「でも‥‥」
 ネスビットが見ると、精霊サラマンドラは諭すように告げる。
 「慌てるな、ヒューマンの男よ。我は協力を拒んでいるわけではない。だが、今の我にはガイアの記録を開くだけの力がないのだ」
 「どういう事だ?」 イヴが振り返り、尋ねる。
 「お主らが我を幽閉したヒューマン共と違うことは、そこのウンディーネを見ればわかる」
 「わたしの名前はウェンディよ」
 「‥‥ウェンディが協力しているところを見ると、お主らが悪人でないことはわかる。しかし、我が力の結晶である炎の宝玉をヒューマンに奪われたのだ。宝玉がなければ、ガイアの扉を開くことはできない」
 「つまり、炎の宝玉とやらを取り戻せば協力して貰えるんだな?」
 「約束しよう」
 イブは微笑む。 「誰がその宝玉を持っているんだ?」
 格納庫の扉が開き、警備兵がぞろぞろと押し寄せた。
 「伏せろ!」 警備兵の放った銃弾がヨハネス達の頭上をかすめ、飛空艇の機体に当たって金属音を立てる。
 「うぐっ‥‥」 
 跳弾がヨハネスの左足に命中した。
 「くそっ、目障りな奴らめ」 罵り声を上げ、ヨハネスは呪文を唱える。
 すると、ガルーザの視界を闇が覆った。一面の闇が無数の破片に別れ、宙に舞い上がる。
 眼を凝らすと、闇の破片一つ一つがおびただしい数の蝙蝠の群れであることに気付いた。
 闇の塊は死神の如く姿を成し、警備兵に襲いかかる。
 警備兵は口々に悲鳴を上げ、床へ倒れる。闇の塊が暗闇に溶けこむように消え失せると、警備兵は一人残らず気絶していた。
 
 
  

       

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